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第二部
古巣の思い出(魔王サイド)②
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"いつまでもこうしていたいな。きみと過ごす時間が何よりの幸せだ"
"うれしい。…いつまでもアーサー、あなたと一緒にいられたらいいのに…"
"僕もそうだよ。だから実現するため、きみを娶るお許しをもらうためにもがんばらなければ。また戦に行くことになるだろう。…離れ難いな"
"わたしだって… わたしが共に戦えたら良かったのに。そうしたらあなたを危険から守れるのに"
"きみが僕を守るのかい? 騎士の面目丸潰れだから城でしっかり守られててよ"
"わかっているわ。わたしが戦場に行ったって邪魔なだけだって。剣も魔法も使えないもの… だから神様にどうかあなたを守ってくださいとお祈りを捧げて大人しくここで待っているわ"
戦友の惚気ている姿は見るものではないなと思いその場を離れた。
あの頃が一番平和な時代だったのではないかと思うことがある。戦乱の時代だったし日々命のやりとりをしていたのだからそんなはずはないのだが、なぜか俺が思い出す『平和』『平穏』『幸福』な光景はこれだった。
たどり着いた壁が一部崩れた離宮の庭には、もはや四阿は跡形もない。無理もない、1000年も昔の木造の建物が管理するものもなく放棄されて残っているわけもない。
隣のリンカは辺りを見回しているから興味があるのだろうが、あまり話しかけてこないのは俺に気をつかっているからだろう。
正直これほど自分自身、郷愁に駆られて気もそぞろになるとは思わなかった。それを察してそっとしておいてくれているようだ。
前から人の機微を察するのが上手いようだとは思っていたが、改めて思った。むしろ本人が気疲れしはしないだろうかと思うほど、勇者と共にいた時も、魔王城で過ごすようになってからも、他者を観察し状況によって自分を合わせている。特に配下のあれだけ癖のある連中を相手にしているのだから疲れるだろうにたいしたものだ。
もっと肩の力を抜いてくれていいのだが。
そういえば、城に連れてきてからずっと魔王城の敷地内にこもってせっせと浄化に勤しんでいる。結果的に行動を制限してしまっているが文句一つ言わずに。
これは久々の外出になるわけで、それなら気分転換をさせてやるべきかと思案する。
「ここでの居心地はどうだった? 楽しかった?」
唐突な問いかけに面食らう。
楽しかった? 特にそう思ったことはなかった。
だが、当時あったことはよく憶えている。
碌でもない出会い方だったアーサーとは共に戦場で戦った。戦が終われば隊の全員で酒盛りをして騒いだ。忠義心などまったくなかったが、他者と関わるのが鬱陶しく、根無草で流れ者だった自分が腰を据えて暮らした程には嫌ではなかった。
「悪くなかった」
そう思えたということは、つまりはそういうことだったのだろう。
"うれしい。…いつまでもアーサー、あなたと一緒にいられたらいいのに…"
"僕もそうだよ。だから実現するため、きみを娶るお許しをもらうためにもがんばらなければ。また戦に行くことになるだろう。…離れ難いな"
"わたしだって… わたしが共に戦えたら良かったのに。そうしたらあなたを危険から守れるのに"
"きみが僕を守るのかい? 騎士の面目丸潰れだから城でしっかり守られててよ"
"わかっているわ。わたしが戦場に行ったって邪魔なだけだって。剣も魔法も使えないもの… だから神様にどうかあなたを守ってくださいとお祈りを捧げて大人しくここで待っているわ"
戦友の惚気ている姿は見るものではないなと思いその場を離れた。
あの頃が一番平和な時代だったのではないかと思うことがある。戦乱の時代だったし日々命のやりとりをしていたのだからそんなはずはないのだが、なぜか俺が思い出す『平和』『平穏』『幸福』な光景はこれだった。
たどり着いた壁が一部崩れた離宮の庭には、もはや四阿は跡形もない。無理もない、1000年も昔の木造の建物が管理するものもなく放棄されて残っているわけもない。
隣のリンカは辺りを見回しているから興味があるのだろうが、あまり話しかけてこないのは俺に気をつかっているからだろう。
正直これほど自分自身、郷愁に駆られて気もそぞろになるとは思わなかった。それを察してそっとしておいてくれているようだ。
前から人の機微を察するのが上手いようだとは思っていたが、改めて思った。むしろ本人が気疲れしはしないだろうかと思うほど、勇者と共にいた時も、魔王城で過ごすようになってからも、他者を観察し状況によって自分を合わせている。特に配下のあれだけ癖のある連中を相手にしているのだから疲れるだろうにたいしたものだ。
もっと肩の力を抜いてくれていいのだが。
そういえば、城に連れてきてからずっと魔王城の敷地内にこもってせっせと浄化に勤しんでいる。結果的に行動を制限してしまっているが文句一つ言わずに。
これは久々の外出になるわけで、それなら気分転換をさせてやるべきかと思案する。
「ここでの居心地はどうだった? 楽しかった?」
唐突な問いかけに面食らう。
楽しかった? 特にそう思ったことはなかった。
だが、当時あったことはよく憶えている。
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そう思えたということは、つまりはそういうことだったのだろう。
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