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八話目 死にかけた学園長

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 視界晴れると俺は、教室に立っていた。周囲には俺だけじゃない、E組の生徒が皆いる。そして、目の前には倒れている学園長がいる。俺がそのことに気づくより早く、皆はそれに気がついた一息に駆け寄って学園長を中心に人だかりが出来てしまった。
 俺も慌てて駆け寄るが、既に姿も見えないほどだ。

「おい! ハゲ! 大丈夫か!」

「どうした! 何があった!」

「ハゲが倒れた! 今までこんなこと無かったのに!」

 口々に心配の声をあげるE組の生徒たち。学園長のこと心配なのがよくわかる。ツフの話を聞く限り、問題児たちばかりだが学園長に信頼を置いているのは明白だと思った。
 学園長の様子が全く見えないが、皆の口ぶりと先程の様子からは、意識を失って倒れてしまっているようだ。

「凄まじい轟音が聞こえたと思ったら、気が付くと教室の中だった!」

 凄まじい……轟音? そんなの聞こえたか……? あ……いや……一つだけ心あたりがある……もしかしてその轟音ってのは俺の投げた岩が階層をぶち抜いて行く音か?

「クソッ! 絶対あの轟音のせいだ! 誰かに攻撃を受けたに違ぇねぇ!」

「誰にやられたんだ!」

「ハゲ! おい! しっかりしろよ!」

「う、うぅぅん……」

「おい! 大丈夫か! クソッ! まだ意識は取り戻さないのか! なんでだよ! なんでハゲがこんなになってるんだよ!」

 未だ皆が動揺しているようだ。学園長の様子も心配だが……うん、俺は黙っておこう。オレハナニモシラナイ、ナニモミテイナイ、ナニモシテイナイ……

 暫くの間、皆がざわめき続けている。それが暫く続いたが、人だかり中心から、弱々しい声が聞こえてきた。

「こ、ここは……」

「お、おお! ハゲ! 大丈夫か! ここは教室だ! おい、皆! ハゲが意識を取り戻したぞ!」

 どうやら学園長が意識を取り戻したようだ。各々から安堵の様子が伝わってくる。だが、断言しよう。この中で一番安堵したのは絶対にこの俺だ。

「だ、誰だ! ハゲをこんな目に合わせたのは!」

「だ、誰にでもない……ちょ、ちょっと想像以上の衝撃が……け、結界内で……」

「やっぱあの轟音のせいじゃねぇか!」

「誰かわからない奴にやられたってことだろ! ハゲの知らないところで攻撃を受けたに違いない! クソっ! 卑怯な!」

 学園長の言葉に、皆が次々と怒りの言葉を口にする。犯人を殺しかねない勢いだ。
 こ、これは気まずい……状況を鑑みるに、俺が開けた大穴が原因っぽいじゃないか! どれほど暴れてもビクともしないって言ってたばかりじゃないか! 俺が原因だって皆知らないからまだいいが……
 と、俺は一つの事実を思い出した。俺が原因だと知っている人物がここに一人いる。ツフだ。ツフが俺が大穴を開けたところを見ていた。

 そして恐る恐るとツフを見ると、ツフも俺の視線に気づいたようだ。だがツフは言う素振りを見せない。それどころか、ウインクをして人差し指を唇にあてた。
 黙っていろ、という事か?
 そしてツフは、ドスンドスンと大きな音を立てて人だかりに近づいていく。その巨体は人だかりをまるで海が割れるかのように切り開いていく…… 

「ほら! 犯人なんてどうでもいいじゃないか! まずはハゲを保健室に連れてかないと!」

 中心までたどり着いたツフは周囲の生徒そう声をかけた。

「でも……」

「わかったよ! あたいが連れてくよ! サス! あんたにも手伝って貰うよ!」

 狼狽える生徒を後目にツフはそう言うと、ヒョイっと片手で学園長を抱えあげ、空いた手で俺を掴みあげて教室を出ていった。
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