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獣狼族の森
旅立ちました
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「あっちの嬢さんには気を遣わせてしまったな。後でお主の口から伝えてやるといい」
「え……いいんですか?」
「事実かどうか確かめるすべがないからの。気遣いは無用じゃ。それに大切な人に隠し事をするのも心苦しかろう」
ロム爺の言葉に少しだけホイムの気も楽になった。同時に、自分のことを隠している件についても刺さる言葉であったので心苦しくなるのだった。
「では僕はこれで」
ロム爺に一礼してホイムは立ち上がった。
「待ちなさい。一晩泊まって行くといい」
その提案にホイムは小さく首を振った。
「ありがたい申し出ですが遠慮しておきます。これ以上一緒にいると別れがもっと辛くなりますから」
ホイムの視線に釣られてロム爺もルカに目を落とした。
「この子を置いていくのかい?」
「もともとはドラゴン退治の名目で一緒にいましたから。結局仇は魔人の男でしたが、彼はもうこの森にはいません……彼女がそいつを追いかけるわけにもいかないでしょう」
「夫がいなくなればさぞ悲しもう」
「……ルカがいなくなったら、悲しむ家族は大勢います」
それを聞いたロム爺は一呼吸だけ間を置いて、ゆっくりと口を開いた。
「分かった。引き止めはしまい……達者でな」
最後にもう一度頭を下げたホイムは族長の屋敷を出た。
扉を出るとすぐにアカネが彼の側に降り立った。
「お話は済みましたか?」
「うん」
言葉を交わしたところで、彼らに獣狼族の子ども達が駆け寄ってきた。
ルカの家族だ。
「ルカは?」
「元気?」
双子の男の子が心配そうに訊ねるので、ホイムは安心させるように笑って答えた。
「大丈夫だよ。でも今は疲れて眠っているから、そっとしておいてあげて」
「うん」
「分かった」
二人は少しだけ声を潜めて頷いた。
「もう無茶して飛び出していったりしない?」
「ルカ姉……」
同じく不安げな表情の女の子たちにも、ホイムはもう安心だと伝えた。
ホッとした顔になった四人は、静かにルカの眠る屋敷の中へと入っていった。
「慕われていますね」
「そうですね……だから、ルカはここに残ってみんなを導かなきゃいけないんだと思います」
「彼女なら立派な長になりましょう」
二人は村長の館で丸まって寝ているであろうルカに対し温かな視線を送った。短い間であったが共に森の中を旅した仲間……ルカから言わせれば家族であるが、特別な仲であったのは間違いなかった。
名残惜しくないと言えば嘘になる。だからこそ早めに別れようとホイムは決め、半ばルカを避けるように集落を出ようとしたのだった。
その後も他の獣狼族たちがホイム達に労いや感謝の言葉をかけてくるし、ずっとこの集落にいてほしいと二人を受け入れようとしてくれる者もいた。
しかしながら次の目的地があるのでと返答し見送りもそこそこにしてもらい、ホイムとアカネは二人連れ立って集落から旅立つのだった。
「そうですか……獣王が……」
森を抜けるため北の方へと歩を進めながら、ホイムはロム爺に言われた通りにアカネに獣王の件を告げていた。
「未確認のことだから、あまり大勢に知られるのはまずいなって思って……ごめん」
「お気になさらず。当然の配慮です」
すんなりと受け入れてくれる彼女になら、自分が転移者であることも勇者パーティにいたことも隠す必要はない。そう思えるホイムだった。
「しかし魔人同士の対立ですか……。ロム爺殿も仰っていましたが、信じがたいお話です」
「やっぱりそう思うよねえ」
ホイムは苦笑して頬を掻いた。
「でも、彼女は嘘は吐いていない。信じてもいい……そう感じたんだ」
直接対話したからこそ、ホイムだけはそう思えるのだった。
「……………………彼女?」
「あ、うん。マールフレアさんっていう……そっか、アカネさんもルカも眠ってたから」
顔や姿は知らないのだった。それなのに何も教えずに話をしていただなんて、とホイムは反省した。
「二本角の魔人の女性なんだ。あの男と同じでパンツスタイルのスーツで、背が高くってスタイルのいい……アカネさん?」
すっごく睨んでくる。少しだけホイムの背筋がひんやりした。
「あの……」
「そうですか……私の目の届かない隙に魔人の女と二人っきりで……」
「それはアカネさんもルカも疲れ果ててたから……」
「フーーーーーーーーンッ」
そっぽを向かれてしまったホイムはおそるおそる声をかけた。
「……怒っています?」
「いません! ……ホイム様は特に女性にはお優しいので信じるんですねと感心しただけです!」
そのままホイムを置いていくように、アカネはスタスタスタスタと早足で森を進んでいった。
「アカネさーん…………」
怒ってるじゃないですか。
口には出せず、ホイムは肩を落としてトボトボと後を追いかけるのだった。
「え……いいんですか?」
「事実かどうか確かめるすべがないからの。気遣いは無用じゃ。それに大切な人に隠し事をするのも心苦しかろう」
ロム爺の言葉に少しだけホイムの気も楽になった。同時に、自分のことを隠している件についても刺さる言葉であったので心苦しくなるのだった。
「では僕はこれで」
ロム爺に一礼してホイムは立ち上がった。
「待ちなさい。一晩泊まって行くといい」
その提案にホイムは小さく首を振った。
「ありがたい申し出ですが遠慮しておきます。これ以上一緒にいると別れがもっと辛くなりますから」
ホイムの視線に釣られてロム爺もルカに目を落とした。
「この子を置いていくのかい?」
「もともとはドラゴン退治の名目で一緒にいましたから。結局仇は魔人の男でしたが、彼はもうこの森にはいません……彼女がそいつを追いかけるわけにもいかないでしょう」
「夫がいなくなればさぞ悲しもう」
「……ルカがいなくなったら、悲しむ家族は大勢います」
それを聞いたロム爺は一呼吸だけ間を置いて、ゆっくりと口を開いた。
「分かった。引き止めはしまい……達者でな」
最後にもう一度頭を下げたホイムは族長の屋敷を出た。
扉を出るとすぐにアカネが彼の側に降り立った。
「お話は済みましたか?」
「うん」
言葉を交わしたところで、彼らに獣狼族の子ども達が駆け寄ってきた。
ルカの家族だ。
「ルカは?」
「元気?」
双子の男の子が心配そうに訊ねるので、ホイムは安心させるように笑って答えた。
「大丈夫だよ。でも今は疲れて眠っているから、そっとしておいてあげて」
「うん」
「分かった」
二人は少しだけ声を潜めて頷いた。
「もう無茶して飛び出していったりしない?」
「ルカ姉……」
同じく不安げな表情の女の子たちにも、ホイムはもう安心だと伝えた。
ホッとした顔になった四人は、静かにルカの眠る屋敷の中へと入っていった。
「慕われていますね」
「そうですね……だから、ルカはここに残ってみんなを導かなきゃいけないんだと思います」
「彼女なら立派な長になりましょう」
二人は村長の館で丸まって寝ているであろうルカに対し温かな視線を送った。短い間であったが共に森の中を旅した仲間……ルカから言わせれば家族であるが、特別な仲であったのは間違いなかった。
名残惜しくないと言えば嘘になる。だからこそ早めに別れようとホイムは決め、半ばルカを避けるように集落を出ようとしたのだった。
その後も他の獣狼族たちがホイム達に労いや感謝の言葉をかけてくるし、ずっとこの集落にいてほしいと二人を受け入れようとしてくれる者もいた。
しかしながら次の目的地があるのでと返答し見送りもそこそこにしてもらい、ホイムとアカネは二人連れ立って集落から旅立つのだった。
「そうですか……獣王が……」
森を抜けるため北の方へと歩を進めながら、ホイムはロム爺に言われた通りにアカネに獣王の件を告げていた。
「未確認のことだから、あまり大勢に知られるのはまずいなって思って……ごめん」
「お気になさらず。当然の配慮です」
すんなりと受け入れてくれる彼女になら、自分が転移者であることも勇者パーティにいたことも隠す必要はない。そう思えるホイムだった。
「しかし魔人同士の対立ですか……。ロム爺殿も仰っていましたが、信じがたいお話です」
「やっぱりそう思うよねえ」
ホイムは苦笑して頬を掻いた。
「でも、彼女は嘘は吐いていない。信じてもいい……そう感じたんだ」
直接対話したからこそ、ホイムだけはそう思えるのだった。
「……………………彼女?」
「あ、うん。マールフレアさんっていう……そっか、アカネさんもルカも眠ってたから」
顔や姿は知らないのだった。それなのに何も教えずに話をしていただなんて、とホイムは反省した。
「二本角の魔人の女性なんだ。あの男と同じでパンツスタイルのスーツで、背が高くってスタイルのいい……アカネさん?」
すっごく睨んでくる。少しだけホイムの背筋がひんやりした。
「あの……」
「そうですか……私の目の届かない隙に魔人の女と二人っきりで……」
「それはアカネさんもルカも疲れ果ててたから……」
「フーーーーーーーーンッ」
そっぽを向かれてしまったホイムはおそるおそる声をかけた。
「……怒っています?」
「いません! ……ホイム様は特に女性にはお優しいので信じるんですねと感心しただけです!」
そのままホイムを置いていくように、アカネはスタスタスタスタと早足で森を進んでいった。
「アカネさーん…………」
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口には出せず、ホイムは肩を落としてトボトボと後を追いかけるのだった。
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