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パルメティの街
再会を果たしました
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ホイムがアカネとルカに玩具にされ男の子の尊厳を踏み躙るような様々な陵辱をされ尽くしている頃、エミリアもまたやんちゃ極まるちびっこ達に翻弄されてへとへとになった体を休めているところであった。
エミリアが寝床としてお邪魔しているのはラフィとその夫の寝室であった。鎧を脱いだ軽装姿のエミリアの視線の先には、薄手の地味な柄の寝巻きを着るラフィがベッドの上で膝を立てていた。枕元に灯る小さなランプが二人のいる世界を仄かに照らし出していた。
気を遣ったラフィの夫は今夜は寝室ではなく、子ども達と一緒の寝室で夜を過ごすようにしている。
「すみません。ご主人には悪いことを」
「気にするな。女性を子ども部屋に押し込むような甲斐性なしではないよ」
とは言うものの、流石に同じベッドを共にするつもりまではなく、エミリアは寝室のソファを使わせてもらうことにしているのであった。
「ハッハッハ。純潔の乙女は同性と同衾もできんな」
冗談めかしたラフィの言葉に冷や汗を浮かべて愛想笑いをするエミリアであった。自分がラフィの言うように清さを保っているとは思えなかったからである。
「子ども達の世話は、大変ですね」
なのでエミリアは違う話題を振った。ラフィより大柄な戦士の女性が珍しかったのか、小動物のように集まる子ども達の相手にタジタジであった。
「慣れれば楽なもんさ」
「それまでが大変そうです」
「違いない。だが存外遊び相手が様になっていたぞ? やはり……」
「……姫様のお相手をしていましたから」
ラフィも筆頭騎士であったのでその仕事に従事していた。とはいえもう数年前の話になる。
「大きくなられたか?」
「ええ。スクスクと」
「チビ達を捕まえてブンブン振り回していたのは」
「姫様のお気に入りです」
「お転婆に拍車がかかってきているな」
共通の大事な少女の話は二人の会話の潤滑油となった。時に可笑しく、時に案じる表情を浮かべながら、しばらく二人の会話に花が咲いた。
やがて一段落ついたところで、
「エミー」
ラフィが真剣な眼差しを向けていた。
「必ず姫をお救いしてこいよ」
「言われずとも」
エミリアは握りしめた右手を胸に当て誓う。
「我が剣と聖華騎士の誇りにかけて」
それを見たラフィは満足げに頷き、枕元のランプに手を伸ばした。
「明日は朝から発つだろう? 早めに休んでおけ」
「そうします」
灯りが消えた室内で、二人が毛布を被る音がした。
翌朝、朝食までご馳走になったエミリアはラフィと夫、そして十数名の子ども達に見送られて孤児院を発つところであった。
「おっきなおねえちゃんバイバイ!」
「また遊んでね!」
手を振る子ども達にエミリアも振り返す。
「あんた」
ラフィが夫に小さく耳打ちすると、彼は子ども達に向かって声をかけた。
「さあ。みんなは先に中へ戻ろうか。ママはお姉ちゃんと最後に大事な話があるみたいだから」
「ないしょの話?」
「きいちゃダメな話?」
疑問を口にする子ども達に彼は優しく頷くと、聞き分けの良い少年少女たちは別れに名残惜しそうであったが、一足先に建物の中へと戻っていった。
二人きりになったところで、ラフィはエミリアに告げる。
「荷車は街の外に手配している。門番に話を通せばすぐ分かるだろう」
「助かります」
「アリアスは後で私が迎えに行くからそのままにしておくんだぞ」
「はい」
「それと、散り散りになった騎士団への連絡だが」
エミリアも大いに気になっていたところである。フラシュから逃れることのできた彼女たちは今どこで何をしているのであろうか。
少し想いを馳せるエミリアの背後に、ラフィは親指を向けて目をやるように促した。
後ろを振り返ったエミリアは孤児院を訪れて来た二つの人影に目を奪われていた。
頭に被ったローブのフードを取って見せてくる二人の顔に見覚えがあったのだ。
「エミリアッ!」
肩で切り揃えた白髪をした二人は揃って同じ声を上げ、同じ歩幅で駆け寄ってくる。
「ライナに……レイナか!」
同じ顔をした二人が近付いてくるのを目を丸くして待つエミリアに、ラフィが教えてくれた。
「あの二人はお前と別の時期に街に来ていたようだな。広い街だ……今まで顔を合わせなかったとしても不思議はあるまい」
双子の姉妹はエミリアと同じく、フラシュから逃げ果せた聖華騎士団の一員であった。久々の再会に三人は目頭を熱くさせていた。
仲良く同時に飛びかかる姉妹を、エミリアはその胸でしっかりと受け止め、両腕で抱きしめた。
「よく無事で……!」
「エミリアも!」
「ラフィ殿から伝達があった時は驚いたよ!」
ラフィが騎士団に飛ばした伝書鳥は同じ街にいた二人にいち早く届き、再会が叶ったのだった。
そのまま余韻に浸り抱き合っていたいところであったが、いつまでもそうしているわけにはいかない。
エミリアにはすべきことがあり、双子も既に概要は把握している。
「もう少し一緒にいたいが、私はすぐにでもフラシュに戻らねばならない」
「分かっている」
「ならば共に」
エミリアと同期の聖華騎士団であるライナとレイナならば当然の申し出である。
しかし、ならばこそと彼女は首を左右に振った。
「アリアスはまだ意識が戻っていない。二人にはあいつを……団長を見ていてほしい」
「それは、ラフィ殿に任せて……」
「万が一」
ライナの発言を遮るエミリアは、二人へ言い聞かせるようにゆっくりと告げた。
「アリアスを狙う輩が此処へ来ないとも限らない。そうなった時、二人に彼女を……この場を守ってもらいたいんだ。ラフィに必要以上に迷惑をかけるのは騎士として恥ずかしいだろう?」
聖華騎士団筆頭騎士であったとはいえ、今はいち孤児院の長として務める一般人。そんな女性を矢面に立たせるわけには確かにいかない。
「それに敵の指名は私と、今一緒に組んでいる者たちだ。最初に乗り込むのは私たちだけの方がいい」
その言葉に籠められた想いを二人は察した。無論、後ろで黙って見守っていたラフィも。
「……分かった」
「アリアスの看護は任せてくれ」
言い分を聞き入れてもらったことに「ありがとう」と感謝を述べ、エミリアは旅立つことにした。
「ラフィ。アリアスと二人のこと……これから事情を知り駆けつける仲間のこと……頼みます」
「ああ。しばらくは子供の世話をしてくれる面子が増えてくれて助かりそうだ」
前向きに受け入れるラフィ、そして残していく双子に深々と頭を下げたエミリアは、踵を返すと一度も振り返ることなく強い足取りで共に行く仲間の元へと向かうのであった。
エミリアが寝床としてお邪魔しているのはラフィとその夫の寝室であった。鎧を脱いだ軽装姿のエミリアの視線の先には、薄手の地味な柄の寝巻きを着るラフィがベッドの上で膝を立てていた。枕元に灯る小さなランプが二人のいる世界を仄かに照らし出していた。
気を遣ったラフィの夫は今夜は寝室ではなく、子ども達と一緒の寝室で夜を過ごすようにしている。
「すみません。ご主人には悪いことを」
「気にするな。女性を子ども部屋に押し込むような甲斐性なしではないよ」
とは言うものの、流石に同じベッドを共にするつもりまではなく、エミリアは寝室のソファを使わせてもらうことにしているのであった。
「ハッハッハ。純潔の乙女は同性と同衾もできんな」
冗談めかしたラフィの言葉に冷や汗を浮かべて愛想笑いをするエミリアであった。自分がラフィの言うように清さを保っているとは思えなかったからである。
「子ども達の世話は、大変ですね」
なのでエミリアは違う話題を振った。ラフィより大柄な戦士の女性が珍しかったのか、小動物のように集まる子ども達の相手にタジタジであった。
「慣れれば楽なもんさ」
「それまでが大変そうです」
「違いない。だが存外遊び相手が様になっていたぞ? やはり……」
「……姫様のお相手をしていましたから」
ラフィも筆頭騎士であったのでその仕事に従事していた。とはいえもう数年前の話になる。
「大きくなられたか?」
「ええ。スクスクと」
「チビ達を捕まえてブンブン振り回していたのは」
「姫様のお気に入りです」
「お転婆に拍車がかかってきているな」
共通の大事な少女の話は二人の会話の潤滑油となった。時に可笑しく、時に案じる表情を浮かべながら、しばらく二人の会話に花が咲いた。
やがて一段落ついたところで、
「エミー」
ラフィが真剣な眼差しを向けていた。
「必ず姫をお救いしてこいよ」
