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PAST&DEEP SPACE no,5
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「ただいま。」
「おかえりミルラ。お父さんは先に帰ってきたわ。」
「ただいま父さん。酒は飲みすぎるなよ。それで」
「またあの女と会っていたのか?森の血筋と会うんじゃない。奴らは幽霊をけしかけるんだぞ。お前がその気なら俺もそうするぞ。いいのか?」
「だから僕は彼女のことは知らないよ。レフォートだかなんだか知らないけど。会ったことも無いよ。なんでいつもそんな事言うのさ。」
「ゼラミルがそれでピリピリしてるからだよ。今日は店の前に臭液を撒かれたんだ。お前も最近怪しいぞ。」
「友達と遊んでるんだよ。遊んじゃだめじゃないだろう?」
「その友達がゼラミルの娘なら大問題だ。」
「知らないってば。なんでそいつは父さんのことを知ってるんだよ。」
「うるさい!知ったもんか。お前は夜何かこそこそ書いてるだろ!」
「その娘とは関係ないよ。僕が絵を描くのが好きなのは父さんも知ってるだろ。文句は言わないでくれ!」
「黙れ黙れ!親に隠し事でもあるだと?いい度胸だ!お前なぞ絵は描けんだろう!手紙でも書いてたなら承知しないぞ!」
「あなたやめて。」
「...もう懲り懲りだ!奴に嫌がらせを受けるのも!
おいミルラ、酒だ。」
「もうありません。今日はもう3本も呑んだでしょう。」
「なら酒蔵から持ってこい!ミルラ、早く行け!」
「あそこにこんな遅い時間に子供を行かせられません!ミルラ、行かなくていいのよ。もうお酒はやめて。」
「逆らうか」
瓶を片付けに来た母を、父は急に立ち上がり殴った。
「何するんだ!父さん!落ち着いて!」
「逆らうなと言っているのだ!わからんのか!持ってこいと聞こえないのか!」
「止めなさい!医者を呼びますよ!」
「奴の世話になんかなるか!」
父は皿で母の腕を叩き、コップか割れるほど強く頭を殴りつけた。
母は頭から血を流し、呻いた。
「止めろ父さん!死んじゃうじゃないか!止めろよ!」
僕の声如きでは止まらない。
割れて鋭くなったコップを、もう一度母の頭に刺した。
大量の血が噴き出し、倒れ込む。
「母さん!母さん!」
息をしていた肩が固まり、力が抜けたように崩れた。
息をしていなかった。
死んでしまった。
「父さ......お前.......貴様......!殺....」
僕は、まだ火のついた燭台を持った。
殺す。
殺してやる。
まだ奴は大声を出した反動で動きが鈍い。座り込んだ。
僕は奴の後頭部を狙い、思い切り燭台を振り下ろした。
「がっ」
「う」
「っ」
「あ」
何度も打ち下ろすと骨の砕ける感触があり、血が噴き出て奴は倒れた。
まだ奴は死んでいない。
辛うじて残っていた燭台の火を、奴の服に移らせた。
人の声と思えない程の悲鳴。のたうち回り、家具を倒し物音が響いた。
静かになった時にはもう、部屋とは呼べない有様だった。
「...ミルラ様?......ご主人様?」
奥の部屋から使用人のミリニ・タグドハスが出てきた。
怯えている。
「ミルラ様!何があったのです?ご主人様は?事故ですよね?」
どうやら最後を見てしまったらしい。
僕のそばに駆け寄ってきた。
目を大きく見開く。
「何が起こったんですか?」
「ミリニ。もう2人も死んだんだ。母さんも、奴も。もう1人死人が出ても何も変わらないだろう?特に何も。」
ミリニの目の不安の色は、徐々に恐怖に変わっていった。
僕は掴んでいた食器のナイフをミリニの首に叩きつけ、力を入れた。
綺麗には切れない。
でもちぎれてでも切れればいい。
「......な.......なぜ...」
「鬼には捕まらないよ。鬼にはね。絶対。」
その時、玄関のドアが消えた。
黒い影。
森の幽霊か。
森からは出られないんじゃないのか。
あの幽霊は人を殺すとされている。
逃げなければ。
外には誰もいなかった。
生き物と出会わない。
街灯だけが異様に明るく並んでいる。
幽霊は追ってきている。
なぜ明かりの下に出られるのだ。
いつの間にか森にいた。
曲がり角は無かったはずだ。
森は危ない。
しかし奴も撒いたようだ。
いくら走ったのかわからない。
歩いていこうか。
どこへ。
明かり?
明かりのついた屋敷だった。
こんな所に屋敷があるのか。
門を抜けると急に脱力した。
疲れか安心か具合は悪くない。
気が付くと土に伏している。
相当疲れたのか。
遠くでドアの開く音がした。
足音が近付いてくる。
僕の前で止まる。
目を開けていない事に気が付いた時に意識が飛んだ。
「おかえりミルラ。お父さんは先に帰ってきたわ。」
「ただいま父さん。酒は飲みすぎるなよ。それで」
「またあの女と会っていたのか?森の血筋と会うんじゃない。奴らは幽霊をけしかけるんだぞ。お前がその気なら俺もそうするぞ。いいのか?」
「だから僕は彼女のことは知らないよ。レフォートだかなんだか知らないけど。会ったことも無いよ。なんでいつもそんな事言うのさ。」
「ゼラミルがそれでピリピリしてるからだよ。今日は店の前に臭液を撒かれたんだ。お前も最近怪しいぞ。」
「友達と遊んでるんだよ。遊んじゃだめじゃないだろう?」
「その友達がゼラミルの娘なら大問題だ。」
「知らないってば。なんでそいつは父さんのことを知ってるんだよ。」
「うるさい!知ったもんか。お前は夜何かこそこそ書いてるだろ!」
「その娘とは関係ないよ。僕が絵を描くのが好きなのは父さんも知ってるだろ。文句は言わないでくれ!」
「黙れ黙れ!親に隠し事でもあるだと?いい度胸だ!お前なぞ絵は描けんだろう!手紙でも書いてたなら承知しないぞ!」
「あなたやめて。」
「...もう懲り懲りだ!奴に嫌がらせを受けるのも!
おいミルラ、酒だ。」
「もうありません。今日はもう3本も呑んだでしょう。」
「なら酒蔵から持ってこい!ミルラ、早く行け!」
「あそこにこんな遅い時間に子供を行かせられません!ミルラ、行かなくていいのよ。もうお酒はやめて。」
「逆らうか」
瓶を片付けに来た母を、父は急に立ち上がり殴った。
「何するんだ!父さん!落ち着いて!」
「逆らうなと言っているのだ!わからんのか!持ってこいと聞こえないのか!」
「止めなさい!医者を呼びますよ!」
「奴の世話になんかなるか!」
父は皿で母の腕を叩き、コップか割れるほど強く頭を殴りつけた。
母は頭から血を流し、呻いた。
「止めろ父さん!死んじゃうじゃないか!止めろよ!」
僕の声如きでは止まらない。
割れて鋭くなったコップを、もう一度母の頭に刺した。
大量の血が噴き出し、倒れ込む。
「母さん!母さん!」
息をしていた肩が固まり、力が抜けたように崩れた。
息をしていなかった。
死んでしまった。
「父さ......お前.......貴様......!殺....」
僕は、まだ火のついた燭台を持った。
殺す。
殺してやる。
まだ奴は大声を出した反動で動きが鈍い。座り込んだ。
僕は奴の後頭部を狙い、思い切り燭台を振り下ろした。
「がっ」
「う」
「っ」
「あ」
何度も打ち下ろすと骨の砕ける感触があり、血が噴き出て奴は倒れた。
まだ奴は死んでいない。
辛うじて残っていた燭台の火を、奴の服に移らせた。
人の声と思えない程の悲鳴。のたうち回り、家具を倒し物音が響いた。
静かになった時にはもう、部屋とは呼べない有様だった。
「...ミルラ様?......ご主人様?」
奥の部屋から使用人のミリニ・タグドハスが出てきた。
怯えている。
「ミルラ様!何があったのです?ご主人様は?事故ですよね?」
どうやら最後を見てしまったらしい。
僕のそばに駆け寄ってきた。
目を大きく見開く。
「何が起こったんですか?」
「ミリニ。もう2人も死んだんだ。母さんも、奴も。もう1人死人が出ても何も変わらないだろう?特に何も。」
ミリニの目の不安の色は、徐々に恐怖に変わっていった。
僕は掴んでいた食器のナイフをミリニの首に叩きつけ、力を入れた。
綺麗には切れない。
でもちぎれてでも切れればいい。
「......な.......なぜ...」
「鬼には捕まらないよ。鬼にはね。絶対。」
その時、玄関のドアが消えた。
黒い影。
森の幽霊か。
森からは出られないんじゃないのか。
あの幽霊は人を殺すとされている。
逃げなければ。
外には誰もいなかった。
生き物と出会わない。
街灯だけが異様に明るく並んでいる。
幽霊は追ってきている。
なぜ明かりの下に出られるのだ。
いつの間にか森にいた。
曲がり角は無かったはずだ。
森は危ない。
しかし奴も撒いたようだ。
いくら走ったのかわからない。
歩いていこうか。
どこへ。
明かり?
明かりのついた屋敷だった。
こんな所に屋敷があるのか。
門を抜けると急に脱力した。
疲れか安心か具合は悪くない。
気が付くと土に伏している。
相当疲れたのか。
遠くでドアの開く音がした。
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僕の前で止まる。
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