66 / 79
24-C・分岐点⑧
しおりを挟む
「驚きだよ、まさか蒼馬君が『課金帝王』さんだったとは……」
「僕、お金だけは持ってますからね!」
蒼馬君は電子関係に強くて、葵財閥警備部門のセキュリティプログラムを担当したり、葵財閥関連商品に使える電子マネーAOIブルーの開発をしているのだという。
それ、電子関係に強いとかいうレベルじゃない。
お互いの意外な正体を知った私達は、蒼馬君が野菜のパウンドケーキを買い込むのを待ってから生徒会室に来ていた。彼は生徒会長なのだ。
「僕も驚きですよ。まさか世莉先輩が『四神の愛し姫』さんだったなんて」
「うわああああ」
私はスマホを持つ手はそのままに、もう片方の手で羞恥に燃え上がる顔を押さえた。
そのアカウント名決めたときは中二病だったんだよ、中二病。
ネット小説で『愛し子』が出てくるのに嵌ってたし。おまけに『愛し』じゃなくて『愛し』と振り仮名を振ってる辺りも言い訳の仕様がない。
「良い名前だと思いますよ?……驚きましたけど」
驚いたと二回言ったのは大事なことだからですか? そうですか。
私は顔から手を離して、レベリングの続きに戻った。
生徒会室には私達ふたりきりだ。同じ生徒会役員の黒沢姉妹は豪華客船だし、もうひとりの役員の沙姫ちゃんの弟さんは家族会議なのだという。農場の手伝いをしたときの反省会みたいなものかな。
「夜しか暇じゃなかったのは、昼はお仕事や生徒会で忙しかったからかー」
「はい。桜山君は親せきの農場へお手伝いに行ってるし、美海ちゃん……もう婚約者ごっこやめたから、名前で呼ぶと彼女に悪いですかね?」
「幼なじみだからいいんじゃない? 美海ちゃんに気になる人が出来たら、黒沢さんって呼ぶようにしたら?」
「そうですね。……黒沢さんはわからないんですけど、僕は気になる人がいるんです。だから黒沢さんって呼ぶことにします」
「ふーん」
それで婚約者ごっこやめたんだね。
気になる人ってだれだろう? 幼なじみの紅太郎君の魅力に気づいたとか?
でも蒼馬君もどっちかっていうと陰キャっぽいけどなあ。ゲーマーだし(偏見、私は陰キャゲーマーです)。
さすがエリート学園(生徒はみんな十八歳以上だよ!)ということで、生徒会室の床にはふかふかの絨毯が敷かれていた。
私と蒼馬君は、生徒会長の机に背中を預けて絨毯に座っている。
ふたりの間には、購買で蒼馬君が買った野菜のパウンドケーキと彼が裏庭自販機で買ったミックスジュース、それから私が買ったチョコクルミパンとモンブランどら焼きがある。
私は裏庭自販機ではなにも買わなかった。ゲーム内でのレアアイテムと引き換えに、蒼馬君にミックスジュースを譲ってもらったのだ。
「まあそれで、黒沢さん達は今日のパーティのために業務を前倒しにしてたんで、これまでは結構バタバタしてたんです。……そうじゃなかったら、僕も兄さん達と別荘に行きたかったです」
唇を尖らせる蒼馬君に苦笑する。
墨羽さんがいるとはいえ──そういえば蒼馬君って霊力が強いんだよね、黄澄さん達の正体知ってるってこと?──あれ以上男性率を増やすわけにはいかない。
それに、カブトムシとクワガタで学力が上がるとかエロゲ転生だとか、電子の天才蒼馬君には恥ずかしくて話せないよー。
「世莉先輩は、兄さん達のセフレなんですか?」
「え?」
「前に付き合ってないって言ってたのに、泊りがけで別荘へ行くなんて、そうとしか思えません。兄さん最近、仕事関係のセフレとは手を切ったって噂だし、学園ではほかに親しそうな女の子はいないし……」
「ち、違うよ? ただの友達だよ?」
告白はされたけど。
というか、『達』ってなんだ、『達』って!
いくら十八歳以上でも3Pなんかしませんよ! エロゲじゃないんだから!
