異世界召喚された回復術士のおっさんは勇者パーティから追い出されたので子どもの姿で旅をするそうです

かものはし

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パルメティの街

ギスギスしました

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「今日は竈は必要ないですね?」
「ああ。テントだけあれば十分だろう」

 そしてホイムはテントの設営作業を続けた。

「手伝おう」

 彼の返事を待たずして、エミリアが手を貸してきた。

「ありがとうございます」

 作業をしながら、ただ黙々と続けるのもなんなので……と思ったホイムが口を開く。

「火を使わない食事は外だと久しぶりですね」
「そうか。旅の道中はいつも料理を?」
「アカネさんがしてくれます」
「家庭的な女性なのだな」
「ええ……ルカは食材調達、僕は食べる専門です。エミリアさんは料理するんですか?」

 手を動かしながら、彼女は首を横に振った。

「私も君と同じだ。どうにも料理はな……何度か試みたこともあるが包丁は上手く使えんし、味も大雑把で団員には不評だったよ」
「そうですか……」

 剣一つで筆頭騎士の座を勝ち取ったエミリア。家事はどうやら苦手のようであった。

「ところでエミリアさん」
「なんだ?」
「テントが逆さまに立ってるんですけど……」

 エミリアの助力により、いつも据え付けているテントが前衛的な姿をして鎮座していた。

「……すまん」

 家事だけでなく、全般的に不器用なようであった。
 あまりのテントの出来にホイムとエミリアは視線を交わし、おかしそうに笑いあった。




「た、だ、い、ま、も、ど、り、ま、し、た」

 二人の空間に割って入ったアカネの声にホイムは驚いて身を竦ませた。

「おお、お、お帰りなさいっ」

 突然気配が現れたものだからびくついたのだが、

「……」

 アカネはじとっとした目でホイムを見つめていた。

「何を慌てておいでですか?」
「慌ててないです! びっくりしただけです!」
「本当ですか? よもや私はお邪魔……なのかと思いましたが」
「本当ですってぇ」

 ホイムの返答も疑わしく思ったのか、アカネは踵を返してその辺に歩いていった。
 戻って早々にへそを曲げたかのようなアカネの態度を気にしたホイムはアカネの名前を呼びながら後をついていき、一人残されたエミリアは頭を掻いて嘆いた。

「……どうやら嫌われているらしいな、私は」

 一時的なパーティ、必要以上に仲良く馴れ合うことはないが、なるべく良い関係を築いておく方が好ましいのは承知している。
 しかしながら剣を振るしか能のないエミリアには、どうやって同じ年頃の同性と親睦を深めればいいのかピンとくるものがなかった。

(聖華騎士団にいた頃は、剣の腕でそれなりに慕われていた自覚はあるが……はてさて)

 外の者といきなり剣を交えて親睦が深まるわけもなかろうと、エミリアはテントをひっくり返しながら常識的に考えていた。



 火を用いぬ食事は多少味気ないものであった。
 ルカだけは森で仕留めてきたワイルドボアの肉をスライスして生でパクパク食べていたが、他の三人は同じく彼女が森で採取してきた木の実や果実……それと、アカネが街で調達してきた干し肉やチーズといったものをもそもそと口にして腹を満たしていた。

「あ……あーやっぱりアカネさんの手料理じゃないと少し物足りないなあ」

 食事の最中にそう口走るホイムであったが、賛同するものはいなかった。
 エミリアは彼女の手料理の味を知らぬし、ルカは生肉で満足であったし、アカネはまだご機嫌斜めの様子であった。

「…………」

 あまりよろしくない場の空気に気落ちするホイムに声をかけようかと思うエミリアであったが、どうやらこの雰囲気の原因は自分にも一因があるというのは感じていたので口を挟むのは憚られていた。
 静かな食卓から最初に離れたのは、ルカだった。

「ごちそうさま! お腹いっぱい……」

 腹が膨れたルカは目を擦りながら大あくびをする。

「食べてすぐ横になると牛になりますよ」

 ルカに一瞥もくれずにアカネが忠告するが、ルカは構わずテントから毛布を引っ張り出してきた。

「大丈夫、ルカは獣狼族……獣牛族にはならなぁい」

 そう言うとすぐにテント脇の木陰で丸くなって眠りについた。彼女なりに明日の戦いに備えての本能的な行動だろう。

「……私もご馳走になった」

 ルカに続くようにお暇しようとするエミリアに、アカネが先程と同じように忠告……というよりも進言をする。

「どうぞエミリアさんはテントでゆっくりお休みになってください」

 さん付けされていただろうか。
 いやそれ以外にも、ルカには睡眠を忠告しておいて今度は睡眠を進めているような言い方。

「いや……」

 一言拒むような台詞を口にすると、

「どうぞ?」

 と笑顔で勧めてくる。牛になれと言われているのだろうか。

「お言葉に……甘えよう」

 これ以上抵抗しても良い事はないと判断したエミリアは観念してテントの中へと姿を消していった。
 残されたホイムとアカネ。いつもなら二人でいても自然体でいられるはずが、今日はどこか不自然な空気が流れていた。
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