28 / 79
17・分岐点③
しおりを挟む
美味しそうな寿司酢の匂い漂う部屋の中には、寿司職人装束の黄澄さんがいた。
……忍者ってなんでも出来るんだなあ。
今朝港の市場で競り落としてきた新鮮な魚を握ってくれるのだという。私達はお皿とお箸が用意されたローテーブルの前に座った。
「世莉様、こちらはなんですの?」
「海老アボカドだよ。美海さん、食べてみる?」
「世莉様世莉様、こちらはもしかして納豆ですか?」
「うん、納豆巻き。麗海さんもどうぞ」
黄澄さんは、庶民の私にだけ馴染み深い回るお寿司のメニューも作ってくれた。
黒沢姉妹が左右から、好奇心に満ちた瞳で見つめてくる。
私は取り皿と取り箸をもらって、ふたりに海老アボカドと納豆巻きを分け与えた。ふたりはお礼に自分の皿からアワビと鯛をくれた。
「……おかしいだろう」
紅太郎君は苦虫を噛み潰したような顔でこちらを見て、ボソッと呟いた。
うん、私もおかしいと思う。
黒沢姉妹の真ん中にいるべきは蒼馬君だよね。私が紅太郎君の隣に座るのもなんかおかしい気もするけど、同級生だしね。蒼馬君も拗ねたような顔で私を見ている。
「世莉先輩、僕にも海老アボカドと納豆巻きください」
回るお寿司のメニューが欲しかっただけか!
美味しいよね、海老アボカドと納豆巻き。
「いいよ」
「じゃあ僕はトロをあげますね。口の中で蕩けて美味しいですよ」
「世莉、俺にもくれ。俺は代わりに甘海老と蟹をやろう」
「ありがとう」
「世莉様、美海はアナゴも差し上げますわ」
「世莉様世莉様、私のイクラもどうぞ」
「うん、ありがとう。でも一度には食べられないし、お皿に載らないからちょっと待って」
黄澄さんが握ってくれたお寿司は、どれも美味しかった。
素材が新鮮だし万能イケメン忍者だから当たり前だね!
それにしても、なんで黒沢姉妹に懐かれちゃったんだろう。性別で好感度が上がる選択肢が違うってことなのかな。海老アボカドと納豆巻きが魅力的過ぎたからかもしれない。美味しいもんね。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
お寿司を堪能した後、アレキサンダーと赤城邸の日本庭園を散歩して帰路に就く。
いやー、個人のお宅の中に露天風呂や蛍養殖してる池があるとか凄過ぎる。露天風呂か……小学三年生のとき、まだ元気だったおばあちゃんも一緒に行った旅行先で入った露天風呂良かったな。思い出補正もあるんだろうけど。
紅太郎君は泊まっていけとまで言ってくれたが、そうもいかないので蒼馬君with黒沢姉妹とリムジンに乗った。
「世莉様、明日のお昼はお時間ありまして?」
「明日?」
ドリル頭の美海ちゃんに聞かれて、私はありもしない予定に思いを巡らせた。
夏休みだしバイトもしてないし、ゲームのキャンペーンはゲーフレ『課金帝王』さんの都合で夜しか参加しないから暇と言えば暇だ。でも真面目に勉強しておかないと卒業が危うい。
ストレートヘアーの麗海ちゃんもにじり寄ってくる。心の中ではちゃん付けしちゃうなあ。
「シンボルタワーの麓にある中央公園でフリーマーケットがありますの。私達と蒼馬さんで行く予定だったのですが、よろしければご一緒にいかがです?」
「僕も世莉先輩が来てくれると嬉しいです」
蒼馬君は、とても嬉しそうじゃない顔で言う。
リムジンの後部座席は対面式になっていて、【美海ちゃん】【私】【麗海ちゃん】が並んだ向かいに【蒼馬君】となっている。うん、蒼馬君が私の位置にいるべきだよね。いや、視界に女の子が集まってるほうがいいのか?
