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第9章 飛香編
第340話「暖かな年越し」
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12月31日
守里の家
蓮花: …年越しまで、あと10分か~
桜: 早いね~
結真: どうする?年越しの瞬間、地球にいなかった、みたいなのやる?
……
結真: え、何この空気…
美月: やっぱお姉ちゃんだね。
蓮花: ね。
結真: ちょっと、それどういうこと?!
守里: まぁまぁ笑
もうすぐで年越しを迎えるという頃、守里達家族は、リビングの炬燵に皆で入って、温もりながら、テレビを見ていた。
日向子と飛香とクリスマスツリーを見に行った時から、この大晦日までも…
クリスマス当日の夜は、美月が帰ってくる少し前に、何とか守里は家に到着して、無事、美月の機嫌を損ねることなく、その後を一緒に過ごしたり。
その翌日は、守里がバイトから帰ってくると、家の庭に人間サイズの雪だるまがあり、その近くで雪合戦をしていた、部活後の日向子と、既に雪まみれの蓮花に混じって、雪を被ったり。
日曜日には、木村道場に行って、一に稽古をつけてもらった後、道場の年末の掃除をし、それが終わったら、紗耶の手料理を美味しく食べたり。
バイト中、カフェBINGO!に、櫻宮、若月、七星が来て、奈々未にすごい揶揄われながら、その対応に追われたり。
などなど、色々とあった。
そして、今、守里は、家族団欒の時間を幸せに感じながら、ゆったりと過ごしている。
結真: っもう、なんでこう、私のイジられ役が定着しちゃったのかな~
プクっと頬を膨らませて、炬燵の中央に置いてある木製の果物鉢の中の蜜柑に手を伸ばしながら、結真はそう言う。
美月: う~ん…やっぱ、お姉ちゃんがちょっと遅れてるからだよ。
結真: っ!遅れ……こんな口の悪い妹達に囲まれて、私はなんて可哀想なの…
蓮花: そう言う嘘演技のせいでもあるんじゃない?笑
結真: あ、バレた笑。別に全然イジってもらって良いからね。それで皆が盛り上がるのであれば。
美月: さすがお姉ちゃん笑。略して、さす姉だね。
結真: さす姉?……笑、アリかも。パクッ
蓮花: あ、蓮花にもちょうだい!
皮を剥いた蜜柑を、結真が口に入れ始めたところで、蓮花が目ざとくねだる。
結真: え~自分で剥きなよ。
蓮花: お願い!キラキラ
結真: うっ……いや、ダメだね。ここは蓮花を育てるためにも…
守里: まぁ良いじゃん。蓮花、僕が剥いてあげるから。
蓮花: え、良いの?!!
思ってた以上の結果を得られて、蓮花はテンションが爆発的に上がる。
が、その結果を蓮花に独り占めされることを良しとしない人物がいた。
すぐ隣に。
美月: ちょっと、蓮花。守里!私にも、ちょ~だい!キラキラ
負けじと、美月もキラキラ光線を、その大きな瞳から出して、守里におねだりする。
そしてさらに…
桜: ……さくも欲しい。
美月: なっ!!
蓮花: 桜お姉ちゃんも?!!
照れ屋で引っ込み思案なせいで、出会ったばかりの頃は、中々、他の姉妹と同じように守里に甘えられなかった三女も、成長を見せて、小声ながらにお願いした。
美月: ダメ!私がもらうの!
蓮花: 違う!最初に言った蓮花に決まってる!
桜: ムゥ…
と、3人が言い争いを始めてしまい、結真の視線でそれを収めることになった守里は、こういう時に便利な勝負を提案する。
守里: じゃあ、こうしよう。3人でじゃんけんをして、勝った人は僕が剥いた蜜柑の半分を。負けた2人は、自分で剥いて食べる。どう?まぁ、蜜柑を多く食べたいなら負けた方が良いっていう、中々に捻ったしょう…
美月: 絶対に勝つ!!
蓮花: 神様、蓮花に味方して!!
桜: ふぅ……
守里: あ、みんな聞いてない。勝つことしか考えてないや…
結真: 笑、守里が皮を剥いた蜜柑を、3人は欲しがってるからね~~さぁ、始めるわよ。最初はグー、じゃんけん…
「ポン!」
蓮花: あっ…
桜: おっ…
美月: はぁぁ!
3人が、じゃんけんの結果に、それぞれの反応を示す中、喜びの反応を示したのは…
桜: ふふ笑、勝っちゃった。
一番最後に名乗りを上げた桜であった。
美月: ズルいズルいズルいズルいズルい!!!
結真: 美月。公平な真剣勝負で負けたんだから、潔く負けを認めなさい。ねぇ、蓮花。
蓮花: っ……そ、そうだよ、お姉ちゃん。子供だな~
美月: なっ、こ、子供………くっそ~
悔しさのままに、勢いよく果物鉢の中から蜜柑を取り、皮を剥き始める。
結真: 笑
さすが長女と言うべきか、結真は、蓮花に美月を煽らせるように誘導することで、2人の熱を同時に収めた。
守里: はい、桜。じゃんけんに勝った景品の、蜜柑。
桜: ……あ~
皮を剥いた蜜柑を、守里が手の上に乗せようとしてきたのを見て、桜は思い切って、口を開けて待つ。
守里: 笑、全く。
こちらもさすがと言うべきか、美月や蓮花、日向子らに同じことをする機会が多いため、守里は慣れたように、桜の口の中に蜜柑を入れる。
桜: パクッ…モグモグ……
守里: 美味しい?
桜: うん、美味しい。
守里: それは良かった笑
美月: ムー……パクッ…モグモグ…
蓮花: お姉ちゃん。
美月: ん。
蓮花: ありがと。パクッ…モグモグ…
結真: 笑、蓮花はどうしても、自分で蜜柑の皮を剥きたくないのね~
と、こんな感じで、守里の家では年越しを迎えようとしている頃、他の家では…
日向子の家
日向子: あともうちょっとでお正月だ!!
リビングのソファに座る日向子は、時計を見てそう叫ぶ。
日向子母: 笑、日向子も年越し蕎麦食べる?
キッチンで、日向子の父親である"南雲悟志"の年越し蕎麦を用意しながら、日向子の母がそう尋ねる。
日向子: いや、いい!
悟志: え~なんでよ。一緒に食べようよ、日向子。
親バカな悟志は、テーブルに着いたまま、日向子の方を見て、そうお願いする。
日向子: だって、もう食べたもん!
悟志: 別に年越し蕎麦はいくら食べたって…
日向子母: パパは1人で食べるのが寂しいみたいだけど?
見かねた日向子母が、助け舟を出す。
日向子: う~ん……じゃあ、隣で座ってるから!
悟志: ほんとか?!
日向子母: 笑、良かったわね~
と、仲良しな家族は、3人でテーブルに着いて、年越しを待つ。
飛香の家
飛香: ……あと少しか…
1人、自分の部屋のベッドの上で、読んでいた本を一旦置き、携帯を確認していると…
「飛香~~そろそろ降りておいで~」
母の声が1階のリビングの方から聞こえる。
飛香: …行くか。
そう言って、飛香はベッドから降り、携帯を持ってリビングに降りると、母はテレビの前に座り、父はソファの上で寝ていた。
飛香: 笑、お父さん寝てんじゃん。
飛香母: ほんとよね~笑。テレビ見てたら、いつの間にか寝ちゃってたの。
飛香: ふ~ん。
父の寝顔をチラッと見た飛香は、母の少し離れた隣に座った。
春時の家
一: まだじゃ!来い!!
春時: っ!はぁ!!
バチンッ!!
流れるように力を移動させた春時の右拳は、一の右手に抑えられる。
一: ふっ!
