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CAUSE to NIGHTMARE no,4
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...今度の患者は厄介だったな。
首から下の上半身が麻痺か。
かなり珍しい範囲ではあるが、2日安静だ。
治るだろう。
『被験者番号010。この呼び方にはまだ抵抗がある。だが、治療と研究を並行するには必要だろう。症状は首から下の上半身麻痺。血液濃度は標準。30%のTと50%のLを注射すると、拒絶反応が起きかけた。これ以上TとLの濃度は下げられないので、麻酔の濃度を5%あげた。症状は収まった。1日経過を見て回復の兆しがある為、2日の安静で完治するだろう。』
もう私の患者も10人目、元医師の素人研究者となって半年か。早いものだ。
夜の10時だ。
...ん?こんな時間に誰だ?
私は急いで夜中の招かれざる客を迎えに行った。
「ゼラミル・レフォート氏ですね。地元誌の者ですが、マオル・デルタと言います。遅くに本当に申し訳ありません。新聞や町医者が貴方の功績を取材する動きがあったので、その前に偏見のない状態でお話を伺いたかった。上にも逆らえないと言うのもありますが、私自身不器用なもので。20分もかからせませんよ。」
暗くて顔はまだ見えない。
「私は構わないが、私のことをある程度知っての訪問か?」
「ええ、話には聞いている程の事ですが。しかしその話は今引き合いには出ません。簡単なお話だけでもいいので。町医者にはすっぱ抜かれたくないのです。」
成程。話はわかるやつかもしれない。
入れてしまおうか。
「入りなさい。」
「あと、私の子供の麻痺も治して欲しいのです。右腕が動かなくて、野球少年なだけあり可哀想なんです。割り込むわけでもありませんから、いつか治して頂きたいのです。ただその時は、うちでの治療に我儘させてくれませんか。」
明かりに照らされた青年の顔は見覚えがあった。
「是非、屋敷でなく外でも治療して頂きたい。」
「それは屋敷を留守にしろと?」
「そうなってしまいますが、お願いします。」
記憶よりも先に、嫌悪感が判断された。
誰だ?
どこかで......?!
クオカの右半身を麻痺させる事故を起こした張本人!?
この顔は!?
クオカを轢いた馬車を操っていたのはこいつ...
しっかり調べてやったんだ。
あれは人為的な、意図的な、組織的な事件だ。
事故じゃない。
何を思ってノコノコとこいつは。
どうしてやろうか。
「ここでもいいですよ。」
「いや、実験室の方がよかろう。」
奴は華奢な身体だ。苦労はしなさそうか。
「随分と暗い実験室ですね。」
「ああ。明るさはあまり必要ないからな。」
ランプの底を奴のこめかみにお見舞する。
貧弱が。
台に縛り付け、道具を揃える。
ここで唯一の悪趣味が出た。
奴が目を覚ましてから始めよう。
「お目覚めかい?小僧。安心しな。お前には絶対クオカに手を出させんよ。私が何としても許さん。この肉切り包丁は怖いか?」
こいつは新しい薬の実験台にしてやる。
せめて鼠より働けよ。
"被験者番号011。新薬の構想が完成したので、実験してみようと思う。まず麻痺と同じ状態を作り出すのに、60%のTと70%のLを動脈に注射する。どうやらこいつは、手首の動脈と静脈が捻れて逆になっているらしい。赤血球の働きを止めるため、筋肉に酸素が送られず例の麻痺とほぼ同じ状態になるのだ。
10分後反応が現れたが、筋肉の縮小は始まっていない。
3分後に膨張し始めた。
2分後ついに、筋肉の膨張が止まらずに皮膚が裂け始めた。だが、麻痺はしていないようだ。縄を千切り始めた。まずい。麻酔を打ち、ステッキで殴ると悲鳴は止まった。筋肉の一時的な覚醒は続いている。まさかとは思ったが、85%のTを動脈に打ち込んだ。本来なら身体が追いつけなくなり、内臓が自壊し始める。だがこの際だ。
ある程度予想していた通り、筋肉も裂け始めた。滲み出すように血が流れる。しかし、Tにより必要以上に血液が生成され、止まらない。遂に内臓が破裂し始めた。実験台は流石にもう死んだだろう。だが酸素も赤血球も必要としない血液は、主人が死んでも作り続けられる。
中和薬を注射すると、急速に血の流れは止まり、目に見える早さで萎びて行った。
流れた血の処理が終わったら、残り物を保存して肉片のストックに入れよう。"
冷凍保存が望ましいだろう。
新しい発見だ。
T:Lを32:17の74%の薬にすると、筋肉と内臓の動きをコントロール出来るようだ。
試しに作った液体を使ってみよう。
動脈に打つのは危険だ。左手首の静脈に打とう。
恐らく3分後には反応が始まるはずだ。
待てよ…...!?
奴は動脈と静脈が捻れていた。私は同じ場所に注射しなかったか?動脈に打ってしまったか?あの量なら死なない。だが、恐らく脳が腐るか崩れる。不味い。中和薬はどこだ。まだ間に合うかもしれない。間に合わなければ困る。間に合ってくれ。
酷い頭痛だ。間に合うか?
中和薬の方が軽いから流れは少しか早いはず...
血管がのたうつような感覚だ。
足の先が冷たい。
目が熱い。
食いしばった歯が舌を貫いた。
左腕が赤くなって
ー2ヶ月後?ー
まだ実験台は不足している。
クオカを治さないと。
左腕と足の指が必要だ。
大人じゃだめだ。
...?
こんな時間に誰だ?
屋敷の前で誰かが倒れたか。
子供?
