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9 巻き戻り
サリーが屋敷に到着し、馬車から降りると、玄関に借金取りが押し寄せていた。
「あ!娘が帰ったぞ!」
「おい、おやじはどうした!?」
まずいわ!
慌てて背中を向けたサリーを借金取りたちが素早く取り囲んだ。
「もうこれ以上待てないんだよ」
「借金返すの、あんたでもいいんだぜ。娼館で働いたらどうだい?結構給料いいらしいぞ」
「あ、俺、店紹介しようか?」
このままじゃ、本当に娼館に売り飛ばされる……!
ケリーは男たちの隙をついて脱兎のごとく逃げ出した。
「おい待てコラ!!」
「逃さねーぞ!!」
「お嬢様になにする!」
追いかけようとする借金取りたちを男爵家の下男が押し留めた。サリーは塀の陰に隠れ、息を殺した。
どうして私ばっかりこんな目にあうの!?
どうして私はお金持ちに生まれなかったの!?
サリーの目に悔し涙が滲んだ。
あいつのせいだ。
もう少しで王子妃になれるところだったのに私からエイドリアン殿下を奪った!
あいつのせいだ。
みんな私の味方だったのにもう今は誰ひとり味方してくれない。
どれもこれも全てあいつが悪いんだ。
ミレナ、あんたを許さない──
燃えるような憎悪の炎がサリーを飲み込んだ。身勝手な責任転嫁の末、サリーはミレナを貶めるため、あることを決行することにした。
舞踏会の夜が来た。
狩場での王太子暗殺事件の犯人は取り調べ中に舌を噛んで自害したため黒幕はまだわかっていなかった。厳重な警備の元、王太子のヴィクトールも弟エイドリアンとともに舞踏会に出席していた。
サリーは来るかしら……。
会場に降り立ったミレナはジュエリー店でのケリーの様子が気がかりでいた。
「ごきげんよう」
会場を見回していたミレナに横から声をかけてきたのは真珠のネックレスを付け毒のように赤いドレス姿のサリーだった。豪奢なミッドナイトブルーの夜会ドレスを纏ったミレナは行き交う貴族たちがつい立ち止まるほど高貴な美しさを放っていた。
「さすがミレナ、美しさが違うわね」
サリーはミレナの胸元のサファイヤを一瞥し、作り笑いをした。そして、ミレナに近づき、
「実は誰にも言えない悩みがあって折り入ってあなたに相談があるの。あとで上の階段前に来てくれる?」
とそっと耳打ちした。
「ミレナ!」
ヴィクトールやとエイドリアンがミレナを見つけて、近づいて来た。
「じゃあ、あとでお願いね」
「あっ」
ミレナが呼び止めようとしたが、サリーはエイドリアンたちと話すことなく、その場を離れて行った。
ダンスが一息つき、歓談の声で会場が満たされた頃、ミレナは人の輪を抜け出して二階に登った。
サリーいないわ。
どこ?
二階を見渡すも、それらしい人影はなかった。ミレナが手すりから階下を覗くと、赤いドレスのサリーがこちらに手を振っているのが見えた。
「サリー、そこにいたの?」
ミレナは何の疑問も持たないまま、下に降りようと、階段に足を踏み入れた。
ツン──
「え?」
何か細いものが足先に引っかかる感触があった。
二階の廊下奥に逃げるように走り去るサリーの下男と一瞬目が合った。
ミレナはつんのめり、足が床から離れた。
死の予感に全身が総毛立った。
体が宙に放り出されながら、階下のサリーの口がにたりと笑いを作るのが見えた。
罠──
そう気づいた瞬間、ミレナは階段上から転げ落ちた。
「誰か階段から落ちたぞ!!」
「きゃああ!!」
「ミレナ嬢だ!!」
悲鳴が響き渡る。楽しげな空気が緊迫した空気に塗り替えられた。
ミレナの耳に、わんわんと騒がしい声がこだます。
冷たい──
階段下に倒れたままのミレナの頬に、大理石の冷たさがじんと伝わった。
寒い──
会場を混乱したように行き交うたくさんの足元がぼんやりと見えている。
ヴィクトール殿下──
会いたい…………
最期にミレナの心にヴィクトール殿下の笑顔が浮かんで消えた。
ヴィクトールがグラスを投げ捨て、ミレナの元に駆けつけようとしていることをついに知ることがないまま、ミレナの視界は暗闇に落ちた。
* * * * * * *
気がついた私は暗闇の中にいた。
ピッ、ピッ……
絶えず何かの機械音が鳴っている。
何?
