338 / 340
第9章 飛香編
第338話「飛香の決心 前編」
しおりを挟む
15時50分
ギフトモール前広場
守里: …あ、飛香が来た。
飛香: ん。日向子は?
守里: まだ。
飛香: だよね笑
夕陽が沈み始め、空が赤く照らされている頃、ギフトモール前の広場にあるベンチに座っていた守里の隣に、赤のマフラーを首に巻いた飛香が座る。
守里: ……あれ、そのマフラーってさ…
飛香: 笑、気づいた?
守里: そりゃあ……一昨年のクリスマスに、プレゼント交換会で、僕がプレゼントしたやつだもん。
飛香: せっかくだから、着けてきてみた。
守里: ありがとう笑
飛香: ………で、感想は?
守里: 感想?……あぁ、めっちゃ似合ってるよ。我ながら、飛香に似合うマフラーを選べたな~って思う笑
飛香: ふ~ん//
と、飛香が少し顔を赤くしたところで、この寒い空気を暖かくするような元気な声が聞こえてくる。
日向子: おぉ~い!!!守里!!あっしゅん!!!
守里: 笑、相変わらず、日向子の到着はすぐに分かるね。
飛香: だね笑
ベンチから立ち上がり、後ろを振り返りながら、2人は笑顔で日向子を迎える。
日向子: 遅れてはないよね!!
守里: うん。16時ちょっと前でセーフ笑
日向子: いぇーい!!
飛香: 笑、よし。中に入ろう。寒いし。
日向子: うん!!
守里: 今年は、どんな装飾になってるのかな~
ギフトモールの入口に向かって、日向子と守里が並んで歩き出し、飛香もその後に続く。
飛香: ……ん?
ふと、日向子が手に着けている手袋に目が行った。
飛香: ねぇ、日向子。その手袋ってさ。
日向子: お!気づきましたか!あっしゅん!!
飛香: うん笑
守里: え、まさかのプレゼント?
日向子: そう!このピンク色の可愛い手袋は、一昨年のクリスマスに、あっしゅんから貰ったやつ!!
そうニコニコの笑顔で言って、飛香と守里の顔の前に、手袋をはめた手を突き出す。
飛香: よく覚えてたね笑。私がプレゼントしたやつだって。
日向子: そりゃ当たり前よ!舐めてもらっちゃぁ、困るなぁ~
守里: 笑、まさか飛香に続いて、日向子までプレゼントを着けてくるなんて。ほんとなんか、息が合ってるというかなんというか。
日向子: え?あっしゅんも?
守里: この、飛香が着けてる赤いマフラーは、僕のクリスマスプレゼント。
日向子: あ、あ~なんか見覚えあるかも…
飛香: ほんと?笑。ってか、守里は何も持ってきてないんだね。
日向子: そうなの?!
守里: ちょっ、それは無理があるって笑。そのプレゼント交換会の時は、僕は春時からタオルのセットを貰ってるし、他のクリスマスプレゼントも色々とあって、選び切れなくて……
飛香: 笑、冗談。ほら、行こ。
笑いながらそう言って、飛香は守里と日向子の背中を押す。
日向子: わわ!あっしゅん、押さないで~笑
守里: 良かったぁ~笑
こうして、3人はわちゃわちゃとしながら、ギフトモールの中に入った。
◇◇◇
ギフトモール内
日向子: うわっ!あそこにも草がある!
飛香: いや、草じゃなくてリースね笑
守里: まさにクリスマスって感じだな。
室内に入った3人は、カップルや家族連れがたくさんいる中を進みつつ、クリスマス仕様の装飾を見たり、お店の中を覗いたりしていた。
すると…
日向子: あ!トナカイだ!
かなり遠くの方のお店の店頭に、大きなトナカイの置物が置いてあるのを視界に捉えた日向子が駆け出す。
守里: 一体どこにトナカイが……ちょっ、日向子!いきなり走り出さないで!
