異世界召喚された回復術士のおっさんは勇者パーティから追い出されたので子どもの姿で旅をするそうです

かものはし

文字の大きさ
71 / 131
パルメティの街

侵入しました

しおりを挟む
「あくまでルカに慎重に進んでもらうという前提で……ですけど」

 その前置きははしゃぎやすいルカをたしなめるためのものであった。

「何があるか分からない遺跡と洞窟内では、異常を察知しやすいルカが一番前なのがいいと思います」
「うん! ルカに任せる!」

 ルカは張り切っているが、残りの二人は若干懐疑的な眼差しを向けてくる。やはり落ち着きのなさが不安らしい。

「……そこでルカの後ろをエミリアさんについてもらおうと思います。ルカが先走りそうな時は引き止めてもらったり、危ない時は防御も担当してもらおうかと……」
「ルカはどうでもいい!」
「特に異論はない」
「そして殿はアカネさん。何か見落としがあった時や背後からの強襲を警戒してもらおうかと」
「承知しました……私が先導しても良かったのですが」

 アカネの警戒力ならば細かい罠や違和感も気付いてくれるはずである。そういう点では探索の先頭を任せても良さそうであるが、ホイムはそうしなかった。

「僕的には後ろの方が怖いと思って……だからそこは一番安心のできるアカネさんに任せようと」
「お任せください!」

 アカネのやる気が漲った。

(扱いが上手いものだ……)

 エミリアはそう思うと同時に、昨夜のことも合わせてそれだけ二人に深い絆があるのだと感じた。それを加味すればルカもそうなるわけで、絆が深くないのはゲストの自分だけである。
 別に疎外感を抱いたわけではなく、自分以外の者に肉体関係があるという事実を改めて認識してしまうとどうにも気まずい。
「それじゃあ行きましょう」
 ホイムの言葉にルカとアカネは頷いた。エミリアも、一度頭を振ってもう一度しっかりと自分の目的を思い返して進行していくのだった。



 遺跡の中はひんやりとした空気が満ちており、同時に埃っぽさが肌にまとわりつくようだった。
 壁には魔力で明かりを灯す魔導具が備え付けてあったが、侵入者であるホイム一行はそれを使うことを遠慮し、ホイムが唱えたキュア【光球】の照らす淡い光を頼りに歩を進めていた。
 床も壁も天井も石を重ねて造り込まれており、外見は朽ちていたが中はそう傷んではいないようであった。
 誰かが手入れをしたのかもしれない。

「この遺跡の奥に洞窟がある……ってことですよね?」

 ホイムは前を歩くエミリアに問いかけた。

「ああ。噂ではそのようになっているらしい。私も実際に入るのは初めてなので確実な事は言えないが……」
「まだしばらくは遺跡が続きそうな雰囲気ではありますね」

 後ろのアカネの言葉にホイムも賛同した。
 この遺跡がどれほどの規模で地下に広がっているのかはエミリアが聞いた噂でしか分からない。極めて大きなものではないが、まだまだ序盤も序盤であるのは間違いないだろう。

「……あ」

 一番前を歩くルカが何かに気付いたのか、声を上げた。

「どうかしたか?」

 後ろから話しかけるエミリアが慎重にルカの先の通路を見やる。
 歩いてきた道と変わらぬ光景だが、自分には気付けないモノを察したのかとルカの動向を窺った。

「妙な感じする」
「どこだ?」
「ココ」

 ルカが真横に腕を伸ばし、壁に手をつく。
 ガコン。
 石壁の一部が窪むと同時に低い音が鳴り、壁の隙間から無数の刃が通路を埋め尽くした。。
 一瞬でズバンと迫り出してきた刃物がゆっくりと元に戻っていくと、そこには細切れになった肉片などはなかった。

「……」
「……」

 寸前で異変を察したアカネはホイムを抱きかかえて後方に飛び退き難を逃れていた。

「ほら! 当たった!」

 ルカは先頭にいた位置から一歩も動かず、自分の間合いに飛び出してきた刃物を素手で全て叩き折り、叩き割り、全くの無傷。

「……あ、お……」

 絶句しているエミリアは、刃が飛び出す仕掛けの壁を自慢の盾で粉砕し、体をそこに納めることで辛うじて助かっていた。仕掛けを組み込まれた脆い壁でなければ、咄嗟に粉砕はできなかったろう。

「……お前は馬鹿か!?」

 エミリアとアカネは声を揃えてルカに詰め寄る。とうの彼女はキョトンとした顔で、

「罠見つけて突破する。ちゃんとできた」

 何を怒っているのかと言いたげであった。

「そうじゃないでしょう!」
「罠を起動してどうする!?」

 どうやらルカは罠を打ち破って進むつもりであったらしく、回避解除して進むつもりでいた他の三人とは決定的に認識が違っていたのであった。

「ホイム様! やはり私が先頭を行きます!」
「私もそれが懸命だと思うぞ!」

 アカネとエミリアはホイムに進言してくるが、彼の目には二人の背後で耳を垂らしてしょげるルカの姿が映っていた。

「ま……まあまあ。もう少しだけ様子を見ようじゃないですか」
「今死にかけたというのに何を呑気な!」

 その通りであるが、ホイムはルカを先頭から変える気はなかった。
しおりを挟む
感想 180

あなたにおすすめの小説

追放された荷物持ちですが、実は滅んだ竜族の末裔でした~のんびり暮らしたいのに、なぜかそうならない~

ソラリアル
ファンタジー
目が覚めたら、俺は孤児だった。 家族も、家も、居場所もない。 そんな俺を拾ってくれたのは、優しいSランク冒険者のパーティだった。 「荷物持ちでもいい、仲間になれ」 その言葉を信じて、俺は必死についていった。 だけど、自分には何もできないと思っていた。 それでも少しでも役に立ちたくて、夜な夜な一人で力を磨いた。 だけどある日、彼らは言った。 『ここからは危険だ。荷物持ちは、もう必要ない』 それは、俺の身を案じた「優しさ」からの判断だった。 俺も分かっていた。 だから、黙ってそれを受け入れ、静かにパーティを離れた。 「もう誰にも必要とされなくてもいい。一人で、穏やかに生きていこう」 そう思っていた。そのはずだった。 ――だけど。 ダンジョンの地下で出会った古代竜の魂と、 “様々な縁”が重なり、騒がしくなった。 「最強を目指すべくして生まれた存在」 「君と一緒に行かせてくれ。」 「……オリオンを辞めさせた、本当の理由を知っている」 穏やかなスローライフ生活を望んだはずなのに、 世界はまた、勝手に動き出してしまったらしい―― ◇小説家になろう・カクヨムでも同時連載中です◇

英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~

ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国辺境でただ静かに生き延びたいだけの少年・ヴァン。 彼に正義感はない。あるのは、母が遺したノートに記された、物理法則を応用した「高圧魔力」の理論と、徹底した費用対効果至上主義だけだ。 敵国三千の精鋭が灰燼城に迫る絶望的状況。ヴァンは剣を振るわず、心理戦と補給線攪乱だけで、たった三日で敵軍を撤退させる。 この効率的すぎる勝利は帝国の中枢に届き、彼は最高峰の帝国軍事学院への招待状を手に入れる。 「英雄になりたいわけじゃない。ただ、母の死の真相と父の秘密を知るため、生き残らなきゃならないだけだ」 無口最強の仮面メイド・シンカク、命を取引に差し出した狼耳少女・アイリ。彼は常にコスパの高い道を選び、母の遺したノートの謎、そして生まれて一度も会ったことのない父・帝国大元帥のいる帝都の闇へと踏み込んでいく。 正義も英雄も、損をするなら意味がない。合理主義が英雄譚を侵食していく、反英雄ミリタリー学園ファンタジー。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

召喚失敗から始まる異世界生活

思惟岳
ファンタジー
庭付き一戸建て住宅ごと召喚されたせいで、召喚に失敗。いったん、天界に転送されたジュンは、これからどうしたいかと神に問われた。 「なろう」さまにも、以前、投稿させていただいたお話です。 ペンネームもタイトルも違うし、かなり書き直したので、別のお話のようなものですけれど。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公 じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい …この世界でも生きていける術は用意している 責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう という訳で異世界暮らし始めちゃいます? ※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです ※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

処理中です...