異世界召喚された回復術士のおっさんは勇者パーティから追い出されたので子どもの姿で旅をするそうです

かものはし

文字の大きさ
75 / 131
パルメティの街

戦いました

しおりを挟む
 アカネとルカが百合百合しい雰囲気になりそうもない頃、ホイムとエミリアも男女の雰囲気にななりそうもなかった。
 一体どこまで歩けばいいのか判然としない中で、ホイムは少し気になったことを口にした。

「そういえばエミリアさんの頬の傷……」
「これがどうした?」

 足を止めずに振り返るエミリアの左頬にある古傷を見ながら、ホイムは続けた。

「さっきキュアをかけた時、治りませんでしたね」
「治るものなのか?」
「僕の魔法は古傷の痕も治します。アカネさんもそうでしたから」
「ふむ。傷の治癒か……」

 エミリアは少し考えてから、笑ってホイムに伝えた。

「ならばこれは治ることはないな」
「何故ですか?」
「私はこれを傷とは思ってはいない」

 その言葉を疑問に思うホイムだったが、続く言葉に納得させられた。

「これは姫様を守る時についたもの……守護する騎士としては勲章、誉れだ」
「……理解しました」

 彼女にとっての古傷はアカネのものとは違い誇らしいものであるのだ。それを消してしまうのは、彼女にとってありえないことであった。

「おかげで騎士団を辞めた後の嫁の貰い手もなさそうだが」

 そう言いながらも気にしていないと剛気に笑うエミリアに、ホイムも愛想笑いを浮かべるしかなかった。

(美人なんだけどなあ……)

 胸中でそう言ったのは、今口にしても真剣には受け取られないかと感じたからであった。
 エミリアとホイムは先程から上り坂となった通路を進んでいた。
 上に向かっているということは、落ちてきた地点に少しは近づいているのかもしれない。
 と、二人は同時に足を止めた。

「気付いたか?」
「ええ」

 二人は通路の先をキッと見据えた。

「前から来ている」
「後ろから来てます」
「……」
「……」

 挟み撃ちであった。

「何故後ろから来る!?」
「分かりませんよ!」

 エミリアは盾を、ホイムは腰を落として身構えた。
 彼女の言う通り前方から敵が来るならば分かるが、後方は確かに不可解であった。骨の廃棄場からここまで一本道であったはずだが、隠し通路の見落としなどあったのであろうか。
 疑問に対する答えは、姿を現した魔物を見てはっきりとした。
 カタカタと軽いものが擦れ合う不気味な音。淡い光球が照らす範囲に踏み込んできたのは、歩く人骨であった。

「スケルトンか!」

 さっきまでいた骨の山にあったモノの中に、魔物が息を潜めて機会を伺っていたに違いない。

「ああ。正面もだ」

 エミリアが相対しているのもスケルトンの群れである。ただし前後の集団で違いがあるのは、ホイムが対する後方の魔物は朽ち果てた装備品しか纏っていないのに対し、エミリアが迎え撃つ前方の魔物は比較的上等な槍や防具を装備する上級種であった。

「そちらは任せても!?」
「問題ない。さっさと片付けて君を手伝おう」
「それには及びませんよ!」

 二人はそれぞれ眼前の集団へ向かっていった。
 ホイムが相手にする魔物の群れは数以外に驚異はなかった。そしてこの広くはない一本道の通路なら、一瞬で決めてしまえる呪文があった。

「キュア【聖光】!」

 両手を重ねて唱えた呪文は文字通り聖なる光を放つ魔法。
 二人の頭上に浮かぶ光球とは光の性質が全く異なっている。
 周囲を明るく照らす光ではなく、白い閃光と称せる眩き光の波動である。ホイム達が通ってきた道を遡り、骨捨場まで届く程の強烈な光の奔流が襲いかかる。
 光を浴びたスケルトン達は灰となった遺骨のようにさらさらと、塵と化して消えてゆく。
 攻め入らんとする大群に手も足も骨も出させぬ、まさに先手必勝の一撃であった。
 系統としては神聖魔法に属し魔力をそれなりに消費してしまうホーリーライトの呪文になるが、ホイムの手にかかれば初級の回復魔法であるキュア一発分の魔力で済むのであった。
 ものの数秒で決着をつけたホイムは、すぐさま後ろを振り向いた。
 どうですか言った通り手伝いには及びませんでしたよと少し得意気な表情でエミリアを見やったが、すぐさま驚いたような呆れ果てたような顔へと変貌してしまった。

「はぁッ! たあッ!」

 剣を使わぬエミリアは、スケルトンを一体ずつ、盾で壁に圧殺していた。一歩進む毎に一体のスケルトンが潰されている。
 ボキバキベキと骨と防具を諸共に潰して進んでいく様は、止まることのない重戦車のような迫力をホイムに見せつけていた。
 敵を倒すと同時に進路を切り開くエミリアの後ろをとことことついていくホイム。やがてエミリアが一息つくと、

「これで終い、だ」

 最後の一体に向けて盾を振り下ろし、地面にバラバラに砕けたスケルトンの遺骨ができあがった。

「……お見事」

 パチパチと手を鳴らすホイムは、結構先へと進めていることに気付いていた。上り坂が終わっていたのだ。
しおりを挟む
感想 180

あなたにおすすめの小説

追放された荷物持ちですが、実は滅んだ竜族の末裔でした~のんびり暮らしたいのに、なぜかそうならない~

ソラリアル
ファンタジー
目が覚めたら、俺は孤児だった。 家族も、家も、居場所もない。 そんな俺を拾ってくれたのは、優しいSランク冒険者のパーティだった。 「荷物持ちでもいい、仲間になれ」 その言葉を信じて、俺は必死についていった。 だけど、自分には何もできないと思っていた。 それでも少しでも役に立ちたくて、夜な夜な一人で力を磨いた。 だけどある日、彼らは言った。 『ここからは危険だ。荷物持ちは、もう必要ない』 それは、俺の身を案じた「優しさ」からの判断だった。 俺も分かっていた。 だから、黙ってそれを受け入れ、静かにパーティを離れた。 「もう誰にも必要とされなくてもいい。一人で、穏やかに生きていこう」 そう思っていた。そのはずだった。 ――だけど。 ダンジョンの地下で出会った古代竜の魂と、 “様々な縁”が重なり、騒がしくなった。 「最強を目指すべくして生まれた存在」 「君と一緒に行かせてくれ。」 「……オリオンを辞めさせた、本当の理由を知っている」 穏やかなスローライフ生活を望んだはずなのに、 世界はまた、勝手に動き出してしまったらしい―― ◇小説家になろう・カクヨムでも同時連載中です◇

召喚失敗から始まる異世界生活

思惟岳
ファンタジー
庭付き一戸建て住宅ごと召喚されたせいで、召喚に失敗。いったん、天界に転送されたジュンは、これからどうしたいかと神に問われた。 「なろう」さまにも、以前、投稿させていただいたお話です。 ペンネームもタイトルも違うし、かなり書き直したので、別のお話のようなものですけれど。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~

ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国辺境でただ静かに生き延びたいだけの少年・ヴァン。 彼に正義感はない。あるのは、母が遺したノートに記された、物理法則を応用した「高圧魔力」の理論と、徹底した費用対効果至上主義だけだ。 敵国三千の精鋭が灰燼城に迫る絶望的状況。ヴァンは剣を振るわず、心理戦と補給線攪乱だけで、たった三日で敵軍を撤退させる。 この効率的すぎる勝利は帝国の中枢に届き、彼は最高峰の帝国軍事学院への招待状を手に入れる。 「英雄になりたいわけじゃない。ただ、母の死の真相と父の秘密を知るため、生き残らなきゃならないだけだ」 無口最強の仮面メイド・シンカク、命を取引に差し出した狼耳少女・アイリ。彼は常にコスパの高い道を選び、母の遺したノートの謎、そして生まれて一度も会ったことのない父・帝国大元帥のいる帝都の闇へと踏み込んでいく。 正義も英雄も、損をするなら意味がない。合理主義が英雄譚を侵食していく、反英雄ミリタリー学園ファンタジー。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公 じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい …この世界でも生きていける術は用意している 責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう という訳で異世界暮らし始めちゃいます? ※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです ※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

処理中です...