魔王城での聖女生活~異世界に聖女として呼ばれましたが実は世界を守ってた魔王を聖女の力で助けます~

四乃

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第二部

女神と伯父と母①

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一連の流れを俺から説明されたリュフト侯爵こと伯父上は、俺や横に護衛としての体で立っている剣士に時々視線を向け静かに、それでいて鋭い光を宿した目をして聞いていた。
聞き終わると伯父上は自身の補佐官や使用人、俺が連れてきた側近や護衛を人払いし、自分と王子である俺だけを希望した。それについては了承したが、グリューフェルト伯爵の仲間の剣士はこの場に残すことを俺が押し通した。この剣士は護衛として付いてきてはいるが、直接耳にして伝える役目だろう。伯爵か、あるいは真の主人の命で来ているだろう彼を同席させなければ協力に不義理だし、そもそも実力的に追い出せるとも思っていない。


「これよりお話する内容は当家門の最重要機密であり直系の血族のみが知るのみ、私の妻も知らぬこと。王家にも知られていないはずです」
「…そのような秘中の秘を俺に話していいのですか? 俺は王子です」
「はい。殿下と王女殿下ならば妹の実子、当家門の血族です。そして殿下であれば、国と民とご家族を大切になさっているあなたならば、信頼できます」
「…感謝する」


伯父上はうなずくと、視線を落としゆっくりと一族の秘密を話し始めた。


「私の先祖であるリュフト一族は長くこの地で領地を治めてきました。それは初代勇者の出現より遥か前からで、その起源はこの地におわす女神アールストゥにより飢饉の際に一族に施しを行い救っていただいた恩からだそうです。以来女神を敬い、神殿を造り、祈りや供物を捧げると、女神がまた恵みを下さり、豊かな地になっていきました。それがよそから移住者を呼び、だんだん集団が大きくなっていき町となっていったのです」


長くこの地を治める一族だったことは知っていたが元は女神ありきの神職のような立ち位置だったのか。


「時は流れ1000年前の戦いが起こりました。…これについては一族に伝わる歴史と、世間が知る歴史が異なります。殿下はその辺りの歴史についてはご存じでしょうか?」
「…知っている歴史とは違う歴史を書いた書物を手に入れています。禁書としてかつて焼き捨てられるのをまぬがれたものだそうで、まぁ、表に出せない代物で表に出せない入手経路です」
「ははっ、さすが殿下。面白そうですから私も後でお貸し願えますかな? それと入手した場所にも連れて行っていただきたいです」
「いいですよ。完璧な変装を伝授しますよ」


他国の闇オークションにまた行くとなると身バレは絶対に避けなければならない。王子と侯爵が非合法な場所に行ったと知れたら国民に叱り飛ばされてしまう。
それから"もう一つの歴史"について全く動揺しなかった横の護衛剣士、彼の仲間もみな同じ反応をするのだろう。つまりはそのことをすでに知っている。紅一点の彼女、そして彼らの身の上の推察がまた進む。


「ではご存じのものとして省かせていただきます。おいそれと口にするのははばかられますから。ーー戦いに参加したアールストゥ様は消滅はまぬがれましたが酷く消耗されました。女神の力はそうそう回復しません。祈りや供物を捧げられることで長い年月をかけて回復するのです。また地脈近くならば地脈の力も取り込み回復に回すけとも可能です。女神は長い休養をとるために地下深く潜ることにしました」
「しかし地下深くといってもどうやって行くのです?」


地上には町が出来ていたのだからまさか掘るわけにもいかない。そもそも地脈はどれほど掘れば辿り着けるのか見当もつかない。大地の裂け目やら地下洞窟でも通って行ったのだろうか?
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