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nanahi

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30 疑念 蘭視点

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優斗から親に会わせろって言われた。

困ったな。
しなびたママしかいないけど、何とかごまかさないと。

ママとはめっきり連絡取ってない。
孫が生まれたことも言ってない。
ママ、子供嫌いだから。

嫌だったけど、仕方ないからママに口裏合わせをして、カフェに連れてきた。
服だけはオシャレさせたから、何とかなると思う。

「あんたが蘭の旦那?」

開口一番、ママが優斗に言った。
ここは禁煙なのにタバコを吸おうとし始めたから、慌ててママからタバコを取り上げた。

優斗はちょっと目を丸くしていた。

「ああ、うちのママ、外国暮らしが長いからフランクになっちゃってて。ね?ママ」
「ふん」

優斗は怪訝な顔で私たちを見た。

(ちょっと、ママ!資産家ってことになってるんだから、上品にしてよ!)
(わかったわよ。めんどくさ)

ママは面倒くさそうに、優斗に向き直った。

「で?話って?」

優斗は言いづらそうに話を切り出した。

「お会いしてこんなこと頼むの心苦しいんですが、僕たちを支援してほしいんです」

ママは途端に笑い出した。
優斗がびっくりした顔でこっちを見ている。

「あのね、優斗。ママ、OKの時はいつも笑うの」
「え?じゃあ」

その時、ママが「あ!」と言って急に立ち上がって、カフェを出ていった。

「ちょっと!」

私が追いかけると、ママはカフェの前を通りかかった天岸さんに声をかけていた。

「天岸さんじゃない!?ご無沙汰ねえ!」
「あら、もしかして。和田島の奥様?」

天岸さんは追いかけてきた私を見て、ママを思い出したようだった。

「いいところにいてくれたわあ。娘にお金を融通してくれたらしいわね。そこで相談だけど、私にも少しでいいから──」

私はママがこの先言おうとしていたことを察して、慌ててママの口を塞いだ。

呆気に取られている天岸さんに「今日はこれで失礼します」と言いながら、ママを天岸さんから離した。
向こうにいた優斗が目をまんまるにしてこちらを見ていた。

「ごめん、優斗。今日、ママ調子悪いみたいなの。預けてる聖斗拾って、ママ送り届けてくる」

私は戸惑った顔の優斗に謝り、ママを無理やりアパートに連れ帰った。




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