「本当ですか?」
「うん」
「じゃあ……」
スマホを絨毯の上に置いて、蒼馬君が私に顔を近づけてくる。まつ毛長ぁーい。
蒼吾君に似ているけれど、少し違う。蒼馬君は蒼馬君だ。エロゲ『ラストサマーメモリー』で見た男の娘とも違う。
蒼吾君より色の薄い水色の髪が揺れる。生徒会長の机の向こうにある窓は開いているのだ。
「蒼馬君、身長伸びた?」
「あ、気づいてくれました? 成長期だったのか、この数週間で一気に伸びたんです。ちょっとだけ兄さんよりも高いんですよ。ずっと小柄なのがコンプレックスだったから嬉しくて!」
「そう……」
いきなり私の声が上ずってしまったのは、蒼馬君をまじまじと見て心臓が跳ね上がったからだ。
あれ? なんだ、これ。この学園はイケメン多いのに、こんなにときめくの初めてだぞ。
前世の友の妄想かけ算はいつも適当に流してたけど(迂闊にコメントすると地雷踏むし)、成長(捏造)蒼馬君×男性主人公ネタは結構好きだった。硬くしなやかな体が成長して骨ばって、あどけなさを残しながらも男っぽく大人びたら──
「世莉先輩、僕、あなたのことが好きです。ひと目惚れだったんです。赤城邸での食事会のときは緊張して変な顔してましたけど、あなたのこと好き過ぎて戸惑ってたんです。……兄さんのセフレじゃないんなら、ううん、兄さんのセフレだったとしても別れて、僕の恋人になってください」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
C・告白を受け入れる。→25ーCへ
E・告白を受け入れない。→26へ
「僕、お金だけは持ってますからね!」
蒼馬君は電子関係に強くて、葵財閥警備部門のセキュリティプログラムを担当したり、葵財閥関連商品に使える電子マネーAOIブルーの開発をしているのだという。
それ、電子関係に強いとかいうレベルじゃない。
お互いの意外な正体を知った私達は、蒼馬君が野菜のパウンドケーキを買い込むのを待ってから生徒会室に来ていた。彼は生徒会長なのだ。
「僕も驚きですよ。まさか世莉先輩が『四神の愛し姫』さんだったなんて」
「うわああああ」
私はスマホを持つ手はそのままに、もう片方の手で羞恥に燃え上がる顔を押さえた。
そのアカウント名決めたときは中二病だったんだよ、中二病。
ネット小説で『愛し子』が出てくるのに嵌ってたし。おまけに『愛し』じゃなくて『愛し』と振り仮名を振ってる辺りも言い訳の仕様がない。
「良い名前だと思いますよ?……驚きましたけど」
驚いたと二回言ったのは大事なことだからですか? そうですか。
私は顔から手を離して、レベリングの続きに戻った。
生徒会室には私達ふたりきりだ。同じ生徒会役員の黒沢姉妹は豪華客船だし、もうひとりの役員の沙姫ちゃんの弟さんは家族会議なのだという。農場の手伝いをしたときの反省会みたいなものかな。
「夜しか暇じゃなかったのは、昼はお仕事や生徒会で忙しかったからかー」
「はい。桜山君は親せきの農場へお手伝いに行ってるし、美海ちゃん……もう婚約者ごっこやめたから、名前で呼ぶと彼女に悪いですかね?」
「幼なじみだからいいんじゃない? 美海ちゃんに気になる人が出来たら、黒沢さんって呼ぶようにしたら?」
「そうですね。……黒沢さんはわからないんですけど、僕は気になる人がいるんです。だから黒沢さんって呼ぶことにします」
「ふーん」
それで婚約者ごっこやめたんだね。
気になる人ってだれだろう? 幼なじみの紅太郎君の魅力に気づいたとか?
でも蒼馬君もどっちかっていうと陰キャっぽいけどなあ。ゲーマーだし(偏見、私は陰キャゲーマーです)。
さすがエリート学園(生徒はみんな十八歳以上だよ!)ということで、生徒会室の床にはふかふかの絨毯が敷かれていた。
私と蒼馬君は、生徒会長の机に背中を預けて絨毯に座っている。
ふたりの間には、購買で蒼馬君が買った野菜のパウンドケーキと彼が裏庭自販機で買ったミックスジュース、それから私が買ったチョコクルミパンとモンブランどら焼きがある。
私は裏庭自販機ではなにも買わなかった。ゲーム内でのレアアイテムと引き換えに、蒼馬君にミックスジュースを譲ってもらったのだ。
「まあそれで、黒沢さん達は今日のパーティのために業務を前倒しにしてたんで、これまでは結構バタバタしてたんです。……そうじゃなかったら、僕も兄さん達と別荘に行きたかったです」
唇を尖らせる蒼馬君に苦笑する。
墨羽さんがいるとはいえ──そういえば蒼馬君って霊力が強いんだよね、黄澄さん達の正体知ってるってこと?──あれ以上男性率を増やすわけにはいかない。
それに、カブトムシとクワガタで学力が上がるとかエロゲ転生だとか、電子の天才蒼馬君には恥ずかしくて話せないよー。
「世莉先輩は、兄さん達のセフレなんですか?」
「え?」
「前に付き合ってないって言ってたのに、泊りがけで別荘へ行くなんて、そうとしか思えません。兄さん最近、仕事関係のセフレとは手を切ったって噂だし、学園ではほかに親しそうな女の子はいないし……」
「ち、違うよ? ただの友達だよ?」
告白はされたけど。
というか、『達』ってなんだ、『達』って!