男性向けエロゲ『ラストサマーメモリー』のときにはなかった状況なので、どれが正解なのかわからない。あ、でもフリマイベントはあったなあ。
フリマイベントのときの蒼馬君は、男性主人公が黒沢姉妹と話していても上機嫌だったんだけど、なんで今は不機嫌そうなんだろう。
……ゲームでは男の娘予定の蒼馬君も主人公ハーレムの一員だったから?
それじゃあ仕方がないなあ。紅太郎君に食事に誘われたときに考えた通り、ゲームの中のHシーンが特殊なふたりだったから肌色のスチルは思い出してないし、今世で攻略するつもりはないんだけどね。
「美海、世莉様が来てくださったら嬉しいですわ」
「私もです」
「うん、僕もです」
顔が笑ってないよ、蒼馬君。
どうしようかな。フリマイベントは続くイベントが印象的だったからはっきり覚えてるけど、私が行ってどうなるものでもない。問題は起こるものの、蒼馬君さえいれば解決するのだ。
あ、でも黒沢姉妹のお兄さんの黒沢海王さんが出てくる数少ないイベントのひとつなんだよね。私はふたりを二股にかける予定はないから、今回を逃すと会えないか。
……うーん、どうしよう?
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
A・海王さんに会ってみたい。→18ーAへ
B・やめておこう。→18ーBへ
……忍者ってなんでも出来るんだなあ。
今朝港の市場で競り落としてきた新鮮な魚を握ってくれるのだという。私達はお皿とお箸が用意されたローテーブルの前に座った。
「世莉様、こちらはなんですの?」
「海老アボカドだよ。美海さん、食べてみる?」
「世莉様世莉様、こちらはもしかして納豆ですか?」
「うん、納豆巻き。麗海さんもどうぞ」
黄澄さんは、庶民の私にだけ馴染み深い回るお寿司のメニューも作ってくれた。
黒沢姉妹が左右から、好奇心に満ちた瞳で見つめてくる。
私は取り皿と取り箸をもらって、ふたりに海老アボカドと納豆巻きを分け与えた。ふたりはお礼に自分の皿からアワビと鯛をくれた。
「……おかしいだろう」
紅太郎君は苦虫を噛み潰したような顔でこちらを見て、ボソッと呟いた。
うん、私もおかしいと思う。
黒沢姉妹の真ん中にいるべきは蒼馬君だよね。私が紅太郎君の隣に座るのもなんかおかしい気もするけど、同級生だしね。蒼馬君も拗ねたような顔で私を見ている。
「世莉先輩、僕にも海老アボカドと納豆巻きください」
回るお寿司のメニューが欲しかっただけか!
美味しいよね、海老アボカドと納豆巻き。
「いいよ」
「じゃあ僕はトロをあげますね。口の中で蕩けて美味しいですよ」
「世莉、俺にもくれ。俺は代わりに甘海老と蟹をやろう」
「ありがとう」
「世莉様、美海はアナゴも差し上げますわ」
「世莉様世莉様、私のイクラもどうぞ」
「うん、ありがとう。でも一度には食べられないし、お皿に載らないからちょっと待って」
黄澄さんが握ってくれたお寿司は、どれも美味しかった。
素材が新鮮だし万能イケメン忍者だから当たり前だね!
