異世界召喚された回復術士のおっさんは勇者パーティから追い出されたので子どもの姿で旅をするそうです

かものはし

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パルメティの街

密かに来ました

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 女性の心はよく理解できないと胸の中でぼやくホイムは、しばらく続いた沈黙に耐えかねてアカネに話しかけた。

「……アカネさん」
「なんでしょうか?」
「怒っていますか?」
「怒っていません」

 しかし不機嫌な様子であるのは間違いない。怒っていないというならば、別の気持ちを抱いているのかもしれない。

「……ひょっとして拗ねてます?」

 一瞬、ギクッとした表情をアカネが浮かべ、すぐさま覆面で口元を覆い隠した。
 図星である。

「はぁ……」

 呆れたようにホイムが息を吐くと、アカネが曇った瞳で眉根を寄せて訴えてきた。

「だってだって! ホイム様の命を受けた私がひとり孤独に耐えながら任をこなして戻ってみれば……」

 アカネは顔を赤らめてぷるぷると震えながら、思いの丈をぶち撒けた。

「なんですかさっきの! 客人といい雰囲気を漂わせて! あんなのを見せられたら……」

 目をうるうるさせて詰め寄る様は怒りに身を任せて、という風には感じられなかった。
 言葉が途絶えたところで、ホイムが後ろを付け足した。

「……やきもちですか?」

 覆面の下のアカネの頬がまさに焼いた餅のようにぷくぅっと膨らんだ。 パンと弾けると同時に彼女は俯き、気恥ずかしそうに顔を伏せた。
 その様子に、ホイムの胸はきゅんとした。
 ホイムはアカネに擦り寄ると、小声で囁くように告げた。

「確かにエミリアさんは美人ですしお強いですし、嫌いじゃありません」

 アカネの背中がしゅんと丸まった。

「でも僕が冒険を始めてから、ずっと一番にいるのはアカネさんです。いいですか何度でも言いますよ? 一番はアカネさんですから」

 アカネの背筋が真っ直ぐになった。

「ホイム様……」
「アカネさん……」

 そのまま二人は寄り添いながら、森の中へと消えていった。

「…………」

 そのやり取りを、テントの中で横になっていたエミリアは一から十まで全て聞いていた。
 聞くつもりはなかったが聞こえてきたのでしょうがない。
 二人が立ち去った気配もばっちり把握していたが、今日は昨日と違って後を追うような真似はしなかった。何をしに行ったのか予測できたからだ。
「まったく……このパーティは問題がある」

 心を入れ替え……というよりは当初の目的を再確認して芯と為したエミリアには、もう出歯亀をするような心の弱さは既にない。流石は元聖華騎士団筆頭騎士である。
 だからこそ、明日に洞窟に突入するというのにあんなことやそんなことをしに行く不真面目な二人に対して些か失望してしまうのだった。

「……」

 鎧を脱ぎ横になり、明日に備えて休息を取るエミリアは、

「……私が美人、か……」

 ホイムが何気に発した台詞にほんの少しだけ心を揺さぶられそうに、

「ふるふるふる」

 なったのだが首を振って邪な思いを振り払うのだった。




「――さて。あそこが私の目指していた遺跡だ」

 翌日になり早朝から行動を開始したホイム一行は、エミリアを戦闘にして遺跡の近くまで密かに近づいていた。
 森の木々の隙間から石造りの遺跡を覗き見るエミリア、ルカ、ホイム。
 長らく放置されていたのか所々は崩れ落ち、草木が生い茂り辺りを覆い尽くしている。地下へと続く階段のある入り口はぽっかりと口を開けているが、じっくりと観察すれば足元の草は踏みしだかれ、何者かが出入りしているかのような痕跡があった。
 おそらくそれは目撃情報にあった者たちが残したものであろう。
 息を潜めていた三人のところへ、遺跡の周囲を探っていたアカネが静かに戻ってくる。

「周辺には何者の気配もありませんでした。誰かがいるとすれば、やはり遺跡の奥にあるという洞窟かと」
「そうですか……お疲れ様でした」

 労をねぎらうホイムの言葉に悦ぶ様子をちらりと見るエミリアに、アカネが気付いた。

「さあエミリアさん。気を引き締めて参りましょう」
「う、うむ……」

 丁寧な言葉使いは昨晩と変わらないが、裏に含ませた刺々しさらしいものが微塵も感じられなかった。
 昨日は威圧感があったが今日はまるで聖母のよう。すこぶる機嫌が良いのだろう。そしてその原因は夜中にホイムとシケ込んだ事によるというのも、エミリアは察していた。
 結果的にパーティ内の雰囲気が改善したので悪いことではないのだが、ふしだらな行為によるものと思うとやはり釈然とはしないのであった。

「よし! 乗り込む!」

 意気揚々と正面から突っ込もうとするルカの首根っこをアカネが捕まえた。

「ぐえっ」
「待てぃ! こういうのは事前にしっかりと役割を決めてだな……」

 先走るルカを制すアカネを尻目に、思案する素振りを見せるホイムはぽむと手を打った。

「いえ。でもルカ先頭はいいと思います」

 ホイムの言葉に三人の視線が集中したので、続けて話す。
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