いいじゃないか。
青い目の少年。
こいつは少し知っている。
"被験者番号017"
いい生きだ。
お似合いだ。
よく切れる。
首から下の上半身が麻痺か。
かなり珍しい範囲ではあるが、2日安静だ。
治るだろう。
『被験者番号010。この呼び方にはまだ抵抗がある。だが、治療と研究を並行するには必要だろう。症状は首から下の上半身麻痺。血液濃度は標準。30%のTと50%のLを注射すると、拒絶反応が起きかけた。これ以上TとLの濃度は下げられないので、麻酔の濃度を5%あげた。症状は収まった。1日経過を見て回復の兆しがある為、2日の安静で完治するだろう。』
もう私の患者も10人目、元医師の素人研究者となって半年か。早いものだ。
夜の10時だ。
...ん?こんな時間に誰だ?
私は急いで夜中の招かれざる客を迎えに行った。
「ゼラミル・レフォート氏ですね。地元誌の者ですが、マオル・デルタと言います。遅くに本当に申し訳ありません。新聞や町医者が貴方の功績を取材する動きがあったので、その前に偏見のない状態でお話を伺いたかった。上にも逆らえないと言うのもありますが、私自身不器用なもので。20分もかからせませんよ。」
暗くて顔はまだ見えない。
「私は構わないが、私のことをある程度知っての訪問か?」
「ええ、話には聞いている程の事ですが。しかしその話は今引き合いには出ません。簡単なお話だけでもいいので。町医者にはすっぱ抜かれたくないのです。」
成程。話はわかるやつかもしれない。
入れてしまおうか。
「入りなさい。」
「あと、私の子供の麻痺も治して欲しいのです。右腕が動かなくて、野球少年なだけあり可哀想なんです。割り込むわけでもありませんから、いつか治して頂きたいのです。ただその時は、うちでの治療に我儘させてくれませんか。」
明かりに照らされた青年の顔は見覚えがあった。
「是非、屋敷でなく外でも治療して頂きたい。」
「それは屋敷を留守にしろと?」
「そうなってしまいますが、お願いします。」
記憶よりも先に、嫌悪感が判断された。
誰だ?
どこかで......?!
クオカの右半身を麻痺させる事故を起こした張本人!?
この顔は!?
クオカを轢いた馬車を操っていたのはこいつ...
しっかり調べてやったんだ。
あれは人為的な、意図的な、組織的な事件だ。
事故じゃない。
何を思ってノコノコとこいつは。
どうしてやろうか。
「ここでもいいですよ。」
「いや、実験室の方がよかろう。」
奴は華奢な身体だ。苦労はしなさそうか。
「随分と暗い実験室ですね。」
「ああ。明るさはあまり必要ないからな。」
ランプの底を奴のこめかみにお見舞する。
貧弱が。
台に縛り付け、道具を揃える。
ここで唯一の悪趣味が出た。
奴が目を覚ましてから始めよう。
「お目覚めかい?小僧。安心しな。お前には絶対クオカに手を出させんよ。私が何としても許さん。この肉切り包丁は怖いか?」
こいつは新しい薬の実験台にしてやる。
せめて鼠より働けよ。
"被験者番号011。新薬の構想が完成したので、実験してみようと思う。まず麻痺と同じ状態を作り出すのに、60%のTと70%のLを動脈に注射する。どうやらこいつは、手首の動脈と静脈が捻れて逆になっているらしい。赤血球の働きを止めるため、筋肉に酸素が送られず例の麻痺とほぼ同じ状態になるのだ。
10分後反応が現れたが、筋肉の縮小は始まっていない。
3分後に膨張し始めた。
2分後ついに、筋肉の膨張が止まらずに皮膚が裂け始めた。だが、麻痺はしていないようだ。縄を千切り始めた。まずい。麻酔を打ち、ステッキで殴ると悲鳴は止まった。筋肉の一時的な覚醒は続いている。まさかとは思ったが、85%のTを動脈に打ち込んだ。本来なら身体が追いつけなくなり、内臓が自壊し始める。だがこの際だ。
ある程度予想していた通り、筋肉も裂け始めた。滲み出すように血が流れる。しかし、Tにより必要以上に血液が生成され、止まらない。遂に内臓が破裂し始めた。実験台は流石にもう死んだだろう。だが酸素も赤血球も必要としない血液は、主人が死んでも作り続けられる。
中和薬を注射すると、急速に血の流れは止まり、目に見える早さで萎びて行った。
流れた血の処理が終わったら、残り物を保存して肉片のストックに入れよう。"
冷凍保存が望ましいだろう。
新しい発見だ。
T:Lを32:17の74%の薬にすると、筋肉と内臓の動きをコントロール出来るようだ。
試しに作った液体を使ってみよう。
動脈に打つのは危険だ。左手首の静脈に打とう。
恐らく3分後には反応が始まるはずだ。
待てよ…...!?
奴は動脈と静脈が捻れていた。私は同じ場所に注射しなかったか?動脈に打ってしまったか?あの量なら死なない。だが、恐らく脳が腐るか崩れる。不味い。中和薬はどこだ。まだ間に合うかもしれない。間に合わなければ困る。間に合ってくれ。
酷い頭痛だ。間に合うか?
中和薬の方が軽いから流れは少しか早いはず...
血管がのたうつような感覚だ。
足の先が冷たい。
目が熱い。
食いしばった歯が舌を貫いた。
左腕が赤くなって
ー2ヶ月後?ー
まだ実験台は不足している。
クオカを治さないと。
左腕と足の指が必要だ。
大人じゃだめだ。
...?
こんな時間に誰だ?
屋敷の前で誰かが倒れたか。
子供?
いいじゃないか。
青い目の少年。
こいつは少し知っている。
"被験者番号017"
いい生きだ。
お似合いだ。
よく切れる。
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