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第8章 生徒会選挙編
第295話「説得タイム」
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美月: よし、やるぞ、祐希!!
祐希: うん!!
川嶋: 絶対に無理だって。私なんかが会長になれるわけないよ…
守里から、絶賛ネガティブモード中の川嶋を説得して、立候補書類を生徒会室に提出しに行かせることを頼まれた2人は、ものすごく気合を入れて、その仕事に取り組み始めた。
美月: まぁ、まずは一旦、志帆を教室に移動させるか。
祐希: だね。こんな暗くて静かなところにいたんじゃ、気分も変わらないだろうし。
美月: 祐希、いける?
祐希: 笑、任せて。
そう笑顔で行って、祐希は川嶋の前にある机を退かし、川嶋の腕を自分の首に、自分の手を川嶋の膝裏に回して、立ち上がる。
祐希: よいしょっ!
美月: おぉ、さすが力持ち。
祐希: このまま、教室までレッツゴー!!
川嶋: 無理無理無理無理…
美月: この状態でもネガティブか……これは時間がかかりそうだけど、頑張るぞ!
祐希: おーー!!
こうして、祐希は川嶋をおんぶし、美月は書類を持って、空き教室を出て教室に戻った。
教室
ガラガラ
美月: はい、入って~
祐希: とうちゃーく!
飛香: あ、戻って来た笑
春時: 流れは聞いたけど、これはなんか面白いな笑
美月: ここに座らせて~
祐希: 了解!…よっこらしょ。
川嶋: 私には無理、私には無理、私には無理、私には無理…
祐希: ふぅ~~教室に戻すことはできたね。
美月: さぁ、本番はここからだよ。
祐希: うん!飛香、席借りるよ。
飛香: どうぞ~
美月は自分の席に、祐希は飛香の席にと、川嶋の席の前と左隣の席に座って、説得を開始した。
飛香: 澪奈の席に座ろ。
春時: どう説得するのかね。あの2人は。
前の席に座った飛香に、春時は小さめの声で話しかける。
飛香: 気合で攻めるか、理屈で攻めるか。どっちにしても、時間はかかると思う。
春時: だな。直接見てみると、今の志帆に下手な言葉が届くとは思えん笑
飛香: それこそ、美月と祐希の言葉だったら、志帆に届くんじゃないかって、守里も考えたから、2人に説得を任せたんでしょ。
春時: 笑、守里が任せた理由はそれだけじゃないと思うが、まぁ要因の一つではあるんだろうな。
飛香: あれ、春時でも分かってるんだ笑
春時: でもってなんだよ、バカにしてんだろ笑
飛香: 別に~笑
春時: 見てれば分かるよ。守里が、わざわざ志帆の説得含め、選挙の手伝いを美月と祐希の2人にさせる理由は。あと、飛香が外された理由もな笑
飛香: ふ~ん。
春時: 頼まれても断るつもりなんだろ?
飛香: うん。面倒臭いし、時間も取られるし。何より、私は向いてない。
春時: 俺はそうは思わないけどな。
飛香: …どっちにしろ、私は傍観する。
春時: なら、俺も同じくってことで。日向子はどうするかな?
