ただ守りたい…〜大事な人を守るには、金と権力と腕っ節…あと諦めない心が必要です〜

ドラると

文字の大きさ
261 / 340
第7章 文化祭編

第261話「弱点と強み」

しおりを挟む
実習校舎4階



守里: ふぅ…


黒峰: お前、さっきも聞いたが、風紀委員か?


守里: …あぁ。


黒峰: ふ~ん、やっぱりか。


守里: 腕章はつけてないが、よく分かったな。


黒峰: まぁ、偶然かもしれないが、俺の動きを嗅ぎつけてここまでやって来たんだから、普通の生徒ってよりは、風紀委員の方が可能性は高いんじゃないかな、って思って。


守里: じゃあ、逆にお前は誰だ?



睨み合いながら会話を続ける2人。


守里としては、誰かが気づいて手助けに来てくれるまでの時間稼ぎをしたくて、会話を試みているのだが、なぜ守里がそうする必要があると考えたのか。

それは…


コイツ、ヤバすぎる。

京都で会った、あの紫雲和麒と同等の雰囲気を感じる。


おそらく、今の俺では、1人でコイツに勝つことはできない。

いや、確実に無理だ。


だから、誰か助っ人を呼びたいんだが、携帯を触れるような余裕はない。

取り出した携帯に意識を向けた瞬間に倒されて、コンピュータを破壊されるだろう。


つまり、今ここで、俺がすべきことは、誰かがこの異常に気づいて来てくれるまで、この男を後ろに通さないってことだ。


だが、あの監視カメラの映像をリアルタイムで監視している灰崎君が、行動を起こしていないということは、向こうでも何か起こっている可能性が高い。

しかもコイツらの作戦通り、各所のトラブルに意識を取られて、生徒会や他の風紀委員がこっちの異常に気づくことは、ほとんどありえないか…


どれぐらいの時間、持ちこたえ続けられるだろう…


笑、違うな。

絶対に持ちこたえて、みんなを守るんだ!



守里: 何だ、答えてくれないのか?


黒峰: うん、お前が時間稼ぎをしたいのは分かった。だから、わざわざ俺がお前の作戦に乗ってやる必要はないんだが……まぁ良いだろう。教えてやるよ。


守里: へぇ…


黒峰: 俺…いや、俺らはアンチって組織だ。もうすぐ一般層にも広まると思うがな。


守里: っ!アンチ…ねぇ。



初日に来た愛理ちゃんの推測通りか。


嵐の前の静けさのよう…

この、嵐っていうのは、この能高への襲撃のこと。



守里: この襲撃は、前々から計画してたわけ?


黒峰: wwあぁ。ちょっとお前らに、俺らの仕事を邪魔されたもんでね。その仕返しだよ。


守里: …白仮面の件か。


黒峰: おぉ、そうだそうだ。白仮面だよw。あの薬ばらまいたヤツ。


守里: あれも、お前らが…


黒峰: …もしかして、初っ端に白仮面を見つけた風紀委員って、お前だったりする?w


守里: どうだろうな笑。そうかもしれないぞ。


黒峰: w、良い度胸だ。さぁ、そろそろお喋りは止めにして、やろうぜ。


守里: …来い。


黒峰: 行くぞw



瞬時に構えた黒峰は、一歩で守里の懐に入り込み、左拳を顔目掛けて伸ばす。



バシッ!


守里: …



その拳を、右に重心を寄せつつ右手で下に弾くが、弾かれたと分かった瞬間に、黒峰が腰を回転させ、右のフックを放つ。



守里: フッ!



それに対し、守里は下がることなく、少し体を左に傾けて拳を避けつつ、素早く左手を黒峰の顔目掛けて突き出す。



黒峰: おっと…



左足を下げて、一歩分後退することで、守里の拳を喰らうことなく次の動作に入ろうとした黒峰だったが…



守里: ハッ!



その動作を見た守里が、すぐに右の横蹴りを出したことで、さらに後ろに下がる羽目となった。



黒峰: まだまだ!w



再び、一気に距離を詰め、拳や蹴りを守里に向かって放ったが、全て小さな動作で弾かれるか、避けられるかして、中々その場から守里を動かすことができない。



黒峰: オラッ!


守里: フンッ!



黒峰の蹴り込みを両手で弾き、床に落とし、守里はそのまま押し込む。



黒峰: そんなんで良いのかよっ!



