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nanahi

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17 警察 沙耶視点

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私は数日後、警察署を訪れていた。

緊張してきた。
警察署の手前で息を吸う。

「大丈夫。話すだけでも前に進めるから」

一条専務が隣で励ましてくれた。

昨日、一条専務に優斗と奥さんのことを相談してみたところ、

「そろそろ警察に相談したほうがいい。僕も一緒に行ってあげるから」

と言うので、思い切って来てみたのだ。
私は息を整えると、専務にそっと背中を押され、警察署に足を踏み入れた。




生活安全課の応接室の椅子に腰を下ろすと、女性警察官が現れた。
女性警察官は私の話にうなずきながら、メモをとり始めた。

「引越し先を教えてもいないのに、元カレが私の最寄駅で待ち伏せしてました。その後、タクシーで逃げたんですけど、自宅マンションにも現れて、手をつかまれて壁に押しつけられました」

私はセーターの袖口を少しめくり、隠していた手首のあざを女性警察官に見せた。

「それは大変でしたね」

女性警察官は同情するように眉をひそめた。

「今日の予定を誰にも言っていないのに、居酒屋に元彼の奥さんが現れて、私を一方的に非難しはじめて……怖いし、もううんざりなんです」
「事情はわかりました。まずは”警告”という形で本人に接触します。これで多くのケースは沈静化します。ただ逆恨みの可能性もあるので、しばらくは注意してください。必要なら避難先の確保も考えましょう」

私は女性警察官の凛々しくも優しい表情にほっとした。

思い切って相談にきてよかった。
専務の言葉は本当だった。

警察が私の悩みを知ってくれている。
このことだけでも勇気になった。

「今日は自宅まで送るよ」

専務は私を車で送迎してくれた。
私は車内から微笑みながら手を振る専務に会釈したあと、玄関に入っていった。

本当にスマートな人だな。
専務がいてくれてよかった。


そういえば。


居酒屋事件で優斗と奥さんが帰った後、西くんも声をかけてくれたんだった。

「あれはヤバいレベルなんで警察行きましょう。俺も一緒に行くんで」

嬉しかったけど、その時は私も動揺してすぐに返答ができなかった。
自宅でしばらく考えた後、やっぱり怖くなって、専務に連絡をとったのだ。

西くんの連絡先は知らないから……
今度、西くんに会うことがあったら、警察に相談したことを伝えよう。

私はもう事件が解決したかのような錯覚を、この時おぼえていた。




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