異世界召喚された回復術士のおっさんは勇者パーティから追い出されたので子どもの姿で旅をするそうです

かものはし

文字の大きさ
72 / 131
パルメティの街

話をしました

しおりを挟む
「ルカ。次からは大丈夫だよね?」
「うん……もう触らない。とっても気を付ける」
「……だそうですから」

 アカネとルカに目配せすると、二人もしぶしぶ従ってみせた。

「リーダーはホイム様ですから……」
「次からは私ももっと見張っておこう」

 罠を一つ越えるのに少し騒動したが、隊列は変わることなく再び進行していった。

「ホイム様は何かお考えがあってルカを?」

 進む最中にアカネが小声で訊ねてきたので、ホイムはうんと頷いて答えた。

「ルカはこれから獣王を目指そうとしてるでしょう? だから、少し苦手そうなことも色々と経験させておいた方が良いかと思って」

 ホイムもルカに一番槍を任せることに不安がなかったわけではないが、然様な考えがあったと知ればアカネも得心した。

「……でも危ないと思ったら代わりますよ?」
「あはは……はい」

 二人の会話が耳に届いていたエミリアは、先を行くルカが次期獣王の座を目指しているということに疑問を抱いた。
 それは現獣王が息災であるのに次期を決めることを見据えるのは尚早であると思ったからであり、決してルカの実力を侮っていたわけではない。
 先程の罠を発動させてしまった時、エミリアは躱し防ぐのが精一杯であったが、ルカは拳と足で真っ向から危険を退けている。
 元聖華騎士団筆頭騎士の目から見ても、ルカの力量は一目置かざるを得ない程のものであった。
 またルカを先頭にしばらく進めば、暗い遺跡に棲み着いた蝙蝠の魔物、ジャイアントバットが襲いかかってくることもあった。
 ルカがほとんど爪で裂き倒し、エミリアは剣を振るわずに盾で押し潰し、撃ち漏らした魔物がホイムに迫る前にアカネがクナイで突き殺す。

「楽勝!」

 喜ぶルカの肩に手を置きエミリアが労いながら、気を引き締めるよう促す。彼女にルカの後ろを任せたのは良かったとホイムは思っていた。

「君たちが手を貸してくれて本当に助かる。私だけではあの程度のモンスターを相手にするのも、この場では一苦労だ」

 確かに大柄なエミリアが剣を振り回せるほど遺跡の通路は広くない。盾を使って迎撃したのもそのためだ。
 小回りの利くルカとアカネがいて助かっているのは本当のことだ。

(……あれ? 僕は?)

 何もしてないんだけど。
 今やっていることと言えば光の玉を出して行き先を照らしているだけ。こと戦闘に関しては、未だ何もしていなかった。四人の中で自分だけ守られているような、戦えていないような……戦力になっていない気がする奇妙な感覚が少しだけ不安であった。

「それにしてもこの遺跡は一体何のために建てられたのでしょうか」

 後ろにいるアカネがぽつりと漏らした。この遺跡の建てられた目的とは何なのか、ホイムに知る由もなかった。

「エミリアさん」

 ホイムが質問のバトンをエミリアに回すと、彼女は記憶を辿りながら語り始めた。

「私も詳しくは知らない。ただ、この場を探る時に集めた話によると……どうやら遥か古に存在していた邪悪なる神を祀った祭壇、のような場所らしい」
「女神フォトのことですか?」
「そんな訳はなかろう。フォト様は今現在このフォトナームを見守ってくださっている慈悲深き神なのだから」
「そうですよ。いくらホイム様が女神から加護を授かる間柄とはいえ、不敬が過ぎますよ」

 エミリアとアカネは知らないのだ。女神様がホイムの体を邪な思いで弄んでいることを。彼にとっては、まさに邪神そのものであった。

「ほう? 女神様から加護を授かるとは普通の冒険者とは違うようだな」
「あはは……。それより邪悪な神……邪神がいたんですね」

 愛想笑いの後、話を逸らすように古の神についてエミリアに訊ねた。

「ああ。今より数百年以上昔の古い話に出てくる神だ。君ぐらいの歳だと、まだ歴史に興味はなかったかな?」
「いえ……少し興味深いです」

 フォトナームの歴史について全く触れる機会のなかったホイムにとって、その話は新鮮に聞こえた。

「古い話で文献もそう残ってはいないが、かつてこの世界は様々な種族が手を取り合い、身近な存在として暮らしていたらしい。今とは大違いだな……しかしある時、原因は分からぬが世界を見守っていた創造神と破壊神が激しく争い、地上にも災厄が降り注ぎ大きな爪痕を残していったそうだ。それを機に土地と種族は分かたれ、今の世界の基礎ができた……というのがフォトナームに伝わる伝承だな」
「ああ……その話なら私も小耳に挟んだことがあります」

 流石は知恵袋のアカネ。エッチな話以外にも造詣が深いのであった。

「しかし私は千年以上昔の話だと伺いましたが……」
「時期がズレるなど昔話にはよくある話だ」

 数百年も千年も誤差のようなものということである。

「その、創造神と破壊神の戦いの後に女神フォトがこの世界の神になったんですか?」
「ああ。おかげでフォトナームは神が不在の無神世界にならずに済んだというわけだ」

 創造神と破壊神と女神。どういう経緯があったのか、今度フォトに会った時に訊ねてみたいネタが増えたホイムであった。
しおりを挟む
感想 180

あなたにおすすめの小説

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

美人同僚のおまけとして異世界召喚された私、無能扱いされ王城から追い出される。私の才能を見出してくれた辺境伯様と一緒に田舎でのんびりスローライ

さら
恋愛
美人な同僚の“おまけ”として異世界に召喚された私。けれど、無能だと笑われ王城から追い出されてしまう――。 絶望していた私を拾ってくれたのは、冷徹と噂される辺境伯様でした。 荒れ果てた村で彼の隣に立ちながら、料理を作り、子供たちに針仕事を教え、少しずつ居場所を見つけていく私。 優しい言葉をかけてくれる領民たち、そして、時折見せる辺境伯様の微笑みに、胸がときめいていく……。 華やかな王都で「無能」と追放された女が、辺境で自分の価値を見つけ、誰よりも大切に愛される――。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

処理中です...