ただ守りたい…〜大事な人を守るには、金と権力と腕っ節…あと諦めない心が必要です〜

ドラると

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第7章 文化祭編

第219話「師範との手合わせ」

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翌朝


木村道場


ガラガラ



春時: じいちゃん、守里を連れてきたぞ。


守里: お久しぶりです、師範!


一: 笑、師範はやめなさい。



よく晴れた日曜日、早朝から守里は、木村一の待つ、木村道場へと足を運んでいた。



一: しかし、前に会ったのはいつかの。数年会ってない気がするが。


春時: 多分、中3の時に守里がうちに来て、偶然じいちゃんと出くわした時以来じゃないか?


守里: 確かにそのぐらいかも。


一: そうかそうか。成長したな、守里。


守里: 笑、大きくなりました?


一: あぁ。体もそうじゃが、心も大きくなっておるようで、安心したわい笑


守里: え?心も…ですか?


春時: 笑、ここで話すのもなんだし、中に入ろうぜ。


一: そうじゃな。入れ。


守里: はい!



そうして守里は、一と春時に続き、一礼して道場の中に入った。



一: それで守里は、再び儂に稽古をつけて欲しいとのことしゃが。


守里: はい。どうか、僕を強くしていただけないでしょうか!


一: ふむ……儂にお前を強くすることはできんが、お前がやる強くなるための努力の、手助けはできるじゃろう。それでも良いか?


守里: お願いします!


一: 分かった。面倒を見てやるから、まずは道着に着替えて来い。春時、お前の道着が1枚余っておったじゃろう。貸してやれ。


春時: 分かった。守里、ついてきて。


守里: うん。


一: 春時!お前にも稽古をつけるから、道着を着てきなさい。


春時: はい!



2人は、一に言われた通り、道着に着替えるために、道場を出て春時の部屋へと向かう。



守里: 師範、変わらないね。


春時: 笑、まぁな。


守里: お父さんとお母さんは?


春時: ん?親父は仕事で、お袋はリビングにいると思うぞ。


守里: なら、後から挨拶に行かないと。


春時: 別に良いよ笑、そんなの。


守里: いやいや、僕も春時のお母さんに会いたいし。


春時: 笑、それなら紗耶に会って行けよ。


守里: え?紗耶ちゃんは、昨日会ったばっかりだよ。


春時: まぁ良いじゃん。ほら、ちょうど紗耶の部屋の前だし。


トントン


守里: あ、おい。


「ん、どしたの?」



襖の向こうから、少し気怠げな声が返ってくる。



春時: 起きてんじゃん笑。守里、声掛けてやりなってボソッ


守里: は、はぁ……えっと、紗耶ちゃん?


「…え?この声って…」


守里: あの、守里なんだけど…


「うぇぇえええ!!!しゅ、守里先輩!!!ちょ、ちょっと待ってください!!!!」



バタンガタンダッダッバタバタガタガタ



春時: おぉ凄い音だ。


守里: 大丈夫なの?転んだんじゃ…


春時: 笑、安心しろ。



ガラガラ



紗耶: しゅ、守里先輩!そ、その、おはようございます!


守里: おはよう、紗耶ちゃん笑。ごめんね、急に。


紗耶: い、いえ…それで、なんの御用で…


守里: 今日は、師範に稽古をつけてもらうことになってて、道場にお邪魔するから、挨拶しに来たんだ。


紗耶: そ、そうだったんですか…ギロッ(兄貴教えとけよ!)


春時: 笑(すまん。)


紗耶: あの、が、頑張ってください!!


守里: うん、頑張るよ。じゃあ、またね。


紗耶: は、はい!!



ガラガラ



紗耶: ふぅ…緊張した……って(なんでこんな短めに会話を切り上げたんだ!!!もうちょっと良い感じに会話を繋げられただろ!!紗耶!!)



と襖を閉めた後、紗耶は自室で悶えるのであった。




春時: 笑


守里: なんか、紗耶ちゃん顔赤くなかった?熱あるんじゃない?


春時: いや、多分テンション上がり過ぎてただけだから、問題なし。


守里: テンション上がり過ぎて?


春時: バスケの試合でも見てたんじゃないか?


守里: なるほど。


春時: さ、紗耶への挨拶も済ませたし、早く道着に着替えて道場に戻ろうぜ。遅くなると、じいちゃんに何言われるか分かんないからな。


守里: うん。




20分後…


ガラガラ



一: ちょっと遅かったのう。道着を着るのが久しぶり過ぎて、手間取ったか?笑


守里: 恥ずかしながら笑


春時: やっぱ帯でミスったよ。


一: そうか笑。よし、早速始める。前に並べ!


守里 春時: はい!


一: まずはウォーミングアップからじゃ。10分走るぞい。


春時: 分かった。いつも通りのヤツか?


一: あぁ。守里は春時がやるのを真似しなさい。


守里: はい!


一: 儂は後ろからついて行く。ペースが落ちたら、尻を蹴りあげるから、そのつもりで。


春時: 笑、はい!


守里: はい!



師範の蹴り、威力半端ないから喰らいたくない!




10分後…



一: 笑、良かったの~蹴られなくて。


守里: はい笑


春時: ちゃんと、ステップにもついて来れたな。


守里: 何とかね。



目の前の春時が、途中で挟んでいた様々なステップにも、すぐに反応し真似して、守里は10分間のランニングを、後ろを走る一から蹴りを入れられることなく、終わらせた。



一: 体は温まったか?まぁ、あのペースの走りで、体が温まらなかったのなら、それは病院に行くべきじゃが笑


春時: 今日は一段とキツかったぜ。全く、守里のせいだぞ!この、身体能力お化けが!


