11 / 17
PAST&DEEP SPACE no,5
しおりを挟む
「ただいま。」
「おかえりミルラ。お父さんは先に帰ってきたわ。」
「ただいま父さん。酒は飲みすぎるなよ。それで」
「またあの女と会っていたのか?森の血筋と会うんじゃない。奴らは幽霊をけしかけるんだぞ。お前がその気なら俺もそうするぞ。いいのか?」
「だから僕は彼女のことは知らないよ。レフォートだかなんだか知らないけど。会ったことも無いよ。なんでいつもそんな事言うのさ。」
「ゼラミルがそれでピリピリしてるからだよ。今日は店の前に臭液を撒かれたんだ。お前も最近怪しいぞ。」
「友達と遊んでるんだよ。遊んじゃだめじゃないだろう?」
「その友達がゼラミルの娘なら大問題だ。」
「知らないってば。なんでそいつは父さんのことを知ってるんだよ。」
「うるさい!知ったもんか。お前は夜何かこそこそ書いてるだろ!」
「その娘とは関係ないよ。僕が絵を描くのが好きなのは父さんも知ってるだろ。文句は言わないでくれ!」
「黙れ黙れ!親に隠し事でもあるだと?いい度胸だ!お前なぞ絵は描けんだろう!手紙でも書いてたなら承知しないぞ!」
「あなたやめて。」
「...もう懲り懲りだ!奴に嫌がらせを受けるのも!
おいミルラ、酒だ。」
「もうありません。今日はもう3本も呑んだでしょう。」
「なら酒蔵から持ってこい!ミルラ、早く行け!」
「あそこにこんな遅い時間に子供を行かせられません!ミルラ、行かなくていいのよ。もうお酒はやめて。」
「逆らうか」
瓶を片付けに来た母を、父は急に立ち上がり殴った。
「何するんだ!父さん!落ち着いて!」
「逆らうなと言っているのだ!わからんのか!持ってこいと聞こえないのか!」
「止めなさい!医者を呼びますよ!」
「奴の世話になんかなるか!」
父は皿で母の腕を叩き、コップか割れるほど強く頭を殴りつけた。
母は頭から血を流し、呻いた。
「止めろ父さん!死んじゃうじゃないか!止めろよ!」
僕の声如きでは止まらない。
割れて鋭くなったコップを、もう一度母の頭に刺した。
大量の血が噴き出し、倒れ込む。
「母さん!母さん!」
息をしていた肩が固まり、力が抜けたように崩れた。
息をしていなかった。
死んでしまった。
「父さ......お前.......貴様......!殺....」
僕は、まだ火のついた燭台を持った。
殺す。
殺してやる。
まだ奴は大声を出した反動で動きが鈍い。座り込んだ。
僕は奴の後頭部を狙い、思い切り燭台を振り下ろした。
「がっ」
「う」
「っ」
「あ」
何度も打ち下ろすと骨の砕ける感触があり、血が噴き出て奴は倒れた。
まだ奴は死んでいない。
辛うじて残っていた燭台の火を、奴の服に移らせた。
人の声と思えない程の悲鳴。のたうち回り、家具を倒し物音が響いた。
静かになった時にはもう、部屋とは呼べない有様だった。
「...ミルラ様?......ご主人様?」
奥の部屋から使用人のミリニ・タグドハスが出てきた。
怯えている。
「ミルラ様!何があったのです?ご主人様は?事故ですよね?」
どうやら最後を見てしまったらしい。
僕のそばに駆け寄ってきた。
目を大きく見開く。
「何が起こったんですか?」
「ミリニ。もう2人も死んだんだ。母さんも、奴も。もう1人死人が出ても何も変わらないだろう?特に何も。」
ミリニの目の不安の色は、徐々に恐怖に変わっていった。
僕は掴んでいた食器のナイフをミリニの首に叩きつけ、力を入れた。
綺麗には切れない。
でもちぎれてでも切れればいい。
「......な.......なぜ...」
「鬼には捕まらないよ。鬼にはね。絶対。」
その時、玄関のドアが消えた。
黒い影。
森の幽霊か。
森からは出られないんじゃないのか。
あの幽霊は人を殺すとされている。
逃げなければ。
外には誰もいなかった。
生き物と出会わない。
街灯だけが異様に明るく並んでいる。
幽霊は追ってきている。
なぜ明かりの下に出られるのだ。
いつの間にか森にいた。
曲がり角は無かったはずだ。
森は危ない。
しかし奴も撒いたようだ。
いくら走ったのかわからない。
歩いていこうか。
どこへ。
明かり?
