魔王城での聖女生活~異世界に聖女として呼ばれましたが実は世界を守ってた魔王を聖女の力で助けます~

四乃

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第一部

勇者ウィリアムの追憶(勇者サイド)②

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 父の異母弟である叔父上が臨時に国王となった。
 僕が王位継承権第一位だったが、幼すぎるということで叔父と議会が揉め、結果僕が20歳の誕生日を迎えるまで叔父が最高権力者となった。


 議会の父上を支持していた貴族議員は僕を国王にしたがった。 
 今は幼くても皆で支えればいいと。
 数年経てば成人を迎えるのだからその間だけ摂政でも置けば問題ないと。
 しかし叔父上は「過去の文献からして200年以内につぎの魔王が現れている。もう200年だ。いつ現れてもおかしくない。ならばウィリアムはまず魔王討伐に備え勇者の役目に専念した方が良い」と問題提起。
 議会も一理あると臨時と条件付きでこれを承認したのだ。


 叔父は勇者としての学びを僕に優先させた。
 僕は素直に従い勇者に必要な知識も剣技も魔法も磨いた。
 帝王学はもう粗方修めていたのでさして問題は感じなかったのもあり特段不満はなかった。
 実戦も必要と直属の騎士団の部隊を与えられ魔物討伐に度々繰り出した。
 その名も『光王騎士団』。
 貴族議員たちがぜひにと名づけ会議で発案し正式に名称承認された。
 選抜されて集められた団員は光栄だと喜んでくれた。


「平民も殿下を応援していますよ! 勇者で未来の国王陛下、初代勇者王みたいだってカッコいいって老若男女の憧れです」


 そんな話を打ち解けた部下たちと野営で焚き火を囲みながらした。

 魔物による被害は惨たらしく、力不足を痛感し、より強くならなければと身が引き締まり、精進した。


 魔物の特性、効率的な倒し方、光属性の魔力でできること、勇者と魔王の戦いの歴史など。
 戦い方に重きを置き、歴代の勇者がどう魔物や魔王と戦ったかという指南書や勇者の手記などできる限り読んだ。
 勇者や魔王に関する知識なら自分の右に出る者はいない。
 そう自負していたし周りも認めてくれていた。


 昔から魔王が現れると異世界から聖女が召喚される。
 そして勇者と共に魔王を打ち倒してきた。
 聖女の召喚は聖教会が魔王の出現を確信し、エルグラン王国に召喚の儀式の要請がされてエルグラン王国で行われる。
 聖教会は世界中の教会をまとめる立場の宗教界の総本山だ。
 創造神を祀る『アウレリア教』を含むすべての宗教はその下部組織。
 聖教会の教えではこうだ。
 異世界からきた聖女は慈愛の心を持ち、自ら人々のため戦いに赴いた、と。


 でもその信じてきた常識は根底から間違っているのかもしれない。


 現実は異世界から召喚した少女を従属させて戦いへ送り出していた。しかも身内がだ。
 そしてそもそも異世界人に世界を救わせようという行いそのものが異常なのだと。
 魔王も単純な悪ではないのではないか、と。


 ―――僕は森の浄化、場所を浄化させることができるなど知らなかった。
 どの文献にも載っていなかった。 
 知らないことがある。
 知識が足りていない。
 おそらくは重大な情報が欠落している。
 誰かの手心により隠されているのか。
 はたまた歴史の中に埋もれたのか。


 僕は知らなければならない。
 どんな深淵を覗くことになるかわからない。恐ろしい。
 だが、もしも僕が、あるいは一族が、世界が見えていないことがあるのなら僕は知らなければ。
 きちんと、自分たちの世界のことを。
 彼女と話をしよう。
 彼女が抱く違和感にきっと手がかりがある。
 彼女の方が僕よりずっとずっと、見えている世界は広い。
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