ただ守りたい…〜大事な人を守るには、金と権力と腕っ節…あと諦めない心が必要です〜

ドラると

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第9章 飛香編

第338話「飛香の決心 前編」

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15時50分


ギフトモール前広場



守里: …あ、飛香が来た。


飛香: ん。日向子は?


守里: まだ。


飛香: だよね笑



夕陽が沈み始め、空が赤く照らされている頃、ギフトモール前の広場にあるベンチに座っていた守里の隣に、赤のマフラーを首に巻いた飛香が座る。



守里: ……あれ、そのマフラーってさ…


飛香: 笑、気づいた?


守里: そりゃあ……一昨年のクリスマスに、プレゼント交換会で、僕がプレゼントしたやつだもん。


飛香: せっかくだから、着けてきてみた。


守里: ありがとう笑


飛香: ………で、感想は?


守里: 感想?……あぁ、めっちゃ似合ってるよ。我ながら、飛香に似合うマフラーを選べたな~って思う笑


飛香: ふ~ん//



と、飛香が少し顔を赤くしたところで、この寒い空気を暖かくするような元気な声が聞こえてくる。



日向子: おぉ~い!!!守里!!あっしゅん!!!


守里: 笑、相変わらず、日向子の到着はすぐに分かるね。


飛香: だね笑



ベンチから立ち上がり、後ろを振り返りながら、2人は笑顔で日向子を迎える。



日向子: 遅れてはないよね!!


守里: うん。16時ちょっと前でセーフ笑


日向子: いぇーい!!


飛香: 笑、よし。中に入ろう。寒いし。


日向子: うん!!


守里: 今年は、どんな装飾になってるのかな~



ギフトモールの入口に向かって、日向子と守里が並んで歩き出し、飛香もその後に続く。



飛香: ……ん?



ふと、日向子が手に着けている手袋に目が行った。



飛香: ねぇ、日向子。その手袋ってさ。


日向子: お!気づきましたか!あっしゅん!!


飛香: うん笑


守里: え、まさかのプレゼント?


日向子: そう!このピンク色の可愛い手袋は、一昨年のクリスマスに、あっしゅんから貰ったやつ!!



そうニコニコの笑顔で言って、飛香と守里の顔の前に、手袋をはめた手を突き出す。



飛香: よく覚えてたね笑。私がプレゼントしたやつだって。


日向子: そりゃ当たり前よ!舐めてもらっちゃぁ、困るなぁ~


守里: 笑、まさか飛香に続いて、日向子までプレゼントを着けてくるなんて。ほんとなんか、息が合ってるというかなんというか。


日向子: え?あっしゅんも?


守里: この、飛香が着けてる赤いマフラーは、僕のクリスマスプレゼント。


日向子: あ、あ~なんか見覚えあるかも…


飛香: ほんと?笑。ってか、守里は何も持ってきてないんだね。


日向子: そうなの?!


守里: ちょっ、それは無理があるって笑。そのプレゼント交換会の時は、僕は春時からタオルのセットを貰ってるし、他のクリスマスプレゼントも色々とあって、選び切れなくて……


飛香: 笑、冗談。ほら、行こ。



笑いながらそう言って、飛香は守里と日向子の背中を押す。



日向子: わわ!あっしゅん、押さないで~笑


守里: 良かったぁ~笑



こうして、3人はわちゃわちゃとしながら、ギフトモールの中に入った。


◇◇◇


ギフトモール内



日向子: うわっ!あそこにも草がある!


飛香: いや、草じゃなくてリースね笑


守里: まさにクリスマスって感じだな。



室内に入った3人は、カップルや家族連れがたくさんいる中を進みつつ、クリスマス仕様の装飾を見たり、お店の中を覗いたりしていた。


すると…



日向子: あ!トナカイだ!



かなり遠くの方のお店の店頭に、大きなトナカイの置物が置いてあるのを視界に捉えた日向子が駆け出す。



守里: 一体どこにトナカイが……ちょっ、日向子!いきなり走り出さないで!



そう言いながら、守里も日向子の後を追いかけ始め、飛香は1人取り残される。



飛香: ……はぁ……



別に守里は、私のことを気にしていないわけじゃない。


こうやって、日向子がどこかに行って、それを守里が追いかけることは、よくあることだし。

前に同じようなことがあって、私も追いついた後、なんで私を置いていったの?と、守里に聞いたら…


「すぐに駆け出しちゃう日向子とは違って、飛香はしっかりしてるもん。」


って言ったから。


守里は私のことを信頼してくれてるんだな、って思う。

もちろん、その信頼は嬉しいし、私も、守里には駆け出した日向子が迷子にならないように、追いかけて欲しいと思ってる。


でもさ…


寂しいんだよ、私だって。



飛香: …笑、早く2人に追いつこう。



そうして、飛香も2人が走って行った方に、ゆっくりと歩き、その先に、トナカイの置物を撫でている日向子と、それを少し怒ったような表情で眺めている守里を見つけた。



日向子: よしよし笑


守里: 日向子。


日向子: な~に?守里………怒ってる…



ずっとトナカイの方に向けていた視線を、後ろに向けたことで、真後ろに立っていた守里が怒っていることに気づく日向子。



守里: いきなり走り出すのはダメって言ってるじゃん。迷子になったら困るし、何より危ないでしょ。


日向子: ご、ごめんなさい!


守里: 次やったら、ほんと…………飛香に罰ゲームをしてもらうから!


日向子: ひぇっ!あっしゅんの罰ゲーム!!もうやりません!!


飛香: ちょっと笑。いきなり巻き込まないでよ。


守里: あ、飛香。


飛香: まぁ別に良いけど。実際に、私も怒ってるし。


日向子: だからごめんって~!!


飛香: 笑……よし、日向子、御手洗に行こう。


日向子: え?



いきなりのお誘いに、日向子は驚く。



日向子: ……ま、まさか、トイレでお説教?!


飛香: いやしないから笑。とにかく行こ。


日向子: う、うん…


飛香: 守里はその辺で待ってて。


守里: OK。でも、程々にね笑


飛香: いや、マジで説教じゃないから。日向子もビビってないで行くよ。


日向子: お説教だったら、すぐに逃げるからね!!


飛香: はいはい笑



と、説教をされるのではないかと不安になっている日向子を連れて、飛香は歩き始めた。



守里: え、トイレはあっちだけど………ま、いっか。何かあるんでしょ。



トイレとは全然違う方向に向かって。






日向子: ねぇ、あっしゅん~どこまで行くの~


飛香: ……この辺でいっか…



少しの間、2人は歩き、都合良く、あまり人がいない空間へとやって来た。



日向子: え、ここ?!……やっぱお説教じゃ…


飛香: ないから。



そうバッサリと日向子の不安を切り捨てて、飛香は日向子に向き直る。



飛香: 私さ。ずっと日向子に聞きたかったことがあるの。


日向子: なに?



そして、真っ直ぐに日向子の目を見て、先週の日曜日から、やろうと思っていたことを、覚悟を持って実行し始める。



飛香: 日向子も、守里のことが好きなんだよね?


日向子: っ!!……だから、親友として幼なじみとして好きって言ってるじゃん笑



再び、取り繕った笑顔で日向子はそう答えるが、今回の飛香はそれで止まらなかった。



飛香: 嘘つかないでよ。ってか、もうずっと一緒にいるんだから、私に嘘が通じないことぐらい分かってるでしょ。


日向子: ……嘘なんかじゃない…


飛香: 嘘。


日向子: 嘘じゃないもん!


飛香: ……


日向子: もう、あっしゅん変だよ!!こんな変なあっしゅんは放っておいて、守里のとこに帰っちゃお~



そう言って、日向子は飛香の横を通り抜けて、守里の所に戻ろうとしたが…



飛香: そうやって逃げるんだ。日向子は。


日向子: …



飛香の言葉で、日向子の足が止まる。



飛香: ……ズルいよ。日向子だけ自分の心に向き合わずに、ニコニコと笑顔で過ごしてるだけなんて。


日向子: っ……なんで…


飛香: ……


日向子: なんでそんなヒドいこと言うの?!あっしゅん!!!


ガシッ



勢いよく飛香の両肩を掴み、涙目になった日向子が叫ぶ。



日向子: 私は!あっしゅんの……みんなの為を思って!!


飛香: 誰だよ…


日向子: はぁ?


飛香: 誰が頼んだんだよ!そんなこと!!!


日向子: っ!!!



逆に肩を掴み返して、飛香も日向子の心に訴えかける。



飛香: なんで日向子だけが、自分の気持ちを抑え込まないといけないんだよ!


日向子: …


飛香: なんで日向子だけが!……守里が好きって気持ちを堪えて……そうやって取り繕った笑顔を浮かべて、自分の気持ちを否定しなきゃいけないんだよ……



大きな瞳に涙を浮かべながら、飛香は言う。



日向子: あっしゅん……


飛香: 自分の気持ちに正直になってよ!日向子!!


日向子: …………私は…



飛香の強い言葉を受けて、日向子はずっと心の奥底で閉じ込めていた気持ちを、口に出し始める。



日向子: …私は、守里のことが……


飛香: うん…


日向子: 大好き……ずっと大好きなんだよ……



絞り出すかのように、日向子は本当の気持ちを吐露した。



日向子: 守里と出会った頃から……ずっとずっと…大好きで………でも…陽芽叶ちゃんやあっしゅん達も…守里のことが好きで……グスン


飛香: …ツラかったよね……日向子。


ギュッ



涙を流す日向子を、飛香は優しく抱き締める。



飛香: もう我慢しなくて良いんだよ。


日向子: あっしゅん…グスッ


飛香: だって、みんな、日向子に気を遣ってもらわなくても良いぐらいに強いんだからさ…グスン


日向子: …グスッ…グスッ


飛香: 陽芽叶はなんか、守里のことを私達以上に理解しているような気がするし…やんちゃんは健気にずっと守里のことを想ってるし…珠美は強心臓でガンガン行くし……美月なんて…言わなくても分かるじゃん笑


日向子: …うん…グスッ


飛香: それに七星先輩も強い……だからさ、日向子が我慢する必要なんてない。これからは自分の気持ちに正直に、守里に想いをちゃんと伝えるようにしなきゃ…グスン


日向子: ……グスッ……分かった。


飛香: 笑…よし。



日向子の肩の上…日向子には見えないところで、飛香は手で涙を拭い、パッと離れる。



飛香: 日向子、頑張るんだよ。ものすごい手強いライバル達がいるんだから!笑


日向子: うん!笑



ゴシゴシと涙を拭った日向子は、いつも通りの笑顔を見せて、元気よく返事をする。


飛香: じゃ、守里のところに行こう。


日向子: そうだね!……って、そうなると、あっしゅんもライバルだから……


飛香: そんなことは考えないで笑。私は、もう吹っ切れてるし、それに、何よりも幼なじみの方が大事なんだから。


日向子: え?


飛香: 良いから行くよ~


日向子: あ、待ってよ、あっしゅん~!!



こうして、真にいつもの関係に戻った2人は、笑顔で、守里の元へと戻るのであった。




to be continued
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