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プロローグ
追い出されました
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「この役立たずの無能が!」
「我らの邪魔ばかりしおって!」
「だからこんな屑は序盤の町で見限ればよかったんですよ」
「全くだ……でもあんたも私たちと別れられて清々するでしょ」
「装備と荷物は全部よこせ。服だけは残しておいてやろう。そのみすぼらしいローブだけは」
「「「ワッハッハッハ!」」」
鬱蒼とした暗い夜の森の中、死んだように仰向けに突っ伏すおっさんは最後に勇者様御一行から投げつけられた暴言の数々を思い出していた。
「う……ううう……」
呻くおっさん。幸いなことに勇者一行がこの森に棲み着くモンスターをほとんど蹴散らしていたおかげでこうして呻いていても何かに襲われる危険はない。
「うぐぐ……ぐうう……」
静寂な森の中、おっさんの悔しそうな呻きだけがしっかりと木霊し、
「はぁ……腹減った」
ひょいと上半身を起こしたおっさんはお腹を押さえて腹の虫が鳴るのを確認した。
「やれやれ……少しパーティへの貢献具合を見誤ったな」
彼は勇者たちから見限られたことに対し、もちろん悔しい思いや腹立たしい気持ちはあったが、一通り呻いたら気も済んだしそもそも自分にも多少の非はあったのだし、更に腹も減ったので気を取り直すことにした。
彼の名前は保井武。日本人であった。半年ほど前にこちらの世界に召喚され、勇者パーティの一員として旅を続けていたのだが、冒頭のように見限られてしまい今に至る。
「とりあえず一人になってしまったし、しっかりとステータスを確認するか」
そう言うと武はステータスウィンドウを開き、自分のステータスを表示した。
【保井 武】
性別:男
年齢:32歳
職業:回復術士
レベル:30
MP:210
攻撃力:E+
防御力:D-
体 力:D
魔 力:A+
知 力:A
技 量:D-
俊敏性:E+
「……」
改めて自分のステータスを確認し、武は少し落ち込んだ。
というのも、彼を見捨てたパーティの平均レベルは60以上であった。彼の倍以上である。
同じパーティであったにも関わらず武のレベルが低かったのにはもちろん理由があった。
それは異世界召喚された彼がその時にこの世界の女神から授けられたいくつかのチートに起因するものであるが、簡潔に説明すると彼自身が己の持つ能力の驚異的な可能性に気付き、敢えて意図してポンコツを演じ自身の力を隠し通していたからだ。
とはいえ隠し通してしまったせいで冒険の中盤でこうして見限られてしまい、弁明する間もなく見限られてしまったのだった。
とはいえレベルは低いとはいえ、MPと魔力と知力の高さは流石であった。このレベル帯の他の魔術師と比べても抜きん出たものである。
「まあステータスなんてただの目安だからな。俺にとって重要なのはこっちの方だ」
そういうと武はステータスウィンドウをスクロールさせた。
その先に記されていたのは、ステータス以上に重要なものだった。
スキル:回復術(☆1)、錬金術(☆1)、アイテム精製(☆1)、魔力上昇(☆3)、知力上昇(☆3)、MP上昇(☆5)、MP消費軽減(☆9)、魔術能力強化(☆9)、身体能力強化(☆1)、鑑定(☆4)、察知(☆3)、威圧(☆1)、状態異常耐性(☆9)
固有スキル:回復術創造、成長限界突破、異世界スーパー、異次元ボックス
呪文:キュア(消費MP5)
「こっちも歪なものだ……熟練度の低いスキルはしっかりと上げたくなるな」
熟練度が低いスキルの中で回復術が☆1なのはわざとである。確かに数え切れないほど唯一使える呪文を行使してきたので本来なら最上級の☆9になっておくべきだが、貯め込んだ経験を敢えて使わずに貯め込んでおくことで故意に成長を止めているのだ。それ以外のスキルで熟練度が低いものは使う機会があまりなかったからである。
そして武の固有スキル。これが異世界召喚された際にこの世界の女神に要求した、あるいは後から加えられたチートである。
その中に回復術創造があるにも関わらず、使える呪文がキュア一つだけなのも敢えてそうしているのである。
そしてそれこそが、彼がポンコツを演じてまで隠し通してきた最強の呪文なのであった。
「……とりあえず腹も減ったし、近くの町に行ってみるか」
腹は減って足元がフラフラするが、森を出て東の方に町があるのは知っていたのでそこを目指すのだった。
鬱蒼とした夜の森は不気味であるが、武は怯えたりしない。
勇者パーティが森の魔物を蹂躙していったので危険はないからだ。
「お……池か」
森を進んでいると月明かりに水面がキラキラと光る小さな池が見えた。お腹は減っているが喉も乾いているので、フラフラと近付いて水分補給をしておくことにした。
両手で水を救って飲むと、冷たい水が喉にしっかりと染み込んだ。
「美味い……気がする」
味を感じる訳がないが、空腹のお腹に貯まる水はとても美味しく感じられた。
そのまま水面を覗き込んでいると、保井武の顔が水面に映り込んだ。
ボサボサの髪に無精髭。禄に栄養も取っていなかったせいかとても不健康そうな顔色に死んだような表情。
我ながら酷い面構えだと武は苦笑いを浮かべた。
「そうか……この様子だと町に着いても不審者扱いされて門番に止められそうだな」
そこから更に考える。
待てよ。勇者パーティの一員として加わっていた俺が一人でふらっと町に入ろうとするのも怪しい気がする。心配しすぎかもしれないが、冒険の序盤はそれなりにパーティメンバー全員平等に扱われていたので顔も知られているだろうが、中盤に差し掛かった頃は常に後方においやられて町に入るときもパーティメンバーではなくてまるで召使いのような扱いを受けていた。
だから今から行こうとする町で勇者パーティの一員だとバレる可能性は高くないだろうがゼロではない。そうなると何かしらトラブルに巻き込まれそうで気が進まなかった。
「仕方ない。正体を隠すか」
そう言うと武は自分の顔に両手を当て、唯一使える呪文を唱えた。
「キュア【遡行】」
すると彼の体は光に包まれ、呪文の本来の効果である回復効果とは全く違う変化が現れた。
みるみるうちに体は縮み、肌は若々しくなり、服はダボダボになっていく。
「ふう」
再び湖に顔を映した時、そこに映ったのは十二歳くらいまで若返った武のかわいい男の子の顔だった。
「ちょっと戻りすぎたかな……でもこれくらいの方が夜の町を訪れたら同情してすんなり受け入れられそうだ」
そう思うことにして納得するのだった。
「我らの邪魔ばかりしおって!」
「だからこんな屑は序盤の町で見限ればよかったんですよ」
「全くだ……でもあんたも私たちと別れられて清々するでしょ」
「装備と荷物は全部よこせ。服だけは残しておいてやろう。そのみすぼらしいローブだけは」
「「「ワッハッハッハ!」」」
鬱蒼とした暗い夜の森の中、死んだように仰向けに突っ伏すおっさんは最後に勇者様御一行から投げつけられた暴言の数々を思い出していた。
「う……ううう……」
呻くおっさん。幸いなことに勇者一行がこの森に棲み着くモンスターをほとんど蹴散らしていたおかげでこうして呻いていても何かに襲われる危険はない。
「うぐぐ……ぐうう……」
静寂な森の中、おっさんの悔しそうな呻きだけがしっかりと木霊し、
「はぁ……腹減った」
ひょいと上半身を起こしたおっさんはお腹を押さえて腹の虫が鳴るのを確認した。
「やれやれ……少しパーティへの貢献具合を見誤ったな」
彼は勇者たちから見限られたことに対し、もちろん悔しい思いや腹立たしい気持ちはあったが、一通り呻いたら気も済んだしそもそも自分にも多少の非はあったのだし、更に腹も減ったので気を取り直すことにした。
彼の名前は保井武。日本人であった。半年ほど前にこちらの世界に召喚され、勇者パーティの一員として旅を続けていたのだが、冒頭のように見限られてしまい今に至る。
「とりあえず一人になってしまったし、しっかりとステータスを確認するか」
そう言うと武はステータスウィンドウを開き、自分のステータスを表示した。
【保井 武】
性別:男
年齢:32歳
職業:回復術士
レベル:30
MP:210
攻撃力:E+
防御力:D-
体 力:D
魔 力:A+
知 力:A
技 量:D-
俊敏性:E+
「……」
改めて自分のステータスを確認し、武は少し落ち込んだ。
というのも、彼を見捨てたパーティの平均レベルは60以上であった。彼の倍以上である。
同じパーティであったにも関わらず武のレベルが低かったのにはもちろん理由があった。
それは異世界召喚された彼がその時にこの世界の女神から授けられたいくつかのチートに起因するものであるが、簡潔に説明すると彼自身が己の持つ能力の驚異的な可能性に気付き、敢えて意図してポンコツを演じ自身の力を隠し通していたからだ。
とはいえ隠し通してしまったせいで冒険の中盤でこうして見限られてしまい、弁明する間もなく見限られてしまったのだった。
とはいえレベルは低いとはいえ、MPと魔力と知力の高さは流石であった。このレベル帯の他の魔術師と比べても抜きん出たものである。
「まあステータスなんてただの目安だからな。俺にとって重要なのはこっちの方だ」
そういうと武はステータスウィンドウをスクロールさせた。
その先に記されていたのは、ステータス以上に重要なものだった。
スキル:回復術(☆1)、錬金術(☆1)、アイテム精製(☆1)、魔力上昇(☆3)、知力上昇(☆3)、MP上昇(☆5)、MP消費軽減(☆9)、魔術能力強化(☆9)、身体能力強化(☆1)、鑑定(☆4)、察知(☆3)、威圧(☆1)、状態異常耐性(☆9)
固有スキル:回復術創造、成長限界突破、異世界スーパー、異次元ボックス
呪文:キュア(消費MP5)
「こっちも歪なものだ……熟練度の低いスキルはしっかりと上げたくなるな」
熟練度が低いスキルの中で回復術が☆1なのはわざとである。確かに数え切れないほど唯一使える呪文を行使してきたので本来なら最上級の☆9になっておくべきだが、貯め込んだ経験を敢えて使わずに貯め込んでおくことで故意に成長を止めているのだ。それ以外のスキルで熟練度が低いものは使う機会があまりなかったからである。
そして武の固有スキル。これが異世界召喚された際にこの世界の女神に要求した、あるいは後から加えられたチートである。
その中に回復術創造があるにも関わらず、使える呪文がキュア一つだけなのも敢えてそうしているのである。
そしてそれこそが、彼がポンコツを演じてまで隠し通してきた最強の呪文なのであった。
「……とりあえず腹も減ったし、近くの町に行ってみるか」
腹は減って足元がフラフラするが、森を出て東の方に町があるのは知っていたのでそこを目指すのだった。
鬱蒼とした夜の森は不気味であるが、武は怯えたりしない。
勇者パーティが森の魔物を蹂躙していったので危険はないからだ。
「お……池か」
森を進んでいると月明かりに水面がキラキラと光る小さな池が見えた。お腹は減っているが喉も乾いているので、フラフラと近付いて水分補給をしておくことにした。
両手で水を救って飲むと、冷たい水が喉にしっかりと染み込んだ。
「美味い……気がする」
味を感じる訳がないが、空腹のお腹に貯まる水はとても美味しく感じられた。
そのまま水面を覗き込んでいると、保井武の顔が水面に映り込んだ。
ボサボサの髪に無精髭。禄に栄養も取っていなかったせいかとても不健康そうな顔色に死んだような表情。
我ながら酷い面構えだと武は苦笑いを浮かべた。
「そうか……この様子だと町に着いても不審者扱いされて門番に止められそうだな」
そこから更に考える。
待てよ。勇者パーティの一員として加わっていた俺が一人でふらっと町に入ろうとするのも怪しい気がする。心配しすぎかもしれないが、冒険の序盤はそれなりにパーティメンバー全員平等に扱われていたので顔も知られているだろうが、中盤に差し掛かった頃は常に後方においやられて町に入るときもパーティメンバーではなくてまるで召使いのような扱いを受けていた。
だから今から行こうとする町で勇者パーティの一員だとバレる可能性は高くないだろうがゼロではない。そうなると何かしらトラブルに巻き込まれそうで気が進まなかった。
「仕方ない。正体を隠すか」
そう言うと武は自分の顔に両手を当て、唯一使える呪文を唱えた。
「キュア【遡行】」
すると彼の体は光に包まれ、呪文の本来の効果である回復効果とは全く違う変化が現れた。
みるみるうちに体は縮み、肌は若々しくなり、服はダボダボになっていく。
「ふう」
再び湖に顔を映した時、そこに映ったのは十二歳くらいまで若返った武のかわいい男の子の顔だった。
「ちょっと戻りすぎたかな……でもこれくらいの方が夜の町を訪れたら同情してすんなり受け入れられそうだ」
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