その少女は才能を隠していた、けどそれも今日まで。

氷雨

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1章 序章

撮影場所は私の学校(なんでここなの...?)

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 夕日の差し込む教室に、1人の少女が佇んでいた。
少女は徐に空を見上げると、鈴の鳴くような声で話し出した。

「先生、やっと来てくれたんですね、嬉しいです。」

少女はそう言って顔をくしゃりとさせ満面の笑顔を浮かべた。その表情は花の咲いたような笑顔でそこだけが太陽に照らされたように明るかった。

「先生...実は私、先生に言わなくちゃいけないことがあるんです、聞いてくれますか?」

そういうと可憐な少女は窓に向けていた体を教室の入口の方に向けた。

「先生、私、先生に恋、しちゃいました。」

「はい、カ~ット!」

少女の台詞が言い終わると数秒置いて終わりの合図が知らされる。
そう、これは先生と生徒の禁断の恋を描いたワンシーン、つまりこれは映画の撮影だ。

私、榊原 蘭 は今、自教室での撮影を固唾を飲んで見ていた。しかし、それは私だけではなく皆が皆、教室から少し離れた場所でその撮影を目をキラキラとさせ眺めていた。
それは勿論、この撮影の主役である先程の少女が紛れもないトップアイドルであり、その美貌は老若男女問わず美しいと言う程の美少女だからだ。

そんな彼女に何故会えてるの?と思うだろう。
しかし、それは私の学校が撮影の場所に選ばれたからだ。そうでなければこんな近くでお目にかかることは出来ないだろう。それだけ彼女はすごいと言えた。

だけれどその撮影もあとワンシーンで終わってしまう。それを知っている我が校の生徒達は今しがた行われた撮影の余韻が冷めると思い出したのか皆絶望し始めた。

まぁ私はどうでもいいのだけれど...。
そして早く帰ってくれないかな?とか撮影の途中で何度も思ったりした。
私はこういうのが嫌いだ。何が嫌いかと言うと全部だ。具体的に言うとあのアイドルの演技だ。
なんだあの演技は、笑顔で誤魔化しただけじゃないか、私だったらきっとあんな事はしない。
だいたいこの映画は捻くれ者で少し臆病な先生、けどとても優しくて、笑うと可愛い先生とのすれ違いながらもお互いに惹かれていくというラブストーリーだ。
そして、そんな彼女達は生徒と先生でありそんな関係の彼らの恋は実らない。
けど主人公の少女はそれでも思いを伝えようとする。それはもう感動シーンだ。

それなのに...それなのに、なんだあの演技は、全然感動出来ない、役者舐めてるのかな?

そんな罵倒が出てくるほど私にはあのアイドルの演技が気に入らなかった。

今日の撮影はこれ以上出来ないという事で解散となり、明日また最後のシーンを撮るとのことだった。よし、早く帰れ。

そういう訳なので私は帰らせて頂きます。
え?もう帰るのだって?当たり前じゃん、誰がこんなにとこにずっといようと思う?こんな所で時間潰すくらいなら勉強したほうがまだマシだ。

それではさようなら。

私はそう心の中で言うと1人、人混みを掻き分け玄関に向かった。そしていつもの様に家に帰宅し、いつもの様にご飯を食べ、いつもの様にお風呂に入り寝た。


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