フッてくれてありがとう

23 着信 沙耶視点

まさか、おばあ様と優斗の奥さんが知り合いだったなんて。

ビュッフェで奥さんが現れた時、びっくりして近くの席の男性にお皿ぶつけそうになちゃった。

余計な心配をかけたくなかったから、おばあ様には警察に相談してることは言えなかった。

奥さんがお金がどうとか言ってたな。
嫌だな。
また優斗からお金の話をされるのかな。
もう会いたくないのに。

警察に警告してもらったのに、あの奥さん平気なのかな。
警告されたら普通、近づいてこないよね。

幸い警察に相談して以来、優斗からの連絡はない。
優斗には警告がきいてるみたい。
よかった。




祝賀パーティで知り合いになった会長から会食に招かれた。
こちらの希望を聞いてもらって、社外の料亭でご馳走になった。

びっくりしたのは、西くんが会長の同伴をしていたこと。
西くんは会長のひ孫なんだって。

苗字が違うから、周囲の人は誰も知らないみたい。
会長と親族だってことは、あえて言ってないんだって。

自分は実力をつけたいから、ひいき目で見られたくないらしい。
えらいよね。

しかも、２８人いるひ孫たちが会社の後継者争いをしているらしい。
その中でも、西くんは特に会長に可愛がられてるみたい。
会長を見てるとわかる。

「まだまだ未熟者だから、みんなにビシビシしごいてもらわないとな」

と言いながら西くんを見る目が本当に慈愛がこもっている。

すごいな、西くん。
会長に期待されてるんだ。

ちょうどいい機会だったから、西くんに警察に相談したこと、報告しておいた。

「心配してたから、よかった」って西くんは言ってくれた。
「大した力になれないけど、もし役に立つことがあったら」と言って、連絡先を教えてくれた。

ありがとう、西くん。
面倒なことに普通関わりたくないだろうに。



あ、メッセージの着信音。
西くんかな？
それとも専務？


…………



いや！！！


優斗からだ！！！！
なんで！？？？


警告してもらったのに。
何で連絡してくるの？？
捕まってもいいの？？


もしかして──


”ただ逆恨みの可能性もあるので、しばらくは注意してください。”


女性警察官が言ってた言葉。

逆恨みだったらどうしよう……
自暴自棄になって私に接触しようとしてきてたらどうしよう……


震えてきた。


優斗も奥さんも常識が通じない人種なのかもしれない。

もういや……
思い切って、拒否しよう……