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最初の町
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「アカネさんはザーインに着く前は何をしてたんです?」
契約を結んでしばらくの時間が経った。
二人はテントの中で裸のまま肩を寄せ合い、うつ伏せで毛布に包まりながらお互いの生い立ちや実情などをぽつぽつと語り合っていた。
「主を探す旅をしていました」
彼女の国では成人を迎える齢十五になると、二十歳までの間に主君に仕える一人前の忍とならなければならない。
さる国の国王や領主に指名され召し抱えられる者も少なくはないそうだが、アカネはそういう権力に迎合する流れを嫌い、国から国を渡り歩いて相応しい主を探し回っていたらしい。
そして最近この地方に辿り着いたら、途端に旅路の治安が悪くなり、モンスターや山賊に立て続けに襲われてしまい力尽きたところを先のギルドチームに拾われてしまったそうだ。
この地方の治安が悪くなった理由に、ホイムは心当たりがあった。
彼が参加していた勇者パーティが訪れる先々で後先考えず力尽くで問題を解決してしまったがために、勇者たちの目が届かぬところでいろいろと歪みができてしまっているのだ。
保井武はそれに気付いていたが、口を出せば凄惨な仕置きを下されるのみだと身に沁みていたので余計なことを言うことはなかった。
自分のことは伏せつつそのことをアカネに伝えると、「勇者が聞いて呆れますね」と憤っていた。
「辛い思いをしてきたんだね……」
ホイムは自分の保身がアカネの行き先を狂わせてしまった一因となっていることに心を痛め、申し訳なく彼女の頭を撫でていた。
「ですがおかげでホイム様に出会えたのです。今は感謝すらしています」
複雑な気持ちには変わりがないが、その言葉をもらえただけホイムの罪悪感は少しだけ和らいだ。
「ホイム様は? 確かキャラバンが襲われて町に来たと窺っておりますが」
「うん……実はそれは嘘なんだ。本当は、僕も勇者たちと因縁があって……今は詳しく話せないけれど、アカネさんにはいつか話すから」
「はい。私はいつでもホイム様を受け入れる覚悟でございます」
出会って間もない二人が深い絆で結ばれたのは、勇者との因縁や受けた理不尽などで共鳴する部分もあったからなのだろう。
「ホイム様はこれからどうなさるおつもりです?」
ホイムはアカネにこの辺りの地図を用意してもらい、二人で寝っ転がりながら今の状況を確認する。
「アカネさんはしたい事とか行きたい所はありますか?」
「私のしたい事はホイム様のしたい事、行きたい所はホイム様の行きたい所です」
その言葉はとっても嬉しいけれど、今言われると困ってしまうとホイムは思った。
「僕は正直なところ、何か強い目的があるわけじゃないんだ。ただ……勇者たちは憎かったし、復讐したいという気持ちがなかったわけじゃない」
「ではそれを目的にしましょう」
いきなり大それたことを言う腹心であった。
「今の僕らじゃ対峙しても返り討ちにあうのが関の山だよ」
「では強くなりましょう」
「勇者の実力はとんでもなく高いんだよ? 僕らじゃどれだけ努力しても、多分到達できないよ」
レベル限界のないホイムなら勇者を出し抜くことも可能かもしれないが、どれだけ莫大な経験を積めばいいのか検討がつかなかった。
経験値バグでレベルはかなり高く上げることはできるだろう。だがおそらくであるが、勇者もレベル限界突破は所持していてもおかしくないし、単純な戦闘経験自体がホイムには圧倒的に不足していた。
数値だけでは推し量れぬところが大きいのだった。
「では復讐は諦めるのですか?」
「……」
無言でアカネを見つめるホイム。彼の頭の中には、ギャルゲーのようにいくつかの選択肢が思い浮かんでいた。
その一つを、だいぶ照れくさいがアカネに言ってみる。
「僕はその、正直なところ……アカネさんが一緒なら、のんびり冒険して、どこかで暮らすのもいいかなと……」
目を泳がせながら口にした台詞にどんな反応が返ってくるか怖いものがあったが、
「ホイム様……」
とても喜んでいる。効果は抜群だ。
二人きりのテント内というのは不思議なもので、隙あらばイチャイチャとしてしまうようだ。
あんまりにもイチャイチャしすぎると話が一向に進まない。
ほどほどで落ち着いて気を取り直したところで、アカネが進言してきた。
「コホン。ですがやはり旅に目的は持つべきかと……」
「だよね。それで、さっき考えたんだけれど」
「はい……アカネはどのような卑猥な考えも受け入れます……」
「違うって! ……えっとね、とりあえず勇者に復讐したいなっていう気持ちは持ちつつも保留しておくとして、じゃあまずはあいつらの先回りをしておいてから、どう決着をつけるか決めようかなって」
「なるほど……勇者を出し抜き待ち伏せながら策を練ろうというのですね」
「まあそんな感じかな?」
そして彼らは地図に視線を下ろした。
契約を結んでしばらくの時間が経った。
二人はテントの中で裸のまま肩を寄せ合い、うつ伏せで毛布に包まりながらお互いの生い立ちや実情などをぽつぽつと語り合っていた。
「主を探す旅をしていました」
彼女の国では成人を迎える齢十五になると、二十歳までの間に主君に仕える一人前の忍とならなければならない。
さる国の国王や領主に指名され召し抱えられる者も少なくはないそうだが、アカネはそういう権力に迎合する流れを嫌い、国から国を渡り歩いて相応しい主を探し回っていたらしい。
そして最近この地方に辿り着いたら、途端に旅路の治安が悪くなり、モンスターや山賊に立て続けに襲われてしまい力尽きたところを先のギルドチームに拾われてしまったそうだ。
この地方の治安が悪くなった理由に、ホイムは心当たりがあった。
彼が参加していた勇者パーティが訪れる先々で後先考えず力尽くで問題を解決してしまったがために、勇者たちの目が届かぬところでいろいろと歪みができてしまっているのだ。
保井武はそれに気付いていたが、口を出せば凄惨な仕置きを下されるのみだと身に沁みていたので余計なことを言うことはなかった。
自分のことは伏せつつそのことをアカネに伝えると、「勇者が聞いて呆れますね」と憤っていた。
「辛い思いをしてきたんだね……」
ホイムは自分の保身がアカネの行き先を狂わせてしまった一因となっていることに心を痛め、申し訳なく彼女の頭を撫でていた。
「ですがおかげでホイム様に出会えたのです。今は感謝すらしています」
複雑な気持ちには変わりがないが、その言葉をもらえただけホイムの罪悪感は少しだけ和らいだ。
「ホイム様は? 確かキャラバンが襲われて町に来たと窺っておりますが」
「うん……実はそれは嘘なんだ。本当は、僕も勇者たちと因縁があって……今は詳しく話せないけれど、アカネさんにはいつか話すから」
「はい。私はいつでもホイム様を受け入れる覚悟でございます」
出会って間もない二人が深い絆で結ばれたのは、勇者との因縁や受けた理不尽などで共鳴する部分もあったからなのだろう。
「ホイム様はこれからどうなさるおつもりです?」
ホイムはアカネにこの辺りの地図を用意してもらい、二人で寝っ転がりながら今の状況を確認する。
「アカネさんはしたい事とか行きたい所はありますか?」
「私のしたい事はホイム様のしたい事、行きたい所はホイム様の行きたい所です」
その言葉はとっても嬉しいけれど、今言われると困ってしまうとホイムは思った。
「僕は正直なところ、何か強い目的があるわけじゃないんだ。ただ……勇者たちは憎かったし、復讐したいという気持ちがなかったわけじゃない」
「ではそれを目的にしましょう」
いきなり大それたことを言う腹心であった。
「今の僕らじゃ対峙しても返り討ちにあうのが関の山だよ」
「では強くなりましょう」
「勇者の実力はとんでもなく高いんだよ? 僕らじゃどれだけ努力しても、多分到達できないよ」
レベル限界のないホイムなら勇者を出し抜くことも可能かもしれないが、どれだけ莫大な経験を積めばいいのか検討がつかなかった。
経験値バグでレベルはかなり高く上げることはできるだろう。だがおそらくであるが、勇者もレベル限界突破は所持していてもおかしくないし、単純な戦闘経験自体がホイムには圧倒的に不足していた。
数値だけでは推し量れぬところが大きいのだった。
「では復讐は諦めるのですか?」
「……」
無言でアカネを見つめるホイム。彼の頭の中には、ギャルゲーのようにいくつかの選択肢が思い浮かんでいた。
その一つを、だいぶ照れくさいがアカネに言ってみる。
「僕はその、正直なところ……アカネさんが一緒なら、のんびり冒険して、どこかで暮らすのもいいかなと……」
目を泳がせながら口にした台詞にどんな反応が返ってくるか怖いものがあったが、
「ホイム様……」
とても喜んでいる。効果は抜群だ。
二人きりのテント内というのは不思議なもので、隙あらばイチャイチャとしてしまうようだ。
あんまりにもイチャイチャしすぎると話が一向に進まない。
ほどほどで落ち着いて気を取り直したところで、アカネが進言してきた。
「コホン。ですがやはり旅に目的は持つべきかと……」
「だよね。それで、さっき考えたんだけれど」
「はい……アカネはどのような卑猥な考えも受け入れます……」
「違うって! ……えっとね、とりあえず勇者に復讐したいなっていう気持ちは持ちつつも保留しておくとして、じゃあまずはあいつらの先回りをしておいてから、どう決着をつけるか決めようかなって」
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