明かりのついた屋敷だった。
こんな所に屋敷があるのか。
門を抜けると急に脱力した。
疲れか安心か具合は悪くない。
気が付くと土に伏している。
相当疲れたのか。
遠くでドアの開く音がした。
足音が近付いてくる。
僕の前で止まる。
目を開けていない事に気が付いた時に意識が飛んだ。
「おかえりミルラ。お父さんは先に帰ってきたわ。」
「ただいま父さん。酒は飲みすぎるなよ。それで」
「またあの女と会っていたのか?森の血筋と会うんじゃない。奴らは幽霊をけしかけるんだぞ。お前がその気なら俺もそうするぞ。いいのか?」
「だから僕は彼女のことは知らないよ。レフォートだかなんだか知らないけど。会ったことも無いよ。なんでいつもそんな事言うのさ。」
「ゼラミルがそれでピリピリしてるからだよ。今日は店の前に臭液を撒かれたんだ。お前も最近怪しいぞ。」
「友達と遊んでるんだよ。遊んじゃだめじゃないだろう?」
「その友達がゼラミルの娘なら大問題だ。」
「知らないってば。なんでそいつは父さんのことを知ってるんだよ。」
「うるさい!知ったもんか。お前は夜何かこそこそ書いてるだろ!」
「その娘とは関係ないよ。僕が絵を描くのが好きなのは父さんも知ってるだろ。文句は言わないでくれ!」
「黙れ黙れ!親に隠し事でもあるだと?いい度胸だ!お前なぞ絵は描けんだろう!手紙でも書いてたなら承知しないぞ!」
「あなたやめて。」
「...もう懲り懲りだ!奴に嫌がらせを受けるのも!
おいミルラ、酒だ。」
「もうありません。今日はもう3本も呑んだでしょう。」
「なら酒蔵から持ってこい!ミルラ、早く行け!」
「あそこにこんな遅い時間に子供を行かせられません!ミルラ、行かなくていいのよ。もうお酒はやめて。」
「逆らうか」
瓶を片付けに来た母を、父は急に立ち上がり殴った。
「何するんだ!父さん!落ち着いて!」
「逆らうなと言っているのだ!わからんのか!持ってこいと聞こえないのか!」
「止めなさい!医者を呼びますよ!」
「奴の世話になんかなるか!」
父は皿で母の腕を叩き、コップか割れるほど強く頭を殴りつけた。
母は頭から血を流し、呻いた。
「止めろ父さん!死んじゃうじゃないか!止めろよ!」
僕の声如きでは止まらない。
割れて鋭くなったコップを、もう一度母の頭に刺した。
大量の血が噴き出し、倒れ込む。
「母さん!母さん!」
息をしていた肩が固まり、力が抜けたように崩れた。
息をしていなかった。
死んでしまった。
「父さ......お前.......貴様......!殺....」
僕は、まだ火のついた燭台を持った。
殺す。
殺してやる。
まだ奴は大声を出した反動で動きが鈍い。座り込んだ。
僕は奴の後頭部を狙い、思い切り燭台を振り下ろした。
「がっ」
「う」
「っ」
「あ」
何度も打ち下ろすと骨の砕ける感触があり、血が噴き出て奴は倒れた。
まだ奴は死んでいない。
辛うじて残っていた燭台の火を、奴の服に移らせた。
人の声と思えない程の悲鳴。のたうち回り、家具を倒し物音が響いた。
静かになった時にはもう、部屋とは呼べない有様だった。
「...ミルラ様?......ご主人様?」
奥の部屋から使用人のミリニ・タグドハスが出てきた。
怯えている。
「ミルラ様!何があったのです?ご主人様は?事故ですよね?」
どうやら最後を見てしまったらしい。
僕のそばに駆け寄ってきた。
目を大きく見開く。
「何が起こったんですか?」
「ミリニ。もう2人も死んだんだ。母さんも、奴も。もう1人死人が出ても何も変わらないだろう?特に何も。」
ミリニの目の不安の色は、徐々に恐怖に変わっていった。
僕は掴んでいた食器のナイフをミリニの首に叩きつけ、力を入れた。
綺麗には切れない。
でもちぎれてでも切れればいい。
「......な.......なぜ...」
「鬼には捕まらないよ。鬼にはね。絶対。」
その時、玄関のドアが消えた。
黒い影。
森の幽霊か。
森からは出られないんじゃないのか。
あの幽霊は人を殺すとされている。
逃げなければ。
外には誰もいなかった。
生き物と出会わない。
街灯だけが異様に明るく並んでいる。
幽霊は追ってきている。
なぜ明かりの下に出られるのだ。
いつの間にか森にいた。
曲がり角は無かったはずだ。
森は危ない。
しかし奴も撒いたようだ。
いくら走ったのかわからない。
歩いていこうか。
どこへ。
明かり?
明かりのついた屋敷だった。
こんな所に屋敷があるのか。
門を抜けると急に脱力した。
疲れか安心か具合は悪くない。
気が付くと土に伏している。
相当疲れたのか。
遠くでドアの開く音がした。
足音が近付いてくる。
僕の前で止まる。
目を開けていない事に気が付いた時に意識が飛んだ。
0
あなたにおすすめの小説
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。
カレンと晴人はその後、どうなる?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【1分読書】意味が分かると怖いおとぎばなし
響ぴあの
ホラー
【1分読書】
意味が分かるとこわいおとぎ話。
意外な事実や知らなかった裏話。
浦島太郎は神になった。桃太郎の闇。本当に怖いかちかち山。かぐや姫は宇宙人。白雪姫の王子の誤算。舌切りすずめは三角関係の話。早く人間になりたい人魚姫。本当は怖い眠り姫、シンデレラ、さるかに合戦、はなさかじいさん、犬の呪いなどなど面白い雑学と創作短編をお楽しみください。
どこから読んでも大丈夫です。1話完結ショートショート。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる