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第一部
勇者ウィリアムの追憶(勇者サイド)①
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僕は、衝撃を受けていた。
ここ数日で19年の人生における価値観が、常識がひび割れ、崩れていく。
叔父の悪辣な行い、魔王の矛盾した行い、この世界の歪さ。
どれも考えたことがなかった。
どうして気づくことができなかったのだろう。
彼女が声を上げてから、ずっと反芻している。
衝撃を生み出した彼女は口元を引き攣らせて女神ウララの祭壇を見つめている。
リンカは瘴気が目視できるようだ。僕は気配を感じ取れはするが見えはしない。
これも聖女としての能力だろうか。
きっと彼女にしか見えない世界を捉えているのだろう。
ウィリアム・エルグラン。
これが僕の名。真名は別にある。
初代国王となった勇者から1,000年続く王家の、第37代国王であった父の嫡子として生を受けた。
エルグラン王家は初代以来脈々と受け継がれる光の属性の魔力をもっている。
初代は魔王討伐のため神からの加護により光属性を授けられ、見事魔王討伐を叶え勇者と呼ばれた。
代々血を引く子に孫に受け継がれた力であり、世界でこの属性はエルグラン王家に連なる者しか持っていない。
魔王とその配下に絶大な威力を発揮するこの力は人々から敬われ、エルグラン一族の象徴でもある。
魔王が現れた時、その力がもっとも強い者が、勇者として剣を奮い討伐してきた。
もっとも王族で強い光属性を持つ者は世代を経るごとに減少している。
それどころか持つ者の方が稀になってしまい王家の長年の懸念材料となっている。理由が分からないのだ。
これは国家機密でもある。
僕は生まれたその時から絶大な魔力をもっていたらしく、この世代で勇者となるならば間違いなく僕だとみなされて教育を受けてきた。
勇者の一族の蓄えてきた知識、戦闘技能を物心ついた頃から学んだ。
国王の嫡子であるから同時に将来国王になるための学びもした。
学ばなければならないことは数多にあり大変な思いはしていたが苦ではなかった。
父を、王妃である母を、先祖代々の勇者を王を、尊敬していた。
その人たちの想いを受け継げるのだと喜びを覚えていた。
両親は夫婦仲がよく、僕に厳しくも愛情を持って接してくれていた。
城のバルコニーから国王一家で年の初めに手を振ると開放された広場に集まった人々は歓声を送ってくれた。
為政者としては善政を敷いていたようで国民に愛されていた。
子ども心にとても誇らしかった。両親を愛していた。
未来は希望に満ち溢れていた。
でも、僕が10歳の時、二人とも亡くなった。事故だった。
二人が乗った馬車が土砂崩れに巻き込まれた。
大雨が原因の川の氾濫によっておこった災害現場の視察の帰りだった。
ここ数日で19年の人生における価値観が、常識がひび割れ、崩れていく。
叔父の悪辣な行い、魔王の矛盾した行い、この世界の歪さ。
どれも考えたことがなかった。
どうして気づくことができなかったのだろう。
彼女が声を上げてから、ずっと反芻している。
衝撃を生み出した彼女は口元を引き攣らせて女神ウララの祭壇を見つめている。
リンカは瘴気が目視できるようだ。僕は気配を感じ取れはするが見えはしない。
これも聖女としての能力だろうか。
きっと彼女にしか見えない世界を捉えているのだろう。
ウィリアム・エルグラン。
これが僕の名。真名は別にある。
初代国王となった勇者から1,000年続く王家の、第37代国王であった父の嫡子として生を受けた。
エルグラン王家は初代以来脈々と受け継がれる光の属性の魔力をもっている。
初代は魔王討伐のため神からの加護により光属性を授けられ、見事魔王討伐を叶え勇者と呼ばれた。
代々血を引く子に孫に受け継がれた力であり、世界でこの属性はエルグラン王家に連なる者しか持っていない。
魔王とその配下に絶大な威力を発揮するこの力は人々から敬われ、エルグラン一族の象徴でもある。
魔王が現れた時、その力がもっとも強い者が、勇者として剣を奮い討伐してきた。
もっとも王族で強い光属性を持つ者は世代を経るごとに減少している。
それどころか持つ者の方が稀になってしまい王家の長年の懸念材料となっている。理由が分からないのだ。
これは国家機密でもある。
僕は生まれたその時から絶大な魔力をもっていたらしく、この世代で勇者となるならば間違いなく僕だとみなされて教育を受けてきた。
勇者の一族の蓄えてきた知識、戦闘技能を物心ついた頃から学んだ。
国王の嫡子であるから同時に将来国王になるための学びもした。
学ばなければならないことは数多にあり大変な思いはしていたが苦ではなかった。
父を、王妃である母を、先祖代々の勇者を王を、尊敬していた。
その人たちの想いを受け継げるのだと喜びを覚えていた。
両親は夫婦仲がよく、僕に厳しくも愛情を持って接してくれていた。
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為政者としては善政を敷いていたようで国民に愛されていた。
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未来は希望に満ち溢れていた。
でも、僕が10歳の時、二人とも亡くなった。事故だった。
二人が乗った馬車が土砂崩れに巻き込まれた。
大雨が原因の川の氾濫によっておこった災害現場の視察の帰りだった。
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