「言われずとも」
エミリアは握りしめた右手を胸に当て誓う。
「我が剣と聖華騎士の誇りにかけて」
それを見たラフィは満足げに頷き、枕元のランプに手を伸ばした。
「明日は朝から発つだろう? 早めに休んでおけ」
「そうします」
灯りが消えた室内で、二人が毛布を被る音がした。
翌朝、朝食までご馳走になったエミリアはラフィと夫、そして十数名の子ども達に見送られて孤児院を発つところであった。
「おっきなおねえちゃんバイバイ!」
「また遊んでね!」
手を振る子ども達にエミリアも振り返す。
「あんた」
ラフィが夫に小さく耳打ちすると、彼は子ども達に向かって声をかけた。
「さあ。みんなは先に中へ戻ろうか。ママはお姉ちゃんと最後に大事な話があるみたいだから」
「ないしょの話?」
「きいちゃダメな話?」
疑問を口にする子ども達に彼は優しく頷くと、聞き分けの良い少年少女たちは別れに名残惜しそうであったが、一足先に建物の中へと戻っていった。
二人きりになったところで、ラフィはエミリアに告げる。
「荷車は街の外に手配している。門番に話を通せばすぐ分かるだろう」
「助かります」
「アリアスは後で私が迎えに行くからそのままにしておくんだぞ」
「はい」
「それと、散り散りになった騎士団への連絡だが」
エミリアも大いに気になっていたところである。フラシュから逃れることのできた彼女たちは今どこで何をしているのであろうか。
少し想いを馳せるエミリアの背後に、ラフィは親指を向けて目をやるように促した。
後ろを振り返ったエミリアは孤児院を訪れて来た二つの人影に目を奪われていた。
頭に被ったローブのフードを取って見せてくる二人の顔に見覚えがあったのだ。
「エミリアッ!」
肩で切り揃えた白髪をした二人は揃って同じ声を上げ、同じ歩幅で駆け寄ってくる。
「ライナに……レイナか!」
同じ顔をした二人が近付いてくるのを目を丸くして待つエミリアに、ラフィが教えてくれた。
「あの二人はお前と別の時期に街に来ていたようだな。広い街だ……今まで顔を合わせなかったとしても不思議はあるまい」
双子の姉妹はエミリアと同じく、フラシュから逃げ果せた聖華騎士団の一員であった。久々の再会に三人は目頭を熱くさせていた。
仲良く同時に飛びかかる姉妹を、エミリアはその胸でしっかりと受け止め、両腕で抱きしめた。
「よく無事で……!」
「エミリアも!」
「ラフィ殿から伝達があった時は驚いたよ!」
ラフィが騎士団に飛ばした伝書鳥は同じ街にいた二人にいち早く届き、再会が叶ったのだった。
そのまま余韻に浸り抱き合っていたいところであったが、いつまでもそうしているわけにはいかない。
エミリアにはすべきことがあり、双子も既に概要は把握している。
「もう少し一緒にいたいが、私はすぐにでもフラシュに戻らねばならない」
「分かっている」
「ならば共に」
エミリアと同期の聖華騎士団であるライナとレイナならば当然の申し出である。
しかし、ならばこそと彼女は首を左右に振った。
「アリアスはまだ意識が戻っていない。二人にはあいつを……団長を見ていてほしい」
「それは、ラフィ殿に任せて……」
「万が一」
ライナの発言を遮るエミリアは、二人へ言い聞かせるようにゆっくりと告げた。
「アリアスを狙う輩が此処へ来ないとも限らない。そうなった時、二人に彼女を……この場を守ってもらいたいんだ。ラフィに必要以上に迷惑をかけるのは騎士として恥ずかしいだろう?」
聖華騎士団筆頭騎士であったとはいえ、今はいち孤児院の長として務める一般人。そんな女性を矢面に立たせるわけには確かにいかない。
「それに敵の指名は私と、今一緒に組んでいる者たちだ。最初に乗り込むのは私たちだけの方がいい」
その言葉に籠められた想いを二人は察した。無論、後ろで黙って見守っていたラフィも。
「……分かった」
「アリアスの看護は任せてくれ」
言い分を聞き入れてもらったことに「ありがとう」と感謝を述べ、エミリアは旅立つことにした。
「ラフィ。アリアスと二人のこと……これから事情を知り駆けつける仲間のこと……頼みます」
「ああ。しばらくは子供の世話をしてくれる面子が増えてくれて助かりそうだ」
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