《死霊魔術師に転生した俺は、かつての英雄たちを蘇らせ最強軍団を築く》

コテット

文字の大きさ
13 / 18

第13話:概念の剣、神の兵を断つ

しおりを挟む
 王都北方、聖野の先――
 王国軍が築いた前線拠点を中心に、白銀の巨影が三つ、静かに待機していた。

 それが《神の兵(セラフ・アーマー)》だった。

 人間より二倍はあろう巨体。
 聖印が刻まれた白銀の鎧は一切の汚れを寄せ付けず、背に輝く翼のような魔力炉が淡く光を放っている。

 その無機質な瞳がゆっくりと動く。

「命令確認――敵性存在。冥府軍。概念違反対象。排除開始」

 その声はまるで空間そのものを振動させる呪的音。
 次の瞬間、神の兵の一体が地を蹴り、冥府軍へと突進した。

     ◆

「来たか……!」

 カイルが叫ぶと同時に、ジルとエリュシアが前へ出た。

「《紅蓮の王剣・灰燼裂き》!」

 エリュシアの炎剣が神の兵を迎え撃つ。
 だが、その白銀の鎧に刃が触れた瞬間、炎が弾け飛び、剣が軋んだ。

「なっ……これは……?」

「その鎧は、“物理”でも“魔法”でも砕けぬ。神々がその基底に“純潔”という概念を刻んだからだ」

 冥府の影から、一人の男が歩み出る。

 白髪、黒の外套。
 そして、その双眸には色彩がなかった。

 《概念を喰らう者》――ソルド=アイン。

「だが、それを覆すのが我が役目」

 ソルドが手を掲げると、そこに現れたのは剣のようで剣ではない、“虚無の断片”だった。

 何の装飾もなく、光すら吸い込む闇の刃。

「それは……剣か?」

「違う。これは“記号だ”。
 剣という概念そのものを疑似的に構築し、対象の概念構造を切断するもの」

 言葉と同時に、ソルドが消えた。

 次の瞬間――

 神の兵の胴体に、黒い線が走る。

「……?」

 神の兵は動きを止めた。
 そして、身体を構成する光と霊素がゆっくりと分解され、砂のように崩れていく。

「概念矛盾。維持不能。システム停止……」

 淡々とした声を最後に、神の兵は完全に崩れ去った。

「……冗談だろ。あの“神の兵”が、一太刀で……」

 王国側の指揮官たちが顔色を失う。

     ◆

 カイルがゆっくりとソルドに近づいた。

「確かに、“記録外”の存在だな。
 神も、冥府も、どちらにも属さない……だから、神の概念を食える」

「それが我だ。記録にも残らず、歴史にも認識されない。
 だが、お前が呼んだ時点で、俺はお前の“剣”だ。望むなら、全てを喰らおう」

 その声には欲望も恐怖もなかった。
 ただ、“そうあるからそこにいる”という、存在理由だけ。

「……頼む。神の兵を、討ち破れ」

「了解した。」

     ◆

 残る二体の神の兵が、一斉にソルドに向けて光を集束させる。

「――《聖光干渉槍》」

 それは、神の兵が“存在そのもの”に向けて放つ概念攻撃。

 ソルドの体が光に包まれ、空間ごと焼き潰される。

 だが――

「……遅い」

 光の中から、黒い腕が突き出された。

 ソルドはすでに神の兵の背後に立っていた。

「“純潔”という概念に、対義を刻む。
 ――《穢れ》」

 瞬間、神の兵の聖印が黒く染まり、輝きが砕ける。

「異常構造認識……エラー……」

 そして、崩壊。

 残る二体の神の兵もまた、ソルドの刃によって概念を断たれ、砂のように崩れ去った。

     ◆

 こうして、冥府軍は初めて“神の兵”を破壊した。

 戦場に立つ者たちは誰も声を上げなかった。
 神が残した兵を、死者が、そして“記録外”が屠った光景は、それほどまでに絶望的だった。

 カイルは静かに呟く。

「……これが、“神の終わり”の始まりかもしれないな」

 それを聞き、ソルドはほんのわずかに唇を歪めた。

「……面白いな。世界が恐れて封印した俺を、戦いに使うとは。
 お前の冥府は、神よりよほど狂っている」

「それでもいい。俺は……この世界に“生と死の対価”を問い直したい」

 冥府の軍勢が再編され、カイルは再び王都への進軍を開始する。

 王太子エリアスは、この報を聞いて、なお余裕の笑みを浮かべた。

「いいだろう、カイル。ならば次は――“神そのもの”をお前にぶつけてやる」

 《世界審判編》、なおも過熱。

―――――――――――――――――――――――――

あとがき
お読みいただきありがとうございます。
第13話では、ついに《神の兵》と《概念を喰らう英霊ソルド》が激突。神々が遺した兵器を、冥府の“記録外”が討ち破り、世界の均衡が明確に崩れ始めました。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

処理中です...