ただ守りたい…〜大事な人を守るには、金と権力と腕っ節…あと諦めない心が必要です〜

ドラると

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第9章 飛香編

第310話「残念、秘密」

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櫻宮: 私は、今回、理事の指定枠に祐希ちゃんが選ばれたことに違和感を覚えてる。そして、その指定枠の基準を、なぁちゃんが知ってるんじゃないかって思ってる。


七星: ふ~ん。



放課後の空き教室で、向かい合う櫻宮と七星。

ずっと抱いていた疑問を、櫻宮は七星にぶつけた。



七星: じゃあ、なんで、祐希が指定枠に選ばれたことに、違和感を覚えるん?


櫻宮: それは……祐希ちゃんが、それに相応しいだけの能力を持ち合わせてないって思ったから。


七星: 笑、祐希のことを見くびり過ぎやな。あの子は、生徒会の仕事をやっていけるだけの能力を持っとる。普段は寝てばっかで、中々そんな一面を見せへんけど、やる時はやる子や。


櫻宮: …うん、そこは分かってるよ。役員として仕事ができるぐらいの能力は持ってる。でも、理事の指定枠に選ばれるだけの能力……同じく指定枠に選ばれた、なぁちゃんや、遡れば橘先輩と同等レベルの能力を持ってない。


七星: そんなことは……


櫻宮: なぁちゃんがそれを言って良いの?


七星: っ……


櫻宮: …とにかく、そういう理由で、私は祐希ちゃんが理事の指定枠に選ばれたことに違和感を感じたの。そして、次に、理事の指定枠がなぜ存在しているのか、を考えた。



口を閉じてしまった七星を前に、櫻宮は言葉を続ける。



櫻宮: 会議はたまにあるけど、普段は、そこまで生徒会活動に干渉してこない理事会による役員の指定枠が、なぜ存在しているのか。まぁ、単純に考えれば、生徒会にも理事会の意思を通しやすくするため。だけど、それは教師陣だけでも十分だろうし、わざわざ指定枠を作る必要もなく、会議中に生徒会に要望を出せば良いはず。理事の要望はほぼ命令に近いからね。


七星: ……


櫻宮: ということは、理事会が入れさせた役員を通して、生徒会に理事会の意思を反映させるために、理事の指定枠が存在しているのではなく、生徒会に理事会が入れさせた役員がいる、という事実自体が必要だから、か、その生徒が役員である、という状況を作りだすため、のどちらか。


七星: …


櫻宮: 前者だった場合は、理事会が教師だけではなく、生徒会の活動にも干渉していますよ、ということを表面的にも示すためだろうね。そして、後者だった場合は、その指定枠に選ばれた生徒自身に何かある可能性が高い。そして、その何かは、歴代の指定枠に選ばれた生徒にも共通してるはず。となると、今回、祐希ちゃんが指定枠に選ばれた理由にも説明が付く。ってことで、私は後者の可能性……指定枠に選ばれた生徒が役員になること自体に意味があり、指定枠に選ばれた歴代の生徒には共通の何かがある、という可能性が高いと思った。どう?



自分の考えが正しいかどうかを確認するように、七星を見る。



七星: …ふぅ…さすがやな、麗華は。


櫻宮: ってことは…


七星: その考えで合ってんで。


櫻宮: じゃあ、なぁちゃんは、なんで自分や祐希ちゃんが、指定枠に選ばれたのかを知ってるんだよね?


七星: もちろん。


櫻宮: …教えてよ。


七星: それは秘密や。


櫻宮: またそれ?


七星: そう、また、家庭の事情ということで、秘密。


櫻宮: …


七星: ごめんな。


櫻宮: ……ちぇっ、1年間も生徒会で一緒に仕事をした今なら、その家庭の事情による秘密を突破できると思ったんだけどな~笑


七星: 笑…でも、ほんとにすごいで、麗華は。


櫻宮: そりゃあ、元能高生徒会長ですから笑


七星: 笑。これで話は終わりか?


櫻宮: うん………あ、いや、もう1つあった。


七星: なんや?答えられる質問やったら、答えるで。


櫻宮: 笑、多分答えられる質問なのかな~



ニヤニヤとしながら、麗華は七星に一歩近づく。



櫻宮: なんで守里と気まずい感じになってるの?



この質問に対して、七星は一瞬だけ考えた後に、こう答えた。



七星: 残念、秘密や。



◇◇◇



風紀委員室


ガラガラ



守里 美月: 失礼します。


若月: お、帰ってきたか。



楽しく?見回りを終わらせた守里と美月は、若月に見回りの報告をするために、風紀委員室に戻ってきた。



若月: 報告を頼む。


守里: はい。公道で大騒ぎしていた生徒達に注意をした以外に、特に何もありませんでした。


若月: そうか……笑、注意だけで済ませたんだろうな?


守里: え?


美月: 笑、大丈夫ですよ。その生徒達は守里を見た瞬間に、大人しくなっちゃったので。


守里: いや、おそらく、美月の眼圧にビビったからだと思います。


若月: 笑、どっちでも良いよ。注意だけで解決したんなら。


守里: …もしかして、若月さんの今の僕の印象って、すぐに暴力を振るう感じになってます?


若月: 別にそんなことはないけど、守里は強くなったからね。念の為の確認。


美月: 安心してください、若月先輩。守里は、私が責任を持って、面倒を見てるので。姉、として。


守里: なっ……ほぼ、美月に姉の要素は感じないけどな~


美月: はぁ?正真正銘、私は守里の姉!



と、ちょっとした言い争いを目の前で始める2人を見て、若月は笑う。



若月: 笑、ほんと、面白いなお前達は。


守里: あ、すみません、若月さん。


美月: すみません。


若月: 良いよ笑。でも、1つだけ言っとかないといけないことがある。


守里: なんですか?


若月: 美月。まずは、生徒会副会長、就任おめでとう。


美月: あ、ありがとうございます。


若月: それでだ。分かってると思うが、まず、来年度、次の4月から美月は委員会に所属できない。そして、本来であれば、副会長になった時点で、今の委員会を辞めて、所属を生徒会に変える必要がある。


美月: え……


若月: つまり、今日で美月は風紀委員会を辞め、これからは、生徒会副会長の仕事のみを行っていく必要があるんだ。


美月: ってことは……今日で、守里との見回りは終わりで……これからは一緒に仕事ができない?


若月: あぁ。残念ながらな。


美月: う、嘘……



残念そうな顔の若月の言葉に、美月は絶望する。



美月: 嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ……守里と仕事をするのが、今さっきので最後だったなんて……嘘、絶対に嘘、私は信じない…信じない……



が…



守里: …そろそろ良いんじゃないですか?なんか、可哀想になってきましたし。


若月: 笑、それもそうだな。


美月: え?


若月: 嘘だよ笑



してやったりというような笑顔の若月がそう言った。



美月: で、でも…


若月: ちゃんと話を聞いてたか?私は、本来であれば、って言ったぞ。


美月: じゃあ、私は風紀委員を辞める必要はないんですか?


若月: あぁ。選挙で選ばれる会長や監査はまだしも、その2人によって突然選ばれる、他の役員が、いきなり今の委員会を辞めるとなると、仕事の引き継ぎとかが上手くいかない可能性があるからってことで、しばらくの間は、兼任が許されているんだ。


美月: ふぅ~なんだぁ~~って、そのしばらくの間とは?


若月: 笑、最長で、3月末まで。それ以降の兼任は許されてない。まぁ、そもそも、来年4月の委員会決定の時に、美月は委員会を選べないんだが。


美月: はっ!じゃあ、どちらにしろ、私が守里と一緒に見回りができるのは、3月まで……


若月: そうなるな。でも、もし美月が副会長になってなくても、来年のクラスが守里と別になったら、たとえ同じ風紀委員会に入っても、今のようにペアにはなれないから、卒業するまで守里と見回りを一緒にできる確率は、6分の1だぞ笑


美月: いや、その場合は、何がなんでも守里とペアになるんで。


若月: あっそ笑。だが、副会長になった以上、来年からは守里と一緒に見回りはできないから、3月までに悔いがないようにしておきなよ。


美月: はい!


ギュッ!



元気に返事をした美月は、思いっきり守里に抱きつく。



守里: ちょっと。


美月: 次の見回りからは、守里に抱きついた状態で、見回りをします!


守里: ダメだよ。動きにくいし。ですよね?若月さん。


若月: いや、そこかよって感じだけど、まぁ、良いんじゃない?2人なら許されるだろうし、あとは、ちゃんと仕事がこなせるかどうかの問題だから。


美月: 仕事は必ずやり遂げます!


若月: じゃあ、OK。


守里: いや、OKじゃないです!


美月: やったね!守里!


ギュー


若月: 笑、ただ、兼任の状態だと、優先すべきは副会長の仕事だから、そこは忘れないように。


美月: はい!見回りの日は仕事を入れないように、志帆に言っときます!


若月: そこは任せるよ笑。さ、話は終わりだから、帰って良いよ。


美月: 分かりました。



と言った後、守里の顔を見た美月の表情が変わる。



美月: さてと、守里。私に嘘をついた罰を与えなきゃだね。


守里: え、嘘をついたのは僕じゃなくて若月さん…


美月: って、守里は言ってますけど?


若月: そうだったかな~守里じゃなかったか?


守里: わ、若月さん!


美月: 笑、さぁ、守里、覚悟しなさい!必殺、スーパーミラクルギャラクシーパワーバインド!!!


ギューーー!!!!!


守里: いてててててて…


美月: おりゃぁぁああ!!!!


若月: 笑、仲良いな。



こんな感じで、若月が暖かく見守る中、必殺技を受けた守里は、やり返しとばかりに美月の頭を強めに締め、痛みで美月が腕を離した瞬間に、急いで風紀委員室を出て、美月もそれを追って慌ただしく出ていくのであった。




to be continued
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