何これ??
いくら目を開けようとしても、真っ暗で何も見えてこなかった。
「結弦さーん、おはようございます。検温させてもらいますね」
看護婦さんの声?
まだ夜なの?
ここ、病院?
そうか、私、車にはねられたんだっけ……。
さっきまでのは夢?
舞踏会で階段から落ちた一部始終を私は事細かに覚えていた。
すみません、と言って起きあがろうとしたけど、私の喉からは何の声も出せず、体もぴくりとも動かなかった。
嘘!
どうして!?
「おはようございます」
私が青ざめた時、父の声がした。
「あっ、一ノ瀬さんおはようございます」
「お世話になっております」
「では失礼します」
お父さん、お見舞いに来てくれたんだ。
看護師が病室を出ていった後、誰かが近づいてきて私の顔を覗き込む気配がした。
お父さん?
ごめんね。
私、動けないの。
けれど、私の顔を覗き込んでいるのは父ではなかった。
「まあ、顔が包帯だらけ。可哀想」
義母の呟きに私は鳥肌がたった。
義母さん──!
慌てて扉を開く音とともに、誰かが病室に駆け込むヒールの音がした。
「義姉さまっ!なんてお姿に……!」
史華……!
私はこの二人が苦手だった。史華は義母の連れ子だ。姿は美しいが、取り繕ったような笑顔と、二人が時々送ってくる冷たい視線に私は気づいていた。
「涼くんも来てくれたのか」
父の声に私の心は高鳴った。
涼さんも来てくれたの!?
如月涼は私の許嫁だった。紳士的で優しくて年上の彼に私は恋心を抱いていた。
「会長、そろそろ次の会合のお時間です」
秘書の声がした。
「わかった。では私はもう行くが、結弦のこと頼んだよ」
「史華、しっかりね」
義母の念押しするような声がひっかかる。
「ええ。もちろんですわ」
史華が大袈裟な声音で返事をした。
扉が閉じて両親が去ったことを確認すると、史華は私のそばに寄り、まじまじと眺め始めた。
「いいきみね」
え?
ぼそりと小声で史華が囁いた。
「涼さん、私どうしたら……このまま大切な義姉さまが目を覚まさなかったら、私、私──」
史華の嘘泣きが始まった。史華は狡猾で、私のものはなんでも欲しがる癖があった。
「史華ちゃん……」
歩み寄る靴音がした。
「あっ」
「僕は君を愛してしまった。あの夜からずっと君の柔らかな白い肌が頭から離れないんだ」
ちょっ、え!
どういうこと!?
涼さんは私の許嫁のはずなのに!?
まさか。
「涼さん。私も愛してる」
すぐそばから口付けの音が私の耳に届いた。二人は私に隠れて関係を持っていた。
嫌!
やめて!
どうしてこんなことをするの!?
私が動けずに苦しんでいるのに、どうして──
しばらく二人がキスを交わしたあと、着信音が鳴った。涼さんは「取引先からだ。ごめんね」と電話をしに廊下に出て行った。
史華がまた私に顔を近づけた。
「もう目を覚まさないでいいわよ、義姉さま。一ノ瀬グループの後継も涼さんも私がいただくわ。弓道バカだけど、お父様に愛されているあんたがずっと目障りだったのよ」
──!!!
