婚約破棄の代償

nanahi

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14 暴かれる3

証人として呼ばれたのは調理人の男だった。

「お前が見たことを全て申せ」

陛下に促され恐縮気味に調理人が話し始めた。

「はい。陛下に申し上げます。梨のケースを見かけた私が調理に使おうとしたところ、この梨には毒が入っているかもしれないから毒味が必要だ、私が毒味役を担当しているから誰も食べてはいけない、とある女に言われました」
「そのあとお前はどうしたか」
「私はケースいっぱいに入っていた見事な梨を忘れられず、一つだけケースから頂戴しました。そのあと、恐る恐るかじってみたのですが香り高くみずみずしくそれは見事な味で。これは遠征に来られている皆さまに是非ともお出しせねば、と再びケースの置かれていた場所まで行ってみました」
「そこはどうなっていたか」
「ケースの中身はからっぽでした。10ケース全て。たった一晩のうちにです」

この奇妙な現象にざわざわと貴族たちはひそめきあっている。

「毒味役だと言った女は誰か」

陛下が核心を問うた。調理人は真っ直ぐにメアリを指さした。

「あの女です」

メアリは「ひどい言いがかり……梨は腐っていましたのに」と呟いていた。

メアリの言葉に「腐ってなどいませんでした。新鮮そのものでした」と調理人が抗議している。

アダムスは証言が食い違うやり取りが不愉快で仕方がなかった。メアリの方が正しいに違いない、と心底思っていた。

「証人をもう一人連れてまいれ」

すると同じく調理人だが少年のように若い男がやってきた。その男は庶民にしては美しい顔立ちをしていた。

「あったことを申せ」
「は、はい。へ、陛下に申し上げます。夜中トイレに行こうとしたところ、暗い食糧庫の隅で女が何かを食べていました」
「何を食べていたか」
「梨です。シャキシャキという音が響き、美味しそうな香りがあたりに立ち込めていました」
「お前はその後どうしたか」
「女に声をかけました。美味しそうだったので分けてくれないかと。も、申し訳ございません。意地汚いことをしてしまって……」
「よい。正直に続きを申せ」

陛下に頭を下げた後、若い調理人は話を続けた。

「はい。女はこれは毒味のために食べているんだけど、どうしても欲しいのならお前の体をよこせと」
「どういう意味か」
「その……床を共にする、という意味のようでした」

「なっ!!??」
「貞操観もない女か!」

貴族たちのざわめきが一気に高まる。若い調理人が話を続けた。

「口から梨の汁をしたたらせて薄笑いで言うその女が気持ち悪くて断りました。梨をもらえなくて悔しかったので隠れて女のことをしばらく観察していました。そうしたら」
「どうなったのだ?」
「数ケースはあろう梨をものすごい勢いでたった一人でたいらげてしまいました。タネも皮も少しも残すことなく」
「その女とは誰か」

皆、もうその答えをわかっていた。若い調理人が指差した方向にやはりメアリがいた。

「また濡れ衣を……」

と、メアリは目尻を拭いながら被害者のような傷ついた顔をしていた。

メアリが?
僕というものがありながら、他の男に懸想していたというのか!?
いや、純情なメアリに限ってそんなはずは。
あの若い男も嘘を言っているにちがいない。

周囲の視線におびえたように両手を重ね「誤解ですわ」と呟くメアリに『僕は最後まで君の味方だ』とアダムスは心の中でメアリを励ましていた。

アダムスがふと壇上を見るとエバンジェリンは一言も発することなくうつむいていた。






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