飛香: 私が黙って見とくようにさせるよ。
春時: 笑、だったら問題ないか。飛香も日向子も黙って見てたら、みんなも何もしないだろ。
飛香: うん。今回の志帆の説得は、美月と祐希だけに任せるよ。
春時: おう。
飛香: ま、選挙運動には協力するけど。
春時: 俺らも志帆には、会長になって欲しいからな。
と、飛香と春時は、美月と祐希が川嶋の説得に奮闘しているのを、暖かい目で見守る。
そして、朝練から戻って来た日向子が、美月と祐希が楽しそうなことをしていると思い、近づこうとした瞬間に、飛香がそれを止め、日向子も飛香達と同じように、ニコニコと見守るようになった。
その結果、他のクラスメイトも、飛香達と同じようにし、守里や飛香の思惑通り、ネガティブモードの川嶋の説得は、美月と祐希の2人だけで行うのだった。
◇◇◇◇◇
翌日
昼休み
美月: ふ~む…
祐希: う~ん…
川嶋: …
書類の提出の締切が、今日の放課後に迫っているこの時、未だに川嶋の説得は完了しておらず、3人は、中央に書類を置き、それぞれの机に昼食を広げながら、向かい合っていた。
美月: 色々と試してみたけど、中々上手くいかないね~
祐希: うん…
川嶋: もう良いよ、2人とも。私は…
美月: その先の言葉は言わないの。まだ迷ってる表情をしてるのに。
川嶋: ……でもさ…
美月: でもじゃないの。口に出しちゃったら、心がそっちに流れちゃうでしょ。自分の中で、完全にやらないって決めたんなら、それで良いけどさ。
川嶋: …
祐希: 祐希は、志帆なら十分やれると思うけどな~
川嶋: ……そう思ってくれてるのは、すごく嬉しいんだけど……う~ん……
美月: ずっと同じやり取りになっちゃうかボソッ……チラッ
何かしらの打開策がないかと、教室にいた杉浦と璃勇、そして東野と秋吉の方を、チラッと見る。
杉浦: モグモグ……未だに難航中かボソッ
璃勇: みたいだねボソッ
杉浦: 手伝ってやりてぇけど、春時があの2人だけに任せるって言ってるからなボソッ
璃勇: うん。ま、選挙活動は精一杯手伝って良いって言われてるから、その時に手伝おボソッ
杉浦: そうだなボソッ
この2人は、春時に言われた通りに、美月の視線に気づきながらも、特に動くことなく昼食を食べ続ける。
東野: 困ってるな~
秋吉: どうする?
東野: みなみはどうしたい?
秋吉: 飛香に止められてはいるけど、みなみも志帆には会長になって欲しいから、ちょっとだけでも、説得の手伝いをしたい……かな。
東野: そっか。じゃあ、今は飛香もいないことだし、ちょっとだけ手伝おう。
秋吉: え?どうやって?
東野: 笑、あの2人、ずっとポジティブな言葉をかけて、志帆のネガティブを無理やり無くそうってしてるのね。でも、志帆のネガティブって、次元を超えちゃってるから、どう頑張っても打ち消せない。
秋吉: うん。
東野: だから、ネガティブになってる原因を潰すべきだと思うんだ。
秋吉: 当たり前のことじゃん。
東野: 多分、あの2人は守里君に頼られたことで、張り切り過ぎて、根本的なことを忘れちゃってるんだよ。
秋吉: なるほど笑……でも2人にそれができるかな?
東野: 大丈夫。あの2人は、その原因を取り除けるだけの言葉と、志帆との関係性を持ってるから。だからこその、あの2人なんだと思う。
秋吉: 確かに笑
東野: ってことで、ちょっと独り言を大声で言いたくなっちゃったな~
と、東野が声のボリュームをあげ…
東野: やっぱ、何事も原因を解決しないとだよね~~
秋吉: 笑、だよね~
この一言は、教室中に響いた。
美月: え?
祐希: ん?
川嶋: …
杉浦: おいおい笑
璃勇: あらら笑
東野: あ、ごめんなさい笑。声が大きくなってた。
秋吉: ごめんね!
美月: う、うん…
東野: 笑…パチッ
謝りながらも、東野は美月と目を合わせて、ウインクをする。
秋吉: これで上手くいくかな?ボソッ
東野: まぁ、美月次第ボソッ
そうして、東野と秋吉は2人が川嶋を説得できることを願いながら、楽しくお喋りを再開した。
祐希: びっくりしたね笑
美月: うん…(原因を解決……あ。)
川嶋: …
美月: ちょっ、祐希ボソッ
祐希: なに?ボソッ
美月: コショコショコショ
祐希: …うん…うん……なるほどボソッ
川嶋が目の前にいるのにも関わず、2人は顔を近づけて作戦会議をして…
美月: ねぇ、志帆。
その作戦を実行する。
川嶋: ……なに?
美月: なんで、会長に立候補しないんだっけ?
川嶋: ………私が会長に相応しくないから。
美月: なんで、相応しくないって思うの?
川嶋: ……私には、今の会長様みたいに、みんなを引っ張れるだけの能力も人望もないから。
美月: ……ここだね。
祐希: じゃあ、志帆が会長になるのに、足りてないって思う能力はなんなの?
2人で頷き合い、まずは祐希が話し始める。
川嶋: ……生徒をまとめる能力、話を聞く能力、自分の言葉をみんなに届ける能力、周りを見る能力、その他諸々の能力。
祐希: ……確かに、櫻宮先輩は人をまとめて導く能力が、桁外れに高いからね~~その櫻宮先輩と志帆を比べちゃうと……ね笑
川嶋: ガーン
美月: ちょっと、祐希。
祐希: え?あ、ごめんごめん。さらに落ち込ませるつもりじゃなかったんだけど…
美月: なら、なんのつもりで言ったの?