そう言いながら、守里も日向子の後を追いかけ始め、飛香は1人取り残される。
飛香: ……はぁ……
別に守里は、私のことを気にしていないわけじゃない。
こうやって、日向子がどこかに行って、それを守里が追いかけることは、よくあることだし。
前に同じようなことがあって、私も追いついた後、なんで私を置いていったの?と、守里に聞いたら…
「すぐに駆け出しちゃう日向子とは違って、飛香はしっかりしてるもん。」
って言ったから。
守里は私のことを信頼してくれてるんだな、って思う。
もちろん、その信頼は嬉しいし、私も、守里には駆け出した日向子が迷子にならないように、追いかけて欲しいと思ってる。
でもさ…
寂しいんだよ、私だって。
飛香: …笑、早く2人に追いつこう。
そうして、飛香も2人が走って行った方に、ゆっくりと歩き、その先に、トナカイの置物を撫でている日向子と、それを少し怒ったような表情で眺めている守里を見つけた。
日向子: よしよし笑
守里: 日向子。
日向子: な~に?守里………怒ってる…
ずっとトナカイの方に向けていた視線を、後ろに向けたことで、真後ろに立っていた守里が怒っていることに気づく日向子。
守里: いきなり走り出すのはダメって言ってるじゃん。迷子になったら困るし、何より危ないでしょ。
日向子: ご、ごめんなさい!
守里: 次やったら、ほんと…………飛香に罰ゲームをしてもらうから!
日向子: ひぇっ!あっしゅんの罰ゲーム!!もうやりません!!
飛香: ちょっと笑。いきなり巻き込まないでよ。
守里: あ、飛香。
飛香: まぁ別に良いけど。実際に、私も怒ってるし。
日向子: だからごめんって~!!
飛香: 笑……よし、日向子、御手洗に行こう。
日向子: え?
いきなりのお誘いに、日向子は驚く。
日向子: ……ま、まさか、トイレでお説教?!
飛香: いやしないから笑。とにかく行こ。
日向子: う、うん…
飛香: 守里はその辺で待ってて。
守里: OK。でも、程々にね笑
飛香: いや、マジで説教じゃないから。日向子もビビってないで行くよ。
日向子: お説教だったら、すぐに逃げるからね!!
飛香: はいはい笑
と、説教をされるのではないかと不安になっている日向子を連れて、飛香は歩き始めた。
守里: え、トイレはあっちだけど………ま、いっか。何かあるんでしょ。
トイレとは全然違う方向に向かって。
日向子: ねぇ、あっしゅん~どこまで行くの~
飛香: ……この辺でいっか…
少しの間、2人は歩き、都合良く、あまり人がいない空間へとやって来た。
日向子: え、ここ?!……やっぱお説教じゃ…
飛香: ないから。
そうバッサリと日向子の不安を切り捨てて、飛香は日向子に向き直る。
飛香: 私さ。ずっと日向子に聞きたかったことがあるの。
日向子: なに?
そして、真っ直ぐに日向子の目を見て、先週の日曜日から、やろうと思っていたことを、覚悟を持って実行し始める。
飛香: 日向子も、守里のことが好きなんだよね?
日向子: っ!!……だから、親友として幼なじみとして好きって言ってるじゃん笑
再び、取り繕った笑顔で日向子はそう答えるが、今回の飛香はそれで止まらなかった。
飛香: 嘘つかないでよ。ってか、もうずっと一緒にいるんだから、私に嘘が通じないことぐらい分かってるでしょ。
日向子: ……嘘なんかじゃない…
飛香: 嘘。
日向子: 嘘じゃないもん!
飛香: ……
日向子: もう、あっしゅん変だよ!!こんな変なあっしゅんは放っておいて、守里のとこに帰っちゃお~
そう言って、日向子は飛香の横を通り抜けて、守里の所に戻ろうとしたが…
飛香: そうやって逃げるんだ。日向子は。
日向子: …
飛香の言葉で、日向子の足が止まる。
飛香: ……ズルいよ。日向子だけ自分の心に向き合わずに、ニコニコと笑顔で過ごしてるだけなんて。
日向子: っ……なんで…
飛香: ……
日向子: なんでそんなヒドいこと言うの?!あっしゅん!!!
ガシッ
勢いよく飛香の両肩を掴み、涙目になった日向子が叫ぶ。
日向子: 私は!あっしゅんの……みんなの為を思って!!
飛香: 誰だよ…
日向子: はぁ?
飛香: 誰が頼んだんだよ!そんなこと!!!
日向子: っ!!!
