エロゲの男性主人公の立ち位置に転生しましたが、前世も今世も女です。

キマメ

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17・分岐点③

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 美味しそうな寿司酢の匂い漂う部屋の中には、寿司職人装束の黄澄さんがいた。
 ……忍者ってなんでも出来るんだなあ。
 今朝港の市場で競り落としてきた新鮮な魚を握ってくれるのだという。私達はお皿とお箸が用意されたローテーブルの前に座った。

「世莉様、こちらはなんですの?」
「海老アボカドだよ。美海さん、食べてみる?」
「世莉様世莉様、こちらはもしかして納豆ですか?」
「うん、納豆巻き。麗海さんもどうぞ」

 黄澄さんは、庶民の私にだけ馴染み深い回るお寿司のメニューも作ってくれた。
 黒沢姉妹が左右から、好奇心に満ちた瞳で見つめてくる。
 私は取り皿と取り箸をもらって、ふたりに海老アボカドと納豆巻きを分け与えた。ふたりはお礼に自分の皿からアワビと鯛をくれた。

「……おかしいだろう」

 紅太郎君は苦虫を噛み潰したような顔でこちらを見て、ボソッと呟いた。
 うん、私もおかしいと思う。
 黒沢姉妹の真ん中にいるべきは蒼馬君だよね。私が紅太郎君の隣に座るのもなんかおかしい気もするけど、同級生だしね。蒼馬君も拗ねたような顔で私を見ている。

「世莉先輩、僕にも海老アボカドと納豆巻きください」

 回るお寿司のメニューが欲しかっただけか!
 美味しいよね、海老アボカドと納豆巻き。

「いいよ」
「じゃあ僕はトロをあげますね。口の中で蕩けて美味しいですよ」
「世莉、俺にもくれ。俺は代わりに甘海老と蟹をやろう」
「ありがとう」
「世莉様、美海はアナゴも差し上げますわ」
「世莉様世莉様、私のイクラもどうぞ」
「うん、ありがとう。でも一度には食べられないし、お皿に載らないからちょっと待って」

 黄澄さんが握ってくれたお寿司は、どれも美味しかった。
 素材が新鮮だし万能イケメン忍者だから当たり前だね!
 それにしても、なんで黒沢姉妹に懐かれちゃったんだろう。性別で好感度が上がる選択肢が違うってことなのかな。海老アボカドと納豆巻きが魅力的過ぎたからかもしれない。美味しいもんね。

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 お寿司を堪能した後、アレキサンダーと赤城邸の日本庭園を散歩して帰路に就く。
 いやー、個人のお宅の中に露天風呂や蛍養殖してる池があるとか凄過ぎる。露天風呂か……小学三年生のとき、まだ元気だったおばあちゃんも一緒に行った旅行先で入った露天風呂良かったな。思い出補正もあるんだろうけど。
 紅太郎君は泊まっていけとまで言ってくれたが、そうもいかないので蒼馬君with黒沢姉妹とリムジンに乗った。

「世莉様、明日のお昼はお時間ありまして?」
「明日?」

 ドリル頭の美海ちゃんに聞かれて、私はありもしない予定に思いを巡らせた。
 夏休みだしバイトもしてないし、ゲームのキャンペーンはゲーフレ『課金帝王』さんの都合で夜しか参加しないから暇と言えば暇だ。でも真面目に勉強しておかないと卒業が危うい。
 ストレートヘアーの麗海ちゃんもにじり寄ってくる。心の中ではちゃん付けしちゃうなあ。

「シンボルタワーの麓にある中央公園でフリーマーケットがありますの。私達と蒼馬さんで行く予定だったのですが、よろしければご一緒にいかがです?」
「僕も世莉先輩が来てくれると嬉しいです」

 蒼馬君は、とても嬉しそうじゃない顔で言う。
 リムジンの後部座席は対面式になっていて、【美海ちゃん】【私】【麗海ちゃん】が並んだ向かいに【蒼馬君】となっている。うん、蒼馬君が私の位置にいるべきだよね。いや、視界に女の子が集まってるほうがいいのか?
 男性向けエロゲ『ラストサマーメモリー』のときにはなかった状況なので、どれが正解なのかわからない。あ、でもフリマイベントはあったなあ。

 フリマイベントのときの蒼馬君は、男性主人公が黒沢姉妹と話していても上機嫌だったんだけど、なんで今は不機嫌そうなんだろう。
 ……ゲームでは男の娘予定の蒼馬君も主人公ハーレムの一員だったから?
 それじゃあ仕方がないなあ。紅太郎君に食事に誘われたときに考えた通り、ゲームの中のHシーンが特殊なふたりだったから肌色のスチルは思い出してないし、今世で攻略するつもりはないんだけどね。

「美海、世莉様が来てくださったら嬉しいですわ」
「私もです」
「うん、僕もです」

 顔が笑ってないよ、蒼馬君。
 どうしようかな。フリマイベントは続くイベントが印象的だったからはっきり覚えてるけど、私が行ってどうなるものでもない。問題は起こるものの、蒼馬君さえいれば解決するのだ。
 あ、でも黒沢姉妹のお兄さんの黒沢海王さんが出てくる数少ないイベントのひとつなんだよね。私はふたりを二股にかける予定はないから、今回を逃すと会えないか。

 ……うーん、どうしよう?

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

A・海王さんに会ってみたい。→18ーAへ

B・やめておこう。→18ーBへ
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