押し込まれて、後ろに仰け反りつつも、後退はしなかった黒峰が、守里の顔を、守る腕の隙間から狙う。



ビュンッ!



しかし、それを瞬時に察知した守里は、その拳の軌道から顔を離しつつ、押し込みから掌底に体勢を変える。



黒峰: ほぉw…



その掌底も、結局は後ろに跳んだ黒峰には避けられてしまうが、当初の目的通り、守里は黒峰を後ろに通すことはしなかった。



黒峰: …随分と見切りが上手いな。


守里: そりゃどうも。



◆◆◆◆◆◆◆


およそ1週間前


木村道場



一: よし、一時休憩じゃ。


守里 春時: はい!



稽古を中断し、2人が壁際に寄り、水分補給をし始めたところで、一が話し出す。



一: 守里。改めて、お前の弱点と強みをきちんと教えとかんとな。


守里: え、いきなりどうしたんですか?


一: いきなりと言っても、儂はこの2週間、じっくりとお前を分析しておったんじゃ。最初にお前に言ったことが正しいかどうかも含めてな。


守里: なるほど……その分析が終わったということですね。


一: まぁ、そんなところじゃ。


守里: では、お願いします。


春時: それって俺も聞いてて良いわけ?守里の弱点とか。


一: 笑、守里とお前が闘うことなんかないじゃろうから、問題ないと思うが?


守里: うん、構わないよ春時。むしろ、一緒に聞いてもらって、僕の弱点を知ってもらってた方がありがたいかも笑


春時: 了解。


一: それに、守里の力は春時相手には使えんみたいじゃからな。たとえ闘うことになっても、弱点もクソもなく守里がボコボコにされて終わりじゃ笑


春時: いやいや笑、それは分からないって。


守里: いや、師範の言う通りだよ。素の状態じゃ、僕は春時に攻撃できないし、あの武術を使った春時の攻撃は、かなり効くからさ。


一: ま、春時は武炎の扱いに関しては、まだまだじゃが笑


春時: これからだよ笑


一: さ、本題に入るぞい。


守里: はい。


一: まず、初めにお前に言った、スピードは中々で、パワーは一級品、反応速度も良いが、攻撃がド下手。この言葉は変わらん。要するに基礎能力値は高いが、攻撃の技術が拙すぎるんじゃ。


守里: 攻撃の技術ですか…


一: それは、半分お前の、最速で敵を倒したいという考え方のせいなんじゃがな。


守里: では、その考え方を改善すれば、多少は良くなるんですか?


一: まぁな。しかし、初めは中々難しいじゃろう。じゃから、フェイントや重心移動といった技術を身につけつつ、同時に意識改善を少しずつやっていくべきじゃ。


守里: 分かりました。


一: ちなみに、お前自身も分かっていることだとは思うが、攻撃がド下手なのは、お前が長い間、敵の攻撃を受け続けるだけで、攻撃を全くしなかったせいじゃ。


春時: ま、それはしょうがないな笑


守里: うん…


一: だが、その代わりにお前は、防御に関してはかなり上手い。


守里: それが、僕の強みってことですか?


一: そうじゃ。というか自分で途中で気づきそうなものじゃがの笑


守里: いや、気づかないですよ。ただ必死に、敵の攻撃を受け続けていたんですから。


一: 笑、そこじゃ。それがおかしいと思わんか?


守里: え?


一: いくら敵の攻撃が弱いと言っても、普通、数分間も複数から攻撃を受け続ければ、人は立っておられん。漫画の世界じゃあるまいし。お前のその頑強さは、別に人間離れしとるわけでもないからの。


春時: まぁ、言われてみれば確かに。


守里: ほんとだ…


一: つまり、お前は単純に攻撃を受け続けていたわけではなかったということじゃ。


春時: えーっと?


一: 敵の攻撃を見切った上で、急所に入りそうな攻撃は、急所を外して受けつつ、勢いのある攻撃は、その勢いを抑えるような形で受けていたんじゃよ。


春時: おぉ、お前、そんな高度なことを…


守里: いやいや、そんなことは別に考えてなかったけど…


一: ふむ。それこそ、長い間、敵の攻撃を受け続けた経験から、無意識的に体が動いていたんじゃろ。


春時: なら、防御においては、めちゃくちゃ強くね?


一: まぁ、防御だけに意識を向けた守里を倒し切るのは、儂でもちとキツい。


春時: だって。すげぇじゃん、守里。


守里: 笑、ありがとうございます。


一: ただ、上には上がおるからな。それに、強い相手に対して、防御だけしておれば、逆にそれを利用される可能性もあるから、あまり調子に乗らんことじゃ笑


守里: はい!


一: 肝心なのは、攻撃と防御の意識の比率。慣れてくれば、そんなこと考えんでも戦えるが、今のお前は考えるべきじゃろう。そうじゃな…防御に8割で、牽制と間合いを取るための攻撃に2割ほど、意識を回せば、自分より強い相手に対しても戦えるはずじゃ。


守里: 分かりました。頑張ります!


一: 笑、よし、稽古を再開するぞい!


守里 春時: はい!!



◆◆◆◆◆◆◆



黒峰: ww、こりゃ崩すのに、少し時間がかかりそうだ。


守里: ふぅ…



防御に8割、攻撃に2割。

牽制や間合いを取るのに、攻撃を仕掛けるだけで、あくまで今回は、敵を倒すための攻撃は使わない。


ここを守りつつ、時間を稼ぐんだ!


そう考えながら、守里は格上との戦闘に全神経を集中させるのだった。




to be continued


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

職業ガチャで外れ職引いたけど、ダンジョン主に拾われて成り上がります

チャビューヘ
ファンタジー
いいね、ブックマークで応援いつもありがとうございます! ある日突然、クラス全員が異世界に召喚された。 この世界では「職業ガチャ」で与えられた職業がすべてを決める。勇者、魔法使い、騎士――次々と強職を引き当てるクラスメイトたち。だが俺、蒼井拓海が引いたのは「情報分析官」。幼馴染の白石美咲は「清掃員」。 戦闘力ゼロ。 「お前らは足手まといだ」「誰もお荷物を抱えたくない」 親友にすら見捨てられ、パーティ編成から弾かれた俺たちは、たった二人で最低難易度ダンジョンに挑むしかなかった。案の定、モンスターに追われ、逃げ惑い――挙句、偶然遭遇したクラスメイトには囮として利用された。 「感謝するぜ、囮として」 嘲笑と共に去っていく彼ら。絶望の中、俺たちは偶然ダンジョンの最深部へ転落する。 そこで出会ったのは、銀髪の美少女ダンジョン主・リリア。 「あなたたち……私のダンジョンで働かない?」 情報分析でダンジョン構造を最適化し、清掃で魔力循環を改善する。気づけば生産効率は30%向上し、俺たちは魔王軍の特別顧問にまで成り上がっていた。 かつて俺たちを見下したクラスメイトたちは、ダンジョン攻略で消耗し、苦しんでいる。 見ろ、これが「外れ職」の本当の力だ――逆転と成り上がり、そして痛快なざまぁ劇が、今始まる。

スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗
ファンタジー
俺と相棒二人だけの冴えない冒険者パーティー。普段はスライム退治が専門だ。その冴えない日常を語る。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

『25歳独身、マイホームのクローゼットが異世界に繋がってた件』 ──†黒翼の夜叉†、異世界で伝説(レジェンド)になる!

風来坊
ファンタジー
25歳で夢のマイホームを手に入れた男・九条カケル。 185cmのモデル体型に彫刻のような顔立ち。街で振り返られるほどの美貌の持ち主――だがその正体は、重度のゲーム&コスプレオタク! ある日、自宅のクローゼットを開けた瞬間、突如現れた異世界へのゲートに吸い込まれてしまう。 そこで彼は、伝説の職業《深淵の支配者(アビスロード)》として召喚され、 チートスキル「†黒翼召喚†」や「アビスコード」、 さらにはなぜか「女子からの好感度+999」まで付与されて―― 「厨二病、発症したまま異世界転生とかマジで罰ゲームかよ!!」 オタク知識と美貌を武器に、異世界と現代を股にかけ、ハーレムと戦乱に巻き込まれながら、 †黒翼の夜叉†は“本物の伝説”になっていく!

まほカン

jukaito
ファンタジー
ごく普通の女子中学生だった結城かなみはある日両親から借金を押し付けられた黒服の男にさらわれてしまう。一億もの借金を返済するためにかなみが選ばされた道は、魔法少女となって会社で働いていくことだった。 今日もかなみは愛と正義と借金の天使、魔法少女カナミとなって悪の秘密結社と戦うのであった!新感覚マジカルアクションノベル! ※基本1話完結なのでアニメを見る感覚で読めると思います。

処理中です...