《死霊魔術師に転生した俺は、かつての英雄たちを蘇らせ最強軍団を築く》

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第14話:王太子の選択、神をこの地に

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 王都アルザリオの奥――玉座の間をさらに越えた地下、誰も知らぬ“祈祷殿”に、王太子エリアス=ヴェルムは佇んでいた。

 薄暗い石室。壁一面に刻まれた祈願文様は、神殿のものよりはるかに古い。
 その中心に鎮座するのは、血と黄金で装飾された《神の楔》。

 それはかつて、世界を作り出した神々がこの大地に“意志”を残すために打ち込んだもの。
 つまり神の座標――神がこの地に降り立つための“扉”だった。

「カイル……お前は確かに強かった。
 だがその力は死に根ざしている。ならば、俺は――“生そのもの”を神に問う」

 エリアスが手にしたのは、前回と同じ“旧神の禁書”。
 だが今回は、それを開くのではなく、自らの血で汚した。

 ページが呻くように揺れ、黄金の血が流れ出す。

「……神よ。この地を統べる王の血を持って命ずる。
 今一度、この地に降り、冥府の反逆を討て」

 《神の楔》が光を放った。

 同時に、アルザリオの空が裂けた。

     ◆

 王都の上空に、巨大な眼が現れる。

 それは形を持たず、ただ光と影の奔流の中に無数の視線が浮かぶだけ。

 その存在は“神”そのもの。

 地上のあらゆる者の魂が、その眼差しに捕らえられ、膝を折る。

 兵も民も、英霊すら例外ではなかった。

 冥府軍の陣に立つジル=ヴァンでさえ、片膝をつき、甲冑を軋ませる。

「……これが、神の威圧か」

 炎の剣姫エリュシアも歯を食いしばる。

「魂の核を直接揺さぶる……厄介にも程があるわね」

 カイルもまた、杖を強く握りしめた。

「……これが、お前の選んだ手段か、エリアス」

     ◆

 王太子エリアスは玉座に腰を下ろし、穏やかに笑んだ。

「冥府の王、カイル。
 この国を救った英雄が、次はこの国を滅ぼそうとする。
 ならば俺は、この国を守るために“神を地上に呼ぶ”。それだけだ」

 その声は、かつてカイルと共に笑い合ったものと同じだった。
 しかし、今はただ冷たい決意があるのみ。

「この国を壊したのは、お前だ。……だから俺は、それを“神の手”で正す」

     ◆

 空から注ぐ神の光が、一斉に冥府軍へ降り注ぐ。

 それは物理でも、魔術でも、死霊術でも防げぬ、“存在に対する審問”そのもの。

 冥府に縛られた英霊たちが、一体また一体と黒い灰となって崩れていく。

「ッ……冥府の召喚枠が次々に断たれる……!」

 アサル=レイが呻くように報告した。

 だが、その時。

「待て。まだ終わらせるな」

 前へ歩み出たのは、ソルド=アイン。

 虚無の概念を纏い、その視線を真っ直ぐ神へ向ける。

「神の概念そのものに、俺が喰らいつく。
 お前の秩序を“歪め”てやる」

 神の目が、ソルドに注がれる。

 世界が歪み、重力も空気も意味を失う。

 それでも、ソルドは一歩進んだ。

「――俺が在る限り、お前の完全は成り立たない」

 虚無の刃が生まれる。

 神の光とぶつかり、世界の色が逆転した。

     ◆

 カイルはその間に詠唱を開始した。

「……冥府の核よ。我が契約の深淵より、命を繋げ」

 呼び出すのは新たな死霊軍ではない。

 彼が呼ぶのは――神と死の間に落ちた“失われし可能性”。

「我はこの世界に問う。“生と死は、誰のためにある?”」

 神の光が揺れ、ほんの一瞬、その目を閉じる。

 それだけで、神の支配はわずかに崩れた。

「……ソルド。今だ」

「――了解」

 ソルドの概念の刃が、神の顕現を構成する“純粋秩序”を切断した。

 空の目が悲鳴をあげるように震え、やがてゆっくりと閉じていった。

     ◆

 神の顕現は、一時的に退いた。

 だが王都の上空には、まだうっすらと裂け目が残っている。

 神がいつでも再び降りられる“門”を残して。

 カイルは息を吐いた。

「……これが、お前の正義か、エリアス」

 玉座の王太子は答えなかった。

 ただ静かに、再び禁書に手を置く。

 この戦いは、神も冥府も、もう止められぬ段階へと入っていた。

―――――――――――――――――――――――――

あとがき
お読みくださりありがとうございました。
第14話では、ついに王太子エリアスが神そのものを地上に顕現させ、冥府軍と“存在の審問”を介した激突が描かれました。
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