月龍様の世界観察記

カズミ

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ある場所での出来事

あんまりキレると老けますよ?

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 ここは、とある世界にある図書館。主に認められた者しか入ることの許されない、神々ですら入るには許しが必要な絶対領域。そんな場所で…。

「一体何度言えば分かるのかしら?💢」

図書館の主、木龍デンドロンはブチギレていた。理由は単純。
「いや、面白そうな本があったから読もうと思ったんだよ。けどな? 読書スペースにセリニがいたんだからまずは喧華ふっかけるだろうよ。」
と、まるで悪びれていない火龍イグニスと
「………。」
静かに本を読み続けている月龍セリニのせいである。具体的に言えば、静かに読書をしていたら突然図書館内から大爆発が聞こえたのだ。何事だと見てみた結果、この2体が戦っていたというわけである。
「まずイグニスは自分より強いやつを見てすぐに喧華ふっかけるのをやめなさい。一体どこの蛮族よ。…ごめんなさい、蛮族に失礼だったわね。」
「おい!」
「それからセリニ、あんたは少しくらいこっちに意識を向けなさい!💢」
「……。」
「落ち着け、デンドロン。それはさすがにヤバイ。神呪は流石にヤバイ。おい、無言でカタカタ震えながら呪おうとするな!怖えよ!」
そこまで会話が進んでようやくセリニが反応した。それも、
「そんなにキレたら老けますよ。」
という煽り付きで。
「おい馬鹿、なに煽ってんだ! 今のこいつがどういう精神状態かくらい分かるだろ!」
「と、言われましても。正直デンドロンくらいの神呪は僕には効きませんし。」
と、追加で煽りを入れていく。デンドロンさんの怒りメーターはMAXだ!!!
「こんのクソガキャー!!!💢」
「はあ、俺のこと言えねえじゃねえか。デンドロンのやつ。」
と、こんな感じだが、神呪というのは普通に最上位の神すら秒で殺せるような呪いである。なお、イグニスが喰らえば腹痛でしばらくトイレの住人になる呪いである。
「待ちなさいクソガキ! 今日こそあんたの鼻っ柱へし折ってやる!!」
「僕を捕まえられてない時点で無理だよ。もう少し運動したら?」
「うるせェェェ!💢」
こんな感じだが、図書館のよくある出来事である。犬を飼っている家の前を通ったら吠えられた経験はあるだろう。ちょうどあのくらいの感覚だ。実にほのぼのとしている。
「全く。そろそろ落ち着けお前ら。」











「結局追い出されてしまいましたね。まあもう読み終わったから良いのですが。」
そうぼやきながらセレニが街を歩いている。ここは神や龍などの存在が暮らす街。名前は無いがかなり立派である。
「お、セレニ様。今日は図書館で大暴れしたそうですね。」
「向こうがいきなり喧華を吹っかけてきてそれを払ったら何故かああなっただけなんですけどね。」
彼は露店のおっちゃん風な格好だが、一応とある世界の最高神である。
「ちなみに仕事はいいんですか?」
「いやー、最近はめっきり信者が減っちまいましてねえ。結構暇なもんなんですよ。ところでセレニ様、一本食って行きませんか?」
「何を売っているのか教えてください。」
「ハハッ、やっぱ即決じゃ買わねえか。そんくらいの方が好きですぜ、俺は。ちなみに売り物は星界の土で育てられたキウイのジュースですぜ。」
「じゃあ一本買います。」
「はいよ!」

こんな風に田舎世界から出稼ぎに来る神もいる。そのくらいには大きな街(太陽系500個分)である。

「さてと、帰ってきても特に何かやることもないんですよね。」
そう言って買ってきたばかりのキウイジュースを飲むセレニ。実にうまそうだ。
「やることもしばらくはありませんし…。あ、そういえば田舎の方にサブカルチャーだけ最先端な世界があるって聞いたことがありますね。確か…。あった。それじゃあどうせ暇ですしここに行ってみますか。」
…行き先は…日本だった。
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