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7 メアリの本心
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愛の女神様がほほえんでくださったわ。
アダムス様を名実共に私のものにできることになった。あちらから結婚してくれるって約束してくれた。
本当は子爵家のジュリアン様のことが好きだったの。でも相思相愛で結ばれた新婚のジュリアン様は私のことは眼中になかったみたい。
どんなに愛のこもった視線を送っても微笑み返してくれるものの私に指一本触れることはなかった。奥様から贈られたお守りを肌身離さずお持ちになっていて、それをみたとき密かに失恋したわ。
アダムス様の従者が病気で帰還することになって、ジュリアン様に命じられて仕方なくアダムス様の怪我の介抱をしていたの。男爵か、と正直乗り気じゃなかったわ。顔だってジュリアン様の方がずっと美形だったし。
でもふと思ったの。アダムス様と私を引き合わせたのは愛の女神様の采配なんじゃないかって。平民の私に爵位のある夫を持たせて男爵夫人に昇格するチャンスをお与えになったんじゃないかって。
これまで小説で令嬢たちの言葉遣いを学んできたわ。それを活かす時がきたのよ。
だってアダムス様は実は私が幼い頃一緒に遊んだことのある幼馴染だったの。私は最初から気づいていたけどアダムス様は私のことに気づかないみたいだった。
その気がなかった私は馴れ馴れしくされても嫌だったから、はじめはそのことを黙っていた。ジュリアン様に失恋した後、アダムス様でもいいかもしれないと思いはじめて身分を明かしたの。アダムス様はそれは喜んでくださったわ。
だんだんアダムス様に手が届きそうな気がして。そうしたらアダムス様のほうから私を──
アダムス様はオースト家のエバンジェリン様と婚約中だとジュリアン様から聞いていたけど、きっとそのお相手のことは重要じゃなかったのよ。
オースト侯爵家といえばこの国で知らない者はいないくらい有名な家門よ。その令息令嬢となると『国の宝として大事にしなければならない』と民衆も聞かされて育つの。
そんなお嬢様より私を選んでくれた。アダムス様は私の中身をちゃんと見てくれたのよ。
そろそろ結婚の支度をしなくてはね。衣装はどうしたら。男爵夫人になるのだもの。純白のレースのオートクチュールを仕立ててもらわないと。もちろんアダムス様が婚礼費用も衣装代も全て出して下さるわ。去年亡くなったママにも私の花嫁姿見せてあげたかった。
パパ。
どうしたの?
帰ってきてずっとそんな怖い顔して。
オースト家に呼ばれて屋敷に行くことになった?
何もそんな怖がらなくても大丈夫よ。だってアダムス様は身分差を超えてこの私を選んでくださったんだもの。胸を張っていけばいいのよ。
それにこの前アダムス様とご一緒してオースト家を訪問したけど、エバンジェリン様っていう方はお綺麗だけど弱々しくて頼りないお嬢様だったわ。高貴だか何かは知らないけど、平民の私の方がずっと人間らしいあたたかさがあって好きだとアダムス様は言ってくださっていたわ。
アダムス様のそばにずっと立ちっぱなしでいたとき、アダムス様が差し入れてくださったアップルパイとロールパンとベーコン二箱と乾パン100個を全てパパの分までこっそりたいらげた後だったから気分が悪くなってふらついた私をアダムス様は抱き止めてくださった。
エバンジェリン様ではなく私を。お可哀想に倒れて床に手をつかれて。選ばれなかった人というのはお気の毒なものね。
何かしら、パパ。
アダムス様のことで何か隠していることはないかって?
どうして私が?
何のために?
もちろんないわよ、隠していることなんて。
パパ、オースト家のこと怖がりすぎて変な思考になってしまっているようね。
大丈夫よ。
何があってもアダムス様は私の味方だから。
幸せを掴むのはエバンジェリン様ではなく私だと女神様がささやいているの。
アダムス様を名実共に私のものにできることになった。あちらから結婚してくれるって約束してくれた。
本当は子爵家のジュリアン様のことが好きだったの。でも相思相愛で結ばれた新婚のジュリアン様は私のことは眼中になかったみたい。
どんなに愛のこもった視線を送っても微笑み返してくれるものの私に指一本触れることはなかった。奥様から贈られたお守りを肌身離さずお持ちになっていて、それをみたとき密かに失恋したわ。
アダムス様の従者が病気で帰還することになって、ジュリアン様に命じられて仕方なくアダムス様の怪我の介抱をしていたの。男爵か、と正直乗り気じゃなかったわ。顔だってジュリアン様の方がずっと美形だったし。
でもふと思ったの。アダムス様と私を引き合わせたのは愛の女神様の采配なんじゃないかって。平民の私に爵位のある夫を持たせて男爵夫人に昇格するチャンスをお与えになったんじゃないかって。
これまで小説で令嬢たちの言葉遣いを学んできたわ。それを活かす時がきたのよ。
だってアダムス様は実は私が幼い頃一緒に遊んだことのある幼馴染だったの。私は最初から気づいていたけどアダムス様は私のことに気づかないみたいだった。
その気がなかった私は馴れ馴れしくされても嫌だったから、はじめはそのことを黙っていた。ジュリアン様に失恋した後、アダムス様でもいいかもしれないと思いはじめて身分を明かしたの。アダムス様はそれは喜んでくださったわ。
だんだんアダムス様に手が届きそうな気がして。そうしたらアダムス様のほうから私を──
アダムス様はオースト家のエバンジェリン様と婚約中だとジュリアン様から聞いていたけど、きっとそのお相手のことは重要じゃなかったのよ。
オースト侯爵家といえばこの国で知らない者はいないくらい有名な家門よ。その令息令嬢となると『国の宝として大事にしなければならない』と民衆も聞かされて育つの。
そんなお嬢様より私を選んでくれた。アダムス様は私の中身をちゃんと見てくれたのよ。
そろそろ結婚の支度をしなくてはね。衣装はどうしたら。男爵夫人になるのだもの。純白のレースのオートクチュールを仕立ててもらわないと。もちろんアダムス様が婚礼費用も衣装代も全て出して下さるわ。去年亡くなったママにも私の花嫁姿見せてあげたかった。
パパ。
どうしたの?
帰ってきてずっとそんな怖い顔して。
オースト家に呼ばれて屋敷に行くことになった?
何もそんな怖がらなくても大丈夫よ。だってアダムス様は身分差を超えてこの私を選んでくださったんだもの。胸を張っていけばいいのよ。
それにこの前アダムス様とご一緒してオースト家を訪問したけど、エバンジェリン様っていう方はお綺麗だけど弱々しくて頼りないお嬢様だったわ。高貴だか何かは知らないけど、平民の私の方がずっと人間らしいあたたかさがあって好きだとアダムス様は言ってくださっていたわ。
アダムス様のそばにずっと立ちっぱなしでいたとき、アダムス様が差し入れてくださったアップルパイとロールパンとベーコン二箱と乾パン100個を全てパパの分までこっそりたいらげた後だったから気分が悪くなってふらついた私をアダムス様は抱き止めてくださった。
エバンジェリン様ではなく私を。お可哀想に倒れて床に手をつかれて。選ばれなかった人というのはお気の毒なものね。
何かしら、パパ。
アダムス様のことで何か隠していることはないかって?
どうして私が?
何のために?
もちろんないわよ、隠していることなんて。
パパ、オースト家のこと怖がりすぎて変な思考になってしまっているようね。
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何があってもアダムス様は私の味方だから。
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