守里: 笑、春時もそんなに変わらないでしょ。


春時: 何を言ってんだか笑


一: 体が冷める前に、稽古に入るぞ。


守里 春時: はい!


一: じゃあ、春時、お前は壁際で座っとけ。


春時: え?は、はい!


一: 守里。最初はお前からじゃ。というか、今日はお前中心に稽古をつける。


守里: で、でも、春時も…


一: おそらく、春時は見取り稽古で、十分じゃろ。


春時: …まさか…


一: 守里、儂と闘え。今のお前の全力を見せてみろ。


守里: 師範と闘う?…いやいや、本当に言ってます?


一: なんじゃ、儂じゃ相手にならんとでも言うのか?笑


守里: いえ、そういうことじゃなくて……いきなり模擬戦形式だとは…


一: 焦れったいの……さっさと構えんかい!!


守里: っ!!…はい。



一の言う通りに、畳張りの道場の真ん中で、一に向かって構える守里。



一: それで良い。春時、開始の合図を。


春時: お、おう。守里、準備は良いか?


守里: …うん。


春時: では、始め!!



その合図で、一は構え、守里は集中する。



守里: ふぅ…



意識しろ。


誰かを守ることを。

大切な人を守ることを。


僕は、強くならないといけないんだ。


家族を、友達を守るために!!!




カチ




守里: …


一: ほぉ笑


春時: っ!!(凄いプレッシャー…)


守里: 行くぞ。


一: かかって来なさい。


守里: はっ!!


ダッ!!



畳を蹴り、目の前の一に向かって、真っ直ぐに拳を突き出す。



一: 中々のスピードと…これは、防御は愚策じゃな。



そう呟き、迫ってくる拳に対し、左下に体を潜らせた一は、そっと守里の右腕に右手を添え…



一: いなすべきじゃ。



完璧に守里の体を右に流す。



守里: なっ…まだまだ!


ビュンッ!!



ギリギリのところで体勢を保った守里は、左足を軸に右足を回し、一の頭を狙う。



一: 甘いわ!



その蹴りを見て、さらに一歩踏み込み、守里の太ももを手で抑える。



守里: クッ…オラッ!!



足に十分な力が伝わる前に蹴りを止められたが、その力のままに足を振り、一と距離をとった。



一: よっと……ふむ、パワーは一級品。


守里: ふぅ…ふっ!!



すぐに息を整え、再度接近。



一: また同じか?ほれ。



突進してきた守里に対し、一は蹴りの構えに入る。



守里: 舐めんな!


ダッ!!



一が構える位置の1m手前で、斜めに踏み出す。



守里: はっ!!



そして、低い位置から、一の顎目掛けて、足を突き出したが…



一: で、この後は?


タッタッ



後退することで、それを避ける。



守里: こうするんだよ!!


ドンッ!!



思いっきり畳を蹴り、回転しながら飛び上がって、一へ蹴りを繰り出す。



一: これまた凄い動きじゃの笑。まるでワイヤーアクションと言うやつじゃ。


守里: 喰らえ!


一: 素直に喰らってやらんでもないが…今は避けるぞ。



蹴りが当たる寸前で、一は真横に移動し…



一: これはどうじゃ?ほっ!



着地した守里の脇腹に向かって、縦拳を打ち出した。



守里: あっぶな!



その腕を掴み、難を逃れる守里。



一: 笑、これを掴むか。よし、一旦終わりじゃ。


守里: …おう。


春時: …


一: 春時!


春時: あ、う、うん…やめ!


守里: …どうだ…でしたか?師範。


一: そんなに無理して、敬語を使わんくて良い笑。自然体になるんじゃ。


守里: あ、ありがとう…ございます。それで…どうだった?俺の闘いは。


一: …一言で言うと、攻撃がド下手じゃな。


守里: 攻撃が下手?


一: うむ。先程も言ったように、スピードは中々、パワーは一級品。そして、反応速度も良い。


守里: …


一: じゃが……お前は、あまり良い敵に巡り会えなかったようじゃの。


守里: え?


一: これまで、それで戦ってきた相手は、全員ほぼワンパンで沈めたじゃろ?ほれ、あの漫画みたいに。


守里: ま、まぁ、確かに…


一: そのせいか、悪い癖がついとる。


守里: 悪い癖…


一: 敵の動きを見て、次の行動を決めるのが当たり前になっておるんじゃよ、お前は。


守里: …


一: これまで、敵をほぼ一撃で仕留めてきた…いや、それだけの破壊力を持っておるお前は、その反応速度もあってか、敵の動きに自分の動きを任せてしまう。


守里: なるほど…


一: 要するに、まず自分が動き、それに対する相手の動きに対して、最短かつ最強の攻撃をぶつけるって感じなんじゃ。今のお前のスタイルは。


守里: でも、それが悪い癖って言うのは…


一: 分からんか?これまでの敵のように、すぐにケリがつくのであれば問題ないかもしれんが、少し長引き、お前のその癖を悟られてみろ。敵は次のお前の動きを予測でき、下手したら操れるんじゃぞ。


守里: …じゃあ、俺はどうすれば…


一: 笑、自身の攻撃で、敵の次の動きを誘導する、ということを学びつつ、ひたすら強いヤツと手合わせすることじゃな。


守里: 分かった!稽古を頼む!


一: うむ。また模擬戦をやるから、水分補給をして来なさい。


守里: 押忍!



こうして、さらに気合いを入れた守里は、早く次の模擬戦をしようと、急いで自分のカバンの元へ走るのだった。




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