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第二部
手がかりのための幻視①
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過去の幻視。
それはつい最近、突然見るようになった。
今いる場所から場面が変わり、さっきまでの風景や人物も見えなくなり、わたしが知るよしもない、経験していないはずの光景が繰り広げられる。
前回でありはじめては魔王支配領域内にあるとある神殿跡で。
あの時は映画を観ているような客観的視点で見た。
今回は魔物化実験の被験者のバートという人物の視点で過去の幻視をしているようだ。
みんな、どこにいるんだ…?
バートは冒険者でパーティごと襲われて捕らえられたようだ。それぞれ引き離されて実験をされたようで、意識が朦朧として頭の働きが鈍くなっていてもパーティメンバーの心配をしている。
かならず、みつけて、みんなでここからにげるんだ…
「リンカ?」
肩を叩かれて名前を呼ばれると視界に魔王の美麗な顔があった。さっきまでのふわふわとした意識レベルの幻視から現実に戻ったようだ。まるで夢から覚めたような心地だ。
「どうしたのリンカちゃん? 動きを止めてあらぬ一点を見つめたままで、話しかけても反応がなくて驚いてしまったよ」
「リンカ、もしや」
「…うん、過去の幻視だと思う」
「また、か」
魔王が眉をひそめて腕を組んだ。
「何を見た?」
「少しだけだけど、バートっていうオーガにされた人の視点の内容だった」
「先ほどの紙切れに載っていた名だな」
「へぇ、あの状態がそうだったんだね。幻視しようとして見たのかい?」
「ううん、わたしの意志ではできないしやり方がわからないから。聖女の力で底の瘴気を見ようとしたら急に…」
「また、か」
魔王は少し黙って考えをまとめたようでわたしの目を真っ直ぐ見てきた。
「幻視する条件はわからんがこの先に進めば進むほと見るかもしれん。進むのはーー」
「続行で」
「いい返事だ。また幻視していると思われたら声をかける。幻視していることがお前の身体や精神に害になる可能性もあるからな。念の為にだ」
「わかった。それからさっきの火の球なんだけど…」
「あれか?」
魔王が後ろを振り返ったのでそちらに目を向けると底まで伸びている大穴の中心部にふよふよとバランスボール大の赤い火の球が浮いていた。
どうやら人が意識を過去に飛ばしてる間に撃ち込む直前だったようだ。
そしてあなたの魔法の威力でそのサイズの火の球とか、底の魔物どころかさらに大地を抉って穴を拡大させてしまいそう。やり過ぎでしょやめてくださいわたしたちも焼かれるわ。
「う、撃ち込むのやめてくれる? このままの状態で下まで行ったらもっと色々幻視してわかる事があるかもしれないから」
「仕方ない。では道すがらお前の幻視で多少なりともわかることを期待しよう」
「うん、なにかここの重要な情報が手に入るといいんだけど、あんまり期待しないでね」
「そこは"竜に乗ったつもりでいろ"というところだろうに」
「それってことわざ?」
「"頼りになるものに任せて安心する"という意味だ」
「向こうでいう"大船に乗ったつもり"ってことかな。竜とかさすが異世界。でも竜に安心感を得られないんだけど。竜に乗って飛んだら怖いよ」
「まあ慣れた竜使いでない限りは落ちるだろうな」
なんて軽口をたたきながらわたしたちはまた螺旋状の下り道を下へと歩き出した。
それはつい最近、突然見るようになった。
今いる場所から場面が変わり、さっきまでの風景や人物も見えなくなり、わたしが知るよしもない、経験していないはずの光景が繰り広げられる。
前回でありはじめては魔王支配領域内にあるとある神殿跡で。
あの時は映画を観ているような客観的視点で見た。
今回は魔物化実験の被験者のバートという人物の視点で過去の幻視をしているようだ。
みんな、どこにいるんだ…?
バートは冒険者でパーティごと襲われて捕らえられたようだ。それぞれ引き離されて実験をされたようで、意識が朦朧として頭の働きが鈍くなっていてもパーティメンバーの心配をしている。
かならず、みつけて、みんなでここからにげるんだ…
「リンカ?」
肩を叩かれて名前を呼ばれると視界に魔王の美麗な顔があった。さっきまでのふわふわとした意識レベルの幻視から現実に戻ったようだ。まるで夢から覚めたような心地だ。
「どうしたのリンカちゃん? 動きを止めてあらぬ一点を見つめたままで、話しかけても反応がなくて驚いてしまったよ」
「リンカ、もしや」
「…うん、過去の幻視だと思う」
「また、か」
魔王が眉をひそめて腕を組んだ。
「何を見た?」
「少しだけだけど、バートっていうオーガにされた人の視点の内容だった」
「先ほどの紙切れに載っていた名だな」
「へぇ、あの状態がそうだったんだね。幻視しようとして見たのかい?」
「ううん、わたしの意志ではできないしやり方がわからないから。聖女の力で底の瘴気を見ようとしたら急に…」
「また、か」
魔王は少し黙って考えをまとめたようでわたしの目を真っ直ぐ見てきた。
「幻視する条件はわからんがこの先に進めば進むほと見るかもしれん。進むのはーー」
「続行で」
「いい返事だ。また幻視していると思われたら声をかける。幻視していることがお前の身体や精神に害になる可能性もあるからな。念の為にだ」
「わかった。それからさっきの火の球なんだけど…」
「あれか?」
魔王が後ろを振り返ったのでそちらに目を向けると底まで伸びている大穴の中心部にふよふよとバランスボール大の赤い火の球が浮いていた。
どうやら人が意識を過去に飛ばしてる間に撃ち込む直前だったようだ。
そしてあなたの魔法の威力でそのサイズの火の球とか、底の魔物どころかさらに大地を抉って穴を拡大させてしまいそう。やり過ぎでしょやめてくださいわたしたちも焼かれるわ。
「う、撃ち込むのやめてくれる? このままの状態で下まで行ったらもっと色々幻視してわかる事があるかもしれないから」
「仕方ない。では道すがらお前の幻視で多少なりともわかることを期待しよう」
「うん、なにかここの重要な情報が手に入るといいんだけど、あんまり期待しないでね」
「そこは"竜に乗ったつもりでいろ"というところだろうに」
「それってことわざ?」
「"頼りになるものに任せて安心する"という意味だ」
「向こうでいう"大船に乗ったつもり"ってことかな。竜とかさすが異世界。でも竜に安心感を得られないんだけど。竜に乗って飛んだら怖いよ」
「まあ慣れた竜使いでない限りは落ちるだろうな」
なんて軽口をたたきながらわたしたちはまた螺旋状の下り道を下へと歩き出した。
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