フッてくれてありがとう

nanahi

文字の大きさ
13 / 49

13 西くん 沙耶視点

しおりを挟む
私が最近見つけた居心地のいいフレンチ居酒屋で一人で食事をしていると、西くんに声をかけられた。

「あ!沙耶さんじゃないっすか!偶然っすね!」

まるで部活帰りの先輩に声をかけるような気軽さだった。
元同僚で一瞬気まずかったけど、陽キャの西くんの満面の笑みで私の心はゆるんだ。


優斗のことが憂うつで一人で気晴らしに来たんだけど、いっか。


「もしお邪魔じゃなかったら、ここいいですか?」

私がうなずくと、西くんは椅子を引いて私の前に座った。
西くんは妙に礼儀正しいところがあって、ヤンチャに見えるけど育ちの良さを感じさせて、好感が持てた。

「なんか元気ないっすね。こういう時はこれを頼む!」

そう言って西くんは店員に料理を注文し始めた。

「うわあ!」

あっという間に二人席のテーブルの上が料理で埋め尽くされた。
やってきた料理に私は目を丸くした。


牛肉のワイン煮 大盛り
生ハムと数種のハム 大盛り
国産鶏のハーブ焼き 大盛り
チキンの香味フライ 大盛り
イベリコ豚のテリーヌ 大盛り


「まさか全部……肉料理??」
「そう、俺の定番っす」

西くんは嬉々として取り皿に肉たちを上手に盛り付け、私に渡してくれた。

「ありがとう」
「俺、ご馳走するんで遠慮なく」
「え、いいの?」

西くんは肉を頬張ったまま、うんうん、と子供のようにうなずいた。
私はくすくすと笑って、お肉を一緒に食べ始めた。


さっきまで落ち込んでたのに、なんだか気持ちがほころんだ。
西くんのおかげかな。

西くんは最初「元気ないっすね」と声をかけてきたけど、あれこれ詮索せず、場を和ませてくれた。

いい人だな。

人間不信に陥りそうになっていた私に、西くんは陽だまりのようなあたたかさを私にくれた。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

今さらやり直しは出来ません

mock
恋愛
3年付き合った斉藤翔平からプロポーズを受けれるかもと心弾ませた小泉彩だったが、当日仕事でどうしても行けないと断りのメールが入り意気消沈してしまう。 落胆しつつ帰る道中、送り主である彼が見知らぬ女性と歩く姿を目撃し、いてもたってもいられず後を追うと二人はさっきまで自身が待っていたホテルへと入っていく。 そんなある日、夢に出てきた高木健人との再会を果たした彩の運命は少しずつ変わっていき……

忖度令嬢、忖度やめて最強になる

ハートリオ
恋愛
エクアは13才の伯爵令嬢。 5才年上の婚約者アーテル侯爵令息とは上手くいっていない。 週末のお茶会を頑張ろうとは思うもののアーテルの態度はいつも上の空。 そんなある週末、エクアは自分が裏切られていることを知り―― 忖度ばかりして来たエクアは忖度をやめ、思いをぶちまける。 そんなエクアをキラキラした瞳で見る人がいた。 中世風異世界でのお話です。 2話ずつ投稿していきたいですが途切れたらネット環境まごついていると思ってください。

もう、今更です

ねむたん
恋愛
伯爵令嬢セリーヌ・ド・リヴィエールは、公爵家長男アラン・ド・モントレイユと婚約していたが、成長するにつれて彼の態度は冷たくなり、次第に孤独を感じるようになる。学園生活ではアランが王子フェリクスに付き従い、王子の「真実の愛」とされるリリア・エヴァレットを囲む騒動が広がり、セリーヌはさらに心を痛める。 やがて、リヴィエール伯爵家はアランの態度に業を煮やし、婚約解消を申し出る。

お飾りな妻は何を思う

湖月もか
恋愛
リーリアには二歳歳上の婚約者がいる。 彼は突然父が連れてきた少年で、幼い頃から美しい人だったが歳を重ねるにつれてより美しさが際立つ顔つきに。 次第に婚約者へ惹かれていくリーリア。しかし彼にとっては世間体のための結婚だった。 そんなお飾り妻リーリアとその夫の話。

【12話完結】私はイジメられた側ですが。国のため、貴方のために王妃修行に努めていたら、婚約破棄を告げられ、友人に裏切られました。

西東友一
恋愛
国のため、貴方のため。 私は厳しい王妃修行に努めてまいりました。 それなのに第一王子である貴方が開いた舞踏会で、「この俺、次期国王である第一王子エドワード・ヴィクトールは伯爵令嬢のメリー・アナラシアと婚約破棄する」 と宣言されるなんて・・・

手放してみたら、けっこう平気でした。

朝山みどり
恋愛
エリザ・シスレーは伯爵家の後継として、勉強、父の手伝いと努力していた。父の親戚の婚約者との仲も良好で、結婚する日を楽しみしていた。 そんなある日、父が急死してしまう。エリザは学院をやめて、領主の仕事に専念した。 だが、領主として努力するエリザを家族は理解してくれない。彼女は家族のなかで孤立していく。

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

裏切りの先にあるもの

マツユキ
恋愛
侯爵令嬢のセシルには幼い頃に王家が決めた婚約者がいた。 結婚式の日取りも決まり数か月後の挙式を楽しみにしていたセシル。ある日姉の部屋を訪ねると婚約者であるはずの人が姉と口づけをかわしている所に遭遇する。傷つくセシルだったが新たな出会いがセシルを幸せへと導いていく。

処理中です...