魔王城での聖女生活~異世界に聖女として呼ばれましたが実は世界を守ってた魔王を聖女の力で助けます~

四乃

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第二部

魔物化した者たち②

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魔王が核心を躊躇いなくつく。


「正解です。さらに言えば、底に集めたのは何故か、だけれどね。始末した方が管理が楽そうなものなのに。場所取るし。それは今のところあれこれ仮説を立てているところです」
「ふん、碌でもない説しか思い浮かばんな」
「まったくです。しかしさすが陛下。僕の考えなんてお見通しでしたね。なーんて、頭の回る陛下のことだからとっくにその可能性にたどり着いていたのでしょう? リンカちゃんを上に戻そうとしたのもそれを鑑みてですよね」


そうだったのか。先を読んでより厳しく残酷な光景が待っているだろうとわたしにああやった気遣いを…


「今からでも上に行ってもいいぞ?」


再度確認されたけれど首を横に振って断った。
ありのままを見ようという気持ちは変わらない。
魔王は「しょうがないな」といったふうに首を横に振った。


「底には魔物がおびただしい数いるだろう。元が人間のだ。覚悟はいいか?」
「うん、大丈夫」
「よし。では馬鹿正直に底に行ってちまちま倒してやることもない。数を減らすとするか」


そういうと魔王は右手に火の球を生み出した。
まさか投げ込むつもり!?
わたしは魔王の右腕の服を急いで引っ張った。


「ちょっと、ありのままを見たいんだって言ったでしょ? まずは肉眼で確認してからーー」
「それならば肉眼ではなく聖女としての力で今ここから見ればいい」
「あ、そうか…」


うっかりしていた。確かにそれもそうだとそこで聖女の力でもって底の瘴気を見るーーすなわち感知しようと意識して魔力を使った。

すると足元の感覚が消えて視界がぐらつき、平行感覚がなくなった。
急なことで動転していると、視界が真っ白に染まった。意識を失って倒れる時のようなあの怖さがあった。どこかに捕まらなきゃと手を動かそうとしたけれど体が動かせない。それどころか感覚がない。
どうしよう、どうしたのわたし、と混乱していると視界が暗くなった。


『お目覚めかな』


くぐもってはっきり聞き取れないけれど、誰かに話しかけられた。誰だろう。魔王? ヴラド? ゲーデ? でも口調が違う。


『う、あ…?』


自分の発した言葉の自覚があった。けれどわたしはしゃべったつもりがなかった。どうなっているの?


『ふん、意識はまだあるが魔物化し始めているな。成功ではあるか、不十分だがね』


魔物化!? 
慌てて体に視線を向けようとするけれど体がやっぱり動かせない。


『バート、だったか。オーガ種へのはじめての成功例だ。己を誇り給え』


バート。バート?
それはさっき魔物化実験の被験者に名を連ねていた剣士の男と同じ名前。オーガになったともあった。

そうか、わたしはまた過去の幻視をしているんだ。
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