祐希: いや、普通にさ、なんで志帆が櫻宮先輩と同じぐらい、もしくは勝つぐらいの能力を持っとかないと、会長に相応しくないの?
川嶋: …
祐希: しかも、志帆が言ってるその力は会長に必要な能力じゃなくて、櫻宮先輩みたいになるのに必要な能力じゃん。
美月: おぉ、確かに。祐希、冴えてるじゃん。
祐希: 笑、祐希だって、やる時はやるんだから!
美月: で、続きは?
祐希: えっと、だから、志帆が落ち込む必要ない!そのままの志帆で勝負すべきだよ!
川嶋: …でも、その能力は、能高の生徒会長に必要な能力なわけじゃん。実際、その能力を持ってる櫻宮麗華様が生徒会長になってるんだし。
祐希: う、うぅ………美月、あと頼んだ。
美月: え~しょうがないな~笑、祐希と交代して、このまま説得を続けます!
祐希: お願いします!
バトンタッチをし、次は美月が説得にかかる。
美月: ねぇ志帆。私が体育祭の時に、生徒会の人達と一緒に仕事をしてみて思ったんだけどさ。
川嶋: …うん。
美月: 生徒会の人達って、得意分野がそれぞれにあるみたいなんだ。会長だったら、祐希が言ってるように、人をまとめて引っ張ることが得意で、副会長は人の考えを読んで、先を予測することが得意、みたいな感じで。
祐希: そうそう!お姉ちゃんは、祐希の行動を先読みしてくるの!
美月: 笑、で、つまり私が言いたいのは、生徒会っていうのは、生徒会長だけじゃなくて、他の役員も含めて、生徒会なんだと思うの。
川嶋: …そんなの当たり前じゃん。私も分かってるよ、そのぐらい。
美月: ほんとに?ちゃんと分かってるの?
川嶋: ……どういうこと?
美月: 確かに、生徒会長はみんなの前に立って話すことが多いし、役職的にも、みんなをまとめて引っ張っていく力が必要なんだと思うけど、その力っていうのは、別に会長が持ってなくても、他の役員が持ってれば良いじゃん。
祐希: なるほど…
美月: さっきも言ったように、今の生徒会も役員それぞれに得意分野があって、それで足りないところを補い合うことで、歴代最高の生徒会って言われるぐらいになってるんだよ。だから、志帆に今の会長みたいな力がなくても、他の役員がその力を補って、逆に志帆が他の役員に足りないところを補えば、問題なくない?
川嶋: …補い合う…
美月: そう。生徒会役員みんなで、生徒会。そして、その生徒会が先頭に立って、生徒と共に、より良い伊衛能高校を作っていくの!
祐希: おぉ~美月の名言だ!
美月: でしょ!笑。我ながら、カッコいい名言だ。
川嶋: …生徒会役員みんなで、生徒会。生徒と共に能高を作る…
美月: 笑、この立候補書類に書いてあることを見るとさ、志帆は今の生徒会に憧れてもいるけど、とにかくこの学校が好きなんでしょ?
川嶋: うん。
美月: だったら、憧れの生徒会、生徒会長と比べて落ち込むんじゃなくて、大好きな能高をより良いものにしたい!っていう意志を強く持って、前を向いて歩いていくべきだよ。
祐希: うんうん。志帆に足りないところは、他の役員が補うんだから、志帆は前を向いて、先に進んでいけば良いの。大好きな能高のために。
川嶋: っ!!………
美月: どう?行く気になった?
祐希: 立候補してみよう!
と、作戦の結果を聞こうとしたところで…
キンコンカンコーン
美月: あ…
祐希: 昼休み終わっちゃった…
美月: これ、マズくない?
祐希: い、いや、今日の放課後が終わるまでだから…
美月: 放課後が終わるっていつよ。
祐希: ……分かんない。
美月: か、完全下校時刻までなら大丈夫だよね?
祐希: だ、大丈夫、大丈夫。
川嶋: ……笑
昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴り、美月と祐希は焦りと不安を抱きながら、机を元に戻し、自分の席に座った。
川嶋から放たれていた、暗いプレッシャーが完全に霧散していたことに気づかないままに。
to be continued
祐希: うん!!
川嶋: 絶対に無理だって。私なんかが会長になれるわけないよ…
守里から、絶賛ネガティブモード中の川嶋を説得して、立候補書類を生徒会室に提出しに行かせることを頼まれた2人は、ものすごく気合を入れて、その仕事に取り組み始めた。
美月: まぁ、まずは一旦、志帆を教室に移動させるか。
祐希: だね。こんな暗くて静かなところにいたんじゃ、気分も変わらないだろうし。
美月: 祐希、いける?
祐希: 笑、任せて。
そう笑顔で行って、祐希は川嶋の前にある机を退かし、川嶋の腕を自分の首に、自分の手を川嶋の膝裏に回して、立ち上がる。
祐希: よいしょっ!
美月: おぉ、さすが力持ち。
祐希: このまま、教室までレッツゴー!!
川嶋: 無理無理無理無理…
美月: この状態でもネガティブか……これは時間がかかりそうだけど、頑張るぞ!
祐希: おーー!!
こうして、祐希は川嶋をおんぶし、美月は書類を持って、空き教室を出て教室に戻った。
教室
ガラガラ
美月: はい、入って~
祐希: とうちゃーく!
飛香: あ、戻って来た笑
春時: 流れは聞いたけど、これはなんか面白いな笑
美月: ここに座らせて~
祐希: 了解!…よっこらしょ。
川嶋: 私には無理、私には無理、私には無理、私には無理…
祐希: ふぅ~~教室に戻すことはできたね。
美月: さぁ、本番はここからだよ。
祐希: うん!飛香、席借りるよ。
飛香: どうぞ~
美月は自分の席に、祐希は飛香の席にと、川嶋の席の前と左隣の席に座って、説得を開始した。
飛香: 澪奈の席に座ろ。
春時: どう説得するのかね。あの2人は。
前の席に座った飛香に、春時は小さめの声で話しかける。
飛香: 気合で攻めるか、理屈で攻めるか。どっちにしても、時間はかかると思う。
春時: だな。直接見てみると、今の志帆に下手な言葉が届くとは思えん笑
飛香: それこそ、美月と祐希の言葉だったら、志帆に届くんじゃないかって、守里も考えたから、2人に説得を任せたんでしょ。
春時: 笑、守里が任せた理由はそれだけじゃないと思うが、まぁ要因の一つではあるんだろうな。
飛香: あれ、春時でも分かってるんだ笑
春時: でもってなんだよ、バカにしてんだろ笑
飛香: 別に~笑
春時: 見てれば分かるよ。守里が、わざわざ志帆の説得含め、選挙の手伝いを美月と祐希の2人にさせる理由は。あと、飛香が外された理由もな笑
飛香: ふ~ん。
春時: 頼まれても断るつもりなんだろ?
飛香: うん。面倒臭いし、時間も取られるし。何より、私は向いてない。
春時: 俺はそうは思わないけどな。
飛香: …どっちにしろ、私は傍観する。
春時: なら、俺も同じくってことで。日向子はどうするかな?
飛香: 私が黙って見とくようにさせるよ。
春時: 笑、だったら問題ないか。飛香も日向子も黙って見てたら、みんなも何もしないだろ。
飛香: うん。今回の志帆の説得は、美月と祐希だけに任せるよ。
春時: おう。
飛香: ま、選挙運動には協力するけど。
春時: 俺らも志帆には、会長になって欲しいからな。
と、飛香と春時は、美月と祐希が川嶋の説得に奮闘しているのを、暖かい目で見守る。
そして、朝練から戻って来た日向子が、美月と祐希が楽しそうなことをしていると思い、近づこうとした瞬間に、飛香がそれを止め、日向子も飛香達と同じように、ニコニコと見守るようになった。
その結果、他のクラスメイトも、飛香達と同じようにし、守里や飛香の思惑通り、ネガティブモードの川嶋の説得は、美月と祐希の2人だけで行うのだった。
◇◇◇◇◇
翌日
昼休み
美月: ふ~む…
祐希: う~ん…
川嶋: …
書類の提出の締切が、今日の放課後に迫っているこの時、未だに川嶋の説得は完了しておらず、3人は、中央に書類を置き、それぞれの机に昼食を広げながら、向かい合っていた。
美月: 色々と試してみたけど、中々上手くいかないね~
祐希: うん…
川嶋: もう良いよ、2人とも。私は…
美月: その先の言葉は言わないの。まだ迷ってる表情をしてるのに。
川嶋: ……でもさ…
美月: でもじゃないの。口に出しちゃったら、心がそっちに流れちゃうでしょ。自分の中で、完全にやらないって決めたんなら、それで良いけどさ。
川嶋: …
祐希: 祐希は、志帆なら十分やれると思うけどな~
川嶋: ……そう思ってくれてるのは、すごく嬉しいんだけど……う~ん……
美月: ずっと同じやり取りになっちゃうかボソッ……チラッ
何かしらの打開策がないかと、教室にいた杉浦と璃勇、そして東野と秋吉の方を、チラッと見る。
杉浦: モグモグ……未だに難航中かボソッ
璃勇: みたいだねボソッ
杉浦: 手伝ってやりてぇけど、春時があの2人だけに任せるって言ってるからなボソッ
璃勇: うん。ま、選挙活動は精一杯手伝って良いって言われてるから、その時に手伝おボソッ
杉浦: そうだなボソッ
この2人は、春時に言われた通りに、美月の視線に気づきながらも、特に動くことなく昼食を食べ続ける。
東野: 困ってるな~
秋吉: どうする?
東野: みなみはどうしたい?
秋吉: 飛香に止められてはいるけど、みなみも志帆には会長になって欲しいから、ちょっとだけでも、説得の手伝いをしたい……かな。
東野: そっか。じゃあ、今は飛香もいないことだし、ちょっとだけ手伝おう。
秋吉: え?どうやって?
東野: 笑、あの2人、ずっとポジティブな言葉をかけて、志帆のネガティブを無理やり無くそうってしてるのね。でも、志帆のネガティブって、次元を超えちゃってるから、どう頑張っても打ち消せない。
秋吉: うん。
東野: だから、ネガティブになってる原因を潰すべきだと思うんだ。
秋吉: 当たり前のことじゃん。
東野: 多分、あの2人は守里君に頼られたことで、張り切り過ぎて、根本的なことを忘れちゃってるんだよ。
秋吉: なるほど笑……でも2人にそれができるかな?
東野: 大丈夫。あの2人は、その原因を取り除けるだけの言葉と、志帆との関係性を持ってるから。だからこその、あの2人なんだと思う。
秋吉: 確かに笑
東野: ってことで、ちょっと独り言を大声で言いたくなっちゃったな~
と、東野が声のボリュームをあげ…
東野: やっぱ、何事も原因を解決しないとだよね~~
秋吉: 笑、だよね~
この一言は、教室中に響いた。
美月: え?
祐希: ん?
川嶋: …
杉浦: おいおい笑
璃勇: あらら笑
東野: あ、ごめんなさい笑。声が大きくなってた。
秋吉: ごめんね!
美月: う、うん…
東野: 笑…パチッ
謝りながらも、東野は美月と目を合わせて、ウインクをする。
秋吉: これで上手くいくかな?ボソッ
東野: まぁ、美月次第ボソッ
そうして、東野と秋吉は2人が川嶋を説得できることを願いながら、楽しくお喋りを再開した。
祐希: びっくりしたね笑
美月: うん…(原因を解決……あ。)
川嶋: …
美月: ちょっ、祐希ボソッ
祐希: なに?ボソッ
美月: コショコショコショ
祐希: …うん…うん……なるほどボソッ
川嶋が目の前にいるのにも関わず、2人は顔を近づけて作戦会議をして…
美月: ねぇ、志帆。
その作戦を実行する。
川嶋: ……なに?
美月: なんで、会長に立候補しないんだっけ?
川嶋: ………私が会長に相応しくないから。
美月: なんで、相応しくないって思うの?
川嶋: ……私には、今の会長様みたいに、みんなを引っ張れるだけの能力も人望もないから。
美月: ……ここだね。
祐希: じゃあ、志帆が会長になるのに、足りてないって思う能力はなんなの?
2人で頷き合い、まずは祐希が話し始める。
川嶋: ……生徒をまとめる能力、話を聞く能力、自分の言葉をみんなに届ける能力、周りを見る能力、その他諸々の能力。
祐希: ……確かに、櫻宮先輩は人をまとめて導く能力が、桁外れに高いからね~~その櫻宮先輩と志帆を比べちゃうと……ね笑
川嶋: ガーン
美月: ちょっと、祐希。
祐希: え?あ、ごめんごめん。さらに落ち込ませるつもりじゃなかったんだけど…
美月: なら、なんのつもりで言ったの?
祐希: いや、普通にさ、なんで志帆が櫻宮先輩と同じぐらい、もしくは勝つぐらいの能力を持っとかないと、会長に相応しくないの?
川嶋: …
祐希: しかも、志帆が言ってるその力は会長に必要な能力じゃなくて、櫻宮先輩みたいになるのに必要な能力じゃん。
美月: おぉ、確かに。祐希、冴えてるじゃん。
祐希: 笑、祐希だって、やる時はやるんだから!
美月: で、続きは?
祐希: えっと、だから、志帆が落ち込む必要ない!そのままの志帆で勝負すべきだよ!
川嶋: …でも、その能力は、能高の生徒会長に必要な能力なわけじゃん。実際、その能力を持ってる櫻宮麗華様が生徒会長になってるんだし。
祐希: う、うぅ………美月、あと頼んだ。
美月: え~しょうがないな~笑、祐希と交代して、このまま説得を続けます!
祐希: お願いします!
バトンタッチをし、次は美月が説得にかかる。
美月: ねぇ志帆。私が体育祭の時に、生徒会の人達と一緒に仕事をしてみて思ったんだけどさ。
川嶋: …うん。
美月: 生徒会の人達って、得意分野がそれぞれにあるみたいなんだ。会長だったら、祐希が言ってるように、人をまとめて引っ張ることが得意で、副会長は人の考えを読んで、先を予測することが得意、みたいな感じで。
祐希: そうそう!お姉ちゃんは、祐希の行動を先読みしてくるの!
美月: 笑、で、つまり私が言いたいのは、生徒会っていうのは、生徒会長だけじゃなくて、他の役員も含めて、生徒会なんだと思うの。
川嶋: …そんなの当たり前じゃん。私も分かってるよ、そのぐらい。
美月: ほんとに?ちゃんと分かってるの?
川嶋: ……どういうこと?
美月: 確かに、生徒会長はみんなの前に立って話すことが多いし、役職的にも、みんなをまとめて引っ張っていく力が必要なんだと思うけど、その力っていうのは、別に会長が持ってなくても、他の役員が持ってれば良いじゃん。
祐希: なるほど…
美月: さっきも言ったように、今の生徒会も役員それぞれに得意分野があって、それで足りないところを補い合うことで、歴代最高の生徒会って言われるぐらいになってるんだよ。だから、志帆に今の会長みたいな力がなくても、他の役員がその力を補って、逆に志帆が他の役員に足りないところを補えば、問題なくない?
川嶋: …補い合う…
美月: そう。生徒会役員みんなで、生徒会。そして、その生徒会が先頭に立って、生徒と共に、より良い伊衛能高校を作っていくの!
祐希: おぉ~美月の名言だ!
美月: でしょ!笑。我ながら、カッコいい名言だ。
川嶋: …生徒会役員みんなで、生徒会。生徒と共に能高を作る…
美月: 笑、この立候補書類に書いてあることを見るとさ、志帆は今の生徒会に憧れてもいるけど、とにかくこの学校が好きなんでしょ?
川嶋: うん。
美月: だったら、憧れの生徒会、生徒会長と比べて落ち込むんじゃなくて、大好きな能高をより良いものにしたい!っていう意志を強く持って、前を向いて歩いていくべきだよ。
祐希: うんうん。志帆に足りないところは、他の役員が補うんだから、志帆は前を向いて、先に進んでいけば良いの。大好きな能高のために。
川嶋: っ!!………
美月: どう?行く気になった?
祐希: 立候補してみよう!
と、作戦の結果を聞こうとしたところで…
キンコンカンコーン
美月: あ…
祐希: 昼休み終わっちゃった…
美月: これ、マズくない?
祐希: い、いや、今日の放課後が終わるまでだから…
美月: 放課後が終わるっていつよ。
祐希: ……分かんない。
美月: か、完全下校時刻までなら大丈夫だよね?
祐希: だ、大丈夫、大丈夫。
川嶋: ……笑
昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴り、美月と祐希は焦りと不安を抱きながら、机を元に戻し、自分の席に座った。
川嶋から放たれていた、暗いプレッシャーが完全に霧散していたことに気づかないままに。
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