私にしか聞こえないような小声で恐ろしい言葉を義妹が言い捨てた。
嫌──!
こんな醜い世界、もう嫌!!
お願い。
誰か助けて。
助けて……!!
心で泣きながらそう強く願った時、フィルムが途切れるようにプツリと何かが終わる音がした──
「……ナ。ミレナ」
突然、ミレナの目の前が真っ白に開けた。
「どうかしたのかい?」
美しい青い双眸が目の前にあった。ヴィクトールだった。
え────
ここって!?
白木のテーブル、高い天井、甘いアップルティーの香り。ミレナは初めてヴィクトールと紅茶を飲んだ、あの日のティールームに戻っていた。
私、戻って来れたの……?
まだ呆然としているミレナをヴィクトールが心配げに覗き込んだ。
「大丈夫?急に黙るからどうしたのかと思って」
ミレナはヴィクトールの優しい眼差しにぐっと涙が込み上げてきた。
元いた世界で家族と許嫁に裏切られた絶望と、再びヴィクトールに会えた喜びとがごちゃ混ぜになった感情がとめどなく涙を誘った。
「ミレナ、一体どうしたんだい?」
テーブルにカップを置いて慟哭をはじめたミレナの横にヴィクトールが駆け寄った。
「うっ……ううう……」
涙が止まらないミレナの頭をそばに立っていたヴィクトールがそっと引き寄せた。
ミレナがヴィクトールに体を預けた。ヴィクトールはさらにミレナを包むように抱きしめたかったがそうしなかった。
彼女は弟の婚約者だ。
一線を越えてはならない。
ヴィクトールはもどかしい思いのまま、ミレナの頭に添えた手にわずかに力を込めた。
「大丈夫だよ。もう大丈夫だから」
何かよほど辛いことがあったんだろう。
ヴィクトールは泣き続けるミレナに、何も聞かずにおいてくれた。
殿下……。
そんなヴィクトールの優しさが、そばにいてくれる温もりが、深く傷ついたミレナの心をそっとなぐさめた。
「あ!娘が帰ったぞ!」
「おい、おやじはどうした!?」
まずいわ!
慌てて背中を向けたサリーを借金取りたちが素早く取り囲んだ。
「もうこれ以上待てないんだよ」
「借金返すの、あんたでもいいんだぜ。娼館で働いたらどうだい?結構給料いいらしいぞ」
「あ、俺、店紹介しようか?」
このままじゃ、本当に娼館に売り飛ばされる……!
ケリーは男たちの隙をついて脱兎のごとく逃げ出した。
「おい待てコラ!!」
「逃さねーぞ!!」
「お嬢様になにする!」
追いかけようとする借金取りたちを男爵家の下男が押し留めた。サリーは塀の陰に隠れ、息を殺した。
どうして私ばっかりこんな目にあうの!?
どうして私はお金持ちに生まれなかったの!?
サリーの目に悔し涙が滲んだ。
あいつのせいだ。
もう少しで王子妃になれるところだったのに私からエイドリアン殿下を奪った!
あいつのせいだ。
みんな私の味方だったのにもう今は誰ひとり味方してくれない。
どれもこれも全てあいつが悪いんだ。
ミレナ、あんたを許さない──
燃えるような憎悪の炎がサリーを飲み込んだ。身勝手な責任転嫁の末、サリーはミレナを貶めるため、あることを決行することにした。
舞踏会の夜が来た。
狩場での王太子暗殺事件の犯人は取り調べ中に舌を噛んで自害したため黒幕はまだわかっていなかった。厳重な警備の元、王太子のヴィクトールも弟エイドリアンとともに舞踏会に出席していた。
サリーは来るかしら……。
会場に降り立ったミレナはジュエリー店でのケリーの様子が気がかりでいた。
「ごきげんよう」
会場を見回していたミレナに横から声をかけてきたのは真珠のネックレスを付け毒のように赤いドレス姿のサリーだった。豪奢なミッドナイトブルーの夜会ドレスを纏ったミレナは行き交う貴族たちがつい立ち止まるほど高貴な美しさを放っていた。
「さすがミレナ、美しさが違うわね」
サリーはミレナの胸元のサファイヤを一瞥し、作り笑いをした。そして、ミレナに近づき、
「実は誰にも言えない悩みがあって折り入ってあなたに相談があるの。あとで上の階段前に来てくれる?」
とそっと耳打ちした。
「ミレナ!」
ヴィクトールやとエイドリアンがミレナを見つけて、近づいて来た。
「じゃあ、あとでお願いね」
「あっ」
ミレナが呼び止めようとしたが、サリーはエイドリアンたちと話すことなく、その場を離れて行った。
ダンスが一息つき、歓談の声で会場が満たされた頃、ミレナは人の輪を抜け出して二階に登った。
サリーいないわ。
どこ?
二階を見渡すも、それらしい人影はなかった。ミレナが手すりから階下を覗くと、赤いドレスのサリーがこちらに手を振っているのが見えた。
「サリー、そこにいたの?」
ミレナは何の疑問も持たないまま、下に降りようと、階段に足を踏み入れた。
ツン──
「え?」
何か細いものが足先に引っかかる感触があった。
二階の廊下奥に逃げるように走り去るサリーの下男と一瞬目が合った。
ミレナはつんのめり、足が床から離れた。
死の予感に全身が総毛立った。
体が宙に放り出されながら、階下のサリーの口がにたりと笑いを作るのが見えた。
罠──
そう気づいた瞬間、ミレナは階段上から転げ落ちた。
「誰か階段から落ちたぞ!!」
「きゃああ!!」
「ミレナ嬢だ!!」
悲鳴が響き渡る。楽しげな空気が緊迫した空気に塗り替えられた。
ミレナの耳に、わんわんと騒がしい声がこだます。
冷たい──
階段下に倒れたままのミレナの頬に、大理石の冷たさがじんと伝わった。
寒い──
会場を混乱したように行き交うたくさんの足元がぼんやりと見えている。
ヴィクトール殿下──
会いたい…………
最期にミレナの心にヴィクトール殿下の笑顔が浮かんで消えた。
ヴィクトールがグラスを投げ捨て、ミレナの元に駆けつけようとしていることをついに知ることがないまま、ミレナの視界は暗闇に落ちた。
* * * * * * *
気がついた私は暗闇の中にいた。
ピッ、ピッ……
絶えず何かの機械音が鳴っている。
何?
何これ??
いくら目を開けようとしても、真っ暗で何も見えてこなかった。
「結弦さーん、おはようございます。検温させてもらいますね」
看護婦さんの声?
まだ夜なの?
ここ、病院?
そうか、私、車にはねられたんだっけ……。
さっきまでのは夢?
舞踏会で階段から落ちた一部始終を私は事細かに覚えていた。
すみません、と言って起きあがろうとしたけど、私の喉からは何の声も出せず、体もぴくりとも動かなかった。
嘘!
どうして!?
「おはようございます」
私が青ざめた時、父の声がした。
「あっ、一ノ瀬さんおはようございます」
「お世話になっております」
「では失礼します」
お父さん、お見舞いに来てくれたんだ。
看護師が病室を出ていった後、誰かが近づいてきて私の顔を覗き込む気配がした。
お父さん?
ごめんね。
私、動けないの。
けれど、私の顔を覗き込んでいるのは父ではなかった。
「まあ、顔が包帯だらけ。可哀想」
義母の呟きに私は鳥肌がたった。
義母さん──!
慌てて扉を開く音とともに、誰かが病室に駆け込むヒールの音がした。
「義姉さまっ!なんてお姿に……!」
史華……!
私はこの二人が苦手だった。史華は義母の連れ子だ。姿は美しいが、取り繕ったような笑顔と、二人が時々送ってくる冷たい視線に私は気づいていた。
「涼くんも来てくれたのか」
父の声に私の心は高鳴った。
涼さんも来てくれたの!?
