亡命聖女─アンデッドを祓える力は内緒だけど、隣の大陸の王陛下が溺愛してくる

nanahi

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27 ユークリッド

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先先代の王だった祖父はとても厳格な人だった。

まだ年端の行かない僕にも熱心に帝王学を教えようとしていた。


「いいか、ユークリッド。相手に弱みを見せてはいけないぞ。弱音も吐いてはならん」

「お祖父様、どうして?」

「王というのは孤独なものだ。最善の決断をし、失敗しても全責任を負うのが王の使命だ。ユークリッド、孤独を受け入れる覚悟をせよ」

「はい、お祖父様」

僕の素直な返事に祖父は満足げにうなずいた後、この国に残る伝説の話をしてくれた。


「今から1000年以上昔、この大陸にアンデッドの王がいたという伝説がある」

「アンデッド?」

「そう、動き回る死人たちだ」

「怖い…!」

「そのアンデッド王を倒し、我がルクセン王国の礎となるルル王国を建てたのがわしらの祖先だ。お前は祖先の勇敢な血を継いでおる。誇りを持て」


僕の幼心にはアンデッド伝説の話の方が色濃く残った。話を聞いた晩は心の中がいつまでもざわざわして、夜明けまで眠れなかったのを覚えている。

そんな祖父も僕が7歳の時に亡くなった。

祖父は臣下を厳しく統制していたので、祖父の前ではみな従順だった。だが、亡くなった祖父に代わり温厚な父が王位を継ぐと、とたんに臣下たちは本性を現した。自分たちの利益を優先するため、特権を利用し、王に隠れてあれこれと画策を始めた。

家臣たちの豹変ぶりは、子どもの僕にも醜く写った。


「あの者たちの変わりようには驚くばかりだな」


僕が独りごちると、幼馴染のようにいつもそばにいてくれた13歳のレオが「僕は変わりませんから、どうか安心してください」と大人びたことを言って僕を励ました。

僕は父が臣下たちに軽視されているのが悔しくて、少しでも父の役に立ちたいと思って勉学に励んだ。

ようやく政治のことが少しわかるようになってきた頃、不幸な事故で両親が一度にこの世を去った。この先、まだ未熟な自分が国の舵取りをしていかねばならないことが怖く、不安だった。

本当は、寂しかったし、つらかった。

それでも祖父の言いつけ通り、弱音を吐かなかった。腹心のレオにさえ。

独り自室で泣いた後はもう、決して皆の前で涙を流さなかった。


それでも寂しさを我慢しきれなくなった時は、レオを連れ、狩場の森へ出かけた。ただ森の中を歩いたり、眺めたりするだけで僕はいくぶん慰められた。

そんな傷心にひたれる唯一の時間を過ごしていた時、君に出会った。

倒れている君は儚げで、同時に世界から隔絶されているようでもあった。


助けなければ…!


僕は無性に使命感に駆られた。抱き上げた君は見た目よりも軽く、傷ついた小鳥のようだった。


守りたい。


なぜだろう。素性も知らないこの少女に惹かれるのは。


この子の目に孤独が漂っているからなのか。
この子なら、僕の寂しさや辛さを理解してくれるのではないかと感じるからなのか。

きっとそのうちわかる。いや、すでに感じている。


ローザリア、僕たちが出会ったのはきっと運命なんだ。


ずっとずっと、僕のそばにいてほしい。




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