3日目の夜

はる

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CONTINUATION no,secret

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火事の中に飛び込んだ?!
死にたいのか彼は?!
もう家は全焼寸前なんだ。
もう助からないか...
不気味な音が聞こえた。
泣いているような笑っているような...
幽霊?
こんな白昼堂々と森から出るのか?
何故攻撃してこない。
また増えた。
徐々に幽霊の数は増えていく。
集まってきているようだった。
家を見ていた野次馬も、呆然と見上げている。
幽霊は、火事で未だ燃え盛る家の、2階を囲んでいた。
まだ2階は原形を留めている。
彼もそこにいるのか。
幽霊が彼を狙っているのか、護っているのかは分からない。
だが、群衆は彼と幽霊が無関係ではないことだけ分かった。
揺れ動く沢山の幽霊を見る群衆は、正気を保てない。
しかし、狂気に暮れる暇もなかった。
突然、炎の色が変わった。
青から赤に。
とたん、家全体が炎に包まれ崩れた。
灰と化した家"だった"ものの量は、明らかに出うる残骸より少ない。
消滅しているのだろうか。
しかし、灰からはまだ炎が立っている。
幽霊も薄れていき、背景が透け始めた。
その時、誰かが気付いた。
「Innocent shatterがいない...」
それが何を意味するかは誰もわからない。
だが、数少ない名前の付いた幽霊が居ないのは誰でも理解出来た。
灰のまま炎上いている山を、まだ幽霊は取り囲んでいる。

「2人分だ...」
私の隣にいたベテランの火消しが呟いた。
「何がです?」
「人の焼ける匂いさ。ここに人は住んでいないはずだったんだがね...」
かなり前に炎を消すことは不可能と知った火消し達も、群衆に加わっていた。
人の焼ける臭いが2人分なら、先の少年以外にも中に居た事になる。
火消しの言う通り、この家は少なくとも3日前には人が住んでいなかった。
人の住む気配が無いことを認識して、直ぐの火事である。
不思議であり、不自然だ。
何かを感じようと"山"を見ていた群衆の目からは、幽霊は消えていた。
群衆がそれに気付き空を見上げた時、炎がまた青くなった後、紫になった。
大きくなった炎は黒に変り、人為的ともいえる滑らかさで消えていった。
どのような術でも勢いを失わなかった炎が、自分から消えたのだ。
起きた事は複雑ではない。
ただ理解も出来そうになかった。
「少年を探せ!」
ベテランの火消しがいち早く我に帰った。
その後、少年の服と歴史書と絵描きの2冊の本だけが形を残して発見された。
しかし焼けた死肉は猫しか見つからず、人は影も形もなかった。
「猫の匂いではなかったんだがな...」
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