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27 子爵家ジュリアンの証言2
「ジュリアン、なぜそれを上に報告しなかったのだ」
陛下に問われジュリアンはきっと視線を上げた。
「はじめはすぐにでも報告しようと考えていました!実際に徹夜で報告書を書き上げていました。ところが次の日朝早く”メアリがエバンジェリン様の婚約者アダムスをたぶらかしている”ことをデイジーから聞き知ってしまいました。
私は恐ろしくなりました。食糧を盗み食いすることだけでも重罪なのによりによって当家が雇った従者がオースト家を裏切るという大罪を犯しているなんて。
私は当家に非が及ぶことに恐怖し上に知られないうちにとメアリをクビにしました。本当に申し訳ありませんでした」
ジュリアンはわなわなと震えながら背中を折り深々と陛下や貴族たちに頭を下げた。ジュリアンが怯えていたのも当然であった。強国ゼオマ帝国とルミナーレ王国の絆の証であるオースト家をないがしろにしたメアリの行いは国家反逆罪にも等しかった。
「自首してきたお前に非は問わない。続きを話すがいい」
陛下の言葉にジュリアンは涙目になってうなずいたあと話を続けた。
「メアリをクビにしたまさにその日ゼオマ帝国からホロー辺境伯が視察にいらっしゃいました。辺境伯のお迎えで玄関に整列していた私たちの前に差し掛かったとき辺境伯がアダムスを一瞥しました。
私は背筋が凍りつきました。大陸一の軍門であり超一流の諜報部隊を抱えるホロー辺境伯です。もしかしてアダムスとメアリの不貞を知っているのではないかと思いはじめると夜も眠れなくなりました。
それから私はあまりの恐怖に自分から飛地への移動を志願しました。私は逃げたんです。オースト家の婚約者をたぶらかすなどメアリがやらかしたことがあまりにも恐ろしくて」
確かにある日を境にジュリアンは飛地へ派遣されていた。
そうだったのか。
ジュリアンは命令で飛地に行ったとばかり思ってた。
アダムスはようやくジュリアンの事情を知り驚いていた。
あんな辺境伯なんかに怯えてジュリアン気の毒に。
男前のジュリアンは精神的に追い詰められやつれていた。アダムスは自分がやらかしたせいで友人が困っているのにジュリアンを憐れんだ。
でも待てよ?
メアリはジュリアンが飛地に移動したあとも宿舎にいたけど……
アダムスはよく覚えていた。ジュリアンがいなくなってからもアダムスはメアリと着実に愛を育んでいたのだから。
「ところがメアリはクビになっていませんでした。解雇の書類の手続きを頼んだ従者が実はメアリに体で買収されていたんです。”ずっとあなたが好きでした。ずっとあなたのそばにいたい。だから解雇の書類はなかったことにしてほしい”と猛アプローチをされたそうです。書類の手続きを怠った従者は牢に入れています。なんとも情けない限りです」
ジュリアンはこの世の終わりのような重いため息を吐いた。
「なんて穢れた女だ!」
「主人の命令を捻じ曲げるなど不届き者がっ!」
貴族たちは怒りの刃でメアリを責め立てた。
「ひどい……大勢で私を責めて……」
メアリはか弱げに涙を拭った。アダムスにはその涙も嘘に見えた。
メアリは嘘をついている。
アダムスは察した。ジュリアンは美男でモテるのにそれを鼻にかけず正直で気持ちのいい男だった。人に嘘をつくような人物ではなかった。
「こんな悪女聞いたこともないな」
ひとりの貴族が言い捨てた。
「メアリ、これでも罪を認めぬか」
「何もかも濡れ衣です!私は何の力も持たないひ弱な国民です!全てエバンジェリン様が仕組んだことです」
メアリはよりにもよってエバンジェリンを名指しし非難した。エバンジェリンはメアリの攻撃にいたたまれず手で顔を覆って伏せた。
またメアリは余計なことを!
エバンジェリンが可哀想じゃないか!!
アダムスは今やエバンジェリンの味方である。
「わかった」
陛下がぽつりと呟いた。メアリは胸に手を当て希望に満ちた目で陛下を見上げた。
「陛下、ようやくわかってくださったんですね……!純朴な民である私の無実を」
だが陛下は冷たい視線でメアリを見下し、
「最後の証人を呼べ」
と命じた。
陛下に問われジュリアンはきっと視線を上げた。
「はじめはすぐにでも報告しようと考えていました!実際に徹夜で報告書を書き上げていました。ところが次の日朝早く”メアリがエバンジェリン様の婚約者アダムスをたぶらかしている”ことをデイジーから聞き知ってしまいました。
私は恐ろしくなりました。食糧を盗み食いすることだけでも重罪なのによりによって当家が雇った従者がオースト家を裏切るという大罪を犯しているなんて。
私は当家に非が及ぶことに恐怖し上に知られないうちにとメアリをクビにしました。本当に申し訳ありませんでした」
ジュリアンはわなわなと震えながら背中を折り深々と陛下や貴族たちに頭を下げた。ジュリアンが怯えていたのも当然であった。強国ゼオマ帝国とルミナーレ王国の絆の証であるオースト家をないがしろにしたメアリの行いは国家反逆罪にも等しかった。
「自首してきたお前に非は問わない。続きを話すがいい」
陛下の言葉にジュリアンは涙目になってうなずいたあと話を続けた。
「メアリをクビにしたまさにその日ゼオマ帝国からホロー辺境伯が視察にいらっしゃいました。辺境伯のお迎えで玄関に整列していた私たちの前に差し掛かったとき辺境伯がアダムスを一瞥しました。
私は背筋が凍りつきました。大陸一の軍門であり超一流の諜報部隊を抱えるホロー辺境伯です。もしかしてアダムスとメアリの不貞を知っているのではないかと思いはじめると夜も眠れなくなりました。
それから私はあまりの恐怖に自分から飛地への移動を志願しました。私は逃げたんです。オースト家の婚約者をたぶらかすなどメアリがやらかしたことがあまりにも恐ろしくて」
確かにある日を境にジュリアンは飛地へ派遣されていた。
そうだったのか。
ジュリアンは命令で飛地に行ったとばかり思ってた。
アダムスはようやくジュリアンの事情を知り驚いていた。
あんな辺境伯なんかに怯えてジュリアン気の毒に。
男前のジュリアンは精神的に追い詰められやつれていた。アダムスは自分がやらかしたせいで友人が困っているのにジュリアンを憐れんだ。
でも待てよ?
メアリはジュリアンが飛地に移動したあとも宿舎にいたけど……
アダムスはよく覚えていた。ジュリアンがいなくなってからもアダムスはメアリと着実に愛を育んでいたのだから。
「ところがメアリはクビになっていませんでした。解雇の書類の手続きを頼んだ従者が実はメアリに体で買収されていたんです。”ずっとあなたが好きでした。ずっとあなたのそばにいたい。だから解雇の書類はなかったことにしてほしい”と猛アプローチをされたそうです。書類の手続きを怠った従者は牢に入れています。なんとも情けない限りです」
ジュリアンはこの世の終わりのような重いため息を吐いた。
「なんて穢れた女だ!」
「主人の命令を捻じ曲げるなど不届き者がっ!」
貴族たちは怒りの刃でメアリを責め立てた。
「ひどい……大勢で私を責めて……」
メアリはか弱げに涙を拭った。アダムスにはその涙も嘘に見えた。
メアリは嘘をついている。
アダムスは察した。ジュリアンは美男でモテるのにそれを鼻にかけず正直で気持ちのいい男だった。人に嘘をつくような人物ではなかった。
「こんな悪女聞いたこともないな」
ひとりの貴族が言い捨てた。
「メアリ、これでも罪を認めぬか」
「何もかも濡れ衣です!私は何の力も持たないひ弱な国民です!全てエバンジェリン様が仕組んだことです」
メアリはよりにもよってエバンジェリンを名指しし非難した。エバンジェリンはメアリの攻撃にいたたまれず手で顔を覆って伏せた。
またメアリは余計なことを!
エバンジェリンが可哀想じゃないか!!
アダムスは今やエバンジェリンの味方である。
「わかった」
陛下がぽつりと呟いた。メアリは胸に手を当て希望に満ちた目で陛下を見上げた。
「陛下、ようやくわかってくださったんですね……!純朴な民である私の無実を」
だが陛下は冷たい視線でメアリを見下し、
「最後の証人を呼べ」
と命じた。
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