それにしても、なんで黒沢姉妹に懐かれちゃったんだろう。性別で好感度が上がる選択肢が違うってことなのかな。海老アボカドと納豆巻きが魅力的過ぎたからかもしれない。美味しいもんね。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
お寿司を堪能した後、アレキサンダーと赤城邸の日本庭園を散歩して帰路に就く。
いやー、個人のお宅の中に露天風呂や蛍養殖してる池があるとか凄過ぎる。露天風呂か……小学三年生のとき、まだ元気だったおばあちゃんも一緒に行った旅行先で入った露天風呂良かったな。思い出補正もあるんだろうけど。
紅太郎君は泊まっていけとまで言ってくれたが、そうもいかないので蒼馬君with黒沢姉妹とリムジンに乗った。
「世莉様、明日のお昼はお時間ありまして?」
「明日?」
ドリル頭の美海ちゃんに聞かれて、私はありもしない予定に思いを巡らせた。
夏休みだしバイトもしてないし、ゲームのキャンペーンはゲーフレ『課金帝王』さんの都合で夜しか参加しないから暇と言えば暇だ。でも真面目に勉強しておかないと卒業が危うい。
ストレートヘアーの麗海ちゃんもにじり寄ってくる。心の中ではちゃん付けしちゃうなあ。
「シンボルタワーの麓にある中央公園でフリーマーケットがありますの。私達と蒼馬さんで行く予定だったのですが、よろしければご一緒にいかがです?」
「僕も世莉先輩が来てくれると嬉しいです」
蒼馬君は、とても嬉しそうじゃない顔で言う。
リムジンの後部座席は対面式になっていて、【美海ちゃん】【私】【麗海ちゃん】が並んだ向かいに【蒼馬君】となっている。うん、蒼馬君が私の位置にいるべきだよね。いや、視界に女の子が集まってるほうがいいのか?
男性向けエロゲ『ラストサマーメモリー』のときにはなかった状況なので、どれが正解なのかわからない。あ、でもフリマイベントはあったなあ。
フリマイベントのときの蒼馬君は、男性主人公が黒沢姉妹と話していても上機嫌だったんだけど、なんで今は不機嫌そうなんだろう。
……ゲームでは男の娘予定の蒼馬君も主人公ハーレムの一員だったから?
それじゃあ仕方がないなあ。紅太郎君に食事に誘われたときに考えた通り、ゲームの中のHシーンが特殊なふたりだったから肌色のスチルは思い出してないし、今世で攻略するつもりはないんだけどね。
「美海、世莉様が来てくださったら嬉しいですわ」
「私もです」
「うん、僕もです」
顔が笑ってないよ、蒼馬君。
どうしようかな。フリマイベントは続くイベントが印象的だったからはっきり覚えてるけど、私が行ってどうなるものでもない。問題は起こるものの、蒼馬君さえいれば解決するのだ。
あ、でも黒沢姉妹のお兄さんの黒沢海王さんが出てくる数少ないイベントのひとつなんだよね。私はふたりを二股にかける予定はないから、今回を逃すと会えないか。
……うーん、どうしよう?
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
A・海王さんに会ってみたい。→18ーAへ
B・やめておこう。→18ーBへ
0
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
【完結】モブのメイドが腹黒公爵様に捕まりました
ベル
恋愛
皆さまお久しぶりです。メイドAです。
名前をつけられもしなかった私が主人公になるなんて誰が思ったでしょうか。
ええ。私は今非常に困惑しております。
私はザーグ公爵家に仕えるメイド。そして奥様のソフィア様のもと、楽しく時に生温かい微笑みを浮かべながら日々仕事に励んでおり、平和な生活を送らせていただいておりました。
...あの腹黒が現れるまでは。
『無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない』のサイドストーリーです。
個人的に好きだった二人を今回は主役にしてみました。
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました
もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』
透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。
「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」
そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが!
突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!?
気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態!
けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で――
「なんて可憐な子なんだ……!」
……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!?
これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!?
ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆
公爵様のバッドエンドを回避したいだけだったのに、なぜか溺愛されています
六花心碧
恋愛
お気に入り小説の世界で名前すら出てこないモブキャラに転生してしまった!
『推しのバッドエンドを阻止したい』
そう思っただけなのに、悪女からは脅されるし、小説の展開はどんどん変わっていっちゃうし……。
推しキャラである公爵様の反逆を防いで、見事バッドエンドを回避できるのか……?!
ゆるくて、甘くて、ふわっとした溺愛ストーリーです➴⡱
◇2025.3 日間・週間1位いただきました!HOTランキングは最高3位いただきました!
皆様のおかげです、本当にありがとうございました(ˊᗜˋ*)
(外部URLで登録していたものを改めて登録しました! ◇他サイト様でも公開中です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる