6 / 11
初めての討伐
しおりを挟むパチリ、と瞼が開くとともに窓から差し込む光が眩しい。
あれから俺は体も洗わずに寝ちゃったのか。
いっぱい寝たおかげなのか、体の調子が凄くいい。
(ステータスオープン…)
心の中で唱えるとヴィンッという機械音と共にステータス画面が現れた。
ユキ 18歳 rank.40
人間 : 男
体力 750/750
魔力 1500/1500
スキル 剣技 lv.6 かぎ爪 lv.1 気配察知 lv. 1 鑑定 lv.3 new 創造 lv.1 new クリーン lv.1
称号 【異世界転移者】【闇に好かれし者】【ドランゴンスレイヤー】【セーリャ神の加護】
「…いや、いやいやいや」
これはやばいでしょ、おかしいでしょ。
魔力限界まで使って一晩寝たらエグいくらい上がって、創造とかクリーンとか習得しちゃってるのはおかしいでしょ!!
何これッ!!??
ふぅ…と息を吐き出して興奮を抑えると、俺は「クリーン…」と唱えた。
ふわっと髪の毛が浮く感覚と、肌をやわらかい風が掠めていくような感覚。
見ると、髪の毛がサラサラに、腕も足もお風呂に入った後のようにスベスベしていた。
「なにこれすごい…」
俺は次に「創造」と呟いた。
しかし、創造と呟いた後は特に何が起きることはなく、ステータス画面を見ても魔力は減っていなかった。
という事は創造というスキルは文字通り何か物を創造するスキルなのかもしれない。
俺は目に付いた部屋のランプに意識を向け「創造」と唱えた。
すると、もともとあったランプと全く同じ物が俺の掌の上に創造された。
それも汚れひとつ、埃ひとつ、全てが完璧に複製されたランプだった。
次に俺は日本でよく食べていた某会社のポテトのチップスを創造した。
案の定創造は成功し、掌には某会社のポテトのチップスが詰まった赤い袋が乗っかっていた。
バリィッ!!と開封し、中の匂いを嗅ぐ。
「うん…普通に美味そうな匂いだ」
香ばしい塩の匂いにつられ袋の中に手を突っ込み、一枚引き抜いて口の中に入れる。
「美味っ!!!」
いやうまっ!!
てか創造スキル凄すぎ!!!
もうこれ複製もできて、好きな物創造しまくりじゃん!
「あ…」
これってもしかして、俺が風呂に入れなくて落ち込んでたからなのか?もしかしてお風呂が自分で作れるように神様が習得させてくれたとか。
そう考えると、ますます神様は俺に甘すぎる気がしてならない。いいのかそれで。俺は嬉しいけど、それじゃダメだろ。
ただ、今作るにしてもお湯はどうするのか。
取り敢えずお風呂は保留で、いつか目処がたったら作ってみることにしよう思う。
ステータス画面を見ると、思ったよりも魔力が減っていて、1500あった魔力が700まで減っていた。
そしてレベル1だった創造スキルがレベル2に上がっていた。どうやら何回か条件回数を超えるとスキルレベルが上がるようだ。
スキルレベルが一番高いのは剣術で、ま確かレベル6だが、スキルの上限はどこまであるんだろうか?
いやそもそもないかもしれない。
そんなことを考えながら他にも何かないかとステータス画面を見ていたら、ステータス画面の右下に小さいアイコンがあることに気がついた。
「なんだろ…これ」
何か無性に嫌な予感がしたが、勇気をだしてタッチしてみた。
ヴィンッ
機械音とともにウィンドウが現れる。
【アイテムボックス】
所持金 ♾
持ち物 冒険者カード、麻布の服一式、ブーツ、麻布の小袋、ロングソード
「……」
もう俺は言葉が出なかった。
ウィンドウが現れた瞬間、まず目に入ったのは所持金だった。
おかしい、無限とかおかしい。
俺死ぬまで遊んで暮らせるぞ。
俺をどれだけ驚かせれば気が済むんだ。
確かセーリャ神だっけ、そいつおかしい、頭のネジ外れてるよ。
なんか、必死に働いている人に申し訳ない。
俺ばっかりこんな楽してて。
でもまぁ、この世界に来たばかりの俺にとっては喜ぶべきことなので、罪悪感はこの際捨てることする。でないとやっていけない。
取り敢えず俺は、所持金に意識を向け500ギルと意識した。
すると、チャリンという小気味いい音と共に掌に金色の硬貨が一枚現れた。
やはりこの世界の硬貨は日本と大体同じようで500円玉のような金色の硬貨が掌に現れた。
それから俺は持ち物の中にあった麻布の服一式、ブーツ、麻布の袋、ロングソードを取り出すと、少しざらつく服とズボンを着て取り出した5000ギルを袋に入れ腰に括り付けると、ロングソードを左側の腰に帯剣した。
仕上げに門兵のおじさんからもらった外套を着てフードを目深に被ると、俺は1階の食堂へと移動した。
1階の受付のカウンターを通って食堂の方へと行くと、店員さんが慌ただしそうに料理を運んでいた。
ガチャガチャ、タンタンタンという食器やまな板の音がいかにも朝っていう感じの音で、俺の荒んだ心を酷く落ち着かせた。
「よく寝れたかい!」と言いながら空いてる角の席に腰を下ろした俺のもとに店員が料理を持ってきた。
「お客さん見ない顔だね!って言ってもフード被ってるから分かんないけどさ、うちの料理は美味しいよ!いっぱい食べてってくれよ!!」
そう言ってパンと野菜がゴロゴロと入ったスープを置いて行った。
思いの外俺の心は疲れていたようで、暖かいスープとフワフワのパンに、気を張っていた強ばった体が徐々に、徐々に、ほぐれていった。
料理を食べ終わった俺は、宿にあと1週間泊まることを伝えお金を支払うと、冒険者ギルドに向かった。
冒険者ギルドは朝のためか、殆ど人はいなかった。
スタスタと歩き、掲示板に向かう。
見ると、端っこの方にEランク級のゴブリンの討伐依頼が張り出されていた。