そして、春時の拳から受けた力を体の中で流し、畳を軽く蹴った反動と合わせて、左の上段蹴りを一は放つ。
ドンッ!
春時: くっ…
その蹴りの力を次の攻撃に利用しようと、回避はせず、右腕で受け止めたが、力を完全に流し切れず、春時は想定以上のダメージを受けてしまった。
一: ……よし、終わりじゃ。お前の臨越も切れたようじゃしな。
春時: …ふぅ……ありがとうございました。
姿勢を正した春時は、礼をする。
一: うむ。ありがとうございました。
それに対して、礼を返した一は、先程の闘いの評価を行う。
一: まぁ、臨越を使えるようにはなってきたが……使える時間が短過ぎる。
春時: はい。
一: それと、敵の攻撃の全てを受け止めて、利用しようとは思うな。最後の儂の蹴りのように、受け止め切れんものを受けると、大きなダメージを喰らうことになるからな。受ける攻撃と避ける攻撃をちゃんと見極めるように。以上。
春時: 分かりました。ありがとうございます。
一: では、居間に戻って、紗耶ちゃんと年越しを…
と、評価を終えて、一と春時が道場を出ようとしたところで…
ガラガラ!!
紗耶: バカ兄貴とじいじは、いつまでやってるの?!もう年越し来ちゃうよ!!
勢いよく道場の扉を開けた紗耶が、そう叫んだ。
一: あぁ~紗耶ちゃん!ちょうど今、行こうとしたんじゃよ。なぁ?春時。
春時: うん。すぐに行くから。
紗耶: ママ、怒ってるからね!
とだけ言い残して、紗耶はスタスタと道場から離れて行き、春時と一はマズいという顔を見合わせた後、急いで居間の方に向かうのであった。
七星の家
祐希:……ウトウト…
七星: ほら、祐希。もうちょっとだから、起き。
祐希: う~ん…眠い……
七星: 全く笑
深夜の時間帯ということで、瞼が自然と下がってきている祐希を、七星が笑いながら起こし続けていると、玄関の扉が開く音が聞こえる。
祐希: ん?
七星: まさか。
ガチャ
そして、リビングの扉が開き、そこにいたのは、大阪から帰ってきた父の湊士と、母の由夢であった。
湊士: 2人とも、ただいま。
祐希: お父さんとお母さんだ~
七星: おかえり。
由夢: ただいま。って、案の定、祐希は眠そうね。
祐希: うん、眠い~
テーブルに頬を付き、目を細めた笑顔を、久しぶりに会う両親に見せながら、祐希はそう言う。
湊士: 笑、ごめんね。こんなにギリギリになって。
七星: いや。逆によく帰って来れたね。色々と後処理が大変だったって聞いてたけど。
湊士: うん。大変だった。
由夢: でも、さすがに年越しぐらいは娘達といさせろ!って作戦部の中田さんを説得して、戻ってきたんだ。
七星: ふ~ん。あ、年越し蕎麦食べる?
思い出したように、七星は聞く。
湊士: あるの?
七星: 一応、お父さんとお母さんの分も作っといたから。まぁ、祐希がたくさん食べたせいで、ちょっと少な目やけどな笑
由夢: 笑、そんなに七星の蕎麦は美味しかったんだ。
祐希: うん、美味しかった。
由夢: じゃあ、食べようかな。
湊士: 僕も。
七星: 分かった。用意するから、荷物下ろしたり着替えたりしといてや。
由夢: うん。
湊士: さぁ、祐希。僕達に学校での話を聞かせて。
祐希: 良いよ。
由夢: 七星も教えなさいよ笑
七星: は~い笑
久々の再会を果たした神田家族は、七星と祐希の学校生活についての話に花を咲かせた。
陽芽叶の家
紫音: ふぅ~~久しぶりにゆっくりできる~
陽芽叶: 笑、お疲れ様。
つい今し方、仕事を終わらせて、執務室からリビングに移動してきた紫音は、陽芽叶の向かい側にあるソファにドカッと座り、クッションに身を任せた。
紫音: あ~その陽芽叶のお疲れ様で、体の疲れが浄化されていく。
陽芽叶: 気の所為だよ笑。長風呂して、たくさん寝なきゃ。
紫音: うん。でも、年越しまでは起きとく。陽芽叶が1人で寂しいだろうから笑
陽芽叶: 別に大丈夫なんだけど笑
紫音: 笑、陽芽叶は強いもんな~
陽芽叶: うん笑……
笑顔ではあるのだが、どこか悲しさを感じるような表情をする陽芽叶。
それに気づいた紫音は、何と声をかけるべきか考えた後、話を続ける。
紫音: ……でも…強いからって、人とは違う特別な力を持ってるからって、陽芽叶が必要以上の責任を感じることはないよ。
陽芽叶: …
紫音: 確かに相談できる相手は少ない……いや、正確に言えば、僕しかいないかもだけど、1人で抱え込まないようにね。
陽芽叶: ……ありがとう、お父さん笑
紫音: うん笑
父の言葉で心の重りが少しだけ軽くなった陽芽叶と、娘を暖かく見守る父の紫音は、笑顔で年越しの瞬間が来るのを待った。
そして、とうとう、皆が待っていた時がやって来る。
守里の家
蓮花: あと10秒だよ!カウントダウン!
結真: だね!10!
結真 蓮花: 9!
と、2人が元気よくカウントダウンを始め、それに続いて美月も始め、それを守里と桜は笑顔で眺める。
結真 美月 蓮花: 8!
美月: ほら!守里も!
蓮花: お姉ちゃん!
守里: はいはい笑
桜: うん笑
そうして、家族全員でカウントダウンをし…
「3!2!1!」
「ハッピーニューイヤー!!」
新しい……波乱の年を迎えたのだった。
to be continued
守里の家
蓮花: …年越しまで、あと10分か~
桜: 早いね~
結真: どうする?年越しの瞬間、地球にいなかった、みたいなのやる?
……
結真: え、何この空気…
美月: やっぱお姉ちゃんだね。
蓮花: ね。
結真: ちょっと、それどういうこと?!
守里: まぁまぁ笑
もうすぐで年越しを迎えるという頃、守里達家族は、リビングの炬燵に皆で入って、温もりながら、テレビを見ていた。
日向子と飛香とクリスマスツリーを見に行った時から、この大晦日までも…
クリスマス当日の夜は、美月が帰ってくる少し前に、何とか守里は家に到着して、無事、美月の機嫌を損ねることなく、その後を一緒に過ごしたり。
その翌日は、守里がバイトから帰ってくると、家の庭に人間サイズの雪だるまがあり、その近くで雪合戦をしていた、部活後の日向子と、既に雪まみれの蓮花に混じって、雪を被ったり。
日曜日には、木村道場に行って、一に稽古をつけてもらった後、道場の年末の掃除をし、それが終わったら、紗耶の手料理を美味しく食べたり。
バイト中、カフェBINGO!に、櫻宮、若月、七星が来て、奈々未にすごい揶揄われながら、その対応に追われたり。
などなど、色々とあった。
そして、今、守里は、家族団欒の時間を幸せに感じながら、ゆったりと過ごしている。
結真: っもう、なんでこう、私のイジられ役が定着しちゃったのかな~
プクっと頬を膨らませて、炬燵の中央に置いてある木製の果物鉢の中の蜜柑に手を伸ばしながら、結真はそう言う。
美月: う~ん…やっぱ、お姉ちゃんがちょっと遅れてるからだよ。
結真: っ!遅れ……こんな口の悪い妹達に囲まれて、私はなんて可哀想なの…
蓮花: そう言う嘘演技のせいでもあるんじゃない?笑
結真: あ、バレた笑。別に全然イジってもらって良いからね。それで皆が盛り上がるのであれば。
美月: さすがお姉ちゃん笑。略して、さす姉だね。
結真: さす姉?……笑、アリかも。パクッ
蓮花: あ、蓮花にもちょうだい!
