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パルメティの街
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「やっぱり……あの人が団長さんですね」
エミリアの背中でホイムも確信を抱いた時、アリアスは首輪に繋がれた鎖を乱暴に引かれて地面を転がった。
鎖を手にした男はげひげひと笑い、しゃがれた声を披露する。
「ひひひ、筆頭騎士を嵌めるつもりが。よ、余計なもんまでついてきちまって」
男はカメレオンを思わせるギョロギョロとした目で二人を観察してくる。ホイムは歓迎されていないらしい。
エミリアは男を睨み返し、よく通る声をこの場に響かせた。
「貴様がアリアスを辱めた張本人か!」
その言葉には怒気が多分に含まれていたが、男は愉快そうにまた下衆な笑いを浮かべた。
「いひひ、今こいつで遊んでるのは俺さ!」
今にも飛びかかりそうなエミリアを制すように、ホイムは強く彼女の背中にしがみついていた。
「で、で、で、でもよ! 俺にこいつと道具をくれたのはあいつよ!」
あいつというのが誰を指しているのか、ホイムにもエミリアにも分からない。ただ、ペラペラと饒舌に喋るこの男も、アリアスと症状は違えども尋常ならざる様子であった。
「道具っていうのは! その釜から漂ってる怪しげな煙のことか!」
妙な様子の男と話ができる間に多くのことを聞き出そうと、ホイムが会話に介入した。
「お、おおお。こ、いつと薬のおかげでこの女はおお、俺の玩具になった!」
薬、というのはエミリアが道中で受けた傷に盛られていたものである。二つの相乗効果でアリアスは正気を保てなくなり、エミリアは意識を失いかけ、ホイムだけが無事にこの場に辿り着けたのだった。
「全部お前が用意したのか? それとも……」
「そ、それれだけじゃない!」
話を遮る男の顔が狂気に歪み、懐から取り出した真っ黒な結晶を頭上に掲げた。
「あれは……?」
警戒するホイムとエミリアは、地面に無数の膨らみが隆起するのを目にした。
崩れ落ちる土の中から姿を現したのは、尋常ならざる数のスケルトンやアンデッドだった。
「死者の軍団……!?」
「先刻の襲撃もこの男の仕業か!」
エミリアはスケルトンの集団を思い出したが、ホイムは別の事に思い至っていた。
エミリアの背から下りたホイムが男に向かい問いかけた。
「あんたに、こんな力を与えたのは……魔族か?」
「魔族……だと!?」
突然出てきた言葉に驚いたのはエミリアだけであった。
質問を受けた男は既に正気にあらず。けたたましく笑いながら使役する生なき魔物にホイム達を襲わせる。
「ちッ……」
「ホイム! 今の質問は」
「話は後です! 来ますよ!」
ホイムは正面から迫るスケルトンの剣戟を後ろに転がって躱すと、入れ替わりに前へ出たエミリアの振り下ろす盾が槌のようにモンスターを圧壊する。同時に盾から抜き払った横薙ぎの剣が周囲の敵も蹴散らしていく。
通路という狭い空間では使えなかった剣も、この広間なら大いに振り回すことができる。
「魔法剣は使えんが……」
使ってしまえば洞窟の崩落を招きかねない。そうなればアリアスを巻き込みかねず、考えなしに使うには場所が悪すぎる。
加えて陽の光の届かぬ地下はアンデッド系の魔物が活発になりやすい環境である。一体一体なら驚異ではないが、塵も積もれば……である。
しかし彼女の背後には、多数の敵を殲滅できる頼りになる回復術士がいるのだ。
「キュア【聖光】!」
ホイムの手から放たれた眩い光は広間を隈なく照らし出し、溢れかえっていたアンデッドを塵へと還す。
「頼りになるな!」
叫ぶエミリアは手下を失った男へ向けて突っ込んでいく。
しかし木霊する男の笑いと共に、再び地面が隆起する。
土の中から突き出された槍を盾で弾いたエミリアの足が止まり、またもや数え切れぬ量のアンデッド軍団が発生する。
「無尽蔵なのか?」
「キリがないですね……」
もう一度キュアを放って敵を一掃することもできる。そして三度アンデッドが召喚されればまたキュアを放つ。
ホイムの魔力が尽きるか敵のストックが尽きるかの勝負に出るしかないのだろうか。
「せめて陽が届けばな」
エミリアの漏らした言葉に、ホイムは一つの可能性を見出した。
「キュア【貫矢】!」
ホイムが唱えたのは、貫通力に特化させた無属性の魔法である。
それを広間の天井に向けて放てば、どこまでも突き進む一閃が洞窟を抜け、上層に広がる遺跡をも過ぎ、外へと飛び出し消え去った。
魔法が穿った拳ほどの大きさもない穴からは、今は頭上に煌めくはずの太陽の明かりが僅かながら届いてくる。
「駄目だ! それでは充分な光が届く前に君が力尽きる!」
自分の言葉にヒントを受けてホイムがそのような行動に出たと悟ったエミリアであったが忠告の通り、このサイズでは先にホイムの魔力が尽きるのは明白。
だがホイムがエミリアに見せたのは、彼女の不安を拭うために見せた笑みだった。
エミリアの背中でホイムも確信を抱いた時、アリアスは首輪に繋がれた鎖を乱暴に引かれて地面を転がった。
鎖を手にした男はげひげひと笑い、しゃがれた声を披露する。
「ひひひ、筆頭騎士を嵌めるつもりが。よ、余計なもんまでついてきちまって」
男はカメレオンを思わせるギョロギョロとした目で二人を観察してくる。ホイムは歓迎されていないらしい。
エミリアは男を睨み返し、よく通る声をこの場に響かせた。
「貴様がアリアスを辱めた張本人か!」
その言葉には怒気が多分に含まれていたが、男は愉快そうにまた下衆な笑いを浮かべた。
「いひひ、今こいつで遊んでるのは俺さ!」
今にも飛びかかりそうなエミリアを制すように、ホイムは強く彼女の背中にしがみついていた。
「で、で、で、でもよ! 俺にこいつと道具をくれたのはあいつよ!」
あいつというのが誰を指しているのか、ホイムにもエミリアにも分からない。ただ、ペラペラと饒舌に喋るこの男も、アリアスと症状は違えども尋常ならざる様子であった。
「道具っていうのは! その釜から漂ってる怪しげな煙のことか!」
妙な様子の男と話ができる間に多くのことを聞き出そうと、ホイムが会話に介入した。
「お、おおお。こ、いつと薬のおかげでこの女はおお、俺の玩具になった!」
薬、というのはエミリアが道中で受けた傷に盛られていたものである。二つの相乗効果でアリアスは正気を保てなくなり、エミリアは意識を失いかけ、ホイムだけが無事にこの場に辿り着けたのだった。
「全部お前が用意したのか? それとも……」
「そ、それれだけじゃない!」
話を遮る男の顔が狂気に歪み、懐から取り出した真っ黒な結晶を頭上に掲げた。
「あれは……?」
警戒するホイムとエミリアは、地面に無数の膨らみが隆起するのを目にした。
崩れ落ちる土の中から姿を現したのは、尋常ならざる数のスケルトンやアンデッドだった。
「死者の軍団……!?」
「先刻の襲撃もこの男の仕業か!」
エミリアはスケルトンの集団を思い出したが、ホイムは別の事に思い至っていた。
エミリアの背から下りたホイムが男に向かい問いかけた。
「あんたに、こんな力を与えたのは……魔族か?」
「魔族……だと!?」
突然出てきた言葉に驚いたのはエミリアだけであった。
質問を受けた男は既に正気にあらず。けたたましく笑いながら使役する生なき魔物にホイム達を襲わせる。
「ちッ……」
「ホイム! 今の質問は」
「話は後です! 来ますよ!」
ホイムは正面から迫るスケルトンの剣戟を後ろに転がって躱すと、入れ替わりに前へ出たエミリアの振り下ろす盾が槌のようにモンスターを圧壊する。同時に盾から抜き払った横薙ぎの剣が周囲の敵も蹴散らしていく。
通路という狭い空間では使えなかった剣も、この広間なら大いに振り回すことができる。
「魔法剣は使えんが……」
使ってしまえば洞窟の崩落を招きかねない。そうなればアリアスを巻き込みかねず、考えなしに使うには場所が悪すぎる。
加えて陽の光の届かぬ地下はアンデッド系の魔物が活発になりやすい環境である。一体一体なら驚異ではないが、塵も積もれば……である。
しかし彼女の背後には、多数の敵を殲滅できる頼りになる回復術士がいるのだ。
「キュア【聖光】!」
ホイムの手から放たれた眩い光は広間を隈なく照らし出し、溢れかえっていたアンデッドを塵へと還す。
「頼りになるな!」
叫ぶエミリアは手下を失った男へ向けて突っ込んでいく。
しかし木霊する男の笑いと共に、再び地面が隆起する。
土の中から突き出された槍を盾で弾いたエミリアの足が止まり、またもや数え切れぬ量のアンデッド軍団が発生する。
「無尽蔵なのか?」
「キリがないですね……」
もう一度キュアを放って敵を一掃することもできる。そして三度アンデッドが召喚されればまたキュアを放つ。
ホイムの魔力が尽きるか敵のストックが尽きるかの勝負に出るしかないのだろうか。
「せめて陽が届けばな」
エミリアの漏らした言葉に、ホイムは一つの可能性を見出した。
「キュア【貫矢】!」
ホイムが唱えたのは、貫通力に特化させた無属性の魔法である。
それを広間の天井に向けて放てば、どこまでも突き進む一閃が洞窟を抜け、上層に広がる遺跡をも過ぎ、外へと飛び出し消え去った。
魔法が穿った拳ほどの大きさもない穴からは、今は頭上に煌めくはずの太陽の明かりが僅かながら届いてくる。
「駄目だ! それでは充分な光が届く前に君が力尽きる!」
自分の言葉にヒントを受けてホイムがそのような行動に出たと悟ったエミリアであったが忠告の通り、このサイズでは先にホイムの魔力が尽きるのは明白。
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