いくら十八歳以上でも3Pなんかしませんよ! エロゲじゃないんだから!
「本当ですか?」
「うん」
「じゃあ……」
スマホを絨毯の上に置いて、蒼馬君が私に顔を近づけてくる。まつ毛長ぁーい。
蒼吾君に似ているけれど、少し違う。蒼馬君は蒼馬君だ。エロゲ『ラストサマーメモリー』で見た男の娘とも違う。
蒼吾君より色の薄い水色の髪が揺れる。生徒会長の机の向こうにある窓は開いているのだ。
「蒼馬君、身長伸びた?」
「あ、気づいてくれました? 成長期だったのか、この数週間で一気に伸びたんです。ちょっとだけ兄さんよりも高いんですよ。ずっと小柄なのがコンプレックスだったから嬉しくて!」
「そう……」
いきなり私の声が上ずってしまったのは、蒼馬君をまじまじと見て心臓が跳ね上がったからだ。
あれ? なんだ、これ。この学園はイケメン多いのに、こんなにときめくの初めてだぞ。
前世の友の妄想かけ算はいつも適当に流してたけど(迂闊にコメントすると地雷踏むし)、成長(捏造)蒼馬君×男性主人公ネタは結構好きだった。硬くしなやかな体が成長して骨ばって、あどけなさを残しながらも男っぽく大人びたら──
「世莉先輩、僕、あなたのことが好きです。ひと目惚れだったんです。赤城邸での食事会のときは緊張して変な顔してましたけど、あなたのこと好き過ぎて戸惑ってたんです。……兄さんのセフレじゃないんなら、ううん、兄さんのセフレだったとしても別れて、僕の恋人になってください」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
C・告白を受け入れる。→25ーCへ
E・告白を受け入れない。→26へ
0
あなたにおすすめの小説
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜
京
恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。
右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。
そんな乙女ゲームのようなお話。
【完】夫に売られて、売られた先の旦那様に溺愛されています。
112
恋愛
夫に売られた。他所に女を作り、売人から受け取った銀貨の入った小袋を懐に入れて、出ていった。呆気ない別れだった。
ローズ・クローは、元々公爵令嬢だった。夫、だった人物は男爵の三男。到底釣合うはずがなく、手に手を取って家を出た。いわゆる駆け落ち婚だった。
ローズは夫を信じ切っていた。金が尽き、宝石を差し出しても、夫は自分を愛していると信じて疑わなかった。
※完結しました。ありがとうございました。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【完結】モブのメイドが腹黒公爵様に捕まりました
ベル
恋愛
皆さまお久しぶりです。メイドAです。
名前をつけられもしなかった私が主人公になるなんて誰が思ったでしょうか。
ええ。私は今非常に困惑しております。
私はザーグ公爵家に仕えるメイド。そして奥様のソフィア様のもと、楽しく時に生温かい微笑みを浮かべながら日々仕事に励んでおり、平和な生活を送らせていただいておりました。
...あの腹黒が現れるまでは。
『無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない』のサイドストーリーです。
個人的に好きだった二人を今回は主役にしてみました。
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。
婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜
紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。
連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。
せっかく傾国級の美人に生まれたのですから、ホントにやらなきゃ損ですよ?
志波 連
恋愛
病弱な父親とまだ学生の弟を抱えた没落寸前のオースティン伯爵家令嬢であるルシアに縁談が来た。相手は学生時代、一方的に憧れていた上級生であるエルランド伯爵家の嫡男ルイス。
父の看病と伯爵家業務で忙しく、結婚は諦めていたルシアだったが、結婚すれば多額の資金援助を受けられるという条件に、嫁ぐ決意を固める。
多忙を理由に顔合わせにも婚約式にも出てこないルイス。不信感を抱くが、弟のためには絶対に援助が必要だと考えるルシアは、黙って全てを受け入れた。
オースティン伯爵の健康状態を考慮して半年後に結婚式をあげることになり、ルイスが住んでいるエルランド伯爵家のタウンハウスに同居するためにやってきたルシア。
それでも帰ってこない夫に泣くことも怒ることも縋ることもせず、非道な夫を庇い続けるルシアの姿に深く同情した使用人たちは遂に立ち上がる。
この作品は小説家になろう及びpixivでも掲載しています
ホットランキング1位!ありがとうございます!皆様のおかげです!感謝します!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる