おいしい狩猟生活

エレメンタルマスター鈴木

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  魔道具開発を始めてからしばらく経つ。なので、それなりの種類の魔道具が開発された。

  別にそればかりに掛かっていた訳ではなく、二キロ四方を囲む防壁造りも、平行して続行していたのできちんと完成した。高さ四メートルで厚さ一メートル半あり、低めだが狭間胸壁もついているので、隠れながら弓も射てる。四つ角には屋根のついた見張り台も造った。
  防壁の外側には更に幅二メートル、深さ二メートルの堀も出来上がっている。まぁ掘は石の生産との一石二鳥だったから楽だった。

  一応は、防衛に関して一息ついた形だが、これでも大型の魔物には安心出来ないし、更に備えておくことが大事だ。
  双眼鏡に大型バリスタ、女性陣が使えるボウガンや、堀に上から投げ込む火炎瓶など、防衛に役立つ物の開発計画がいくつか立てられている。

  そこまではわかるんだが、オタトリオは大砲も作るつもりらしい……戦争でもすんの?
  いやまぁ切り札があるにこしたことはないか……うん。作っちまえ作っちまえ!

  俺も防壁造りに参加しながら、主にスライム狩りに奔走していた。最近スライム素材をよく使うんだよ。



  魔道具については……正直やり過ぎじゃねぇかなぁ?と、思う気持ちが多少ある。
  いや、便利になればそれだけ余暇を他に使えるし、この少ない人数でやりくりするには必要なんだろうが……まぁいい、とりあえずどんな物ができたか改めて確認するか。

  先ずは当初の予定通り、水質浄化魔道具とトイレ魔道具だ。

  水質浄化魔道具はパイプ型と槽型の二つになった。
  パイプ型は幾つかの樹脂を混ぜ、そこに更に魔物の灰を加えて作った。耐水性があり頑丈で、灰を混ぜた事でパイプ全体に、取り付けた魔石に付与した浄化の効果を伝わらせる事ができた。
  槽型については基本は石のしっかりした造りで、槽内部をパイプと同じ樹脂でコーティングして、浄化効果が乗るようにしている。

  ハッキリ言って、少しパイプ型を長めにするだけで、今の俺達が排出する汚水には十分対応できる。
  だが槽型は街が拡大した時に、各区間の地下に設置し、各家庭から出た汚水をそこに集め、綺麗に浄化してから海に流す下水的使い方をするために、開発だけはしておいた。
  そしてパイプ型は街のいたるところに設置し、各家庭に浄化しながら引き込む上水的な扱いをするつもりだ。
  パイプ型には水を美味しくする効果も含まれているので、街の各所に作る予定の、水魔石の噴水から出た可もなく不可もない水を、美味しくして各家庭に届けてくれるだろう。

  この話で分かっただろうが、オタトリオはここに人が移住してくる事を想定しているらしい。色々と問題もありそうなので、この事についてはその内全員で話し合う。まぁ想定しておくだけなら問題はない。

  トイレについては水洗にして、先の水質浄化魔道具を流用した。
  小型にした槽とパイプを内蔵する事で、便器それ一つで水が常に綺麗に循環し、完結されている。下水に流す必要がないし、一緒に流した汚物、ペーパーも分解・浄化してくれる。

  ただ、特に女性陣にはまだ不満があるらしく、ウォシュレットと温暖便座に温風、消臭に音が鳴る機能まで付けようと未だに研究している。ウォシュレットと温暖便座はまぁわかるが、他は必要か?消臭についても消臭剤が既にあるじゃないか。
  そう言ったら、『ギッ』と効果音の付きそうな目で睨まれた……怖すぎて震えそう!一斉に、「即臭いが消えるようにしたいの!」と言われた。左様で御座いますか。



  ここからは予定になかった魔道具群だ。先の二つがサクッと出来てしまったので、他に取り掛かるのがそれだけ早まった。
  まず名前だけザッと流していくとこの様なラインナップになる。

  洗濯機、コンロ、照明、冷凍・冷蔵庫、アイロン、ミシン、コタツ、冷房・暖房機、除湿・加湿機、空気清浄機、掃除機、精米機、ミキサー、泡立て機、撹拌機、インパクトドライバー、丸ノコ。

  ……どう思うよ?俺はこれらをみると、今いるのが異世界なのか分からなくなってくる。しかし、どれも大体は必要な物と言ってもいい。特に工具類はこれから住居を建てていくのに大いに役立つだろう。
  ただ、どの魔道具も、まだまだ改善点が多くある。
  例えば、コンロは途中の火力調節ができないため、強火、中火、弱火と三つ炉が別れており、料理中に火力を変えたければ、いちいち移動させなければならない。ミシンは速度が一定だし、冷房・暖房も温度を調節できない。洗濯機にしても、乾燥機能までは付けられていない。
  それらの改善点が、これからの課題だな。



  魔道具開発ピークは過ぎたので、次は住居造りに力を入れる。家族夫婦やカップルを優先し、希望すれば一軒家をプレゼントするつもりだ。
  この話の後、シゲ爺夫婦、安部さん夫婦、本田さん夫婦、井上君カップルと親方カップル、男性二人のカップルは一軒家を希望した。

  しかし学生達と独り身の大人達は、寮を建てて集団での生活を望んだ。
  理由としては、その方が今はまだ安心できるという事と、いきなり一人暮らしできる自信がないというものだ。なので、慣れるまでは寮で集団生活しながら、一人暮らしに必要な料理や家事を学ぶ事にしたようだ。一緒に寮に入る大人達は、料理や家事の仕方を教えてくれるそうだ。

  それと、寮内での性行為は禁止とした。集団で生活するなら風紀の問題がある。文句があるなら一軒家に住め。ただ、それ用の小さめの一軒家も幾つか用意する事にするので、そこを利用するなら何も問題はない。
  あと、まだ子をつくるつもりがないなら、避妊もしっかりするように。そのために避妊具も作ってあるんだからな。

  ちなみに俺も一軒家に住む予定だ。一人じゃないぞ?麗華さん……いや、麗華と娘達も一緒だ。
  うん。まぁそういう事だ。出会って二ヶ月近く経つしな、お互いしっかり見極めた上での決断だ。
  長女の冬華と次女の春華には、「パパ、ママ、やっとなの?」と言われてしまった。どうやら麗華は娘達に、俺を父親にする事について相談していたらしい……割りと最初の頃から。
  計画通りですか、そうですか。

  しかし、俺もこれで妻子持ちかぁ。今まで趣味で狩猟を行ってきたが、これからは家族を養うためという理由も付くのか……ん?悪くないな?

  うん。悪くないじゃないか!なんか今まで以上にやる気出てきた。パパ、頑張っちゃうぞ!!



  そんな風に気合いを入れていた時に、タクが走ってきてこう言った。


「師匠、来ました!魔物の群が、来ました!!」


  ほほう?……そうかそうか。父親になって最初の獲物共か。

  あれ?タクが怯えている……いかんな、やる気が溢れてイイ笑顔をしていたようだ。
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