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パルメティの街
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「わ、私は冷静だ!」
「ほら。大声出して感情的じゃないですか?」
「んぐっ……」
「今は初めての経験が続いて、気持ちが昂ぶってるんですよ。それに二人っきりだし……吊り橋効果ってやつですね」
実際に肌を重ねた後なのだから吊橋もクソもない気がするが、とにかくエミリアを宥めるべくホイムはあれこれペラペラ言葉を紡いだ。
「……私の気持ちが勘違いだと?」
ようやく語りかけた効果があり、エミリアも自分の気持ちが一時的な気の迷いなのではないかと疑義を抱いてくれたようだ。
だがホイムは彼女の抱いた気持ちを否定することは言わない。それが真実であるかもしれないからだ。
「それを確かめるには時間が必要だと思います。僕もエミリアさんも少し間を開けて、それでも好きって気持ちが消えなかったら……本当に好きなんじゃないですかね?」
「今僕もって言った?」
「あれ? 言いました?」
ホイムは自覚していなかった様子である。知らず知らず本音が漏れてしまったのかと思い、照れたように顔を背けた。
「……分かった。君の言うことに従おう」
そんなホイムを見たからなのか、エミリアは今回の件について一旦引き下がる事を口にした。
「これ以上は君も困るようだし……今は早くパルメティに戻らないといけないから」
「そ、そうですね! アリアスさんも心配ですし!」
いつまでも惚れた腫れたに固執していては帰路も進まない。
「ああ。今回の騒動に片がつくまで、君の返事は訊かないようにしておこう」
裏を返せばその時までにエミリアの気持ちが変わらないならばホイムも誠心誠意の答えをしなくてはならない。
「分かりました」
彼女が本気なら、彼も本気だ。どういう答えを返すかにしろ、真剣に考えておかないととホイムは頷くのだった。
「体を洗いましょっか。昨日の夜に外に置いてた桶が」
今は止んだ雨水がいくらか貯まっていることだろう。ホイムは先んじてテントから出ようとしたが、
「ちょっと待て」
とエミリアに呼び止められたので振り返った。
「ほにょッ?」
すると片手で両頬を押さえられ、ひょっとこのような口になったところへ有無も言わさず吸い付かれたのだった。
「…………ぷはっ」
しばらく無言で唇を重ねてから解放され、突然の行為にドギマギするホイムに対して、
「私の体を初めて弄んだのは君だからな。忘れるなよ?」
といたずらっぽく微笑んだエミリアは立ち上がる。
「先に浴びさせてもらおう」
そう言ってホイムを置いてテントから出ていくのだった。
残されたホイムは微動だにできず、外へ行くエミリアの後ろ姿とお尻をしっかりと目に焼き付けることしかできなかった。
「…………惚れそう」
エミリアの魅力に惹かれそうになるホイムは紅くなる顔を手で覆い、体の一部だけぴょこんと動かしながら彼女の水浴びする音を耳を澄ませてじっと聞くのだった。
すっかり調子を取り戻したエミリアと共にパルメティへの帰路を急ぐホイム。しかしながら昨日までとは別の緊張感に似た空気が二人の間に流れてしまっていたので、少しだけギクシャクした帰り道になってしまっていた。
自然と急ぎ足になっていたせいか、想定していたより早く二人はパルメティへと辿り着くことができた。
時刻は正午過ぎ。天高く太陽が輝く頃合いである。
番兵へギルド依頼のモンスター討伐から戻った旨を伝えると挨拶もそこそこに、二人は急ぎホイムがこの街で活動の拠点としている宿屋へと向かった。
「連れの仲間なら部屋で待ってるぞ」
宿屋の主人が一階にある食堂のカウンターからそう告げてきた。その表情が怪訝そうなのは、二人が担ぎ込んだ女性のことを知っているからであろう。
「ご迷惑をおかけします」
ホイムとエミリアは頭を下げて謝罪と感謝をしつつ、二階の宿泊部屋へと向かった。
アカネとルカの泊まる一室に駆け込んだホイムが見たのは、二つあるベッドの一つに横たわるアリアス、すぐ脇に立つアカネと足を開いて椅子に座るルカの姿だった。
「戻りました!」
「遅くなった」
遅れて街に戻ってきたホイムとエミリアに、
「お帰りなさいませ」
「待ってた!」
アカネとルカも応じるがすぐにエミリアはアリアスの寝るベッドへと駆け寄った。
すやすやと静かに寝息を立てるアリアスに大声をかけることをせず、じっと様子を窺っている。
「宿屋の主人の計らいで医師の方に診ていただきましたが、特に以上はないとのことです。極度の疲労から深い眠りについているので、自然に目覚めるのを待つほかないと」
「そうか……」
しばらくアリアスの顔を覗き込んでいたエミリアは、安堵からかフラフラと隣のベッドに近付きギシッと腰を下ろした。
「一先ずアリアスさんは無事ってことで、一安心ですね」
「ああ……ああ」
エミリアはそのまま項垂れるように深々と頭を下げた。
「改めて礼を言う。三人共……ありがとう。私の頼みを聞いてくれて」
三人は顔を見合わせて笑みを浮かべた。こうしてエミリアに助けとなりアリアスを救えたことを喜ばしく思ったのだ。
「ほら。大声出して感情的じゃないですか?」
「んぐっ……」
「今は初めての経験が続いて、気持ちが昂ぶってるんですよ。それに二人っきりだし……吊り橋効果ってやつですね」
実際に肌を重ねた後なのだから吊橋もクソもない気がするが、とにかくエミリアを宥めるべくホイムはあれこれペラペラ言葉を紡いだ。
「……私の気持ちが勘違いだと?」
ようやく語りかけた効果があり、エミリアも自分の気持ちが一時的な気の迷いなのではないかと疑義を抱いてくれたようだ。
だがホイムは彼女の抱いた気持ちを否定することは言わない。それが真実であるかもしれないからだ。
「それを確かめるには時間が必要だと思います。僕もエミリアさんも少し間を開けて、それでも好きって気持ちが消えなかったら……本当に好きなんじゃないですかね?」
「今僕もって言った?」
「あれ? 言いました?」
ホイムは自覚していなかった様子である。知らず知らず本音が漏れてしまったのかと思い、照れたように顔を背けた。
「……分かった。君の言うことに従おう」
そんなホイムを見たからなのか、エミリアは今回の件について一旦引き下がる事を口にした。
「これ以上は君も困るようだし……今は早くパルメティに戻らないといけないから」
「そ、そうですね! アリアスさんも心配ですし!」
いつまでも惚れた腫れたに固執していては帰路も進まない。
「ああ。今回の騒動に片がつくまで、君の返事は訊かないようにしておこう」
裏を返せばその時までにエミリアの気持ちが変わらないならばホイムも誠心誠意の答えをしなくてはならない。
「分かりました」
彼女が本気なら、彼も本気だ。どういう答えを返すかにしろ、真剣に考えておかないととホイムは頷くのだった。
「体を洗いましょっか。昨日の夜に外に置いてた桶が」
今は止んだ雨水がいくらか貯まっていることだろう。ホイムは先んじてテントから出ようとしたが、
「ちょっと待て」
とエミリアに呼び止められたので振り返った。
「ほにょッ?」
すると片手で両頬を押さえられ、ひょっとこのような口になったところへ有無も言わさず吸い付かれたのだった。
「…………ぷはっ」
しばらく無言で唇を重ねてから解放され、突然の行為にドギマギするホイムに対して、
「私の体を初めて弄んだのは君だからな。忘れるなよ?」
といたずらっぽく微笑んだエミリアは立ち上がる。
「先に浴びさせてもらおう」
そう言ってホイムを置いてテントから出ていくのだった。
残されたホイムは微動だにできず、外へ行くエミリアの後ろ姿とお尻をしっかりと目に焼き付けることしかできなかった。
「…………惚れそう」
エミリアの魅力に惹かれそうになるホイムは紅くなる顔を手で覆い、体の一部だけぴょこんと動かしながら彼女の水浴びする音を耳を澄ませてじっと聞くのだった。
すっかり調子を取り戻したエミリアと共にパルメティへの帰路を急ぐホイム。しかしながら昨日までとは別の緊張感に似た空気が二人の間に流れてしまっていたので、少しだけギクシャクした帰り道になってしまっていた。
自然と急ぎ足になっていたせいか、想定していたより早く二人はパルメティへと辿り着くことができた。
時刻は正午過ぎ。天高く太陽が輝く頃合いである。
番兵へギルド依頼のモンスター討伐から戻った旨を伝えると挨拶もそこそこに、二人は急ぎホイムがこの街で活動の拠点としている宿屋へと向かった。
「連れの仲間なら部屋で待ってるぞ」
宿屋の主人が一階にある食堂のカウンターからそう告げてきた。その表情が怪訝そうなのは、二人が担ぎ込んだ女性のことを知っているからであろう。
「ご迷惑をおかけします」
ホイムとエミリアは頭を下げて謝罪と感謝をしつつ、二階の宿泊部屋へと向かった。
アカネとルカの泊まる一室に駆け込んだホイムが見たのは、二つあるベッドの一つに横たわるアリアス、すぐ脇に立つアカネと足を開いて椅子に座るルカの姿だった。
「戻りました!」
「遅くなった」
遅れて街に戻ってきたホイムとエミリアに、
「お帰りなさいませ」
「待ってた!」
アカネとルカも応じるがすぐにエミリアはアリアスの寝るベッドへと駆け寄った。
すやすやと静かに寝息を立てるアリアスに大声をかけることをせず、じっと様子を窺っている。
「宿屋の主人の計らいで医師の方に診ていただきましたが、特に以上はないとのことです。極度の疲労から深い眠りについているので、自然に目覚めるのを待つほかないと」
「そうか……」
しばらくアリアスの顔を覗き込んでいたエミリアは、安堵からかフラフラと隣のベッドに近付きギシッと腰を下ろした。
「一先ずアリアスさんは無事ってことで、一安心ですね」
「ああ……ああ」
エミリアはそのまま項垂れるように深々と頭を下げた。
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