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パルメティの街
打ち倒しました
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自身のマントを脱ぎアリアスの体を覆ったエミリアは立ち上がり、名残惜しく釜から溢れた液体に執着している男に向けて静かに告げた。
「貴様がやったのか」
その言葉にふらりと立ち上がった男は、大きく体を反らし正気とも狂気ともつかぬ顔を向けて言い放った。
「俺がそいつを預けられた時にはぁ……もうずたぼろの肉人形だったなぁ……だがよぉ、面白くはなかったが散々使わせてもらったよ。ありがたいことに穴は幾つも付いてるからなあ!」
「……下衆が」
蔑みの視線を向けるアカネが忍刀を携え飛び出そうとするのを、ホイムは制した。
同時にルカにも声をかけ、アリアスを抱えて一緒にこの場から離れるように指示した。
「エミリアさん」
ホイムの呼びかけに彼女は振り返りはしない。しかし耳は傾けていた。
「これだけ広くなった場所なら、思う存分戦えますよね?」
「……感謝する」
ホイム達はエミリアの後ろへと下がり、彼女が自分の手で決着をつけるのを見届けることにした。
これは彼女がやらなければならない事だと、三人は言葉を交わさずともそう理解していたのだ。
「……聖華騎士団筆頭騎士、エミリア・ハーウェイ。我が友の無念……我が怒り……そして我らが騎士団の誇りを以て、貴様を討つ!」
盾を掲げ剣を構えるエミリアの口上を受け、男は全く動じない。それどころか壮絶な笑みを浮かべ、懐から取り出した小瓶を口にした。
「やってみろよ! この雌豚が!」
噛み砕いた小瓶から溢れた何かの液体を口にした途端、男の体が異形なものへと変貌を遂げていく。
そのシルエット……長身のエミリアをも凌ぐ大きな体躯は、翼を羽ばたかせ二足で立ち上がる黒竜のようであった。
「ドラゴン!?」
驚くホイムだが、その大きさは彼の知るブラックドラゴンほどの巨大さではない。寧ろ人に近い。
「むう……あれは竜人族……?」
「知っているのかアカネ」
ルカが知識博士のアカネに問いかけた。
「竜族の中には人に似た姿の竜人がいるそうだが……しかしあれは、竜が人に似るというより、人が竜になったような……」
「竜……ブラックドラゴン……死者、アンデッド」
ホイムの中で、以前魔人に遭遇した時に起きた事象と今の出来事が符合していく。
竜と化した男の口から、魔族との関わりが聞ければ確証になるのだが……今はまずアレを止めるのが先決であった。
男の思わぬ変化に一瞬助太刀に向かおうかと考えるホイムであったが、
「あの異変を前に動じぬとは……流石は筆頭騎士」
アカネの言葉で思い留まった。
大きく咆哮する竜へ変貌した男……竜人とは異なるモンスターの巨体を前に、エミリアは一歩も動かず、引かず、前に出る。
腹の底にまで響く唸りを上げる竜の前腕がエミリアの頭上に迫る。普通の人間ならば虫けらのように潰されるしかない強烈な一撃を、彼女は真っ向から受け止める。
止めた腕を横へ弾き、隙の生じた敵へ向けて振り上げた剣にはエミリア渾身の魔力が宿っていた。
単純に斬撃の威力と範囲を高めるだけの技であるが、その剣身はホイムが開けた大穴を越える高さに達し、叩きつけられる斬撃は竜の鱗すら容易く断ち斬ることのできる必殺の剣である。
一撃で勝敗を決することのできる剣を受けた相手は文字通りひとたまりもなく、翼と腕で防ごうとしたところで諸共に両断されていくしかない。
「これが貴様の弄んだ者の……聖華騎士団の誇りと知れ!」
「ぐがあああああぁッ!」
断末魔の悲鳴。それは竜の咆哮ではなく人の叫びであった。
振り下ろされた袈裟斬りの一太刀によって龍の姿を模した魔物は体を切り裂かれ、その巨体を縮ませながらやがて元の男の姿へと回帰していった。
しかしながらその体は既に下半分を失っており、今は辛うじて生き永らえているといった状態であった。
「死ぬ前に訊いておいてやる」
魔力を散らせ元の騎士剣となった刃の切っ先を喉元に突きつけるエミリアの元に、アリアスの介抱を任せたルカを残してホイムとアカネが歩み寄る。
「貴様に様々な力を与えたのは、一体何者だ」
質問に答えるだけの余力が男に残されているかどうかは疑問であったが、彼は口を開けた。回答ではなく、笑い声を漏らして。
「何が可笑しい!」
「……いくらお前たちが強かろうが、無駄だ……」
弱々しく小さな声は、最早その生命が尽きることを如実に示していた。
だが何故だろう。男の声を聞く彼らには、何故かそこに安堵や安寧の色が混ざって聞こえるのだった。
「……あいつらは、人を変える……人の、死も意のままに……」
まさか。
この男も何者かに変えられた……操られた被害者だというのか。
ホイムとアカネは顔を見合わせて同じことを考えたことを確認した。
エミリアもそう予感していたが、当事者であるが故に冷静になって受け入れることなどできずにいた。
「貴様がやったのか」
その言葉にふらりと立ち上がった男は、大きく体を反らし正気とも狂気ともつかぬ顔を向けて言い放った。
「俺がそいつを預けられた時にはぁ……もうずたぼろの肉人形だったなぁ……だがよぉ、面白くはなかったが散々使わせてもらったよ。ありがたいことに穴は幾つも付いてるからなあ!」
「……下衆が」
蔑みの視線を向けるアカネが忍刀を携え飛び出そうとするのを、ホイムは制した。
同時にルカにも声をかけ、アリアスを抱えて一緒にこの場から離れるように指示した。
「エミリアさん」
ホイムの呼びかけに彼女は振り返りはしない。しかし耳は傾けていた。
「これだけ広くなった場所なら、思う存分戦えますよね?」
「……感謝する」
ホイム達はエミリアの後ろへと下がり、彼女が自分の手で決着をつけるのを見届けることにした。
これは彼女がやらなければならない事だと、三人は言葉を交わさずともそう理解していたのだ。
「……聖華騎士団筆頭騎士、エミリア・ハーウェイ。我が友の無念……我が怒り……そして我らが騎士団の誇りを以て、貴様を討つ!」
盾を掲げ剣を構えるエミリアの口上を受け、男は全く動じない。それどころか壮絶な笑みを浮かべ、懐から取り出した小瓶を口にした。
「やってみろよ! この雌豚が!」
噛み砕いた小瓶から溢れた何かの液体を口にした途端、男の体が異形なものへと変貌を遂げていく。
そのシルエット……長身のエミリアをも凌ぐ大きな体躯は、翼を羽ばたかせ二足で立ち上がる黒竜のようであった。
「ドラゴン!?」
驚くホイムだが、その大きさは彼の知るブラックドラゴンほどの巨大さではない。寧ろ人に近い。
「むう……あれは竜人族……?」
「知っているのかアカネ」
ルカが知識博士のアカネに問いかけた。
「竜族の中には人に似た姿の竜人がいるそうだが……しかしあれは、竜が人に似るというより、人が竜になったような……」
「竜……ブラックドラゴン……死者、アンデッド」
ホイムの中で、以前魔人に遭遇した時に起きた事象と今の出来事が符合していく。
竜と化した男の口から、魔族との関わりが聞ければ確証になるのだが……今はまずアレを止めるのが先決であった。
男の思わぬ変化に一瞬助太刀に向かおうかと考えるホイムであったが、
「あの異変を前に動じぬとは……流石は筆頭騎士」
アカネの言葉で思い留まった。
大きく咆哮する竜へ変貌した男……竜人とは異なるモンスターの巨体を前に、エミリアは一歩も動かず、引かず、前に出る。
腹の底にまで響く唸りを上げる竜の前腕がエミリアの頭上に迫る。普通の人間ならば虫けらのように潰されるしかない強烈な一撃を、彼女は真っ向から受け止める。
止めた腕を横へ弾き、隙の生じた敵へ向けて振り上げた剣にはエミリア渾身の魔力が宿っていた。
単純に斬撃の威力と範囲を高めるだけの技であるが、その剣身はホイムが開けた大穴を越える高さに達し、叩きつけられる斬撃は竜の鱗すら容易く断ち斬ることのできる必殺の剣である。
一撃で勝敗を決することのできる剣を受けた相手は文字通りひとたまりもなく、翼と腕で防ごうとしたところで諸共に両断されていくしかない。
「これが貴様の弄んだ者の……聖華騎士団の誇りと知れ!」
「ぐがあああああぁッ!」
断末魔の悲鳴。それは竜の咆哮ではなく人の叫びであった。
振り下ろされた袈裟斬りの一太刀によって龍の姿を模した魔物は体を切り裂かれ、その巨体を縮ませながらやがて元の男の姿へと回帰していった。
しかしながらその体は既に下半分を失っており、今は辛うじて生き永らえているといった状態であった。
「死ぬ前に訊いておいてやる」
魔力を散らせ元の騎士剣となった刃の切っ先を喉元に突きつけるエミリアの元に、アリアスの介抱を任せたルカを残してホイムとアカネが歩み寄る。
「貴様に様々な力を与えたのは、一体何者だ」
質問に答えるだけの余力が男に残されているかどうかは疑問であったが、彼は口を開けた。回答ではなく、笑い声を漏らして。
「何が可笑しい!」
「……いくらお前たちが強かろうが、無駄だ……」
弱々しく小さな声は、最早その生命が尽きることを如実に示していた。
だが何故だろう。男の声を聞く彼らには、何故かそこに安堵や安寧の色が混ざって聞こえるのだった。
「……あいつらは、人を変える……人の、死も意のままに……」
まさか。
この男も何者かに変えられた……操られた被害者だというのか。
ホイムとアカネは顔を見合わせて同じことを考えたことを確認した。
エミリアもそう予感していたが、当事者であるが故に冷静になって受け入れることなどできずにいた。
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