俺は迷わずその依頼紙を剥ぎ取ると、受付まで持って行った。
「おはようございます、依頼でございますね」
「はい」
「それでは冒険者カードの提示をお願いいたします」
俺はポケットの中から出すと見せかけてアイテムボックスから冒険者カードを取りだした。
「お預かり致します…それではこちら依頼書の方になります、本紙はこちらの方で預かっておりますので万が一ユキ様が持つ依頼書が紛失しても問題ありません…それではいってらっしゃいませ!」
そう言って昨日とは違った受付嬢に見送られ、俺はゴブリンの生息するという森へと向かった。
道行く先々で場所を訪ねながら1時間ほどでたどり着いたムルという森は、依頼書通りゴブリンが生息していた。
ただ流石Eランク依頼か、受付嬢の反応を見るにFランクの俺でも簡単に倒せる魔物のようだった。現に俺と同じ低ランク冒険者達がチラホラゴブリンと戦っていたが、いかにも剣術初心者といった女の子や男の子が「えりゃっ!!」だの「とりゃあぁっ!!!」だの言って簡単に倒せるくらいには、ゴブリンはクソほど弱かった。
俺は剣術がレベル6の為か、自分でも驚くほど綺麗にスパッとゴブリンの首を切り落としたことに、自分のことながら驚いた。
それとともに、平和な日本で暮らしていたあまちゃんのはずの俺が、ゴブリンを殺しても、血を見ても、全く恐怖心が芽生えなかった。
自分が以前の自分じゃないように感じて、酷く不安を覚えるも、きっと神様がこの世界で俺が安心して暮らせるように、俺の感覚を麻痺さてくれたんだと思うことにして、引き続き依頼をこなした。
生き物の死を悼みながら、俺はゴブリンの耳と小さな紅い魔石を回収していくと、もう用は終わったとばかりに森から離れ、1時間ほどかけてギルドへ戻った。
ギルドにゴブリンの耳と魔石を渡して報酬を貰うと、俺は宿へと向かった。
何だか今日は、やるせなくて、もう何もしたくなくなって、宿のベットで一人、横になった。
俺はそのまま、夕ご飯も食べずに眠った。
0
あなたにおすすめの小説
獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果
ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。
そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。
2023/04/06 後日談追加
【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件
白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。
最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。
いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。
魔王に転生したら幼馴染が勇者になって僕を倒しに来ました。
なつか
BL
ある日、目を開けると魔王になっていた。
この世界の魔王は必ずいつか勇者に倒されるらしい。でも、争いごとは嫌いだし、平和に暮らしたい!
そう思って魔界作りをがんばっていたのに、突然やってきた勇者にあっさりと敗北。
死ぬ直前に過去を思い出して、勇者が大好きだった幼馴染だったことに気が付いたけど、もうどうしようもない。
次、生まれ変わるとしたらもう魔王は嫌だな、と思いながら再び目を覚ますと、なぜかベッドにつながれていた――。
6話完結の短編です。前半は受けの魔王視点。後半は攻めの勇者視点。
性描写は最終話のみに入ります。
※注意
・攻めは過去に女性と関係を持っていますが、詳細な描写はありません。
・多少の流血表現があるため、「残酷な描写あり」タグを保険としてつけています。
獣人の子供が現代社会人の俺の部屋に迷い込んできました。
えっしゃー(エミリオ猫)
BL
突然、ひとり暮らしの俺(会社員)の部屋に、獣人の子供が現れた!
どっから来た?!異世界転移?!仕方ないので面倒を見る、連休中の俺。
そしたら、なぜか俺の事をママだとっ?!
いやいや女じゃないから!え?女って何って、お前、男しか居ない世界の子供なの?!
会社員男性と、異世界獣人のお話。
※6話で完結します。さくっと読めます。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。
ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。
異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。
二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。
しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。
再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。
「今夜は、ずっと繋がっていたい」というから頷いた結果。
猫宮乾
BL
異世界転移(転生)したワタルが現地の魔術師ユーグと恋人になって、致しているお話です。9割性描写です。※自サイトからの転載です。サイトにこの二人が付き合うまでが置いてありますが、こちら単独でご覧頂けます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる