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三つの角には立つな
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小さい頃、祖母からよく言われていた。
「道の三つ角には立つなよ。
あそこには“呼ぶもの”がいるから。」
祖母の家は古い住宅街の中にあった。
複雑な路地が入り組んでいて、小さな三叉路が無数にあった。
子供のころは「お化けの話」で済ませていたが、
社会人になってから地元に戻り、久しぶりにその町で暮らすようになった。
ある夜、残業で遅くなり、近道しようと昔よく通った細道を抜けた。
住宅の影が長く伸びて、街灯がやけに黄色い。
三叉路の真ん中に差し掛かったとき、
スマホの画面に突然、**「三つ角には立つな」**という文字が表示された。
何のアプリも開いていない。
LINEでもない、SNSでもない。
ただ白地にその文字だけ。
思わず立ち止まった。
次の瞬間、
視界の端に、**自分と同じ姿の“誰か”**が立っているのが見えた。
スーツ姿、肩にかけたカバン。
でもそいつは、顔が真っ黒で、目も口もなかった。
俺が一歩後ろに下がると、それも一歩前に出た。
そしてゆっくり首をかしげる。
「……いま、そっちに行っていい?」
声はしなかった。でも頭に直接響くように聞こえた。
慌ててその場から走って逃げた。
家に帰ってスマホを確認すると、
カメラロールに1枚、知らない写真が増えていた。
夜の路地。
三叉路の真ん中に、俺が立っていた。
撮った覚えはない。
それからというもの、
道を歩いていると、どこかで「もうひとりの俺」が立っている気配がする。
曲がり角、三叉路、公園の分かれ道。
いつも微かにこちらを向いて、じっと立っている。
祖母が言っていた。
「三つ角には“お前に似たもの”が立つんだよ。
呼ばれたらおしまいだ。」
あのとき返事をしなかったのは、たまたまだ。
今も夜道を歩くときは、絶対に三叉路では足を止めない。
もしまた声が聞こえたら──
今度こそ、返事をしてしまいそうだから。
「道の三つ角には立つなよ。
あそこには“呼ぶもの”がいるから。」
祖母の家は古い住宅街の中にあった。
複雑な路地が入り組んでいて、小さな三叉路が無数にあった。
子供のころは「お化けの話」で済ませていたが、
社会人になってから地元に戻り、久しぶりにその町で暮らすようになった。
ある夜、残業で遅くなり、近道しようと昔よく通った細道を抜けた。
住宅の影が長く伸びて、街灯がやけに黄色い。
三叉路の真ん中に差し掛かったとき、
スマホの画面に突然、**「三つ角には立つな」**という文字が表示された。
何のアプリも開いていない。
LINEでもない、SNSでもない。
ただ白地にその文字だけ。
思わず立ち止まった。
次の瞬間、
視界の端に、**自分と同じ姿の“誰か”**が立っているのが見えた。
スーツ姿、肩にかけたカバン。
でもそいつは、顔が真っ黒で、目も口もなかった。
俺が一歩後ろに下がると、それも一歩前に出た。
そしてゆっくり首をかしげる。
「……いま、そっちに行っていい?」
声はしなかった。でも頭に直接響くように聞こえた。
慌ててその場から走って逃げた。
家に帰ってスマホを確認すると、
カメラロールに1枚、知らない写真が増えていた。
夜の路地。
三叉路の真ん中に、俺が立っていた。
撮った覚えはない。
それからというもの、
道を歩いていると、どこかで「もうひとりの俺」が立っている気配がする。
曲がり角、三叉路、公園の分かれ道。
いつも微かにこちらを向いて、じっと立っている。
祖母が言っていた。
「三つ角には“お前に似たもの”が立つんだよ。
呼ばれたらおしまいだ。」
あのとき返事をしなかったのは、たまたまだ。
今も夜道を歩くときは、絶対に三叉路では足を止めない。
もしまた声が聞こえたら──
今度こそ、返事をしてしまいそうだから。
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