星降る森で、猫と過ごす癒しのスローライフ

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第77話 森へ入る王都の探索団

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森はまだ朝の静けさを抱いていた。

枝葉の間から差し込む光は細く、苔の上に小さな影を落としていた。

旅の女は胸に手を当て、市場から少し離れた小道を歩いていた。

(昨夜も穏やかだった……この森は、アステリア様に守られている)

胸の奥の灯は静かに脈を打ち、夜を思い出すたびにそっと熱を帯びた。

けれど――

森の奥から、重たい音が近づいてくるのが分かった。

鉄の鎧が擦れる音、剣の柄がぶつかり合う小さな音、
土を無造作に踏みしめる硬い音。

(……王都の兵?)

木の影からそっと覗くと、鎧を纏った探索団が森の中を歩いていた。

赤い羽飾りのついた長いマントを纏ったあの男もいる。

彼らは森の木々を短剣で削り、苔を踏みつけ、何かを探すように辺りを睨みつけていた。

「こっちだ……星晶石の欠片がこの辺りに落ちてるはずだ」

低い声が聞こえた。

胸の奥の灯がぐっと強く脈を打つ。

(この森に……入ってこないで)

自然に手を胸に当てる。

灯は熱を帯び、森の脈動と静かに重なった。

そのとき、ルチルが木陰からそっと顔を覗かせた。

目が怯えている。

ノワールも低く尾を揺らし、その暗い瞳で探索団をじっと睨んでいた。

探索団の兵の一人が小さな光を見つけて声を上げた。

「見ろ、星晶石のかけらだ!」

苔の間に小さく埋まっていた欠片を無造作に掴み取る。

その瞬間、森の奥から小さな風が走り、枝葉がざわりと揺れた。

胸の奥の灯がさらに強く脈を打った。

(やめて……その欠片は森のもの。猫たちの、夜のもの……)

けれど探索団は気にする様子もなく、さらに森の奥へ踏み込んでいった。

ルチルが小さく鳴き、ノワールは旅の女へ静かに額を寄せた。

その温もりが胸の奥の灯とひとつになり、灯は深く呼吸した。

(守らなくちゃ……)

そのとき――

(怯えなくていい)

胸の奥から星神アステリアの声が静かに響いた。

(この森はお前と繋がっている。猫たちの灯はお前の胸の灯と重なっている)

(お前が抱きしめるだけでいい。その灯を、森を、夜を……)

涙が自然に滲んだ。

「……分かりました」

小さく囁くと、胸の奥の灯が強く脈を打った。

その脈動は森の奥へ静かに広がり、枝葉がかすかに揺れた。

ルチルが短く鳴き、ノワールは暗い瞳を少しだけ細めた。

探索団はまだ森の奥を探り続けている。

けれど旅の女の胸の灯は、それを静かに睨むように強く脈を打ち続けていた。

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