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24 着信 優斗視点
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おかしいな。
沙耶から返信がない。
蘭のことがあったから、警戒されてるか……
電話もしてみたが、すぐに留守電に切り替わった。
あいつは今売れっ子だから、忙しいんだろう。
マネージャー付けた方がいいんじゃないのか?
なんなら、俺がなってやってもいい。
誤解が解けたら提案してみよう。
沙耶ならきっとわかってくれるはずだし、惚れた男からそう言われれば喜ぶだろう。
おい、蘭!
お前、少しは働いたらどうだ?
聖斗?
保育園に預ければいいだろう!?
……ひどい?
俺が??
なんでだよ!!!
こんなに一生懸命働いてんのに、お前が金銭感覚狂ってるせいで、借金だらけなんだぞ!?
責任取れよ!!
……こんな時間にどこ行くんだよ!
おい待てよ!!!
あークソっ!
あの身勝手女、聖斗置いてどっかに行きやがった。
クソっ。
赤ん坊の面倒なんてごめんなんだよ。
もううんざりだ……
ガシャアン!!!
ぎゃ!!
何の音だ??
台所のほうか?
聖斗!!
どうしたんだよ、そんなに泣いて!?
あああ!!!
頭から血が出てる!!!
割れてそのままにしていた焼酎の瓶が頭に当たったのか……!?
そういえば聖斗は歩けるようになってたんだっけ??
いたずらで触ってしまったんだな。
まじか。
こんなに血だまりができてる……
タオルで押さえているのに血が止まらない!
どうしたらいいんだ!??
バンソウコウは!?
沙耶が昔、準備してくれた救急箱どこだっけ!??
聖斗……
そんなに俺にしがみついてきて。
お願いだから泣かないでくれよ……
また警察に通報されたらやばいんだよ……
そうだ。
救急だったら病院あいてるはずだ。
医者ならなんとかしてくれる!!
俺は泣き続ける聖斗を抱きしめて、タクシーに乗った。
俺が心臓がつぶれそうな思いで救急の待合室で待っていると、女医が俺の前にやってきた。
「お父さん、出血が多くてびっくりしたかもしれませんが、幸い縫うほどの傷ではありませんでしたので、皮膚接合用テープで処置しています。次回の予約をとってまた聖斗くんを連れてきてくださいね」
女医が女神に思えた。
「本当にありがとうございました……!」
俺は深々と頭を下げた。
俺ははやる気持ちで診察室のベッドに寝かされている聖斗のもとへ行った。
頭に包帯を巻かれた聖斗の姿は痛々しくて胸が苦しかったが、落ち着いたのかスヤスヤと寝息をたてて天使のように眠っていた。
よかった──
聖斗の小さな手をそっと握ると、聖斗はぎゅっと俺の指を握りしめた。
俺の目に涙がにじんできた。
ガキなんてかわいくないって思ってたのに。
泣いて俺にしがみついてきて。
痛かったよな。
怖かったよな。
お前、まだ生まれて一年数ヶ月なんだもんな。
ごめん、今まで。
ろくに面倒も見ずに本当にごめん。
俺は周りに気づかれないように涙を必死にぬぐった。
「あ、そうだお父さん」
聖斗を抱き上げ、帰ろうとしていた俺に看護師が声をかけてきた。
「今日は保険証と医療証お持ちでなかったので全額支払いになってますが、両方お持ちになれば返金されるので、次回忘れずに持ってきてください」
「わかりました」
看護師さんも夜なのに疲れ様だな。
あなたたちのおかげで助かりました。
俺は看護師にも感謝した。
迅速に処置してくれて輸血なんかにならずによかったと心底思った。
帰宅した俺は聖斗をベビーベッドに寝かせた後、保険証とこども医療証を探し始めた。
えっと、この前この引き出しに子供関係の書類まとめたんだっけ。
あった!
保険証とこども医療証。
ついでに母子手帳も一緒に持っておこう。
そうだ。
そういえば、俺、聖斗の血液型知らないんだった。
「血液型、血液型……どっかに書いてるのかな」
万が一この先、聖斗に輸血が必要になった時、俺が血をあげられるかどうか、知っておかないと。
あれこれ考えながら母子手帳のページをめくっていると、一枚のメモ用紙がひらりと落ちた。
「……ああこれか。聖斗の血液型は…………A型か」
蘭のやつ、聖斗の血液型くらい知らせろよ。
よし、A型ね。
……ん?
理系の俺は、その血液型に違和感を抱いた。
ちょっと待て。
俺も蘭もB型だから……
B型同士はBかOしか生まれないはずだよな。
もう一度、メモ用紙に目を落とす。
A型──……
え???
え?????
俺はベビーベッドの聖斗を思わず見た。
嘘だろ。
嘘だろ。
神さま、嘘だと言って。
まさか、聖斗は──────
さっきまで天使のように思えていた聖斗を俺は得体の知れない怪物のように感じ始めていた。
沙耶から返信がない。
蘭のことがあったから、警戒されてるか……
電話もしてみたが、すぐに留守電に切り替わった。
あいつは今売れっ子だから、忙しいんだろう。
マネージャー付けた方がいいんじゃないのか?
なんなら、俺がなってやってもいい。
誤解が解けたら提案してみよう。
沙耶ならきっとわかってくれるはずだし、惚れた男からそう言われれば喜ぶだろう。
おい、蘭!
お前、少しは働いたらどうだ?
聖斗?
保育園に預ければいいだろう!?
……ひどい?
俺が??
なんでだよ!!!
こんなに一生懸命働いてんのに、お前が金銭感覚狂ってるせいで、借金だらけなんだぞ!?
責任取れよ!!
……こんな時間にどこ行くんだよ!
おい待てよ!!!
あークソっ!
あの身勝手女、聖斗置いてどっかに行きやがった。
クソっ。
赤ん坊の面倒なんてごめんなんだよ。
もううんざりだ……
ガシャアン!!!
ぎゃ!!
何の音だ??
台所のほうか?
聖斗!!
どうしたんだよ、そんなに泣いて!?
あああ!!!
頭から血が出てる!!!
割れてそのままにしていた焼酎の瓶が頭に当たったのか……!?
そういえば聖斗は歩けるようになってたんだっけ??
いたずらで触ってしまったんだな。
まじか。
こんなに血だまりができてる……
タオルで押さえているのに血が止まらない!
どうしたらいいんだ!??
バンソウコウは!?
沙耶が昔、準備してくれた救急箱どこだっけ!??
聖斗……
そんなに俺にしがみついてきて。
お願いだから泣かないでくれよ……
また警察に通報されたらやばいんだよ……
そうだ。
救急だったら病院あいてるはずだ。
医者ならなんとかしてくれる!!
俺は泣き続ける聖斗を抱きしめて、タクシーに乗った。
俺が心臓がつぶれそうな思いで救急の待合室で待っていると、女医が俺の前にやってきた。
「お父さん、出血が多くてびっくりしたかもしれませんが、幸い縫うほどの傷ではありませんでしたので、皮膚接合用テープで処置しています。次回の予約をとってまた聖斗くんを連れてきてくださいね」
女医が女神に思えた。
「本当にありがとうございました……!」
俺は深々と頭を下げた。
俺ははやる気持ちで診察室のベッドに寝かされている聖斗のもとへ行った。
頭に包帯を巻かれた聖斗の姿は痛々しくて胸が苦しかったが、落ち着いたのかスヤスヤと寝息をたてて天使のように眠っていた。
よかった──
聖斗の小さな手をそっと握ると、聖斗はぎゅっと俺の指を握りしめた。
俺の目に涙がにじんできた。
ガキなんてかわいくないって思ってたのに。
泣いて俺にしがみついてきて。
痛かったよな。
怖かったよな。
お前、まだ生まれて一年数ヶ月なんだもんな。
ごめん、今まで。
ろくに面倒も見ずに本当にごめん。
俺は周りに気づかれないように涙を必死にぬぐった。
「あ、そうだお父さん」
聖斗を抱き上げ、帰ろうとしていた俺に看護師が声をかけてきた。
「今日は保険証と医療証お持ちでなかったので全額支払いになってますが、両方お持ちになれば返金されるので、次回忘れずに持ってきてください」
「わかりました」
看護師さんも夜なのに疲れ様だな。
あなたたちのおかげで助かりました。
俺は看護師にも感謝した。
迅速に処置してくれて輸血なんかにならずによかったと心底思った。
帰宅した俺は聖斗をベビーベッドに寝かせた後、保険証とこども医療証を探し始めた。
えっと、この前この引き出しに子供関係の書類まとめたんだっけ。
あった!
保険証とこども医療証。
ついでに母子手帳も一緒に持っておこう。
そうだ。
そういえば、俺、聖斗の血液型知らないんだった。
「血液型、血液型……どっかに書いてるのかな」
万が一この先、聖斗に輸血が必要になった時、俺が血をあげられるかどうか、知っておかないと。
あれこれ考えながら母子手帳のページをめくっていると、一枚のメモ用紙がひらりと落ちた。
「……ああこれか。聖斗の血液型は…………A型か」
蘭のやつ、聖斗の血液型くらい知らせろよ。
よし、A型ね。
……ん?
理系の俺は、その血液型に違和感を抱いた。
ちょっと待て。
俺も蘭もB型だから……
B型同士はBかOしか生まれないはずだよな。
もう一度、メモ用紙に目を落とす。
A型──……
え???
え?????
俺はベビーベッドの聖斗を思わず見た。
嘘だろ。
嘘だろ。
神さま、嘘だと言って。
まさか、聖斗は──────
さっきまで天使のように思えていた聖斗を俺は得体の知れない怪物のように感じ始めていた。
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