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16・お食事会IN赤城邸
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「蒼吾の家で二回も夕食を摂ったのだから、今度こそ俺の家でも食事をするな?」
「え、いや、赤城邸にひとりで行くのは敷居が高いよ」
この前だって、沙姫ちゃんと蒼吾君も一緒だったらご馳走になって帰った。
スマホの向こうで紅太郎君が沈黙する。
先に沙姫ちゃんと電話した後だから、もうかなり時間は遅い。
「……ほかの人間も一緒ならいいのか?」
「うん。蒼吾君が暇なときにふたりで行くとかなら「蒼吾はダメだ」」
食い気味にダメ出しされてしまった。
「じゃあ沙姫ちゃんが田舎から帰って来てからだね」
「……嫌だ」
どうしたんだ、若様。
もしかして紅太郎君も友情ルートに入ってる?
……蒼吾君と紅太郎君、昔からの知り合いなんだからいい加減友達になりなよ。前世の友みたいに、かけ算しろとまでは言わないからさあ。
「今夜は蒼馬も一緒だったんだよな?」
「そうだよ。偶然学園で会ったの」
「じゃあ蒼馬が一緒ならいいか?」
「う、うん」
紅太郎君は蒼馬君とも昔から知り合いらしい。
まあ当然か。蒼馬君も紅太郎君の話してたしね。
ゲームでは男性主人公を憧れの存在にしてたけど、近過ぎて兄の蒼吾君を憧れの存在に出来ないのなら、紅太郎君に憧れたらいいのに。……蒼吾君を憧れの存在に出来なかったのは、監禁男の片鱗を感じていたからだろうか。
「わかった。では明日、世莉と蒼馬を夕食に招く。蒼馬が婚約者に誤解されないよう、黒沢家の姉妹も同時に招こう。……構わないか?」
「う、うん」
正直言うと、美海ちゃんと麗海ちゃんは結構お気に入りキャラだったので、Hシーンの記憶がかなり濃い。日時好感度パラメータで変わるサブイベントの収集とかもやっちゃったし。顔を合わせて思い出すのは怖かった。
その反面、ちょっと会ってみたいような気もしていた。
美海ちゃんは後輩だし、麗海ちゃんは同級生だけどクラスが違うから、まだ会ったことないんだよね。女同士だし、ふたりのHシーンはちょっと特殊だったから、ゲームはゲームと割り切れるかな?
「……嫌か?」
「ううん。ただ今日蒼馬君から名前は聞いたけど、初めて会う人達だから」
「黒沢姉妹の相手は蒼馬に任せて、世莉は俺と話していればいい」
「あはは、そうだね」
ゲームと違ってどちらかを攻略する気はないので、ふたりとも蒼馬君にお任せするしかない。
ツンデレなロリ貧乳ドリルの美海ちゃんは口に出せないだけで蒼馬君にほのかな想いを抱いているし、ショタ好きでちょっと中二病入ってるストレート緑髪お嬢様の麗海ちゃんは本気で妹から奪う気はないのだから問題はないだろう。
もし蒼馬君がふたりと上手く行き過ぎても、ふたりの兄である黒沢海運の若き社長黒沢海王さんが、ゲームと同じようにきちんと窘めてどちらかを選ばせるに違いない。
海王さん大人っぽくて(七つ年上だからね)素敵なんだけど、出演回数は少なかったなー。
黒沢姉妹選択イベントが一番の見せ場だった。
両方と上手くやっていきたいって言うと、海に沈められてゲームオーバーなんだよねー。
「じゃあ明日迎えをやる。……楽しみだ」
「うん、私も。じゃあおやすみ」
「おやすみ」
考えてみると、黄澄さんや使用人がいるとはいえ、紅太郎君はいつもひとりの食卓で寂しいのかもなー。
赤城家の若様が縁側に座って、アレキサンダーとおにぎり食べるわけにもいかないだろうし。
とはいえ赤城家だしなー。そう気軽にはいけないよなー。などと思いながら、私は通話の終わったスマホを手に取り、ゲームアプリを起動した。いや、キャンペーンクエストがあるんだよ。
こっちへ来てからゲーフレになってくれた人にコールを送る。
前のところでの友達が付き合ってくれてたこともあるんだけど、みんな受験勉強で忙しくなってきたみたいなんだよね。
まあ、私も卒業に向けて頑張らなくちゃいけないのはわかってる。わかってはいるものの、だからこそ気晴らしが必要なんじゃよ(だれ?)。
新しいゲーフレはゲーム自体は始めたばっかりで、課金で無理矢理強くなったのだと言っていた。その名も『課金帝王』さん。
社会人かなー? 協力プレイ必須の期間限定キャンペーンじゃなくても夜ならいつ誘っても付き合ってくれるので、昼のバイトで貯めたお金をつぎ込んでいる大学生とかかもしれない。
もちろん十八歳以上なのは間違いないだろう。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ツンデレなロリ貧乳ドリルこと黒沢美海ちゃんは、震える声で姉に尋ねた。
「……お姉様、なにを見ていらっしゃいますの?」
「なんでもなくってよ、ふふふ」
赤城邸の廊下を歩きながら、天井と鴨居の間にある欄間を見つめていたストレート緑髪お嬢様こと黒沢麗海ちゃんは思わせぶりに微笑む。
美海ちゃんの顔色が変わった。
「こ、この世のものではないものをご覧になっていたんですの?」
「あらあら、どうかしら?」
「世莉先輩ってお寿司はなんのネタが好きですか? 僕はトロです!」
「蒼馬君……」
ちょっと君、美海ちゃんのこと好きなんだから、ここで上手いこと言っとこうよ。
そりゃ紅太郎君が今日はお寿司だって言ってたから、私も楽しみにしてるけど。
今世も前世も回転寿司しか食べたことないんだよねー。いや違った。スーパーで売ってる回らないパックのお寿司も食べたことあったわ。
「美海さん、麗海さんが見てたのは欄間の彫刻ですよ」
いきなり名前で呼ぶのもアレだけど、苗字が同じ姉妹なんだから仕方がない。
「あら……」
「そうなんですの?」
麗海ちゃんが驚いたような顔になり、美海ちゃんが嬉しそうな顔になる。
「言われてみれば芸術的な鳥の彫刻ですものね!」
「はい。それに……たぶんあれは朱雀ですよね、麗海さん。赤城邸の欄間に赤い朱雀の彫刻があるなんて、なんだかロマンチックですよね。おふたりのお宅には玄武の彫刻があったりしませんか?」
「ええ! 我が家は洋風建築なので欄間はありませんけれど、庭の池に蛇に巻き付かれた亀の石像がありますわ」
麗海ちゃんは中二病が入ってて、こういうオカルトネタが大好きなのである。
でも実はこれ、ふたりの好感度を上げるセリフではない。
ゲームでは赤城邸で黒沢姉妹と会うイベントなんてなかったけど、似たような状況はあった。そのときはオカルトネタで美海ちゃんをからかい、麗海ちゃんには霊能力者なのかと尋ねるのがベストだった。ちなみにゲームになかったイベントなのに欄間の彫刻が朱雀とわかったのは、私がゲーム好きで前世でも今世でも昔中二病を患ったことがあるからだ!
ふたりの好感度下げておくから頑張りなよね、蒼馬君!
とか思っていたら、勉強会に来たときの部屋の襖が開いた。
紺の着物姿の紅太郎君が現れる。
「よく来たな、世莉!」
今日は縁側にアレキサンダーの姿はない。
小屋にいるのかな。
ご飯の後でちょっとでも遊べたらいいな、と思いながら、私は招かれるまま寿司酢の香り漂う部屋に入った。イエーイ、お寿司だぜー。
「え、いや、赤城邸にひとりで行くのは敷居が高いよ」
この前だって、沙姫ちゃんと蒼吾君も一緒だったらご馳走になって帰った。
スマホの向こうで紅太郎君が沈黙する。
先に沙姫ちゃんと電話した後だから、もうかなり時間は遅い。
「……ほかの人間も一緒ならいいのか?」
「うん。蒼吾君が暇なときにふたりで行くとかなら「蒼吾はダメだ」」
食い気味にダメ出しされてしまった。
「じゃあ沙姫ちゃんが田舎から帰って来てからだね」
「……嫌だ」
どうしたんだ、若様。
もしかして紅太郎君も友情ルートに入ってる?
……蒼吾君と紅太郎君、昔からの知り合いなんだからいい加減友達になりなよ。前世の友みたいに、かけ算しろとまでは言わないからさあ。
「今夜は蒼馬も一緒だったんだよな?」
「そうだよ。偶然学園で会ったの」
「じゃあ蒼馬が一緒ならいいか?」
「う、うん」
紅太郎君は蒼馬君とも昔から知り合いらしい。
まあ当然か。蒼馬君も紅太郎君の話してたしね。
ゲームでは男性主人公を憧れの存在にしてたけど、近過ぎて兄の蒼吾君を憧れの存在に出来ないのなら、紅太郎君に憧れたらいいのに。……蒼吾君を憧れの存在に出来なかったのは、監禁男の片鱗を感じていたからだろうか。
「わかった。では明日、世莉と蒼馬を夕食に招く。蒼馬が婚約者に誤解されないよう、黒沢家の姉妹も同時に招こう。……構わないか?」
「う、うん」
正直言うと、美海ちゃんと麗海ちゃんは結構お気に入りキャラだったので、Hシーンの記憶がかなり濃い。日時好感度パラメータで変わるサブイベントの収集とかもやっちゃったし。顔を合わせて思い出すのは怖かった。
その反面、ちょっと会ってみたいような気もしていた。
美海ちゃんは後輩だし、麗海ちゃんは同級生だけどクラスが違うから、まだ会ったことないんだよね。女同士だし、ふたりのHシーンはちょっと特殊だったから、ゲームはゲームと割り切れるかな?
「……嫌か?」
「ううん。ただ今日蒼馬君から名前は聞いたけど、初めて会う人達だから」
「黒沢姉妹の相手は蒼馬に任せて、世莉は俺と話していればいい」
「あはは、そうだね」
ゲームと違ってどちらかを攻略する気はないので、ふたりとも蒼馬君にお任せするしかない。
ツンデレなロリ貧乳ドリルの美海ちゃんは口に出せないだけで蒼馬君にほのかな想いを抱いているし、ショタ好きでちょっと中二病入ってるストレート緑髪お嬢様の麗海ちゃんは本気で妹から奪う気はないのだから問題はないだろう。
もし蒼馬君がふたりと上手く行き過ぎても、ふたりの兄である黒沢海運の若き社長黒沢海王さんが、ゲームと同じようにきちんと窘めてどちらかを選ばせるに違いない。
海王さん大人っぽくて(七つ年上だからね)素敵なんだけど、出演回数は少なかったなー。
黒沢姉妹選択イベントが一番の見せ場だった。
両方と上手くやっていきたいって言うと、海に沈められてゲームオーバーなんだよねー。
「じゃあ明日迎えをやる。……楽しみだ」
「うん、私も。じゃあおやすみ」
「おやすみ」
考えてみると、黄澄さんや使用人がいるとはいえ、紅太郎君はいつもひとりの食卓で寂しいのかもなー。
赤城家の若様が縁側に座って、アレキサンダーとおにぎり食べるわけにもいかないだろうし。
とはいえ赤城家だしなー。そう気軽にはいけないよなー。などと思いながら、私は通話の終わったスマホを手に取り、ゲームアプリを起動した。いや、キャンペーンクエストがあるんだよ。
こっちへ来てからゲーフレになってくれた人にコールを送る。
前のところでの友達が付き合ってくれてたこともあるんだけど、みんな受験勉強で忙しくなってきたみたいなんだよね。
まあ、私も卒業に向けて頑張らなくちゃいけないのはわかってる。わかってはいるものの、だからこそ気晴らしが必要なんじゃよ(だれ?)。
新しいゲーフレはゲーム自体は始めたばっかりで、課金で無理矢理強くなったのだと言っていた。その名も『課金帝王』さん。
社会人かなー? 協力プレイ必須の期間限定キャンペーンじゃなくても夜ならいつ誘っても付き合ってくれるので、昼のバイトで貯めたお金をつぎ込んでいる大学生とかかもしれない。
もちろん十八歳以上なのは間違いないだろう。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ツンデレなロリ貧乳ドリルこと黒沢美海ちゃんは、震える声で姉に尋ねた。
「……お姉様、なにを見ていらっしゃいますの?」
「なんでもなくってよ、ふふふ」
赤城邸の廊下を歩きながら、天井と鴨居の間にある欄間を見つめていたストレート緑髪お嬢様こと黒沢麗海ちゃんは思わせぶりに微笑む。
美海ちゃんの顔色が変わった。
「こ、この世のものではないものをご覧になっていたんですの?」
「あらあら、どうかしら?」
「世莉先輩ってお寿司はなんのネタが好きですか? 僕はトロです!」
「蒼馬君……」
ちょっと君、美海ちゃんのこと好きなんだから、ここで上手いこと言っとこうよ。
そりゃ紅太郎君が今日はお寿司だって言ってたから、私も楽しみにしてるけど。
今世も前世も回転寿司しか食べたことないんだよねー。いや違った。スーパーで売ってる回らないパックのお寿司も食べたことあったわ。
「美海さん、麗海さんが見てたのは欄間の彫刻ですよ」
いきなり名前で呼ぶのもアレだけど、苗字が同じ姉妹なんだから仕方がない。
「あら……」
「そうなんですの?」
麗海ちゃんが驚いたような顔になり、美海ちゃんが嬉しそうな顔になる。
「言われてみれば芸術的な鳥の彫刻ですものね!」
「はい。それに……たぶんあれは朱雀ですよね、麗海さん。赤城邸の欄間に赤い朱雀の彫刻があるなんて、なんだかロマンチックですよね。おふたりのお宅には玄武の彫刻があったりしませんか?」
「ええ! 我が家は洋風建築なので欄間はありませんけれど、庭の池に蛇に巻き付かれた亀の石像がありますわ」
麗海ちゃんは中二病が入ってて、こういうオカルトネタが大好きなのである。
でも実はこれ、ふたりの好感度を上げるセリフではない。
ゲームでは赤城邸で黒沢姉妹と会うイベントなんてなかったけど、似たような状況はあった。そのときはオカルトネタで美海ちゃんをからかい、麗海ちゃんには霊能力者なのかと尋ねるのがベストだった。ちなみにゲームになかったイベントなのに欄間の彫刻が朱雀とわかったのは、私がゲーム好きで前世でも今世でも昔中二病を患ったことがあるからだ!
ふたりの好感度下げておくから頑張りなよね、蒼馬君!
とか思っていたら、勉強会に来たときの部屋の襖が開いた。
紺の着物姿の紅太郎君が現れる。
「よく来たな、世莉!」
今日は縁側にアレキサンダーの姿はない。
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