如月涼は私の許嫁だった。紳士的で優しくて年上の彼に私は恋心を抱いていた。
「会長、そろそろ次の会合のお時間です」
秘書の声がした。
「わかった。では私はもう行くが、結弦のこと頼んだよ」
「史華、しっかりね」
義母の念押しするような声がひっかかる。
「ええ。もちろんですわ」
史華が大袈裟な声音で返事をした。
扉が閉じて両親が去ったことを確認すると、史華は私のそばに寄り、まじまじと眺め始めた。
「いいきみね」
え?
ぼそりと小声で史華が囁いた。
「涼さん、私どうしたら……このまま大切な義姉さまが目を覚まさなかったら、私、私──」
史華の嘘泣きが始まった。史華は狡猾で、私のものはなんでも欲しがる癖があった。
「史華ちゃん……」
歩み寄る靴音がした。
「あっ」
「僕は君を愛してしまった。あの夜からずっと君の柔らかな白い肌が頭から離れないんだ」
ちょっ、え!
どういうこと!?
涼さんは私の許嫁のはずなのに!?
まさか。
「涼さん。私も愛してる」
すぐそばから口付けの音が私の耳に届いた。二人は私に隠れて関係を持っていた。
嫌!
やめて!
どうしてこんなことをするの!?
私が動けずに苦しんでいるのに、どうして──
しばらく二人がキスを交わしたあと、着信音が鳴った。涼さんは「取引先からだ。ごめんね」と電話をしに廊下に出て行った。
史華がまた私に顔を近づけた。
「もう目を覚まさないでいいわよ、義姉さま。一ノ瀬グループの後継も涼さんも私がいただくわ。弓道バカだけど、お父様に愛されているあんたがずっと目障りだったのよ」
──!!!
私にしか聞こえないような小声で恐ろしい言葉を義妹が言い捨てた。
嫌──!
こんな醜い世界、もう嫌!!
お願い。
誰か助けて。
助けて……!!
心で泣きながらそう強く願った時、フィルムが途切れるようにプツリと何かが終わる音がした──
「……ナ。ミレナ」
突然、ミレナの目の前が真っ白に開けた。
「どうかしたのかい?」
美しい青い双眸が目の前にあった。ヴィクトールだった。
え────
ここって!?
白木のテーブル、高い天井、甘いアップルティーの香り。ミレナは初めてヴィクトールと紅茶を飲んだ、あの日のティールームに戻っていた。
私、戻って来れたの……?
まだ呆然としているミレナをヴィクトールが心配げに覗き込んだ。
「大丈夫?急に黙るからどうしたのかと思って」
ミレナはヴィクトールの優しい眼差しにぐっと涙が込み上げてきた。
元いた世界で家族と許嫁に裏切られた絶望と、再びヴィクトールに会えた喜びとがごちゃ混ぜになった感情がとめどなく涙を誘った。
「ミレナ、一体どうしたんだい?」
テーブルにカップを置いて慟哭をはじめたミレナの横にヴィクトールが駆け寄った。
「うっ……ううう……」
涙が止まらないミレナの頭をそばに立っていたヴィクトールがそっと引き寄せた。
ミレナがヴィクトールに体を預けた。ヴィクトールはさらにミレナを包むように抱きしめたかったがそうしなかった。
彼女は弟の婚約者だ。
一線を越えてはならない。
ヴィクトールはもどかしい思いのまま、ミレナの頭に添えた手にわずかに力を込めた。
「大丈夫だよ。もう大丈夫だから」
何かよほど辛いことがあったんだろう。
ヴィクトールは泣き続けるミレナに、何も聞かずにおいてくれた。
殿下……。
そんなヴィクトールの優しさが、そばにいてくれる温もりが、深く傷ついたミレナの心をそっとなぐさめた。
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