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第二部
古巣の思い出(魔王サイド)①
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"ここがラスタ王国の首都ニルスだ。これからお前が暮らし、忠義を尽くす王のおわす地だ。どうだ、感想は?"
"帝国との戦時下だというのに呑気なもんだな。店の営業はやめ家にこもって居ればいいだろ"
"長く続いている戦時下だからね、みんな縮こまって震えるのは飽きてしまったんだ。元気に声を出して呼び込みをして、普段通りの日常を送って気持ちを保っている。そして戦から帰ってきて心が摩耗している僕らを温かく迎えてくれる。こうした民の為に僕ら騎士はある"
"おい、忠義はどこにいった"
"はは、これから御前に帰還のご挨拶に向かうが、黙っていてくれ"
*
古巣の都は、城壁は崩れ、道に敷き詰められていた石畳はひび割れ、焼きレンガ製の家屋の屋根は屋内に落ち、乾き切った大地には草木一つなく砂埃が風で舞っていた。
商店の呼び込みの活気も、騎士団の靴や馬の蹄鉄の足音、容易に思い出せる懐かしい喧騒は、今は記憶の中でのみ生きている。
「大丈夫?」
物思いから戻るとリンカがこちらの顔を心配そうに伺っていた。どうやら思ったより長く昔を思い出し呆けていたようで、俺の様子が常と違ったため不安にさせたようだ。
「なんでもない。ただ…昔を思い出していた」
「…ここは思い出の場所なんだよね」
倒れた王城の門柱を跨ぎ敷地内を進む。
扉や窓が壊れ雨風にさらされた裏寂れた王城。
アーサーに連れられ王に初めて謁見してから、副隊長として任務の報告の為に時に足を踏み入れた。
「…あなたは城に住んでいたの?」
「あのあたりに団の宿舎があった」
「え? どこ?」
「いまは崩れて瓦礫になっている」
王城を正面に見て左手に騎士団宿舎があり、その裏に訓練場があった。もっとも任務で何処かに出た盗賊退治や、だんだん帝国との国境沿いでの戦に駆り出される頻度が増え、宿舎にはほとんど帰らなかったが。また隊には脳筋馬鹿が多く、宿舎にいたとしても「訓練しよう」「手合わせを」などと絡まれて休日などあってなかったようなものだったが。
もちろん絡んできた奴は二度とその気が起きんように戦闘不能にしたが、記憶力が悪いのか間が開くとまた挑んできてうんざりした。その元気さは戦場で発揮しろ、と。
崩れかけの王城を右から迂回し王族の生活区域に入っていく。
「…ここはどういう所?」
「この先に離宮があってな、そこに王女ジュリアが暮らしていた」
離宮に向かって乾いた砂地を歩きながら、リンカに答えを返す。
王城から離れたところにいくつか離宮があり、かつてその一つの城から一番離れた離宮に王女ジュリアは住んでいた。当時その離宮に数人の使用人とともに住んでいた彼女は、最低限手入れをされているだけの離宮の花の咲く庭を好んでいた。
俺に報告に行かせている間にアーサーは、愛しの恋人に会いに行っていて幾度も腹を立てた。
人に働かせていいご身分だなと文句と蹴りを見舞うべく逢引現場に向かうと、二人は人気のない離宮の庭の四阿で隠れるように肩を寄せていたものだ。
"帝国との戦時下だというのに呑気なもんだな。店の営業はやめ家にこもって居ればいいだろ"
"長く続いている戦時下だからね、みんな縮こまって震えるのは飽きてしまったんだ。元気に声を出して呼び込みをして、普段通りの日常を送って気持ちを保っている。そして戦から帰ってきて心が摩耗している僕らを温かく迎えてくれる。こうした民の為に僕ら騎士はある"
"おい、忠義はどこにいった"
"はは、これから御前に帰還のご挨拶に向かうが、黙っていてくれ"
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「大丈夫?」
物思いから戻るとリンカがこちらの顔を心配そうに伺っていた。どうやら思ったより長く昔を思い出し呆けていたようで、俺の様子が常と違ったため不安にさせたようだ。
「なんでもない。ただ…昔を思い出していた」
「…ここは思い出の場所なんだよね」
倒れた王城の門柱を跨ぎ敷地内を進む。
扉や窓が壊れ雨風にさらされた裏寂れた王城。
アーサーに連れられ王に初めて謁見してから、副隊長として任務の報告の為に時に足を踏み入れた。
「…あなたは城に住んでいたの?」
「あのあたりに団の宿舎があった」
「え? どこ?」
「いまは崩れて瓦礫になっている」
王城を正面に見て左手に騎士団宿舎があり、その裏に訓練場があった。もっとも任務で何処かに出た盗賊退治や、だんだん帝国との国境沿いでの戦に駆り出される頻度が増え、宿舎にはほとんど帰らなかったが。また隊には脳筋馬鹿が多く、宿舎にいたとしても「訓練しよう」「手合わせを」などと絡まれて休日などあってなかったようなものだったが。
もちろん絡んできた奴は二度とその気が起きんように戦闘不能にしたが、記憶力が悪いのか間が開くとまた挑んできてうんざりした。その元気さは戦場で発揮しろ、と。
崩れかけの王城を右から迂回し王族の生活区域に入っていく。
「…ここはどういう所?」
「この先に離宮があってな、そこに王女ジュリアが暮らしていた」
離宮に向かって乾いた砂地を歩きながら、リンカに答えを返す。
王城から離れたところにいくつか離宮があり、かつてその一つの城から一番離れた離宮に王女ジュリアは住んでいた。当時その離宮に数人の使用人とともに住んでいた彼女は、最低限手入れをされているだけの離宮の花の咲く庭を好んでいた。
俺に報告に行かせている間にアーサーは、愛しの恋人に会いに行っていて幾度も腹を立てた。
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