皮を剥いた蜜柑を、結真が口に入れ始めたところで、蓮花が目ざとくねだる。
結真: え~自分で剥きなよ。
蓮花: お願い!キラキラ
結真: うっ……いや、ダメだね。ここは蓮花を育てるためにも…
守里: まぁ良いじゃん。蓮花、僕が剥いてあげるから。
蓮花: え、良いの?!!
思ってた以上の結果を得られて、蓮花はテンションが爆発的に上がる。
が、その結果を蓮花に独り占めされることを良しとしない人物がいた。
すぐ隣に。
美月: ちょっと、蓮花。守里!私にも、ちょ~だい!キラキラ
負けじと、美月もキラキラ光線を、その大きな瞳から出して、守里におねだりする。
そしてさらに…
桜: ……さくも欲しい。
美月: なっ!!
蓮花: 桜お姉ちゃんも?!!
照れ屋で引っ込み思案なせいで、出会ったばかりの頃は、中々、他の姉妹と同じように守里に甘えられなかった三女も、成長を見せて、小声ながらにお願いした。
美月: ダメ!私がもらうの!
蓮花: 違う!最初に言った蓮花に決まってる!
桜: ムゥ…
と、3人が言い争いを始めてしまい、結真の視線でそれを収めることになった守里は、こういう時に便利な勝負を提案する。
守里: じゃあ、こうしよう。3人でじゃんけんをして、勝った人は僕が剥いた蜜柑の半分を。負けた2人は、自分で剥いて食べる。どう?まぁ、蜜柑を多く食べたいなら負けた方が良いっていう、中々に捻ったしょう…
美月: 絶対に勝つ!!
蓮花: 神様、蓮花に味方して!!
桜: ふぅ……
守里: あ、みんな聞いてない。勝つことしか考えてないや…
結真: 笑、守里が皮を剥いた蜜柑を、3人は欲しがってるからね~~さぁ、始めるわよ。最初はグー、じゃんけん…
「ポン!」
蓮花: あっ…
桜: おっ…
美月: はぁぁ!
3人が、じゃんけんの結果に、それぞれの反応を示す中、喜びの反応を示したのは…
桜: ふふ笑、勝っちゃった。
一番最後に名乗りを上げた桜であった。
美月: ズルいズルいズルいズルいズルい!!!
結真: 美月。公平な真剣勝負で負けたんだから、潔く負けを認めなさい。ねぇ、蓮花。
蓮花: っ……そ、そうだよ、お姉ちゃん。子供だな~
美月: なっ、こ、子供………くっそ~
悔しさのままに、勢いよく果物鉢の中から蜜柑を取り、皮を剥き始める。
結真: 笑
さすが長女と言うべきか、結真は、蓮花に美月を煽らせるように誘導することで、2人の熱を同時に収めた。
守里: はい、桜。じゃんけんに勝った景品の、蜜柑。
桜: ……あ~
皮を剥いた蜜柑を、守里が手の上に乗せようとしてきたのを見て、桜は思い切って、口を開けて待つ。
守里: 笑、全く。
こちらもさすがと言うべきか、美月や蓮花、日向子らに同じことをする機会が多いため、守里は慣れたように、桜の口の中に蜜柑を入れる。
桜: パクッ…モグモグ……
守里: 美味しい?
桜: うん、美味しい。
守里: それは良かった笑
美月: ムー……パクッ…モグモグ…
蓮花: お姉ちゃん。
美月: ん。
蓮花: ありがと。パクッ…モグモグ…
結真: 笑、蓮花はどうしても、自分で蜜柑の皮を剥きたくないのね~
と、こんな感じで、守里の家では年越しを迎えようとしている頃、他の家では…
日向子の家
日向子: あともうちょっとでお正月だ!!
リビングのソファに座る日向子は、時計を見てそう叫ぶ。
日向子母: 笑、日向子も年越し蕎麦食べる?
キッチンで、日向子の父親である"南雲悟志"の年越し蕎麦を用意しながら、日向子の母がそう尋ねる。
日向子: いや、いい!
悟志: え~なんでよ。一緒に食べようよ、日向子。
親バカな悟志は、テーブルに着いたまま、日向子の方を見て、そうお願いする。
日向子: だって、もう食べたもん!
悟志: 別に年越し蕎麦はいくら食べたって…
日向子母: パパは1人で食べるのが寂しいみたいだけど?
見かねた日向子母が、助け舟を出す。
日向子: う~ん……じゃあ、隣で座ってるから!
悟志: ほんとか?!
日向子母: 笑、良かったわね~
と、仲良しな家族は、3人でテーブルに着いて、年越しを待つ。
飛香の家
飛香: ……あと少しか…
1人、自分の部屋のベッドの上で、読んでいた本を一旦置き、携帯を確認していると…
「飛香~~そろそろ降りておいで~」
母の声が1階のリビングの方から聞こえる。
飛香: …行くか。
そう言って、飛香はベッドから降り、携帯を持ってリビングに降りると、母はテレビの前に座り、父はソファの上で寝ていた。
飛香: 笑、お父さん寝てんじゃん。
飛香母: ほんとよね~笑。テレビ見てたら、いつの間にか寝ちゃってたの。
飛香: ふ~ん。
父の寝顔をチラッと見た飛香は、母の少し離れた隣に座った。
春時の家
一: まだじゃ!来い!!
春時: っ!はぁ!!
バチンッ!!
流れるように力を移動させた春時の右拳は、一の右手に抑えられる。
一: ふっ!
そして、春時の拳から受けた力を体の中で流し、畳を軽く蹴った反動と合わせて、左の上段蹴りを一は放つ。
ドンッ!
春時: くっ…
その蹴りの力を次の攻撃に利用しようと、回避はせず、右腕で受け止めたが、力を完全に流し切れず、春時は想定以上のダメージを受けてしまった。
一: ……よし、終わりじゃ。お前の臨越も切れたようじゃしな。
春時: …ふぅ……ありがとうございました。
姿勢を正した春時は、礼をする。
一: うむ。ありがとうございました。
それに対して、礼を返した一は、先程の闘いの評価を行う。
一: まぁ、臨越を使えるようにはなってきたが……使える時間が短過ぎる。
春時: はい。
一: それと、敵の攻撃の全てを受け止めて、利用しようとは思うな。最後の儂の蹴りのように、受け止め切れんものを受けると、大きなダメージを喰らうことになるからな。受ける攻撃と避ける攻撃をちゃんと見極めるように。以上。
春時: 分かりました。ありがとうございます。
一: では、居間に戻って、紗耶ちゃんと年越しを…
と、評価を終えて、一と春時が道場を出ようとしたところで…
ガラガラ!!
紗耶: バカ兄貴とじいじは、いつまでやってるの?!もう年越し来ちゃうよ!!
勢いよく道場の扉を開けた紗耶が、そう叫んだ。
一: あぁ~紗耶ちゃん!ちょうど今、行こうとしたんじゃよ。なぁ?春時。
春時: うん。すぐに行くから。
紗耶: ママ、怒ってるからね!
とだけ言い残して、紗耶はスタスタと道場から離れて行き、春時と一はマズいという顔を見合わせた後、急いで居間の方に向かうのであった。
七星の家
祐希:……ウトウト…
七星: ほら、祐希。もうちょっとだから、起き。
祐希: う~ん…眠い……
七星: 全く笑
深夜の時間帯ということで、瞼が自然と下がってきている祐希を、七星が笑いながら起こし続けていると、玄関の扉が開く音が聞こえる。
祐希: ん?
七星: まさか。
ガチャ
そして、リビングの扉が開き、そこにいたのは、大阪から帰ってきた父の湊士と、母の由夢であった。
湊士: 2人とも、ただいま。
祐希: お父さんとお母さんだ~
七星: おかえり。
由夢: ただいま。って、案の定、祐希は眠そうね。
祐希: うん、眠い~
テーブルに頬を付き、目を細めた笑顔を、久しぶりに会う両親に見せながら、祐希はそう言う。
湊士: 笑、ごめんね。こんなにギリギリになって。
七星: いや。逆によく帰って来れたね。色々と後処理が大変だったって聞いてたけど。
湊士: うん。大変だった。
由夢: でも、さすがに年越しぐらいは娘達といさせろ!って作戦部の中田さんを説得して、戻ってきたんだ。
七星: ふ~ん。あ、年越し蕎麦食べる?
思い出したように、七星は聞く。
湊士: あるの?
七星: 一応、お父さんとお母さんの分も作っといたから。まぁ、祐希がたくさん食べたせいで、ちょっと少な目やけどな笑
由夢: 笑、そんなに七星の蕎麦は美味しかったんだ。
祐希: うん、美味しかった。
由夢: じゃあ、食べようかな。
湊士: 僕も。
七星: 分かった。用意するから、荷物下ろしたり着替えたりしといてや。
由夢: うん。
湊士: さぁ、祐希。僕達に学校での話を聞かせて。
祐希: 良いよ。
由夢: 七星も教えなさいよ笑
七星: は~い笑
久々の再会を果たした神田家族は、七星と祐希の学校生活についての話に花を咲かせた。
陽芽叶の家
紫音: ふぅ~~久しぶりにゆっくりできる~
陽芽叶: 笑、お疲れ様。
つい今し方、仕事を終わらせて、執務室からリビングに移動してきた紫音は、陽芽叶の向かい側にあるソファにドカッと座り、クッションに身を任せた。
紫音: あ~その陽芽叶のお疲れ様で、体の疲れが浄化されていく。
陽芽叶: 気の所為だよ笑。長風呂して、たくさん寝なきゃ。
紫音: うん。でも、年越しまでは起きとく。陽芽叶が1人で寂しいだろうから笑
陽芽叶: 別に大丈夫なんだけど笑
紫音: 笑、陽芽叶は強いもんな~
陽芽叶: うん笑……
笑顔ではあるのだが、どこか悲しさを感じるような表情をする陽芽叶。
それに気づいた紫音は、何と声をかけるべきか考えた後、話を続ける。
紫音: ……でも…強いからって、人とは違う特別な力を持ってるからって、陽芽叶が必要以上の責任を感じることはないよ。
陽芽叶: …
紫音: 確かに相談できる相手は少ない……いや、正確に言えば、僕しかいないかもだけど、1人で抱え込まないようにね。
陽芽叶: ……ありがとう、お父さん笑
紫音: うん笑
父の言葉で心の重りが少しだけ軽くなった陽芽叶と、娘を暖かく見守る父の紫音は、笑顔で年越しの瞬間が来るのを待った。
そして、とうとう、皆が待っていた時がやって来る。
守里の家
蓮花: あと10秒だよ!カウントダウン!
結真: だね!10!
結真 蓮花: 9!
と、2人が元気よくカウントダウンを始め、それに続いて美月も始め、それを守里と桜は笑顔で眺める。
結真 美月 蓮花: 8!
美月: ほら!守里も!
蓮花: お姉ちゃん!
守里: はいはい笑
桜: うん笑
そうして、家族全員でカウントダウンをし…
「3!2!1!」
「ハッピーニューイヤー!!」
新しい……波乱の年を迎えたのだった。
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