逆に肩を掴み返して、飛香も日向子の心に訴えかける。
飛香: なんで日向子だけが、自分の気持ちを抑え込まないといけないんだよ!
日向子: …
飛香: なんで日向子だけが!……守里が好きって気持ちを堪えて……そうやって取り繕った笑顔を浮かべて、自分の気持ちを否定しなきゃいけないんだよ……
大きな瞳に涙を浮かべながら、飛香は言う。
日向子: あっしゅん……
飛香: 自分の気持ちに正直になってよ!日向子!!
日向子: …………私は…
飛香の強い言葉を受けて、日向子はずっと心の奥底で閉じ込めていた気持ちを、口に出し始める。
日向子: …私は、守里のことが……
飛香: うん…
日向子: 大好き……ずっと大好きなんだよ……
絞り出すかのように、日向子は本当の気持ちを吐露した。
日向子: 守里と出会った頃から……ずっとずっと…大好きで………でも…陽芽叶ちゃんやあっしゅん達も…守里のことが好きで……グスン
飛香: …ツラかったよね……日向子。
ギュッ
涙を流す日向子を、飛香は優しく抱き締める。
飛香: もう我慢しなくて良いんだよ。
日向子: あっしゅん…グスッ
飛香: だって、みんな、日向子に気を遣ってもらわなくても良いぐらいに強いんだからさ…グスン
日向子: …グスッ…グスッ
飛香: 陽芽叶はなんか、守里のことを私達以上に理解しているような気がするし…やんちゃんは健気にずっと守里のことを想ってるし…珠美は強心臓でガンガン行くし……美月なんて…言わなくても分かるじゃん笑
日向子: …うん…グスッ
飛香: それに七星先輩も強い……だからさ、日向子が我慢する必要なんてない。これからは自分の気持ちに正直に、守里に想いをちゃんと伝えるようにしなきゃ…グスン
日向子: ……グスッ……分かった。
飛香: 笑…よし。
日向子の肩の上…日向子には見えないところで、飛香は手で涙を拭い、パッと離れる。
飛香: 日向子、頑張るんだよ。ものすごい手強いライバル達がいるんだから!笑
日向子: うん!笑
ゴシゴシと涙を拭った日向子は、いつも通りの笑顔を見せて、元気よく返事をする。
飛香: じゃ、守里のところに行こう。
日向子: そうだね!……って、そうなると、あっしゅんもライバルだから……
飛香: そんなことは考えないで笑。私は、もう吹っ切れてるし、それに、何よりも幼なじみの方が大事なんだから。
日向子: え?
飛香: 良いから行くよ~
日向子: あ、待ってよ、あっしゅん~!!
こうして、真にいつもの関係に戻った2人は、笑顔で、守里の元へと戻るのであった。
to be continued
ギフトモール前広場
守里: …あ、飛香が来た。
飛香: ん。日向子は?
守里: まだ。
飛香: だよね笑
夕陽が沈み始め、空が赤く照らされている頃、ギフトモール前の広場にあるベンチに座っていた守里の隣に、赤のマフラーを首に巻いた飛香が座る。
守里: ……あれ、そのマフラーってさ…
飛香: 笑、気づいた?
守里: そりゃあ……一昨年のクリスマスに、プレゼント交換会で、僕がプレゼントしたやつだもん。
飛香: せっかくだから、着けてきてみた。
守里: ありがとう笑
飛香: ………で、感想は?
守里: 感想?……あぁ、めっちゃ似合ってるよ。我ながら、飛香に似合うマフラーを選べたな~って思う笑
飛香: ふ~ん//
と、飛香が少し顔を赤くしたところで、この寒い空気を暖かくするような元気な声が聞こえてくる。
日向子: おぉ~い!!!守里!!あっしゅん!!!
守里: 笑、相変わらず、日向子の到着はすぐに分かるね。
飛香: だね笑
ベンチから立ち上がり、後ろを振り返りながら、2人は笑顔で日向子を迎える。
日向子: 遅れてはないよね!!
守里: うん。16時ちょっと前でセーフ笑
日向子: いぇーい!!
飛香: 笑、よし。中に入ろう。寒いし。
日向子: うん!!
守里: 今年は、どんな装飾になってるのかな~
ギフトモールの入口に向かって、日向子と守里が並んで歩き出し、飛香もその後に続く。
飛香: ……ん?
ふと、日向子が手に着けている手袋に目が行った。
飛香: ねぇ、日向子。その手袋ってさ。
日向子: お!気づきましたか!あっしゅん!!
飛香: うん笑
守里: え、まさかのプレゼント?
日向子: そう!このピンク色の可愛い手袋は、一昨年のクリスマスに、あっしゅんから貰ったやつ!!
そうニコニコの笑顔で言って、飛香と守里の顔の前に、手袋をはめた手を突き出す。
飛香: よく覚えてたね笑。私がプレゼントしたやつだって。
日向子: そりゃ当たり前よ!舐めてもらっちゃぁ、困るなぁ~
守里: 笑、まさか飛香に続いて、日向子までプレゼントを着けてくるなんて。ほんとなんか、息が合ってるというかなんというか。
日向子: え?あっしゅんも?
守里: この、飛香が着けてる赤いマフラーは、僕のクリスマスプレゼント。
日向子: あ、あ~なんか見覚えあるかも…
飛香: ほんと?笑。ってか、守里は何も持ってきてないんだね。
日向子: そうなの?!
守里: ちょっ、それは無理があるって笑。そのプレゼント交換会の時は、僕は春時からタオルのセットを貰ってるし、他のクリスマスプレゼントも色々とあって、選び切れなくて……
飛香: 笑、冗談。ほら、行こ。
笑いながらそう言って、飛香は守里と日向子の背中を押す。
日向子: わわ!あっしゅん、押さないで~笑
守里: 良かったぁ~笑
こうして、3人はわちゃわちゃとしながら、ギフトモールの中に入った。
◇◇◇
ギフトモール内
日向子: うわっ!あそこにも草がある!
飛香: いや、草じゃなくてリースね笑
守里: まさにクリスマスって感じだな。
室内に入った3人は、カップルや家族連れがたくさんいる中を進みつつ、クリスマス仕様の装飾を見たり、お店の中を覗いたりしていた。
すると…
日向子: あ!トナカイだ!
かなり遠くの方のお店の店頭に、大きなトナカイの置物が置いてあるのを視界に捉えた日向子が駆け出す。
守里: 一体どこにトナカイが……ちょっ、日向子!いきなり走り出さないで!
そう言いながら、守里も日向子の後を追いかけ始め、飛香は1人取り残される。
飛香: ……はぁ……
別に守里は、私のことを気にしていないわけじゃない。
こうやって、日向子がどこかに行って、それを守里が追いかけることは、よくあることだし。
前に同じようなことがあって、私も追いついた後、なんで私を置いていったの?と、守里に聞いたら…
「すぐに駆け出しちゃう日向子とは違って、飛香はしっかりしてるもん。」
って言ったから。
守里は私のことを信頼してくれてるんだな、って思う。
もちろん、その信頼は嬉しいし、私も、守里には駆け出した日向子が迷子にならないように、追いかけて欲しいと思ってる。
でもさ…
寂しいんだよ、私だって。
飛香: …笑、早く2人に追いつこう。
そうして、飛香も2人が走って行った方に、ゆっくりと歩き、その先に、トナカイの置物を撫でている日向子と、それを少し怒ったような表情で眺めている守里を見つけた。
日向子: よしよし笑
守里: 日向子。
日向子: な~に?守里………怒ってる…
ずっとトナカイの方に向けていた視線を、後ろに向けたことで、真後ろに立っていた守里が怒っていることに気づく日向子。
守里: いきなり走り出すのはダメって言ってるじゃん。迷子になったら困るし、何より危ないでしょ。
日向子: ご、ごめんなさい!
守里: 次やったら、ほんと…………飛香に罰ゲームをしてもらうから!
日向子: ひぇっ!あっしゅんの罰ゲーム!!もうやりません!!
飛香: ちょっと笑。いきなり巻き込まないでよ。
守里: あ、飛香。
飛香: まぁ別に良いけど。実際に、私も怒ってるし。
日向子: だからごめんって~!!
飛香: 笑……よし、日向子、御手洗に行こう。
日向子: え?
いきなりのお誘いに、日向子は驚く。
日向子: ……ま、まさか、トイレでお説教?!
飛香: いやしないから笑。とにかく行こ。
日向子: う、うん…
飛香: 守里はその辺で待ってて。
守里: OK。でも、程々にね笑
飛香: いや、マジで説教じゃないから。日向子もビビってないで行くよ。
日向子: お説教だったら、すぐに逃げるからね!!
飛香: はいはい笑
と、説教をされるのではないかと不安になっている日向子を連れて、飛香は歩き始めた。
守里: え、トイレはあっちだけど………ま、いっか。何かあるんでしょ。
トイレとは全然違う方向に向かって。
日向子: ねぇ、あっしゅん~どこまで行くの~
飛香: ……この辺でいっか…
少しの間、2人は歩き、都合良く、あまり人がいない空間へとやって来た。
日向子: え、ここ?!……やっぱお説教じゃ…
飛香: ないから。
そうバッサリと日向子の不安を切り捨てて、飛香は日向子に向き直る。
飛香: 私さ。ずっと日向子に聞きたかったことがあるの。
日向子: なに?
そして、真っ直ぐに日向子の目を見て、先週の日曜日から、やろうと思っていたことを、覚悟を持って実行し始める。
飛香: 日向子も、守里のことが好きなんだよね?
日向子: っ!!……だから、親友として幼なじみとして好きって言ってるじゃん笑
再び、取り繕った笑顔で日向子はそう答えるが、今回の飛香はそれで止まらなかった。
飛香: 嘘つかないでよ。ってか、もうずっと一緒にいるんだから、私に嘘が通じないことぐらい分かってるでしょ。
日向子: ……嘘なんかじゃない…
飛香: 嘘。
日向子: 嘘じゃないもん!
飛香: ……
日向子: もう、あっしゅん変だよ!!こんな変なあっしゅんは放っておいて、守里のとこに帰っちゃお~
そう言って、日向子は飛香の横を通り抜けて、守里の所に戻ろうとしたが…
飛香: そうやって逃げるんだ。日向子は。
日向子: …
飛香の言葉で、日向子の足が止まる。
飛香: ……ズルいよ。日向子だけ自分の心に向き合わずに、ニコニコと笑顔で過ごしてるだけなんて。
日向子: っ……なんで…
飛香: ……
日向子: なんでそんなヒドいこと言うの?!あっしゅん!!!
ガシッ
勢いよく飛香の両肩を掴み、涙目になった日向子が叫ぶ。
日向子: 私は!あっしゅんの……みんなの為を思って!!
飛香: 誰だよ…
日向子: はぁ?
飛香: 誰が頼んだんだよ!そんなこと!!!
日向子: っ!!!
逆に肩を掴み返して、飛香も日向子の心に訴えかける。
飛香: なんで日向子だけが、自分の気持ちを抑え込まないといけないんだよ!
日向子: …
飛香: なんで日向子だけが!……守里が好きって気持ちを堪えて……そうやって取り繕った笑顔を浮かべて、自分の気持ちを否定しなきゃいけないんだよ……
大きな瞳に涙を浮かべながら、飛香は言う。
日向子: あっしゅん……
飛香: 自分の気持ちに正直になってよ!日向子!!
日向子: …………私は…
飛香の強い言葉を受けて、日向子はずっと心の奥底で閉じ込めていた気持ちを、口に出し始める。
日向子: …私は、守里のことが……
飛香: うん…
日向子: 大好き……ずっと大好きなんだよ……
絞り出すかのように、日向子は本当の気持ちを吐露した。
日向子: 守里と出会った頃から……ずっとずっと…大好きで………でも…陽芽叶ちゃんやあっしゅん達も…守里のことが好きで……グスン
飛香: …ツラかったよね……日向子。
ギュッ
涙を流す日向子を、飛香は優しく抱き締める。
飛香: もう我慢しなくて良いんだよ。
日向子: あっしゅん…グスッ
飛香: だって、みんな、日向子に気を遣ってもらわなくても良いぐらいに強いんだからさ…グスン
日向子: …グスッ…グスッ
飛香: 陽芽叶はなんか、守里のことを私達以上に理解しているような気がするし…やんちゃんは健気にずっと守里のことを想ってるし…珠美は強心臓でガンガン行くし……美月なんて…言わなくても分かるじゃん笑
日向子: …うん…グスッ
飛香: それに七星先輩も強い……だからさ、日向子が我慢する必要なんてない。これからは自分の気持ちに正直に、守里に想いをちゃんと伝えるようにしなきゃ…グスン
日向子: ……グスッ……分かった。
飛香: 笑…よし。
日向子の肩の上…日向子には見えないところで、飛香は手で涙を拭い、パッと離れる。
飛香: 日向子、頑張るんだよ。ものすごい手強いライバル達がいるんだから!笑
日向子: うん!笑
ゴシゴシと涙を拭った日向子は、いつも通りの笑顔を見せて、元気よく返事をする。
飛香: じゃ、守里のところに行こう。
日向子: そうだね!……って、そうなると、あっしゅんもライバルだから……
飛香: そんなことは考えないで笑。私は、もう吹っ切れてるし、それに、何よりも幼なじみの方が大事なんだから。
日向子: え?
飛香: 良いから行くよ~
日向子: あ、待ってよ、あっしゅん~!!
こうして、真にいつもの関係に戻った2人は、笑顔で、守里の元へと戻るのであった。
to be continued
0
あなたにおすすめの小説
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
職業ガチャで外れ職引いたけど、ダンジョン主に拾われて成り上がります
チャビューヘ
ファンタジー
いいね、ブックマークで応援いつもありがとうございます!
ある日突然、クラス全員が異世界に召喚された。
この世界では「職業ガチャ」で与えられた職業がすべてを決める。勇者、魔法使い、騎士――次々と強職を引き当てるクラスメイトたち。だが俺、蒼井拓海が引いたのは「情報分析官」。幼馴染の白石美咲は「清掃員」。
戦闘力ゼロ。
「お前らは足手まといだ」「誰もお荷物を抱えたくない」
親友にすら見捨てられ、パーティ編成から弾かれた俺たちは、たった二人で最低難易度ダンジョンに挑むしかなかった。案の定、モンスターに追われ、逃げ惑い――挙句、偶然遭遇したクラスメイトには囮として利用された。
「感謝するぜ、囮として」
嘲笑と共に去っていく彼ら。絶望の中、俺たちは偶然ダンジョンの最深部へ転落する。
そこで出会ったのは、銀髪の美少女ダンジョン主・リリア。
「あなたたち……私のダンジョンで働かない?」
情報分析でダンジョン構造を最適化し、清掃で魔力循環を改善する。気づけば生産効率は30%向上し、俺たちは魔王軍の特別顧問にまで成り上がっていた。
かつて俺たちを見下したクラスメイトたちは、ダンジョン攻略で消耗し、苦しんでいる。
見ろ、これが「外れ職」の本当の力だ――逆転と成り上がり、そして痛快なざまぁ劇が、今始まる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
『25歳独身、マイホームのクローゼットが異世界に繋がってた件』 ──†黒翼の夜叉†、異世界で伝説(レジェンド)になる!
風来坊
ファンタジー
25歳で夢のマイホームを手に入れた男・九条カケル。
185cmのモデル体型に彫刻のような顔立ち。街で振り返られるほどの美貌の持ち主――だがその正体は、重度のゲーム&コスプレオタク!
ある日、自宅のクローゼットを開けた瞬間、突如現れた異世界へのゲートに吸い込まれてしまう。
そこで彼は、伝説の職業《深淵の支配者(アビスロード)》として召喚され、
チートスキル「†黒翼召喚†」や「アビスコード」、
さらにはなぜか「女子からの好感度+999」まで付与されて――
「厨二病、発症したまま異世界転生とかマジで罰ゲームかよ!!」
オタク知識と美貌を武器に、異世界と現代を股にかけ、ハーレムと戦乱に巻き込まれながら、
†黒翼の夜叉†は“本物の伝説”になっていく!
まほカン
jukaito
ファンタジー
ごく普通の女子中学生だった結城かなみはある日両親から借金を押し付けられた黒服の男にさらわれてしまう。一億もの借金を返済するためにかなみが選ばされた道は、魔法少女となって会社で働いていくことだった。
今日もかなみは愛と正義と借金の天使、魔法少女カナミとなって悪の秘密結社と戦うのであった!新感覚マジカルアクションノベル!
※基本1話完結なのでアニメを見る感覚で読めると思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる